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ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症

執筆者:

Edward R. Cachay

, MD, MAS, University of California, San Diego

最終査読/改訂年月 2018年 3月
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ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とは、ある種の白血球を次第に破壊し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすことのあるウイルス感染症です。

  • HIVは、ウイルスやウイルスに感染した細胞を含む体液(血液、精液、腟分泌液)と濃厚に接触することで感染します。

  • HIVはある種の白血球を破壊し、感染症やがんに対する体の防御機能を低下させます。

  • 初感染時には、発熱、発疹、リンパ節の腫れ、疲労といった症状が数日から数週間続くことがあります。

  • 感染して10年以上経っても発病しない人もたくさんいます。

  • 未治療の患者の半数ほどが、約10年以内に体調を崩しエイズを発症します(エイズの発症は重篤な感染症やがんの発生により定義されます)。

  • 治療しなければ、最終的にほとんどの人がエイズを発症します。

  • 診断の確定は、HIV抗体とHIVウイルスの量を調べる血液検査により可能です。

  • HIV治療薬(抗レトロウイルス薬)は、2つ、3つ、または4つ以上の薬を組み合わせて使用します。それらの薬は、HIVの増殖を防ぎ、免疫系の機能を強化して感染症にかかりにくくしますが、不活性状態で潜伏しているHIVを根絶することはできません。

小児におけるHIV感染症も参照のこと。)

HIV感染症を引き起こすのは、2種類のレトロウイルス(HIV-1とHIV-2)のいずれかです。世界的には、HIV-1がほとんどのHIV感染症の原因となっているのに対し、西アフリカではHIV-2が多くのHIV感染症の原因となっています。

レトロウイルスとは

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)はレトロウイルスの一種で、他の多くのウイルスと同様に、遺伝情報をDNA(他の大半の生物はDNAを利用します)としてではなく、RNAとして蓄えています。

HIVが人の細胞に侵入すると、RNAを放出し、逆転写酵素と呼ばれる酵素により、HIVのRNAからDNAの複製を作ります。こうしてできたHIVのDNAは、感染した細胞のDNAに組み込まれます。この過程は、人の細胞が利用する、DNAからRNAの複製を作るものとは逆のものです。このためにHIVは、この逆向きの過程を指して、レトロウイルスと呼ばれています。

ポリオウイルス、インフルエンザウイルス、はしか(麻疹)ウイルスといった他のRNAウイルスは、レトロウイルスとは異なり、細胞に侵入した後にDNAの複製を作ることはありません。これらのウイルスは、単に元のRNAからRNAの複製を作るだけです。

HIVが感染した細胞では、細胞分裂が起きるたびに、細胞自身のDNAに加えて、組み込まれたHIVのDNAも新たに複製されます。HIVのDNAの複製は以下のいずれかの状態になります。

  • 不活性(潜伏)状態:ウイルスは存在しますが、害を及ぼしません。

  • 活性化状態:ウイルスが感染細胞の機能を支配し、HIVの新たな複製を大量に作って放出させ、それらが他の細胞に侵入していきます。

HIVは、CD4陽性リンパ球と呼ばれる特定の白血球を徐々に破壊します。リンパ球は、体外から侵入してきた細胞や感染性微生物、がんなどから体を守っています。このため、HIVによりCD4陽性リンパ球が破壊されると、他の多くの感染性微生物による攻撃を受けやすくなります。死に至ることもあるHIV感染症の合併症の多くは通常、HIVの感染自体ではなく、それ以外の病原体の感染によって生じます。

HIV-1の出現は、20世紀前半に中央アフリカで、チンパンジーにみられる近縁種のウイルスが初めて人間に感染したときにさかのぼります。HIV-1は1970年代後半に世界的に拡大し、エイズが初めて発見されたのは1981年のことです。

2016年時点で、全世界のHIV感染者数は約3670万人で、そのうち210万人は15歳未満の小児でした。エイズに関連して100万人が死亡し、180万人が新たに感染しました。

