腸チフス

(チフス熱)

執筆者:Larry M. Bush, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University;
Maria T. Vazquez-Pertejo, MD, FACP, Wellington Regional Medical Center
Reviewed ByBrenda L. Tesini, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry
レビュー/改訂 2024年 6月 | 修正済み 2025年 7月
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腸チフスは、グラム陰性菌の特定のサルモネラ属の細菌によって引き起こされます。典型的には、高熱と腹痛が現れます。

  • 腸チフスは感染者の便や尿で汚染された食品や水を摂取することで広がります。

  • インフルエンザ様の症状が起こり、その後にせん妄、せき、極度の疲労、ときに発疹、下痢が起こることがあります。

  • 血液、便、他の体液、もしくは組織のサンプルが検査室に送られ、細菌を増殖させます(培養)。

  • 症状があってもなくても、感染した人には抗菌薬が使用されます。

  • 感染を予防するために、腸チフスが存在する地域へ旅行する場合はワクチン接種を行い、現地では特定の食べものを避けて、ボトル入り以外の水を飲まないようにしてください。

細菌の概要サルモネラ感染症も参照のこと。)

腸チフスはサルモネラ属(Salmonella)の細菌によって引き起こされる感染症の一種です。サルモネラ属(Salmonella)には多くの種類がありますが、ほとんどの腸チフスはチフス菌(Salmonella Typhi)が原因です。

腸チフスは衛生状況の悪い地域で頻発します。米国で発生する腸チフスの大半は、腸チフスの流行地域に旅行した人に発生しています。2019年には、世界中で推定920万人が腸チフスと診断され、11万人が死亡しています。ほとんどの患者が東南アジア、地中海東部、およびアフリカの地域に居住していました。

知っていますか?

  • 20世紀のはじめ、1人の女性料理人から大勢の人に腸チフスが伝染しました。

感染

チフス菌(Salmonella Typhi)は人間の体内にのみ存在します。

感染者の便中に細菌が排泄され、まれですが、尿中に排泄されることもあります。胆嚢や尿路に慢性の感染が発生する場合があります。慢性の感染者は、症状がなくなった場合でも、便中や尿中に細菌を排泄し続けます。このような状態の人はキャリア(保菌者)と呼ばれます。症状がないため、キャリアは自分が感染を拡大させる可能性があるとは思っていません。20世紀初頭、そうしたキャリアだったメアリー・マローンという調理人の女性から、多くの人に腸チフスが感染する事件があり、彼女は「チフスのメアリー」として知られるようになりました。

チフス菌(Salmonella Typhi)は、排便や排尿後に手の洗浄が不適切だった場合に、食品や飲料水を汚染します。汚水の処理が不適切であれば、飲料水が汚染される可能性もあります。ハエによって便から食品に直接細菌が移る場合があります。

ときには、遊んでいる小児間や、肛門と口を接触させる性交を行う成人の間で、直接の接触を通じて腸チフスが広がります。

すべてのサルモネラ属(Salmonella)の細菌と同様に、細菌を多数摂取しない限り感染症は発症しません。胃酸はサルモネラ属(Salmonella)の細菌を破壊する傾向があるため、高齢者や胃酸分泌抑制薬を服用している人など、胃酸の少ない人では感染症のリスクが高くなります。抗菌薬は、病気を引き起こす微生物から体を守っている消化管内の常在菌叢が崩壊するため、抗菌薬を服用する人でもリスクも高くなります。

血流を介した感染拡大

この細菌は消化管から血流に広がり(菌血症を引き起こします)、以下のような離れた臓器に感染する可能性があります。

これらの感染症は主に治療を受けていない人や治療が遅れた人に発生します。

腸チフスの症状

典型的には、インフルエンザ様の症状が感染から8~14日後に始まります。腸チフスの症状は徐々に現れます。発熱、頭痛、のどの痛み、筋肉と関節の痛み、腹痛、そして乾いたせきの症状がみられたり、食欲がなくなったりすることもあります。

数日後、体温が約39~40のピークに達し、10~14日間は高温が継続し、症状が現れてから4週目中には正常に戻ります。多くの場合で心拍が遅くなり、疲労感が生じます。感染症が重症になると、せん妄や意識障害が現れることがあります。

2週目には、約5~30%の感染者の胸部や腹部にばら色の平坦な斑点状の発疹が現れます。

腸チフス(ばら疹)
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通常は感染後2週目に、約5~30%の腸チフス患者の胸部および腹部にばら疹(矢印)が現れます。

Image courtesy of Charles N. Farmer, Armed Forces Institute of Pathology, via the Public Health Image Library of the Centers for Disease Control and Prevention.

