インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)感染症

(Hib感染症)

執筆者:Larry M. Bush, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University;
Maria T. Vazquez-Pertejo, MD, FACP, Wellington Regional Medical Center
Reviewed ByBrenda L. Tesini, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry
レビュー/改訂 2024年 6月 | 修正済み 2025年 7月
v783120_ja
プロフェッショナル版を見る

グラム陰性菌の一種であるインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)は、気道の感染症を引き起こし、それが他の臓器に広がることもあります。

  • この感染症はくしゃみやせきによる飛沫、または接触によって広がります。

  • この細菌は中耳の感染症や副鼻腔炎の他にも、髄膜炎や喉頭蓋炎、呼吸器感染症など、より重篤な感染症を引き起こします。

  • 血液や感染組織のサンプル中でこの細菌が特定されれば、診断が確定します。

  • 抗菌薬の経口投与で感染症を治療しますが、重度の感染症に対しては静脈内投与を行います。

  • インフルエンザ(Haemophilus influenzae)b型菌の感染を効果的に予防するために、小児に対して定期的にワクチン接種を行います。

細菌の概要も参照のこと。)

ヘモフィルス属(Haemophilus)の細菌の多くは、小児や成人の気道上部に存在し、まれに感染症を引き起こします。性感染症である軟性下疳(なんせいげかん)を引き起こすものもあります。その他、心臓弁の感染症(心内膜炎)の原因となるものもあり、まれに脳、肺、肝臓に膿がたまります(膿瘍)。ほとんどの感染症の原因はインフルエンザ菌です。

インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)は小児のほか、ときに成人にも感染することがあります。

インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)に感染するリスクが高いのは以下のような人です。

  • 小児(特に男児)

  • 黒人およびアメリカ先住民

  • デイケア施設に通っている人または施設で働いている人

  • 過密状態で生活している人

  • 免疫不全疾患を患っている人、脾臓がない人、および鎌状赤血球症を患っている人

くしゃみ、せきによる飛沫、もしくは感染者との接触によってこの感染が拡大します。

インフルエンザ菌の一種であるインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)b型(Hib)は、重篤な感染症を引き起こす傾向があります。

小児にでは、Hibは血流を介して全身に拡がり(菌血症)、関節、骨、肺、顔面や首の皮膚、眼、尿路、その他の臓器に感染します。

この細菌は、しばしば死に至ることもある次の2種類の重症感染症を引き起こす場合があります。

  • 髄膜炎(脳と脊髄を覆う組織の層[髄膜]の炎症や髄膜と髄膜の間の液体で満たされた空間の炎症)

  • 喉頭蓋炎(喉頭の上にある弁状の組織への感染)

一部の菌株は小児の中耳、小児と成人の副鼻腔、成人の肺に感染症を引き起こしますが、特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者やHIV感染症/エイズの患者には容易に感染します。

症状は感染部位によって異なります。

インフルエンザ菌感染症の診断

  • 血液や他の体液のサンプルの検査

  • ときに髄液サンプル(腰椎穿刺で採取)の検査

感染症を診断するために、血液、膿、その他の体液を採取して、細菌を増殖させる(培養する)ために検査室に送ります。また、細菌の遺伝子を調べることもできます。

髄膜炎の症状がみられる場合、髄液(脳と脊髄の周囲を流れている液体)のサンプルを採取するために腰椎穿刺を行います。サンプル中にこの細菌が特定されれば、診断が確定します。

細菌が特定されたら、その菌に効果を示す抗菌薬を調べる検査(感受性試験)を行うことがあります。

インフルエンザ菌感染症の治療

  • 抗菌薬

インフルエンザ菌による他の感染症の治療では、種々の抗菌薬を経口投与します。どの抗菌薬を使用するかは、感染の重症度と感受性試験の結果に基づき決定されます。

重篤なインフルエンザ菌感(Haemophilus influenzae)染症の乳児は、汚染された飛沫が空気中に飛び散って感染を拡大するのを防ぐため、入院させた上で、抗菌薬の投与開始から24時間は隔離されます(空気感染隔離)。

髄膜炎は可能な限り早急に治療する必要があります。抗菌薬(通常はセフトリアキソンまたはセフォタキシム)を静脈内投与します。コルチコステロイドも脳障害を防ぐ効果があるとされています。

喉頭蓋炎の治療も可能な限り早急に開始する必要があります。呼吸を補助することが必要な場合もあります。呼吸管などの人工気道が用いられ、まれに気管を切開する場合もあります(気管切開)。セフトリアキソン、セフォタキシム、セフロキシムなど、抗菌薬を投与します。

インフルエンザ菌による他の感染症の治療では、種々の抗生物質を経口投与します。これには、アモキシシリン/クラブラン酸、アジスロマイシン、セファロスポリンフルオロキノロン、オマダサイクリン、レファムリン、クラリスロマイシンが含まれます。

インフルエンザ菌感染症の予防

小児にはインフルエンザ(Haemophilus influenzae)b型菌に対するワクチン接種を定期的に行います(小児期の予防接種スケジュールを参照のこと)。Hibワクチンは、髄膜炎、喉頭蓋炎、菌血症などの重度のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)b型感染症の感染者数を大幅に減少させました。

重度のインフルエンザ(Haemophilus influenzae)b型菌の感染症が発生した家庭に、インフルエンザb型菌に対する十分な免疫のない4歳未満の小児がいる場合、その小児にワクチン接種を行うことが推奨されます。また、感染を予防するために、妊婦を除いた家族全員にリファンピシンなどの抗菌薬を経口投与することも望ましいとされます。

1ヵ所の保育所または託児所で、60日以内に2人以上の小児がインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)b型感染症を発症した場合は、それらの小児に接触した成人と小児に抗菌薬を投与するべきです。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いかねることをご了承ください。

  1. Centers for Disease Control and Prevention (CDC): インフルエンザ菌:感染経路や予防接種を含めたインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)に関する情報を提供している

quizzes_lightbulb_red
医学知識をチェックTake a Quiz!
ANDROID iOS
ANDROID iOS
ANDROID iOS