マルファン症候群

マルファン症候群

完全なレビュー: 2025年 10月 執筆者:Esra Meidan, MD, Boston Children's Hospital | 査読者Michael SD Agus, MD, Harvard Medical School
最終更新日: 2025年 10月
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やさしくわかる病気事典

マルファン症候群は、眼、骨、心臓、血管、肺、中枢神経系などに異常が生じるまれな遺伝性結合組織疾患です。

  • この症候群は、フィブリリンというタンパク質をコードしている遺伝子の変異によって発生します。

  • 典型的な症状は、軽い場合から重い場合までありますが、腕や指が長いこと、関節が柔軟であること、心臓や肺の障害などがあります。

  • 診断は、症状と遺伝子検査に基づいて下されます。

  • マルファン症候群には根治的な治療法がなく、異常な結合組織を正常に戻す方法もありませんが、合併症は薬剤や手術で治療できます。

マルファン症候群は、FBN1遺伝子の変異によって起こります。この遺伝子はフィブリリンと呼ばれるタンパク質をコードします。フィブリリンは結合組織がその強度を維持するのを助けています。結合組織は頑丈で、その多くは線維になっていて、互いに結合して体の構造を支えるとともに、弾力性をもたらしています。

FBN1の遺伝子に変異があると、線維組織やその他の結合組織の一部が変化し、最終的に組織が弱くなります。このように組織が弱くなる現象は、骨や関節のほか、心臓、血管、眼、ときに肺、脳、脊髄といった体内の構造にも生じます。弱くなった組織は、伸びたり変形したりし、裂けることさえあります。例えば、大動脈(体の主要な動脈)が弱くなって、膨らんだり、裂けたりすることがあります。心臓の弁組織が弱いため、弁に漏れが生じることがあります。組織をつなぐ結合組織が弱くなったり、破れたりして、つながっていた組織が分離してしまうこともあります。例えば、眼の水晶体と網膜が正常な結合状態から分離することがあります。

マルファン症候群の症状

マルファン症候群には多くの症状がありますが、通常は、四肢が長く、大動脈に問題があり、眼の水晶体が異常な場所にある人で疑われます。

マルファン症候群の症状は、軽い場合から重い場合まであります。マルファン症候群の患者のほとんどが、症状にまったく気づきません。成人期まで症状が現れない患者もいます。新生児マルファン症候群と呼ばれる非常に重い型のマルファン症候群の人の中には、幼い乳児であるとき(または出生前でも、超音波検査で症状が見られた場合)に症状が現れ始める人もいます。

心臓の異常

最も危険な合併症は、心臓から体に血液を運ぶ大血管である大動脈に発生します。大動脈の壁の結合組織が弱くなることがあります。大動脈壁が弱くなると、血管の壁の内層の間に血液が漏れ出して裂けたり(大動脈解離)、破裂の危険がある膨らみ(動脈瘤)ができたりします。このような異常が10歳未満の小児に起こることがあります。

妊娠すると、大動脈が肥大した人では大動脈解離のリスクが高くなります。拡大の程度に応じて、リスクを最小限に抑えるために帝王切開が推奨されます。

大動脈が次第に広がって(拡張して)いくと、心臓と大動脈の間の大動脈弁が漏れるようになることがあります(大動脈弁逆流症)。左心房と左心室の間にある僧帽弁が漏れる(僧帽弁逆流)場合や、左心房側に僧帽弁が突出する(僧帽弁逸脱)場合もあります。

これらの心臓弁の異常により、心臓が血液を押し出す力が弱まる可能性があります。

心臓弁に異常があると、重篤な感染症(感染性心内膜炎)が起こるおそれがあります。

筋肉や骨格の問題

マルファン症候群の患者は、年齢や家族との比較から想定されるよりも身長が高くなります。腕を左右に伸ばしたときの指先から指先までの長さが身長より長くなります。指は細長くなります。多くの場合、胸骨が変形し、外向き(鳩胸)または内向きに押し出されます(漏斗胸と呼ばれます)。関節が過度に柔軟になることもあります。扁平足、膝が後ろ向きに曲がる膝関節の変形、脊椎の異常な弯曲を伴う脊椎後側弯症がよくみられ、ヘルニアも多くみられます。通常、患者には皮下脂肪がほとんどありません。

また、頭蓋骨が長く狭い場合や、眼が沈んで外側の隅に陥凹して下方に傾いている場合や、下顎が後ろ側にくっつき、咬合過多の原因になったり、ほほの骨発育が不十分であったりする場合もあります。口腔の天井にあたる口蓋が高いことがよくあります。