ほとんどの感染(95%)が発展途上国で生じています。新たなHIV感染の約70%はサハラ以南アフリカで起きており、半数以上が女性で、10人に1人は15歳未満の小児です。しかし、サハラ以南アフリカの多くの国では、治療と予防戦略を提供する国際的な取り組みの効果もあって、新規HIV感染数が大幅に減少しました。

米国では2015年に13歳以上の110万人がHIVに感染していると推定されました。そのうち15%はHIVに感染していることを知りません。2016年の米国では、39,782例のHIV感染症が診断されました。その3分の2以上がゲイまたはバイセクシャルの男性で発生しています(米国におけるHIV:概要[HIV in the United States: At A Glance]も参照)。そのうち、黒人男性(10,223人)での発生が最も多く、ヒスパニック/ラテン系の男性(7425人)と白人男性(7390人)がそれに続いています。

後天性免疫不全症候群(エイズ)

エイズとは、HIVによる感染症が最も重症化した病態のことです。HIV感染症は、重篤な合併症が少なくとも1つ生じたり、CD4陽性リンパ球数が大きく減少した場合にエイズとみなされます。

HIVに感染している人が特定の病気になると、エイズと診断されます。こうした病気はエイズ指標疾患と呼ばれ、具体的には以下のものがあります。

HIVの感染経路

HIVは、HIVウイルスやHIVに感染した細胞を含む体液に触れない限り、感染しません。HIVは、ほぼあらゆる体液中に存在しますが、感染が起こるのは主に血液、精液、腟分泌液、母乳を通じてです。涙、尿、唾液(だえき)の中にも少量のHIVが含まれていることがありますが、これらの体液から感染することは、あるとしても非常にまれです。

HIVは職場、学校、家庭で、触ったり、抱き合ったり、軽いキスをするなどの軽い接触では感染することはなく、密接な接触でも、性的なものでなければ感染は起こりません。感染者のせきやくしゃみから、または蚊に刺されてHIVに感染した例は報告されていません。感染した医師や歯科医師から患者が感染するケースも極めてまれです。

通常のHIVの感染経路には以下のものがあります。

  • 感染者との性的接触(無防備な性交中などに、口、腟、陰茎、直腸の粘膜にHIVを含んだ精液や腟分泌液などの体液が付着する場合)

  • 汚染された血液の注射(注射針の共用や、医療従事者がHIVで汚染された注射針を誤って刺してしまう事故などで発生)

  • 感染した母親から子への感染(出産前や分娩中、または出産後に母乳を通じて発生)

  • 医学的処置(HIVを含む血液の輸血、滅菌が不十分な器具を用いた処置、感染した臓器や組織の移植など)

ごく小さなものであっても、皮膚や粘膜に裂傷や損傷があると、HIV感染の可能性が高まります。

米国、欧州、オーストラリアでは、HIVは主に男性同性愛者や注射針の共用(使い回し)をする薬物常習者の間で広まってきましたが、最近では異性間の性行為による感染が全体の約4分の1を占めています。アフリカ、カリブ海諸国、アジアでは、HIV感染は主に異性間で起こり、男女に差はありません。米国では成人HIV感染者のうち、女性の割合は25%未満です。1992年以前は、米国の女性感染者の大半は汚染された注射針で薬物を注射したことで感染していましたが、現在ではほとんどの感染が異性間の性行為により生じています。

最も多い感染経路である性行為や注射針の共用による感染は、ほぼ完全に予防可能です( ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 : 予防)。

知っていますか?