最初は便秘になることがありますが、2週間後からは下痢が始まる場合があります。約1~2%の人では、腸が裂けたり(穿孔)出血したりします。少数の人では、ときに生命を脅かす重度の出血が起こります。

感染が他の臓器に広がると、そこでも症状が引き起こされます。

治療を受けない患者の最大10%では、発熱が治まってから2週間ほどで症状が再発します。

腸チフスの診断

  • 血液、便、その他の体液または組織のサンプルを調べて培養する検査

腸チフスの診断を確定するには、血液、便、尿のほか、ときにその他の体液や組織のサンプルを採取して検査室に送り、サンプル中の細菌を増殖させる検査(培養検査)を行います。サルモネラ属(Salmonella)の細菌が存在するかどうかを確認するために、サンプルを検査して調べます。

効果的である可能性が高い抗菌薬を判断するための検査(感受性試験)を行います。

腸チフスの治療

  • 抗菌薬

  • 重度の感染症には、コルチコステロイド

典型的には以下の抗菌薬のいずれかが投与されます。

  • セフトリアキソンの注射剤

  • フルオロキノロン系薬剤(シプロフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシンなど)の経口または注射剤

  • アジスロマイシンの経口剤

腸チフスが頻発する地域では、抗菌薬に対する耐性を持つ細菌が広がり、現在も増加しています。米国でも、これらの地域で感染した旅行者が帰国することによって耐性菌が増加しています。

感染症が重症の場合、特にせん妄や昏睡状態の患者やショックを起こしている患者には、コルチコステロイドの注射薬も投与されます。

発熱がみられる間は安静にするように指示されます。清澄流動食は下痢を最小限に抑えるのに役立ちます。アスピリン、下剤、浣腸剤などは使用するべきではありません。

治療を中止すると、再発することがあります。この場合の感染症は初期よりも軽度ですが、同じ治療を実施します。

キャリア(保菌者)の治療

キャリアが特定されると、医療従事者は現地の保健所に報告します。その後、地域の保健局はキャリアに連絡し、感染拡大を防ぐための対策を講じます。

検査で細菌が根絶されたことが示されるまで、キャリアは食物を扱うことができません。ほとんどのキャリアでは、4~6週間の抗菌薬の投与により細菌は根絶されます。

キャリアに胆嚢疾患がある場合は、胆嚢を切除する手術が効果を示すことがあります。ただし、このような手術を行っても、細菌が根絶される保証はありません。

腸チフスの予後(経過の見通し)

治療をしない場合、腸チフス患者の約10~15%が死に至ります。治療を行えば、死に至る腸チフス患者は約1%のみになります。死亡例の大半は、栄養失調の人、乳幼児、高齢者です。

完全な回復には、数週間から数カ月を要します。

昏迷(目覚めされるために強い刺激を必要とするほどに、反応が悪くなる)、昏睡、そしてショック状態は重度の感染症の徴候であり、予後はよくありません。

腸チフスの予防

腸チフスが頻発する地域へ旅行する場合には、生の野菜や、常温で用意されたり保存されたりした食品を食べるのを避けるべきです。

氷や飲料水(煮沸や塩素処理されていない場合)は安全ではないと考えるべきです。歯磨きには、密封されたボトル入りの水を使用してください。

一般に、以下のものは食べても問題ありません。

  • 調理後すぐに非常に熱い状態で出された食べもの

  • 密封されたボトルまたは缶入りの飲料水

  • 熱いお茶やコーヒー

  • 自分で皮を剥いた果物

ワクチン接種

腸チフスの経口ワクチンや多糖体ワクチンの注射で腸チフスを予防することができます。経口ワクチンの効果は約40~80%です。このワクチンは、6歳以上の人に投与することができます。注射によるワクチンの効果は約50~80%で、2歳以上の人に投与することができます。どちらのワクチンも副作用はほとんど起きません。

ワクチン接種が推奨されるのは以下の場合です。

  • 腸チフスが頻発する地域への旅行者

  • キャリアと同居している人、またはキャリアと濃厚接触がある人

  • この細菌を取り扱う研究所の職員

継続的にリスクが高い人は、注射ワクチンを受けてから2年後、経口ワクチンを受けてから5年後に追加ワクチンを接種するべきです。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いかねることをご了承ください。

Centers for Disease Control and Prevention (CDC): 腸チフス(Typhoid Fever):旅行者向けの情報を含めた腸チフスに関する情報を提供している

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