びまん性肺胞出血は,気道由来の出血ではなく肺実質(すなわち,肺胞)に由来する持続性または再発性の肺出血である。数多くの原因があるが,自己免疫疾患が最も一般的である。患者の多くは呼吸困難,咳嗽,喀血,および胸部画像検査において新しい肺胞浸潤影を呈する。疑いのある原因に対して診断検査を行う。治療は,自己免疫性の原因をもつ患者に対しては免疫抑制薬によって行い,また必要があれば呼吸補助を行う。
びまん性肺胞出血は,ある特定の疾患ではないが,特異的な鑑別診断および特定の一連の検査を要する症候群である。びまん性肺胞出血を引き起こす疾患の中には,糸球体腎炎を伴うものがある;そのような疾患は肺腎症候群と定義される。
びまん性肺胞出血の病態生理
びまん性肺胞出血は,肺の小血管の広範な損傷に起因するものであり,その結果,肺胞内に血液が貯留する。多くの肺胞が傷害されれば,ガス交換が破綻する。具体的な病態生理および症候は原因によって異なる。例えば,孤立性のpauci-immune(血管壁に免疫複合体の沈着を認めない)型肺毛細血管炎は,肺に限局する小血管の血管炎である;唯一の症候は肺胞出血であり,一般的には18歳から35歳までの人に発症する。
びまん性肺胞出血の病因
多くの疾患が肺胞出血を引き起こしうる;以下のような例がある:
自己免疫疾患(例,全身性血管炎,グッドパスチャー症候群,抗リン脂質抗体症候群,全身性リウマチ性疾患)
心疾患(例,僧帽弁狭窄症)
疾患または抗凝固薬による凝固障害
造血幹細胞移植または臓器移植
孤立性pauci-immune(微量免疫)型肺毛細血管炎
肺感染症(例,ハンタウイルス感染症)
薬剤への反応(例,プロピルチオウラシル,アミオダロン,メトトレキサート,ニトロフラントイン,モンテルカスト,インフリキシマブ)
毒素への曝露(例,トリメリット酸無水物,イソシアネート,クラックコカイン,ある種の農薬,ベイピング)
びまん性肺胞出血の症状と徴候
びまん性肺胞出血の診断
胸部X線
気管支肺胞洗浄
原因診断のための血清学的検査およびその他の検査
診断は,呼吸困難,咳嗽,および喀血に,びまん性両側性肺胞浸潤影の胸部X線所見を伴うこと,ならびにびまん性肺胞出血の疑いにより示唆される。
診断確定のために気管支肺胞洗浄(BAL)を伴う気管支鏡検査が強く推奨され,特に症候が非典型的な場合または気道からの出血が除外されていない場合に推奨される。検体は多数の赤血球およびヘモジデリン貪食細胞を含む血液像を示す;洗浄液は典型的に,連続採取の後も血性を維持するか,または血性が増す。
原因の評価
原因探索のためさらなる検査を行うべきである。尿検査は糸球体腎炎および肺腎症候群を除外する目的で適応となる;血清BUN(血中尿素窒素)およびクレアチニンも測定すべきである。
ルーチンで行われるその他の検査には以下のものがある:
血算
凝固検査
血小板数
血清学的検査(抗核抗体,抗二本鎖DNA[抗dsDNA]抗体,抗糸球体基底膜[抗GBM]抗体,抗好中球細胞質抗体[ANCA],抗リン脂質抗体,補体値)
血清学的検査は,基礎疾患の検索を目的とする。孤立性pauci-immune(微量免疫)型肺毛細血管炎(isolated pauci-immune pulmonary capillaritis)の一部の症例では,perinuclear-ANCA(p-ANCA)の抗体価が上昇する。
By permission of the publisher.From Cohen A, Glassock R.In Atlas of Diseases of the Kidney: Glomerulonephritis and Vasculitis.Edited by R Schrier (series editor), RJ Glassock, and AH Cohen.Philadelphia, Current Medicine, 1999.
Image courtesy of Joyce Lee, MD.
その他の検査は臨床状況による。患者の容態が安定していれば,肺機能を記録するために肺機能検査を行うこともある。肺胞内のヘモグロビンによる一酸化炭素の取込みが増大するため,検査では肺拡散能(DLCO)の上昇を認める場合があるが,この所見は出血と一致するものの,特異的な診断を確定する参考にはならない。
心エコー検査は僧帽弁狭窄症を除外するために適応となる場合がある。
原因が不明な場合または疾患の進行があまりに急速で血清学的検査の結果を待てない場合に,肺生検,または尿検査の結果が異常であれば腎生検が必要となることがある。
びまん性肺胞出血の治療
コルチコステロイド
ときにシクロホスファミド,リツキシマブ,または血漿交換
支持療法
治療としては原因を是正する。治療の推奨は疾患の種類と重症度に基づく(1)。
コルチコステロイドおよびときにシクロホスファミドは,血管炎,全身性リウマチ性疾患,グッドパスチャー症候群の治療に用いられる。リツキシマブは主にANCA関連血管炎において研究されており,導入治療ではシクロホスファミドに劣らず(2),寛解治療ではアザチオプリンより優れている(3)ことが示されている。リツキシマブは,全身性エリテマトーデス,グッドパスチャー症候群,および抗リン脂質抗体症候群に関連する肺胞出血の治療にも使用されている。
血漿交換がグッドパスチャー症候群の治療に用いられることがある。
治療に反応しない重症の肺胞出血の治療において,遺伝子組換え活性型ヒト第VII因子製剤の使用が奏効したと報告する研究が数例あるが,血栓性合併症が起こりうるため,この治療法については議論がある。
そのほかに可能性のある管理方法には,酸素投与,気管支拡張薬,あらゆる凝固障害の改善,挿管と急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などに対する保護措置および機械的人工換気などがある。
治療に関する参考文献
1.Chung SA, Langford CA, Maz M, et al: 2021 American College of Rheumatology/Vasculitis Foundation Guideline for the Management of Antineutrophil Cytoplasmic Antibody-Associated Vasculitis. Arthritis Rheumatol 73(8):1366–1383, 2021.doi:10.1002/art.41773
2.Specks U, Merkel PA, Seo P, et al: Efficacy of remission-induction regimens for ANCA-associated vasculitis.N Engl J Med 369:417–427, 2013. doi: 10.1056/NEJMoa1213277
3.Guillevin L, Pagnoux C, Karras A, et al: Rituximab versus azathioprine for maintenance in ANCA-associated vasculitis.New Engl J Med 371:1771–1780.2014.doi: 10.1056/NEJMoa1404231
びまん性肺胞出血の予後
要点
びまん性肺胞出血には多くの原因(例,感染症,毒素,薬剤,血液疾患または心疾患)がありうるが,自己免疫疾患が最も一般的な原因である。
症状,徴候,および胸部X線所見は非特異的である。
気管支肺胞洗浄により連続採取した洗浄液検体で出血の持続を証明し,びまん性肺胞出血の診断を確定する。
ルーチンの臨床検査,自己抗体検査,およびときにその他の検査を行い,原因を調べる。
原因を治療する(例,自己免疫性の原因に対し,コルチコステロイド,シクロホスファミド,リツキシマブ,血漿交換)。



