急性の感染性関節炎

執筆者:Bethany Lehman, DO, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine
Reviewed ByBrian F. Mandell, MD, PhD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University
レビュー/改訂 修正済み 2024年 12月
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急性の感染性(化膿性)関節炎は,数時間または数日にわたって進行する関節の感染症である。感染が滑膜組織または関節周囲組織に存在し,通常は細菌性である。化膿性関節炎は関節構造を急速に破壊することがある。症状としては,急激な疼痛,関節液貯留,自動可動域と他動可動域両方の制限などがある(通常は単一の関節内)。診断には関節液検査と関節液培養を必要とする。治療は抗菌薬の静注であり,典型的には関節の感染に対する外科的排膿が必要である。

急性の感染性関節炎は,高齢者に最もよくみられるが,小児に起こることもある。関節の感染症の患児の約50%は3歳未満である。インフルエンザ菌および肺炎球菌に対するルーチンの小児予防接種により,この年齢群における関節の感染症の発生率は低下している(1, 2)。

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危険因子

関節の急性感染症には数多くの危険因子がある(感染性関節炎の危険因子の表を参照)。

関節リウマチ患者,慢性の関節損傷を引き起こすその他の疾患の患者,関節感染症の既往がある患者,注射薬物使用がみられる患者,および人工関節を有する患者では,感染性関節炎のリスクが大きく増加する(人工関節感染症も参照)。関節リウマチの患者は一般集団と比べて細菌性関節炎のリスクが高い(1, 2)。感染性関節炎を発症する小児の大半には同定された危険因子がない(3, 4)。

表&コラム
表&コラム

危険因子に関する参考文献

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急性の感染性関節炎の病因

感染性微生物は以下の経路で関節に到達する(1):

  • 直接の侵入(例,外傷,手術,関節穿刺咬傷

  • 隣接する感染巣からの進展(例,骨髄炎,軟部組織膿瘍,感染創)

  • 離れた感染巣からの血行性の拡大

急性の感染性関節炎の原因となる一般的な微生物の表に一般的な微生物を挙げる。

表&コラム
表&コラム

成人では,関節の急性感染症の大半が細菌に起因し,淋菌性または非淋菌性に分類される。淋菌感染症の方が関節に対する破壊性がはるかに小さいため,この鑑別は重要である。成人全体では,黄色ブドウ球菌が感染性関節炎の最も頻度の高い原因である傾向がある。市中型黄色ブドウ球菌(S. aureus)の分離株ではメチシリン耐性がよくみられる。黄色ブドウ球菌は長期合併症のリスクが最も高い(2)。

淋菌は化膿性関節炎症例のわずか1%強を占めるにすぎないが,性的に活動的な成人では考慮すべきである(3)。これは淋菌(N. gonorrhoeae)の感染が,ときに粘膜表面(子宮頸部,尿道,直腸,咽頭)から血流を介して無症候性に拡大することで生じる。罹患した患者は同時にChlamydia trachomatisによる性器感染症を有することが多い。レンサ球菌属も頻度が高い原因であり,特に多関節の感染を伴う患者で多い。免疫抑制療法(例,腫瘍壊死因子阻害薬またはコルチコステロイドによる)を受けている患者は,あまり一般的ではない病原体(例,抗酸菌,真菌)による化膿性関節炎に罹患することがあり,炎症反応の鈍化により発見が遅れることが多い(4, 5)。

Kingella kingaeは,幼児における化膿性関節炎の主要な原因として新たに注目を集めている(6, 7)。

病因論に関する参考文献

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急性の感染性関節炎の病態生理

感染微生物が滑液中や滑膜上で増殖する(1)。一部の細菌(例,黄色ブドウ球菌[S. aureus])は病原因子(アドヘシン)を産生し,それが関節組織への細菌の侵入,残留,および感染を可能にする。その他の細菌の産生物(例,グラム陰性菌の内毒素,細胞壁の断片,グラム陽性菌の外毒素,細菌抗原と宿主の抗体によって形成される免疫複合体)が炎症反応を増強する。