  • HIVが、せきやくしゃみ、また蚊に刺されることで感染したという例はありません。

性行為による感染

HIV感染のリスクが最も高くなる状況は、コンドームを使用しないか誤った方法で使用して、腟または肛門性交を行う場合です。オーラルセックスでもHIV感染の可能性はありますが、腟や肛門での性交に比べると確率は低くなります。

精液や腟分泌液に多量のHIVが含まれている場合や、性器、口、直腸の皮膚や粘膜に小さなものでも裂傷やびらんがある場合に、HIV感染のリスクが増大します。そのため、次のような状況では感染の可能性が非常に高くなります。

  • 感染から数週間しか経っていない感染者に接触する場合(この時期の感染者の血液や体液には、多量のHIVが含まれているため)

  • 激しい性行為のために性器、口、直腸の皮膚や粘膜が損傷している場合

  • 性交する人のいずれかが、ヘルペス感染症や梅毒などの性感染症にかかっていて、皮膚のびらんや裂傷、または性器の炎症が生じている可能性がある場合

HIVの薬(抗レトロウイルス薬)には、精液や腟分泌液に含まれるHIVの量を減らす効果があります。そのため、この種の薬によるHIV感染症の治療は、感染の可能性を大きく低下させることができます。

性器、口腔、または直腸の粘膜が傷つく可能性のある性行為としては、フィスティング(直腸または腟に手の全体または大部分を挿入する行為)や性具の使用などがあります。

異性間の性交中にHIVに感染するリスクは、若者で高く、その理由の1つとして若者は衝動のコントロールがあまりできず、そのため危険な性行動(複数のセックスパートナーをもつ、コンドームを使用しないなど)をする可能性が高いことが挙げられます。

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性行為中にHIV感染が起きるリスク

リスク

行為

リスクなし(びらんがない場合)

軽いキス

体と体の触れあいやマッサージ

体内に挿入するタイプの性具の使用(他者と共用しない場合)

精液や腟分泌液に触れない場合のパートナーによる性器の刺激

入浴やシャワーをともにする

傷のない皮膚への便や尿の付着

理論上リスクあり(びらんがない限りリスクは非常に低い)

ディープキス

射精が起こらず、かつコンドームを使用する場合の男性に対するオーラルセックス(フェラチオ)

バリア型避妊具を使用する場合の女性に対するオーラルセックス(クンニリングス)

口と肛門の接触

腟や肛門への手の挿入(手袋着用の有無は問わない)

体内に挿入するタイプの性具の使用(消毒して共用する場合)

低リスク

コンドームを使用しない場合または誤った方法で使用する場合の感染者の男性に対するオーラルセックス(精液を飲むかどうかは問わない)(感染者が未感染の男性にオーラルセックスを行う場合のリスクは比較的低下)

バリア型避妊具を使用しない場合の女性に対するオーラルセックス

コンドームを適切に使用する場合の腟または肛門性交(水性の潤滑剤のみを使用し、精液の漏れがまったくない場合など)

体内に挿入するタイプの性具の使用(消毒せずに共用する場合)

高リスク

コンドームを使用しない場合または誤った方法で使用する場合の腟または肛門性交(射精の有無は問わない)

注射針やその他の器具を介した感染

医療従事者がHIVに汚染された注射針を誤って刺した場合、その後できるだけ早急に処置を行わなければ、およそ300分の1の確率で感染が生じます。処置を行った場合は、感染の起きる確率が1500分の1に下がります。針が深く刺さってしまった場合や、中空の針の中にHIVで汚染された血液が入っている場合(採血または違法薬物の注射に使用された針など)は、外側に血液が付着しているだけの場合(切り傷を縫い合わせる針など)よりもリスクが高くなります。

ウイルスで汚染された体液が口や眼に入った場合に感染が起きる確率は、1000分の1未満です。

母から子への感染

妊娠可能年齢の多くの女性がHIVに感染した結果として、小児のHIV感染者が増加しています。

HIV感染症は、次の経路を介して感染者の母親からその子どもに伝染する可能性があります。

  • 胎盤を通じて胎児に感染

  • 分娩時、産道を通過する際に胎児に感染

  • 出生後の授乳で乳児に感染

感染した母親が治療を受けていない場合は、子の約25~35%が出生時に感染している可能性があり、そうした母親が授乳する場合、さらに10~15%の新生児が感染する可能性があります。

