全身性強皮症

(強皮症)

執筆者:Kinanah Yaseen, MD, Cleveland Clinic
Reviewed ByBrian F. Mandell, MD, PhD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University
レビュー/改訂 修正済み 2024年 11月
v730509_ja
プロフェッショナル版を見る
やさしくわかる病気事典

全身性強皮症は、皮膚、関節、内臓の変性変化や瘢痕化と血管の異常を特徴とする、まれな慢性の全身性リウマチ性疾患です。

  • 全身性強皮症の原因は不明です。

  • 指が腫れる、間欠的に指が冷たくなり青く変色する、関節が永続的に(通常は曲がった状態で)固まる(拘縮)などの症状のほか、消化器系、肺、心臓、腎臓の損傷が発生することがあります。

  • 多くの場合、患者の血液中には自己免疫疾患に特徴的な抗体が認められます。

  • 全身性強皮症には根治的な治療法がありませんが、症状と臓器機能障害に対する治療は可能です。

全身性強皮症は、様々な組織でコラーゲンと他のタンパク質の過剰な生産を引き起こします。

全身性強皮症の原因は不明ですが、自己免疫疾患と考えられています。自己免疫疾患とは、体内で作られた抗体や細胞によって自身の組織が攻撃される病気です。

この病気は女性でより多くみられ、20~50歳に最も多くみられます。小児では、めったに起こりません。

全身性強皮症の症状は混合性結合組織病の一部として発現する場合もあり、混合性結合組織病の患者の一部は、最終的に重度の全身性強皮症を発病します。

全身性強皮症は以下のように分類することができます。

  • 限局皮膚硬化型全身性強皮症(クレスト(CREST)症候群)

  • びまん皮膚硬化型全身性強皮症

  • 皮膚硬化を伴わない全身性強皮症

限局皮膚硬化型全身性強皮症は、皮膚のみ、または主に皮膚の特定の部分だけが侵され、クレスト(CREST)症候群とも呼ばれます。この病型の患者では顔面、手、前腕、下腿、足に皮膚の硬化がみられます。胃食道逆流症もみられることもあります。この型は、ゆっくりと進行し、肺高血圧症(心臓から肺につながる動脈[肺動脈]の血圧が異常に高くなる病気)を合併することがしばしばあります。

びまん皮膚硬化型全身性強皮症では、全身の広範囲にわたって皮膚の損傷を引き起こすことがしばしばあります。この型の患者では、レイノー症候群と消化管の問題がみられます。この型は急速に進行することがあります。主な合併症としては、肺にある空気の袋(肺胞)の周囲にある組織や空間を侵す間質性肺疾患と、強皮症腎クリーゼと呼ばれる重度の腎障害があります。

全身性強皮症を伴わない全身性強皮症では、皮膚硬化はみられません。しかし、血液中に全身性強皮症に特徴的な抗体がみられ、同じ体内の問題が起こります。

全身性強皮症の症状

全身性強皮症の初期の症状は、通常は指の先端部の腫れ(指の腫れ)で、続いて同じ部分の皮膚が肥厚して硬くなります。レイノー症候群と呼ばれる、手の指が一時的に突然青白くなってチクチクしたり、寒冷や感情的な動揺に対する反応として、しびれや痛みが起きたりする現象もよくみられます。手の指が青味がかったりすることや、白く変色することもあります。

ときに胸やけ、嚥下困難、息切れが全身性強皮症の最初の症状になる場合もあります。しばしば初期症状に、複数の関節のうずきや痛みが伴います。筋肉痛や筋力低下を伴う筋肉の炎症(筋炎)が起きることもあります。