好中球が関節内に遊走して,感染微生物を貪食する。細菌の貪食はまた,関節内へのライソゾーム酵素放出(滑膜,靱帯,および軟骨を損傷する)を伴う好中球の自己融解を招く。したがって,好中球は主要な宿主防御システムでもあり,関節損傷の原因でもある。関節軟骨が数時間以内または数日以内に破壊されることがある。

ときに,感染が抗菌薬によって除菌された後も炎症性の滑膜炎が存続することがある。特に淋菌性の症例では,細菌または感染症由来の残留する抗原の残屑が軟骨を変化させて抗原性にすることがあり,細菌成分および免疫複合体のアジュバント効果と相まって,免疫を介した「無菌」の慢性炎症性の滑膜炎が発生することがある。

病態生理に関する参考文献

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急性の感染性関節炎の症状と徴候

関節の急性感染症を起こした患者では,数時間から数日にわたって,中等度から重度の関節痛や,熱感,圧痛,関節液貯留,自動運動や他動運動の制限のほか,ときに発赤もみられる(1)。典型的には単一の関節が侵される。全身性リウマチ性疾患の患者では,多関節の化膿性関節炎が生じる可能性が高い(2,3)。多くの急性感染性関節炎患者で発熱がみられるが,必発ではない。全身症状はときにごく軽微か全くみられないこともあるが,菌血症を来した患者では敗血症の徴候がみられることがあり,特に黄色ブドウ球菌(S. aureus),β溶血性レンサ球菌,グラム陰性桿菌など,毒性の強い病原体ではその頻度が高くなる。

乳児および小児では,四肢の自発運動の制限(仮性麻痺),易刺激性,摂食障害が生じることがある。高熱または微熱がみられる場合もある。ときに発熱を欠くこともある(4)。

淋菌性関節炎

淋菌性関節炎は,特徴的な皮膚炎-多関節炎-腱鞘炎症候群(dermatitis-polyarthritis-tenosynovitis syndrome)を引き起こすことがある。

古典的な臨床像は以下の通りである(5):

  • 発熱(5~7日間)

  • 粘膜表面と体幹,手,または下肢の皮膚に生じる複数の皮膚病変(点状出血,丘疹,膿疱,出血性の小水疱または水疱,壊死性病変);ただし,性器病変は認められないことが多い

  • 性器症状がない

  • 移動性の関節痛,関節炎,および腱鞘炎(しばしば複数の腱が侵される),最も多くは手の小関節,手関節,肘関節,膝関節,および足関節にみられ,まれに体幹骨の関節にみられる

  • 膝関節,足関節,手関節,または肘関節の単関節炎または少関節炎(5)

最初の粘膜感染症(例,尿道炎,子宮頸管炎)の症状がみられないことがある。

非淋菌性の細菌性関節炎

非淋菌性の細菌性関節炎は,動作または触診によって顕著に悪化する進行性の中等度から重度の関節痛を引き起こす(1)。感染が起きた関節の大半に腫脹,発赤,および熱感を呈する。大半の症例で発熱がみられるが,必発ではない。毒性の強い微生物(例,黄色ブドウ球菌[S. aureus],緑膿菌[Pseudomonas aeruginosa])は一般により劇症性の関節炎を引き起こす一方,毒性の弱い微生物(例,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌,Propionibacterium acnes)は劇症化の程度が弱い関節炎を引き起こす。

非淋菌性の細菌性関節炎は成人患者の80%において単関節性であり,通常は末梢関節(膝関節,股関節,肩関節,手関節,足関節,または肘関節)に生じる。小児では,90%以上が単関節性であり,その大半で膝関節,股関節,および足関節が侵される(6)。

多関節性に侵されることが,免疫抑制患者,基礎疾患に慢性関節炎(例,関節リウマチ,変形性関節症)を有する患者,またはレンサ球菌またはブドウ球菌(特にβ溶血性レンサ球菌または黄色ブドウ球菌[S. aureus])に感染している患者でいくぶん多い。注射薬物の使用者と血管留置カテーテルを使用している患者では,体軸関節(例,胸鎖関節,肋骨肋軟骨移行部,股関節,肩関節,脊椎,恥骨結合,仙腸関節)が侵されることが多い(7)。インフルエンザ菌(H. influenza)は,淋菌感染症と同様の皮膚炎-関節炎症候群(dermatitis-arthritis syndrome)を起こすことがある。