感染した女性をHIV薬で治療すると、その人から感染が広がるリスクを大幅に下げることができます。感染した妊婦は、第2および第3トリメスター(訳注:第2トリメスターは日本の妊娠中期に、第3トリメスターは妊娠後期にほぼ相当)、分娩時、授乳期間に治療を受ける必要があります。帝王切開で出産し、その後数週間にわたって新生児に治療を行うことでもリスクは低下します。

母親が感染している場合、人工乳による授乳を安全かつ妥当な価格で行える国に住んでいるのであれば、母乳による授乳は避けるべきです。しかし、感染症と低栄養が乳児の死因の上位を占め、また安全で妥当な価格の乳児用人工乳が手に入らない国については、世界保健機関(WHO)は母乳による授乳を勧めています。このような状況では、母乳を授乳することで、死に至る感染症を予防できれば、HIVの感染リスクが相殺される可能性があります。

HIV感染者の妊婦の多くがHIV感染症を予防するための治療や薬剤投与を受けているため、エイズになる小児の数は多くの国で減少しています( 小児におけるヒト免疫不全ウイルス (HIV) 感染症)。

輸血や臓器移植による感染

現在では、輸血や臓器移植でHIVに感染することはまれになっています。

1985年以降は、ほとんどの先進国で、HIV感染のリスクをなくすために、輸血用に採血されたすべての血液についてHIV検査が行われ、血液製剤も可能な限り加熱されるようになりました。現在、米国において1回の輸血(HIVなどの血液媒介ウイルスの存在に対して注意深くスクリーニング検査が行われています)でHIVに感染するリスクは、およそ200万回に1回未満といわれています。しかし、多くの発展途上国では、血液や血液製剤に対するHIVのスクリーニングが行われていなかったり厳密でなかったりします。そうした地域では、今でも大きなリスクがあります。

感染した提供者の臓器(腎臓、肝臓、心臓、膵臓、骨、皮膚)が感染の事実に気づかれないまま移植に用いられ、HIV感染が広がることもあります。角膜や特別に扱われる特定の組織(骨など)の移植によって、HIVに感染することはめったにありません。

人為的な精子注入

感染している提供者の精液を用いて女性を受精させる場合にも、HIV感染が起きる可能性があります。米国では、このリスクを減らす対策がとられています。現在では、採取した直後の精液は使用されていません。提供者から採取した精液は6カ月以上、凍結保存します。その後、精子を使用する前に、提供者がHIVに感染していないか改めて検査します。

精子ドナーがHIVに感染していることが分かっている場合は、精子の洗浄が精子からHIVを除去するのに効果的です。

HIV感染のメカニズム

HIVは体内に入った後、数種類の白血球に付着しますが、特に重要なのがある種のヘルパーTリンパ球(T細胞)です。ヘルパーTリンパ球は、免疫系の様々な細胞を活性化させ、その働きを調整します。また、その表面にはCD4と呼ばれる受容体があり、これによりHIVが付着することが可能となります。このため、こうしたリンパ球はCD4陽性と呼ばれます。

HIVはレトロウイルスの一種です。つまり、HIVは自身の遺伝情報をRNA(リボ核酸)として蓄えています。HIVウイルスがCD4陽性リンパ球の中に入ると、逆転写酵素と呼ばれる酵素を使って自身のRNAをDNA(デオキシリボ核酸)として複製します。逆転写酵素はHIVのRNAをDNAに変換する過程でエラーを起こしやすいため、HIVはこの時点で容易に突然変異を起こします。これらの突然変異はHIVの制御をさらに難しくします。なぜなら、突然変異が多く起こると、人の免疫系や抗レトロウイルス薬による攻撃に耐性をもつHIVの出現確率が高くなるためです。