皮膚の変化

全身性強皮症は、皮膚の広範囲に異常が起きる場合と、手の指だけ(強指症)に異常が起きる場合があります。ときに全身性強皮症は手の皮膚までにとどまる傾向を示す場合もあります。それ以外の場合には、病状は進行していきます。より広範囲の皮膚が緊張して張りつめ、光沢を帯び、通常時と比べて白くなったり黒ずんだりします。顔面の皮膚も張りつめ、鼻先がつままれたように鼻が小さくみえたり、口が魚の口のようにみえたりします。ときには顔の表情を変えられなくなることがあります。ただし、一部の患者では数年後に皮膚が柔らかくなることもあります。

ときには指、胸部、顔面、唇、舌などに血管の拡張(しばしば、くも状血管腫とも呼ばれる毛細血管拡張症)がみられることがあり、指、指以外の骨のある部分、関節にカルシウムを構成成分とするこぶができることがあります。

指先や指の関節にびらんができることもあります。

歯周病や脱毛(脱毛症)もよくみられます。

全身性強皮症における皮膚の変化の例
胸と肩を侵すびまん皮膚硬化型全身性強皮症

ぴんと張って光沢のある皮膚が胸部全体に広がり、それが肩にも広がって、肩の可動域が減少しています。

ぴんと張って光沢のある皮膚が胸部全体に広がり、それが肩にも広がって、肩の可動域が減少しています。

By permission of the publisher.From Marder W, Lath V, Crofford L, Lowe L, McCune WJ: Atlas of Rheumatology.Edited by G Hunder.Philadelphia, Current Medicine, 2005.

手の全身性強皮症

この画像には、指の皮膚がぴんと張って光沢が生じ肥厚している様子が写っています。これは強指症と呼ばれます。

この画像には、指の皮膚がぴんと張って光沢が生じ肥厚している様子が写っています。これは強指症と呼ばれます。

By permission of the publisher.From Pandya A: Gastroenterology and Hepatology: Stomach and Duodenum.Edited by M Feldman.Philadelphia, Current Medicine, 1996.

皮膚硬化ひふこうかあし

この写真しゃしんには、あしゆび皮膚ひふかたくなってぎゅっとまり、内側うちがわがっている様子ようすうつっています。

この写真しゃしんには、あしゆび皮膚ひふかたくなってぎゅっとまり、内側うちがわがっている様子ようすうつっています。

DR P.MARAZZI/SCIENCE PHOTO LIBRARY

関節の変化

ときに、炎症を起こしている組織で互いにこすれ合う感触や音が感じられ、特に膝とそれより下、肘、手首で感じられます。

皮膚の瘢痕化によって指、手首、肘の関節が曲がった位置で固まっていき(拘縮)、動かなくなることもあります。

消化器系の変化

神経の損傷とその後に瘢痕化によって、食道(口と胃をつないでいる管状の臓器)の下端部に損傷が起きることがよくあります。損傷した食道は、食べたものを胃まで効率的に送ることができなくなります。全身性強皮症の患者の多くは、最終的に嚥下困難と胸やけを起こします。約3分の1の患者では、慢性の胃酸逆流の結果として食道の細胞が異常な増殖を起こし(バレット食道)、それにより線維性の帯による食道閉塞(狭窄)のリスクや食道がんのリスクが高くなります。

腸に損傷が起きると、細菌の異常増殖につながる可能性があり、それにより食べたものの吸収が妨げられたり(吸収不良)、体重の減少につながったりします。腸の閉塞がない場合でも、腹痛や腹部膨満などの腸の閉塞の症状を感じる人もいます。

肺と心臓の変化

全身性強皮症によって、肺に瘢痕組織が蓄積し間質性肺疾患を起こすことがあり、そうなると、運動中に異常な息切れが起こります。肺に血液を供給する血管が侵される(血管壁の壁が厚くなる)ことがあり、その場合、送り込める血液が少なくなります。そのため、肺に血液を送り込む動脈内での血圧が上昇することがあります(肺高血圧症と呼ばれる病気)。