咬傷に続発する感染性関節炎

ヒト,イヌ,またはネコの咬傷による感染症(ヒトおよび哺乳類による咬傷を参照)は,通常48時間以内に発症する。身体診察所見の解釈は,感染症だけでなく外傷の存在によってしばしば複雑になる。

ネズミによる咬傷は,発熱,発疹,および関節痛または所属リンパ節腫脹を伴う真の関節炎などの全身症状を約2~10日以内に引き起こす(8)。

ウイルス性の感染性関節炎

ウイルス性の感染性関節炎は,ときに非淋菌性の急性細菌性関節炎と同様の症状を引き起こし,細菌性関節炎よりも多関節性である可能性が高い(9)。

ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)関節炎

B. burgdorferi関節炎の患者には,ライム病の他の症状もみられる場合もあれば,急性の単関節炎または少関節炎だけがみられる場合もあり,これらは無治療の場合,数週間から数カ月後に自然に消失した後に再発することがある(10)。ライム関節炎は膝関節および大関節に好発し,典型的には発熱を伴わない。適切な抗菌薬療法後も残る慢性疼痛は,感染以外が病因である可能性が高い。

多関節罹患の関節リウマチ様症候群は明らかにまれであり,他の診断によって生じている可能性が高い。

症状と徴候に関する参考文献

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急性の感染性関節炎の診断

  • 関節穿刺による関節液検査および関節液培養

  • 血液培養

  • 通常は血算および赤血球沈降速度(および/またはC反応性タンパク[CRP])

  • 分子生物学的検査(例,PCR法)

  • ときに画像検査

単関節性または少関節性の急性関節炎がみられる患者,および特定の感染性関節炎症候群の特徴的症状(例,移動性の多関節炎,腱鞘炎,および播種性淋菌感染症で典型的な皮膚病変;遊走性紅斑またはライム病のその他の症状および徴候)が別の組合せでみられる患者では,感染性関節炎が疑われる。

単関節または少関節の軽度の関節症状であっても,免疫抑制療法(例,コルチコステロイド,腫瘍壊死因子阻害薬またはインターロイキン6阻害薬)を受けていて,危険因子(例,関節リウマチ),人工関節,または関節に拡がる可能性のある関節外感染症(例,性器の淋菌感染症,肺炎,菌血症,何らかの嫌気性菌感染症)を有する患者では,疑いをもつべきである。

パール&ピットフォール

  • 単関節または少関節の急性の関節液貯留に加えて,細菌による感染性関節炎に一致する所見を認める患者では,たとえ関節疾患(例,関節リウマチ)が既知の場合であっても,関節感染症を除外するために,関節穿刺(細胞数および白血球分画,結晶分析を伴う)を施行して関節液培養を行うべきである。

感染性関節炎

関節の急性感染症の診断では関節液の検査が決め手になる(1)。関節液を肉眼的に検査し,細胞数および白血球分画,グラム染色,好気培養および嫌気培養の検査,ならびに結晶分析に供する。悪臭を伴う関節液は嫌気性菌感染症を示唆する。急性感染が起きた関節の関節液は通常,白血球数が50,000/μL(50 × 109/L)を超え(ときに100,000/μL[100 × 109/L]を超える),その95%以上が多形核白血球である(2)。白血球数は,淋菌性の感染性関節炎よりも,淋菌以外の細菌性関節炎において多くなる傾向がある。白血球数はまた,初期にまたは部分的に治療された感染症でも低値となることがあるため,白血球数が50,000/μL未満であっても感染性関節炎は除外されない(3,4)。

グラム染色で微生物が明らかになるのは,急性の細菌性関節炎がある関節のうち50~75%に過ぎない(ブドウ球菌が最も多い)。グラム染色陽性は診断を示唆するが(5),偽陽性となることもある。培養は確定的であるが,培養前に抗菌薬が投与されると,その有用性は限定的となる(6)。

血液培養の好気ボトルに関節液を接種することにより,Kingella kingaeの検出率を改善できる(7)。

結晶の存在は,併存する感染性関節炎を除外しない。初回の関節液検査では,感染による滑液とその他の炎症による滑液を鑑別することができない(8)。痛風の患者とピロリン酸カルシウム関節炎の患者と感染症の患者では,関節液中の滑膜細胞数の値に有意な重複がみられる。臨床的手段と関節液検査で鑑別ができない場合は,培養の結果が出るまで,感染性関節炎を想定して治療すべきである。