複製されたHIVのDNAは、感染したリンパ球のDNAに組み込まれ、そのリンパ球の遺伝機構によりHIVが(複製されて)増殖します。最終的に、そのリンパ球は破壊されます。感染したリンパ球毎に何千もの新しいウイルスが複製され、それらのウイルスがまた別のリンパ球に感染し、破壊を行います。こうして数日から数週間のうちに、血液や性器の分泌物の中に非常に大量のHIVが含まれるようになり、CD4陽性リンパ球の数が大きく減ります。HIVへの感染直後に血液中と性器の分泌液中のHIV数が急増するため、感染直後の人は他者にHIVを非常に広めやすい状態になっています。

単純化したヒト免疫不全ウイルスのライフサイクル

ウイルス全般と同様に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)も感染した細胞(通常はCD4陽性リンパ球)の遺伝機構を利用して増殖します。

  • HIVは、まず標的とする細胞に付着して侵入します。

  • HIVはウイルスの遺伝情報であるRNAを細胞内に放出します。HIVは、複製のために自身のRNAをDNAに変換する必要があります。RNAは逆転写酵素と呼ばれる酵素(HIVにより作られる)によって変換されます。逆転写酵素はHIVのRNAをDNAに変換する過程でエラーを起こしやすいため、HIVはこの時点で容易に突然変異を起こします。

  • 変換されたウイルスDNAが細胞核に入り込みます。

  • インテグラーゼという酵素(同じくHIVにより作られる)の助けを借りて、ウイルスDNAが細胞のDNAに組み込まれます。

  • これで感染細胞のDNAは、新しいHIVの組み立てに必要なタンパクとともにウイルスRNAを作り出すことができるようになります。

  • 新しいウイルスがRNAと短いタンパクから組み立てられます。

  • ウイルスが細胞膜から出芽し、細胞膜の断片の中に自身を包み、感染細胞からくびれて分離します。

  • 出芽して細胞外に出たウイルスは、成熟して初めて他の細胞への感染力をもちます。HIVプロテアーゼと呼ばれるHIVの別の酵素がウイルス内の構造タンパクを切断し、並べ替えることでHIVは成熟します。

HIV感染症を治療するための薬は、こうしたHIVのライフサイクルに基づいて開発されました。このような薬は、ウイルスが増殖したり、細胞に付着して侵入したりする際に使われる3つの酵素(逆転写酵素、インテグラーゼ、プロテアーゼ)を阻害します。

単純化したヒト免疫不全ウイルスのライフサイクル

HIV感染によってCD4陽性リンパ球が破壊されると、様々な感染症やがんから身を守る免疫機能が低下します。いったん感染したHIVを体から排除できない理由の一部は、この免疫機能の低下です。ただし、免疫系もある程度の反応はできるため、感染から1~2カ月以内に体はリンパ球と抗体を作り、血液中のHIV量を減らして感染を制御します。このためHIV感染症は、治療を行わなくても、症状のない状態または軽い症状が少しみられる状態が平均で約10年続きます(人によって2~15年以上と幅があります)。

HIVは、皮膚、脳、生殖器、心臓、腎臓の細胞などの他の細胞にも感染し、これらの臓器に異常をもたらします。

CD4陽性細胞数

血液中のCD4陽性リンパ球の数(CD4陽性細胞数)は、次のことを判定する際に役立ちます。

  • 免疫系が感染症を阻止する能力の強さ

  • HIVが体に及ぼしている悪影響の大きさ

健康な人の大半では、CD4陽性細胞の数は血液1マイクロリットル当たりおよそ500~1000個です。感染が起こると、通常は最初の数カ月でCD4陽性リンパ球の数が減少します。3~6カ月ほどするとCD4陽性細胞数は安定しますが、治療を行わない限り、緩やかな場合から急速な場合まで、様々な速度で減少し続けるのが通常です。

