サルモネラ(Salmonella)感染症

執筆者:Larry M. Bush, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University;
Maria T. Vazquez-Pertejo, MD, FACP, Wellington Regional Medical Center
Reviewed ByBrenda L. Tesini, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry
レビュー/改訂 2024年 6月 | 修正済み 2025年 7月
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グラム陰性菌であるサルモネラ属(Salmonella)の細菌は、典型的には下痢を引き起こしますが、腸チフスと呼ばれるより重篤な感染症を引き起こすこともあります。

  • たいていは、調理が不十分な鶏肉や卵などの汚染された食品を食べることによって感染します。

  • この細菌は通常、消化管に感染しますが、血流を介して他の部分へも感染します。

  • 吐き気、けいれん性の腹痛、それに引き続き水様性下痢、発熱、嘔吐を起こします。

  • サンプル中(通常は便)からこの細菌が特定されれば、診断が確定します。

  • 失われた体液を補充します。

  • 通常、下痢を引き起こす胃や腸の炎症(胃腸炎)がある人には抗菌薬は役立ちませんが、菌血症、他の特定の感染症、または膿瘍がみられる人やそれらのリスクがある人には抗菌薬が助けになります。

細菌の概要も参照のこと。)

サルモネラ属(Salmonella)の細菌には、2500以上もの種類が存在します。

サルモネラ属(Salmonella)の細菌は数種類の感染症を引き起こします。ほとんどの場合、これらの細菌は胃腸炎を引き起こしますが、腸チフスというより重篤な感染症を引き起こすこともあります。

サルモネラ属(Salmonella)の細菌の一部は人にしか寄生していません。他のサルモネラ属(Salmonella)の菌種は、牛、羊、豚、鶏、爬虫類(ヘビやトカゲなど)などの野生動物や家畜の消化管に生息しています。これらの多くは人間に感染します。

サルモネラ属(Salmonella)の細菌は動物や人の糞便中に排出され、これによって汚染が引き起こされます。米国では1970年代にペットのカメによって多くの感染症が広がったため、長さが10.5センチメートル未満の殻を持つカメの販売を禁止する法律が制定されました。この法律により感染症は減少しました。しかし、カメは現在も違法に販売されており、人間に感染症を引き起こしています。ヘビやトカゲなどの爬虫類とおそらくは水生カエルなどの両生類(種によって異なります)のペットは、その最大90%がサルモネラ属(Salmonella)の細菌に感染しています。

調理が不十分な鶏肉や卵を食べることによって感染しますが、調理が不十分な牛肉や豚肉、殺菌されていない乳製品(生乳など)、もしくは汚染された海産物や生鮮食品によっても感染が起こります。サルモネラ属(Salmonella)の細菌は雌鶏の卵巣に感染できるため、産まれる前にすでに卵が感染しています。動物の糞便(殺処分場など)やトイレの後にきちんと手を洗わない感染した食品取扱業者などによって、他の食品が汚染されたりもします。汚染された水を飲むことでも感染します。

この他に報告されている感染源として、カルミンレッド色素と汚染されたマリファナがあります。

胃酸が十分に分泌されていない場合を除いて、通常サルモネラ菌(Salmonella)は胃酸により死滅するため、感染症を起こすには非常に多くの細菌が取り込まれる必要があります。このような胃酸の不足は以下の人に起こることがあります。

  • 1歳未満の小児

  • 高齢者

  • ヒスタミン2(H2)受容体拮抗薬(ファモチジンなど)やプロトンポンプ阻害薬(オメプラゾールなど)といった胃酸の分泌を抑える薬剤や制酸薬を使用している人

  • 胃の一部を切除する手術を受けた人

サルモネラ属(Salmonella)の細菌は、腸の炎症(胃腸炎)を引き起こすため、下痢の一般的な原因の1つになっています。

知っていますか?

  • 米国においては、爬虫類とおそらくは両生類のペットは、その最大90%がサルモネラ属(Salmonella)の細菌に感染しています。

血流を介した感染拡大

時として、細菌が血流に入ることで(菌血症を引き起こします)拡散し、骨、関節、尿路や肺などの別の部位に感染したり膿を貯留(膿瘍)させたりします。また、人工関節や人工心臓弁、血管グラフトの表面、もしくはがんの表面に細菌が蓄積し、感染が生じる場合があります。動脈、通常は大動脈(体の中で最大の動脈)の内膜が感染することもあります。膿瘍と動脈の感染症によって、慢性の菌血症が引き起こされます。