全身性強皮症によって、心不全不整脈を含む、生命を脅かすいくつかの心臓の異常が発生することもあります。

腎臓の変化

全身性強皮症によって、重度の腎臓病が起こることもあります。腎障害の最初の症状として、進行性の血圧上昇が突然起こることがあります(強皮症腎クリーゼ)。高血圧は不吉な徴候ですが、通常は早期の治療によってコントロールでき、腎障害が予防されたり回復したりすることがあります。

クレスト(CREST)症候群

クレスト(CREST)症候群は、限局皮膚硬化型全身性強皮症とも呼ばれ、体幹ではなく、末端側の皮膚が侵されます。一般的には、腎臓と肺に直接影響を与えることはありませんが、最終的に、肺に血液を送り込む動脈の血圧を上昇させることがあります(肺高血圧症と呼ばれます)。肺高血圧症は、心不全および呼吸不全の原因となることがあります。

クレスト(CREST)症候群という名前は、皮膚や全身のカルシウム沈着(Calcium deposits)、レイノー症候群(Raynaud syndrome)、食道の機能障害(Esophageal dysfunction)、指の皮膚の硬化を意味する強指症(Sclerodactyly)、毛細血管の拡張を意味する毛細血管拡張症(Telangiectasia)という症状に由来しています。クレスト症候群では、皮膚のびらん(潰瘍)や手足の指に永続的な損傷が生じるほどレイノー症候群が重い場合があります。

肝臓内の胆管が炎症を起こし、進行性の瘢痕化が起きる原発性胆汁性胆管炎がクレスト症候群の患者に起こり、肝障害や黄疸が発生することがあります。

全身性強皮症の診断

  • 症状と医師による評価

  • 抗体の検査

  • 確立された基準

レイノー症候群、典型的な関節と皮膚の変化、または他に説明のつかない消化管、肺、心臓の異常がみられる患者では、全身性強皮症が疑われます。全身性強皮症は、皮膚の特徴的な変化、血液検査の結果や、内臓損傷の変化の有無により診断されます。症状は他のいくつかの病気と重複することがありますが、全体的なパターンは区別がつくのが通常です。そのため、全身性強皮症の診断は、症状、身体診察の結果、すべての検査結果など、医師が集めたすべての情報に基づいて下されます。

症状と同様に臨床検査の結果も非常に多様であるため、臨床検査だけで全身性強皮症を特定することはできません。しかしながら、全身性強皮症患者の90%以上では、血液中に抗核抗体(ANA)が認められます。限局皮膚硬化型全身性強皮症の患者では、動原体(染色体の一部分)に対する抗体がしばしば認められます。びまん皮膚硬化型全身性強皮症の患者では、抗トポイソメラーゼ抗体および抗RNAポリメラーゼIII抗体と呼ばれる別の抗体がしばしば認められます。症状によっては、他の抗体の検査も行われます。

診断を助けるために、医師は次の確立された基準も参考にすることがあります。

  • 両手の指の皮膚の肥厚

  • 指先のびらんや瘢痕

  • 血管の拡張(毛細血管拡張症)

  • 爪郭毛細血管異常

  • 肺高血圧症、間質性肺疾患、またはその両方

  • レイノー症候群

  • 動原体、抗トポイソメラーゼ、またはRNAポリメラーゼIIIに対する抗体

心臓と肺の問題を検出するために、肺機能検査胸部CT検査、心エコー検査を行うことがあり、これらは定期的に行うこともあります。

全身性強皮症の治療

  • 症状を緩和し臓器の損傷を軽減するための対策

全身性強皮症には根治的な治療法がありません。

全身性強皮症の進行を止められる薬はありません。しかし、薬によって一部の症状を軽減し、臓器の損傷を軽減することができます。

コルチコステロイドは、強皮症腎クリーゼを起こす可能性があるため、避けるべきです。

皮膚や関節の問題

患部の皮膚に対する根治的な治療はありません。しかし、一部の免疫抑制薬(ミコフェノール酸モフェチルやリツキシマブなど)には軽度の効果があり、他の薬や治療法も研究されています。