CD4陽性細胞数が血液1マイクロリットル当たり約200個を下回ると、ニューモシスチス肺炎など、ある種の感染症に対して免疫系が抵抗できなくなります。これらの感染症の大半は、健康な人にはめったにみられません。しかし、免疫機能が低下している人ではよく発生する病気です。そうした感染症は、免疫機能の低下に乗じて発症するため、日和見感染症と呼ばれています。

CD4数が血液1マイクロリットル当たり50個を下回ると、重度の体重減少や失明を急速に引き起こす日和見感染症がさらに発生することがあり、死に至ることが一般的なため、特に危険です。そのような感染症には次のようなものがあります。

ウイルス量

血液中のHIVの量(具体的にはHIVのRNAの複製数)をウイルス量と呼びます。

ウイルス量は、HIVが増殖する速さを反映します。初期感染時に、ウイルス量は急速に増加します。その後、3~6カ月ほど経過すると、治療をしない場合でさえ、ある程度のところまで低下し、しばらくそのレベルにとどまります(このレベルはセットポイントと呼ばれます)。この量は個人差が大きく、血液1マイクロリットルにつき数百程度の場合もあれば、100万を超える場合もあります。

ウイルス量は、以下の項目の指標にもなります。

  • 感染症の伝染しやすさ

  • 予想されるCD4陽性細胞数の減少速度

  • 症状が現れると予想される時期

ウイルス量のセットポイントが高いほど、CD4陽性細胞数はより速やかに低値(200未満)に下がり、症状の有無にかかわらず、日和見感染症のリスクが高くなります。

治療がうまくいっていれば、ウイルス量は非常に低くなるか、検出できないレベルまで下がります(血液1マイクロリットルにつき約20~40未満)。ただし、不活性(潜伏)状態のHIVはなおも細胞内に存在しており、治療を中止すれば再び増殖し始めて、ウイルス量も増加します。

治療中にウイルス量が増加した場合は、以下のいずれかに該当する可能性があります。

  • HIVが薬物療法への耐性を獲得した。

  • 患者が処方された薬を服用していない。

  • 両方。

知っていますか?

  • HIVに感染した人の一部では、症状が何年も現れないことがあります。

症状

感染初期

多くの人では、感染してすぐの時期に症状はみられません。しかし、1~4週間以内に発熱、発疹、のどの痛み、リンパ節の腫れ、疲労や、様々な一般的でない症状が現れる人もいます。初期(急性)HIV感染症の症状は、通常3~14日にわたって続きます。

軽症または無症状期

初期症状が治まると、ほとんどの感染者では、たとえ治療を受けなくても、症状がみられなくなるか、ときおり軽い症状がいくつか現れるのみとなります。こうした症状がほとんどみられない期間は2~15年続きます。この期間によくみられる症状としては、以下のものがあります。

  • 首、わきの下、鼠径部(そけいぶ)に痛みを伴わない小さなしこりとして感じられる、リンパ節の腫れ

  • カンジダ症(真菌感染症の一種)により口の中にできる白い斑点(鵞口瘡[がこうそう])

  • 帯状疱疹(たいじょうほうしん)

  • 下痢

  • 疲労

  • 発熱、ときに発汗

  • 進行性の体重減少

  • 貧血

次第に体重が減少し、軽度の発熱や下痢がみられることもあります。

これらの症状はHIV感染症それ自体によって生じる場合もあれば、HIVの影響で免疫機能が低下したことで日和見感染症が発生した結果生じる場合もあります。

より重度の症状

ときには、最初にエイズの症状が現れることもあります。

エイズは、非常に重篤な日和見感染症やがんが発生することと定義され、これらは通常、血液1マイクロリットル当たりのCD4陽性細胞数が200個未満の人にのみ発生します。