通常は血液培養,血算,赤血球沈降速度(またはC反応性タンパク[CRP])などの血液検査を行う。しかし,結果が正常でも感染症は除外されない。感染性関節炎だけでなく非感染性の関節炎(痛風など)でも,白血球数,赤血球沈降速度,またはC反応性タンパク(CRP)が高値となることがある(4)。血清尿酸値は,痛風では正常のことや低値となることさえあり,痛風とは無関係ではあるが,急性細菌感染症の患者では高値となることがあるため,関節炎の原因として痛風を診断ないし除外するために用いるべきではない(8)。

分子生物学的検査(例,PCR法)を用いて,臨床検体中の微生物を直接検出してもよい。子宮頸部,尿道,中咽頭,または直腸から採取した検体の核酸増幅検査(NAAT)により,感染が起きた関節以外で淋菌が検出されることがある(9)。淋菌性関節炎の診断アプローチについては,以下でより詳細に考察する。結核菌(Mycobacterium tuberculosis)やTropheryma whippleiなどの培養困難な一部の微生物は,PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法で関節液中に直接検出できることがある。メタゲノム次世代シークエンシング(mNGS)も,困難な症例で病原体を同定するためのツールとして利用できる。mNGSは培養と比較して感度が高く,抗菌薬に治療を受けている患者で病原体を検索する検査で有用な診断ツールとなりうる(10)。

罹患関節のX線は,急性感染症の診断には有用ではないが,ときに考慮に上がる他の病態(例,骨折)を除外することができる。早期の急性の細菌性関節炎でみられる異常は,軟部組織の腫脹および関節液貯留の徴候に限られる(11)。細菌感染症を治療せずに10~14日を経ると,破壊的な変化(関節裂隙の狭小化[軟骨破壊を反映]およびびらん)または軟骨下の骨髄炎の病巣が現れることがある。関節内にみられるガスは,大腸菌(Escherichia coli)または嫌気性菌による感染症を示唆する。

診察や穿刺吸引を行おうとしても容易に到達できない関節の場合(例,体軸関節),MRIを考慮する。MRIまたは超音波検査によって,関節液貯留または膿瘍がある部位を同定でき,診断および治療の両方を目的とした吸引または排出が可能となる(12)。MRIは,関連する骨髄炎を早い時期に示唆することがある(13)。テクネチウム99mを用いる骨シンチグラフィーは,感染性関節炎では偽陰性を示すことがある。さらに,炎症を起こした滑膜および代謝活性の高い骨で,増大した血流に伴う取り込みの増加を示すので,痛風のような非感染性の炎症性関節疾患で偽陽性を示すことがある。核医学検査およびMRIでは,感染症と結晶誘発性関節炎は鑑別されない(11)。

淋菌性関節炎

淋菌性関節炎が疑われる場合は,血液および関節液検体を直ちに非選択的なチョコレート寒天培地で平板培養すべきである。尿道,子宮頸管,直腸,および咽頭からも検体を採取し,選択的なThayer-Martin培地で平板培養すべきである。性器,直腸,および口腔検体の培養またはNAAT検査も推奨される。血液培養は最初の1週間は陽性となる可能性があり,微生物学的診断の補助となりうる。

明らかに化膿性関節炎を来した関節での関節液培養も陽性となることがあり,皮膚病変の滲出液も陽性になることがある。関節液培養が陰性となった患者がPCRで陽性となることもあるため,関節液のPCR検査は計画通り行うべきである(9)。臨床基準に基づいて播種性淋菌感染症が疑われる場合,淋菌培養が全て陰性でも播種性淋菌感染症が存在すると想定される。抗菌薬に対する臨床反応(5~7日以内と予想される)が淋菌感染症の診断の強固な裏付けになることがある。

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急性の感染性関節炎の治療

  • 抗菌薬の静脈内投与

  • 罹患関節からの関節液のドレナージ

抗菌薬療法

最初の抗菌薬の選択は,最も可能性の高い病原菌に照準を合わせる(1)。レジメンは培養および感受性試験の結果に基づいて調節する。

淋菌性関節炎は以下により治療する:

  • セフトリアキソン1g,静注,1日1回

セフトリアキソンの静注は症状・徴候の消失後少なくとも24時間経過するまで継続し,起因菌が感受性であることが証明された場合は,続いてセフィキシム400mg,経口,1日2回の投与を7~14日間行う。Chlamydia trachomatis感染症が除外されていない場合は,ドキシサイクリン100mg,経口,1日2回,7日間を追加すべきである。このレジメンで改善がみられない場合や患者がセファロスポリン系薬剤に耐えられない場合は,感染症専門医へのコンサルテーションを行う。そのような場合は,代替レジメンとしてアジスロマイシンとゲミフロキサシン(gemifloxacin)またはゲンタマイシンの併用などがある。微生物が分離され,感受性であることが証明された場合に限り,シプロフロキサシン500mg,経口,1日2回を使用してもよい(2)。

成人においてグラム染色から淋菌以外のグラム陽性菌による感染症が疑われる場合,または微生物が一切認められない場合,初期治療は以下による:

  • バンコマイシン1g,静注,12時間毎

黄色ブドウ球菌(S. aureus)の市中株でメチシリン耐性がよくみられるため,グラム染色でグラム陽性球菌の集簇が認められる患者とグラム染色陰性であるが黄色ブドウ球菌(S. aureus)が疑われる患者には,バンコマイシンが経験的治療で選択すべき薬剤となる。グラム染色でグラム陽性球菌の集簇が認められたメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(S. aureus)感染症の患者に対する選択肢としては,半合成ペニシリン(例,ナフシリン[nafcillin]2g,静注,4時間毎)やセファロスポリン系薬剤(例,セファゾリン2g,静注,8時間毎)などがある(3)。

グラム陰性菌による感染症が疑われる場合(例,免疫抑制状態や重篤な併存症がある患者,注射薬物使用の習慣がある患者,最近の感染症で抗菌薬を使用した患者,血管にカテーテルを留置している患者)の経験的治療としては,抗緑膿菌活性を有する抗菌薬の注射剤による投与(例,セフタジジム2g,静注,8時間毎;セフェピム2g,8時間毎;ピペラシリン/タゾバクタム4.5g,6時間毎)などがある(3)。

新生児は,最初はグラム陽性菌をカバーする抗菌薬(例,黄色ブドウ球菌にはナフシリン[nafcillin]またはバンコマイシン)に加えて,グラム陰性菌をカバーする抗菌薬(例,K. kingaeにはゲンタマイシンまたは第3世代セファロスポリン系薬剤[セフォタキシムなど])で治療すべきである(1)。

生後48カ月以上の小児には,黄色ブドウ球菌をカバーした経験的治療を行うべきである。市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)をカバーすべきかどうかは,地域の感受性データに基づいて判断する(1)。

注射剤による抗菌薬投与を臨床的改善が明白となるまで継続し,経口抗菌薬を高用量でさらに2~4週間,臨床反応に応じて投与すべきである。急速な臨床的改善がみられ,骨髄炎の所見を認めない小児には,10~14日間の短期間で治療してもよい。臨床反応が鈍い患者や,感染源のコントロールが不十分な患者,感染の徴候(例,C反応性タンパク[CRP]の上昇)が持続している患者では,21~28日間の治療が望ましい(1)。

レンサ球菌およびHaemophilus属細菌による感染症は通常,静注療法の後に2週間の経口抗菌薬投与で除菌される。

ブドウ球菌やその他の一般的な病原細菌による感染症は,少なくとも3週間,しばしば4週間以上にわたる抗菌薬投与で治療するが,罹患関節に関節炎の既往がある患者や,免疫抑制状態の患者,診断が遅れた患者では治療が長引くことが多い。