医師は、チオ硫酸ナトリウムという化学物質を、皮膚内のカルシウム沈着物に注入することがあります。沈着物が非常に大きい場合は、手術で取り除くことができます。しかし、注射や手術が常に役に立つわけではありません。

レーザー治療では、外見上好ましくない拡張した血管(毛細血管拡張症)を切除できますが、しばしば再発します。

早期段階のびまん皮膚硬化型全身性強皮症患者に対して自家造血幹細胞移植が治療の選択肢になる可能性があります。

理学療法や運動は、筋力を維持するには役立ちますが、関節が拘縮で固まって動かなくなるのを完全に防ぐことはできません。

消化管の問題

胸やけは、少しずつ食事を取ったり、制酸剤を服用したり、胃酸の分泌をブロックするプロトンポンプ阻害薬を使用したりすることで軽減できます。寝るときに頭の位置を高くし、最後の食事から3時間以内に横にならないことが、しばしば役立ちます。

瘢痕組織のために狭くなった食道の領域は、手術で拡張できます。慢性的な胃酸逆流による合併症がある場合は、手術も選択肢の1つとなります。

シプロフロキサシンやメトロニダゾールなどの抗菌薬は、損傷した腸管内の細菌の異常増殖を予防するのに役立ち、腹部膨満、ガス、下痢といった小腸内での細菌の異常増殖の症状を軽減することがあります。

肺や心臓の障害

ミコフェノール酸モフェチルやシクロホスファミドなどの免疫系を抑制する薬(免疫抑制薬)も、間質性肺疾患の治療に使用されます。あるいは、間質性肺疾患の患者に役立つことのある他の免疫抑制薬としてはトシリズマブやニンテダニブがあります。一部の患者では、肺移植が必要になる可能性があります。

肺高血圧症は、ボセンタンやエポプロステノールなどの薬で治療します。

カルシウム拮抗薬(ニフェジピンなど)はレイノー症候群の症状の軽減に役立ちますが、その一方で胃酸の逆流を増加させることがあります。ボセンタン、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィルは、重度のレイノー症候群に対する他の代用薬です。患者は、服を着込んで暖かくし、手袋を着用し、頭部を暖かい状態に保つべきです。指のびらんは、注射で投与する薬によって、また感染した場合は抗菌薬で治療します。

腎臓の問題

高血圧症の治療薬、特にアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は、急性腎障害と強皮症腎クリーゼの治療に有用です。

慢性腎臓病が発生し、長期的な血液透析が必要なほど重度の場合は、腎移植が必要になることがあります。

全身性強皮症の予後(経過の見通し)

全身性強皮症は、ときに急速に悪化して、死に至る場合もあります(主にびまん皮膚硬化型全身性強皮症)。内臓に障害が及ぶ前に、何十年も皮膚病変がみられるだけの場合もありますが、内臓(食道など)へのある程度の障害はほぼ避けられません。経過の予測は不可能です。

全体として、限局皮膚硬化型全身性強皮症の患者では92%、びまん皮膚硬化型全身性強皮症の患者では65%が、診断後10年以上生存します。予後は、男性患者の場合、人生の後半に発症した場合、びまん皮膚硬化型全身性強皮症の場合、または心臓、肺、もしくは腎臓に損傷がある場合に最も悪く、腎障害がある場合は特に悪くなります。限局皮膚硬化型全身性強皮症(クレスト症候群)の患者の予後は、より良好な傾向があります。

さらなる情報

以下の英語の資料が役立つかもしれません。この情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いかねることをご了承ください。

  1. 強皮症財団(National Scleroderma Foundation):全身性強皮症(強皮症)とともに生きることに関する情報と現在進められている全身性強皮症の研究に関する情報を提供しています。

quizzes_lightbulb_red
医学知識をチェックTake a Quiz!
ANDROID iOS
ANDROID iOS
ANDROID iOS