眼の障害

片目または両目の水晶体が正しい位置にない(脱臼)場合があります。患者は強い近視(遠くの物がはっきり見えない)です。眼の奥の部分にある光を感じる領域(網膜)が、眼の他の部分から突然分離することもあります(網膜剥離を参照)。

水晶体偏位や網膜剥離により、恒久的な視力障害が起こることもあります。

肺に起こる問題

肺に空気で満たされた袋(嚢胞)ができることがあります。この嚢胞が破裂して、肺の周囲の空間に空気が入る場合があります(気胸)。このような異常は、胸痛や息切れを引き起こします。

脳と脊髄の問題

脊髄を包む袋状の膜が広がることがあります(硬膜拡張といいます)。硬膜拡張はマルファン症候群でよくみられ、脊椎下部で最も頻繁に起こります。硬膜拡張によって、頭痛、腰痛、便失禁や尿失禁などの他の神経学的異常が起こることがあります。

マルファン症候群の診断

  • 医師による評価

  • 遺伝子検査

  • 心臓の心エコー検査

  • 心臓のMRI検査

  • 脊椎と骨盤のX線検査

  • 眼の検査

医師がマルファン症候群ではないかと疑うのは、異常に背が高くて細い人にこの症候群に特徴的な症状が1つでもみられた場合や、この症候群が家族の中(父親、母親や兄弟姉妹などの第1度近親者)に認められた場合です。さらに、心臓、眼、骨など特定の器官系にどの程度異常がみられるかについて定められている、具体的な基準に基づいて診断を下します。

遺伝子検査を行い、マルファン症候群の診断に役立てます。

検査の一環として、心臓と大動脈の心エコー検査、心臓と脳のMRI検査、脊椎と骨盤のX線検査など複数の画像検査を行います。また、眼の検査も行います。

マルファン症候群の治療

  • ベータ遮断薬、アンジオテンシンII受容体遮断薬、またはその両方

  • ときに手術による大動脈や弁、水晶体または網膜の修復

  • ときに、脊椎の異常な弯曲に対する装具、手術による修復

  • スポーツと運動のガイドライン

マルファン症候群や結合組織の異常を治す治療法はありませんが、マルファン症候群の治療は危険な合併症の予防と治療を目的としています。

毎年、心臓、骨、眼の検査を受け、悪化しているかどうかを確認する必要があります。

患者は遺伝カウンセリングを受けるべきです。患者と家族はマルファン財団(The Marfan Foundation)からさらに情報を得ることができます。

薬物治療

マルファン症候群の成人には、ベータ遮断薬(アテノロールやプロプラノロールなど)、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ロサルタンやイルベサルタンなど)、これらの2種類を併用します。薬剤は年齢と大動脈の大きさに応じて小児に投与します。ベータ遮断薬は、心拍を遅くし、心臓の収縮力を低下させます。アンジオテンシンII受容体拮抗薬は血圧を低下させます。この薬剤を投与して、血液が大動脈を緩やかに流れるようにします。

手術

しかし、大動脈が広がっている場合は、問題が始まる前に、手術で修復するか、患部を置換するかを選択できます。重度の弁逆流も手術で修復します。マルファン症候群の妊婦は、大動脈の合併症のリスクが特に高いため、医師は妊娠する前に大動脈の修復について相談することがあります。

脱臼した水晶体を切除し、ときには網膜剥離を修復し、視力を矯正します。

脊椎の異常な弯曲(脊柱側弯症)の治療には装具をできるだけ長く使用します。しかし、弯曲が重度の場合それを治すのに手術が必要な小児もいます。

身体活動

マルファン症候群患者の身体活動に関する一般的なガイドラインには、大動脈にさらなるストレスを与え、眼損傷を引き起こし、ゆるい靭帯や関節を損傷し、衝突や身体接触のリスクを高める可能性のある、競技スポーツや人とぶつかるスポーツを避けることが挙げられます。しかし、マルファン症候群の人を含め、だれにも身体活動は有益です。医療従事者は、リスクを特定し、身体活動に関する判断を下す手助けをすることができます。

マルファン症候群の予後(経過の見通し)

マルファン症候群の人では、この病気にかかっていない人の場合とほぼ同じ寿命が期待されます。しかし、マルファン症候群の患者は慢性的な痛みや身体的制限があり、精神的な影響を受けることが多いため、生活の質は低下します。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こうした情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いかねることをご了承ください。

  1. マルファン財団(The Marfan Foundation)

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