菌を含んだ関節液のドレナージ

非淋菌性の急性細菌性関節炎には,抗菌薬に加えて,太い針を用いた関節液の穿刺吸引(少なくとも1日1回),または還流灌注洗浄(tidal irrigation lavage),関節鏡視下洗浄,もしくは関節切開によるデブリドマンが必要となる。免疫抑制療法を受けている関節リウマチ患者や診断が遅れた患者には,一般に,積極的な外科的デブリドマンおよびドレナージを早期に行うべきである。関節鏡視下洗浄と直視下の関節切開は,同程度の効果がある外科的介入としてよく用いられている。全合併症発生率が低いことから,関節鏡視下の方が望ましいようである(4, 5)。

持続的な関節液貯留を伴う淋菌性関節炎に対しては,菌を含んだ関節液のドレナージを必要に応じて繰り返さなければならないことがある。

急性の細菌性関節炎では,最初の数日は痛みを軽減するために関節の副子固定が必要であり,その後耐えられるようになればすぐに筋力強化とともに他動的および自動的関節可動域訓練を行い拘縮を抑える。診断が確定すれば,非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が疼痛および炎症の軽減に役立つ可能性がある(5)。急性感染症の間はコルチコステロイドの関節内注入は避けるべきである。細菌学的検査は偽陰性となることがあるため,細菌の感染源の存在を明確に否定できるまでは,一般に強力な抗炎症療法は控えるべきである。オピオイドは疼痛コントロールに使用できる。

治療に関する参考文献

  1. 1.Woods CR, Bradley JS, Chatterjee A, et al. Clinical Practice Guideline by the Pediatric Infectious Diseases Society (PIDS) and the Infectious Diseases Society of America (IDSA): 2023 Guideline on Diagnosis and Management of Acute Bacterial Arthritis in Pediatrics [published correction appears in J Pediatric Infect Dis Soc. 2024 Aug 24;13(8):443. doi: 10.1093/jpids/piae065]. J Pediatric Infect Dis Soc.2024;13(1):1-59.doi:10.1093/jpids/piad089

  2. 2.Workowski KA, Bachmann LH, Chan PA, et al. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021. MMWR Recomm Rep. 2021;70(4):1-187.Published 2021 Jul 23.doi:10.15585/mmwr.rr7004a1

  3. 3.Ohl, CA.Infectious Arthritis of Native Joints.In: Bennett JE, Dolin R, Blaser, MJ.Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases. Elsevier; 2019:103.

  4. 4.McKenna DP, Miller P, McAleese T, Cleary M. Arthroscopy or arthrotomy for native knee septic arthritis: A systematic review. J Exp Orthop.2024;11(3):e12041.Published 2024 Jun 6.doi:10.1002/jeo2.12041

  5. 5.Donatto KC. Orthopedic management of septic arthritis. Rheum Dis Clin North Am.1998;24(2):275-286.doi:10.1016/s0889-857x(05)70009-0

急性の感染性関節炎の予後

非淋菌性の急性細菌性関節炎は関節軟骨を破壊することがあり,数時間または数日以内に関節に永続的な損傷を与えることがある(1)。

淋菌性関節炎は通常,関節に永続的な損傷を与えることはない。感染性関節炎の感受性を増大させる因子は,疾患の重症度をも増すことがある。

関節リウマチ患者では,機能予後が特に不良であり,死亡率が高い。

予後に関する参考文献

  1. 1.Gardner GC, Weisman MH. Pyarthrosis in patients with rheumatoid arthritis: a report of 13 cases and a review of the literature from the past 40 years. Am J Med.1990;88(5):503-511.doi:10.1016/0002-9343(90)90430-l

要点

  • 淋菌性関節炎は,非淋菌性の急性細菌性関節炎より軽度の急性炎症で発症し,後遺症として関節損傷を引き起こす可能性も低い。

  • 急性の単関節炎または少関節炎がみられる場合(特にリスクが高い患者)は,感染性関節炎を疑う。

  • 診断の確定または除外を目的として関節液の検査および培養を行う;X線検査やルーチンの臨床検査は通常,ほとんど役に立たない。

  • 感染性関節炎(特に非淋菌性の細菌性関節炎)は,可及的速やかに診断して治療すること。

  • 最初の抗菌薬療法は,臨床所見およびグラム染色の所見から疑われる病原体に向けて行う。

  • 罹患関節に対して,一連の穿刺吸引,関節鏡視下洗浄,またはデブリドマンのための関節切開によりドレナージを行うべきである。

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