以下の人では、血流を介して感染が拡大する可能性が高まります。

  • 乳児

  • 高齢者、特に介護施設の入居者

  • 鎌状赤血球貧血マラリアなど赤血球に関連する病気がある人

  • ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症やがんなど免疫機能を低下させる病気がある人

  • がんを治療したり、臓器移植による拒絶反応を予防したりするために使用される、免疫機能を抑える薬剤を使用している人

サルモネラ感染症の症状

腸に感染が起こると、細菌が取り込まれてから12~48時間後に胃腸炎の症状が始まります。この症状には、吐き気とけいれん性の腹痛、それに続く水様性下痢、発熱、嘔吐などがあります。症状はたいてい1~4日で治まります。ときに、症状はより深刻で長く続くこともあります。

症状が消えてから時間が経過しても、少数ですが、便から菌が出続ける人がいます。このような状態の人はキャリア(保菌者)と呼ばれます。

成人の10~30%に、下痢が止まってから数週間から数カ月後に反応性関節炎が発生します。反応性関節炎は痛みと腫れを伴い、通常は股関節、膝、アキレス腱(踵の骨とふくらはぎの筋肉に繋がっている組織)に起こります。

菌血症が発生して感染部位が拡大すれば、別の症状も発生します。例えば、骨に感染が起これば、その周辺ではたいてい圧痛や痛みが起こります。心臓弁に感染が起これば、息切れが起こります。大動脈に感染が起これば、背部と腹部に痛みが発生します。

通常は良好な回復がみられますが、例外は、サルモネラ(Salmonella)感染症にかかる前から病気(特に免疫機能を低下させる病気)がある人と、この感染症によって合併症が生じている人は例外です。

サルモネラ感染症の診断

  • 便、膿、血液のサンプル、または直腸から採取したサンプルの培養検査

サルモネラ(Salmonella)感染症を診断するには、便、膿、血液のサンプルや綿棒を使った直腸のサンプルを採取します。サンプルは検査に送られ、サンプル中の細菌を増殖させる検査(培養検査)が行われます。サンプル中でこの細菌が特定されれば、診断が確定されます。

また、どの抗菌薬が効果的かを確認する検査(感受性試験)も行われます。

ときには(例えば胃腸炎の患者で)細菌の遺伝物質を特定する検査も行われます。

菌血症の危険因子がある場合は、感染症の合併症を特定するために追加の検査を行うことがあります。

サルモネラ感染症の治療

  • 胃腸炎には、輸液

  • 重篤な感染症のリスクがある人や菌血症または別の感染症がある人には、抗菌薬

  • 膿瘍には、外科的ドレナージと抗菌薬

胃腸炎の場合は経口(重度の症状の場合は経静脈[静脈内])で水分を補給して治療します。抗菌薬を使用しても、胃腸炎患者の回復期間は短縮せず、細菌が便に排出される時間が長くなることがあるため、通常は抗菌薬を使用しません。しかし、菌血症のリスクがある人(介護施設に入居している高齢者、乳児、HIV感染者など)や、器具や移植物(人工関節、心臓弁、血管移植など)が埋め込まれている人には、抗菌薬を投与します。シプロフロキサシン、アジスロマイシン、またはセフトリアキソンを数日間投与することがあります。小児には、トリメトプリム/スルファメトキサゾールを投与します。

菌血症の場合には、アジスロマイシン、シプロフロキサシン、セフトリアキソンなどの抗菌薬を、ときに数週間にわたり投与します。

膿瘍は手術で膿を排出し、抗菌薬を数週間投与します。

大動脈、心臓弁、もしくはそれ以外(関節など)が感染した場合、たいていは手術が必要となり、抗菌薬を数週間から数カ月間投与します。

サルモネラ感染症の予防

サルモネラ(Salmonella)感染症の予防法には以下のものがあります。

  • 鶏肉や卵、牛ひき肉にしっかり火を通す

  • クッキー生地やオランデーズソース、自家製のサラダドレッシングなど、生卵や生乳(加熱殺菌されていない牛乳)を含む食べものを摂取しない

  • 農作物を徹底的に洗う

  • トイレの後やおむつを替えた後に手を洗う

  • 生肉に触れた後にはすぐに、石けんと水で手や調理台の表面、調理器具を洗う

  • 両生類、爬虫類、鳥類、またはヒヨコを触ったりペットの糞に触れたりした後は、石けんで手を洗う

幼児など、高リスクの人には特別な注意が必要です。例えば、爬虫類、両生類(カメなど)やヒヨコなどのひな鳥はサルモネラ属(Salmonella)の細菌に感染している可能性が特に高いため、幼児にはこれらの動物に触らせないようにし、乳児のいる家に爬虫類や両生類を入れないようにするべきです。

感染者は他の人の食事を用意しない

旅行者は、下痢の発生リスクを減らすのに役立つ対策を講じることができます。

サルモネラ症を予防するワクチンはありませんが、腸チフスに対するワクチンは存在します。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いかねることをご了承ください。

Centers for Disease Control and Prevention (CDC): サルモネラ(Salmonella):集団発生や予防を含めたサルモネラ(Salmonella)に関する情報を提供している

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