発症した日和見感染症やがんによって、様々な症状が引き起こされます。HIV感染症の患者では、そうでない人より、こうした感染症が頻繁に起きたり重症化したりします。例えば、カンジダ Candidaという種類の真菌による感染症では、口の中に白い斑点ができたり(鵞口瘡)、腟からカッテージチーズに似たネバネバした白い分泌物が出たり(腟の真菌感染症)することがあります。帯状疱疹で痛みと発疹が生じることもあります。

重篤な日和見感染症では、以下のように臓器に応じた様々な症状が起こることがあります。

  • 肺:発熱、せき、息切れ

  • 脳:頭痛、筋力低下、協調運動障害、精神機能低下

  • 消化管:痛み、下痢、出血

さらにHIVは、以下のような臓器に直接感染して損傷を与え、症状を引き起こすこともあります。

  • 脳:脳の損傷に伴い、記憶障害、思考力や集中力の低下、またはその両方が生じ、HIV感染症の治療が行われない場合、やがては認知症のほか、筋力低下、振戦(ふるえ)、歩行困難が起こります

  • 腎臓:腎不全に伴い、脚と顔のむくみ、疲労、排尿の変化(白人より黒人でより一般的)が現れますが、感染症が重症化するまではあまり生じません

  • 心臓:心不全に伴い、息切れ、せき、喘鳴(ぜんめい)、まれに疲労がみられます

  • 性器:性ホルモンが減少し、男性では疲労と性機能障害がみられることがあります

一部の感染者で著しい体重減少(エイズるいそう)がみられますが、これはおそらく、HIVが直接的な原因と考えられます。エイズの人におけるるいそうは、一連の感染症や、長期にわたる消化器感染症が未治療のままであることによっても生じます。

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エイズに合併する一般的な日和見感染症

感染症

説明

症状

食道の真菌感染症

飲み込み時の痛み、胸やけ

ニューモシスチス・イロベチイ Pneumocystis jirovecii(真菌の一種)による肺の感染症

呼吸困難、せき、発熱

トキソプラズマ原虫 Toxoplasma gondiiという寄生虫による感染症で、通常は脳で発生する

頭痛、錯乱、嗜眠、筋力低下(腕、脚、顔面)、けいれん発作

結核菌による肺の感染症で、他の臓器に生じることもある

せき、発熱、寝汗、体重減少、胸痛

結核菌に似た細菌による腸や肺の感染症

発熱、体重減少、下痢、せき

クリプトスポリジウム Cryptosporidiumという種類の寄生虫による腸の感染症

下痢、腹痛、体重減少

クリプトコッカス Cryptococcusという種類の真菌による、脳を覆う組織の感染症

頭痛、発熱、錯乱

サイトメガロウイルスによる眼や腸管の感染症

眼:視界のくもりや失明

腸管:下痢と体重減少

HIV感染者によくみられるがん

カポジ肉腫は、性行為によって感染するヘルペスウイルスが原因となって発生するがんで、皮膚に痛みのない赤や紫色の盛り上がった斑点が現れます。このがんは、男性と性行為を行う男性に多くみられます。

免疫系のがん(リンパ腫、一般的には非ホジキンリンパ腫)が発生することがあり、ときに脳に最初に現れます。脳がリンパ腫に侵された場合、腕や脚の筋力低下、頭痛、錯乱、人格の変化が現れます。

エイズにかかるとその他のがんのリスクも高まります。子宮頸部、肛門、精巣、肺などのがんや、黒色腫などの皮膚がんが該当します。男性同性愛者では、女性の子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)により直腸がんが生じやすくなります。

死亡の原因

死亡は通常、日和見感染症やがん、るいそう、認知症の累積的な影響によって起こります。

診断

  • 血液や唾液のサンプル中にHIVウイルスに対する抗体が含まれるかどうかを調べる検査

  • 血液サンプル中にHIV RNAが含まれるかどうかを調べる検査

HIV感染症を早期に診断することは、早期の治療が可能になることから重要です。早期に治療を行えば、感染者はより健康に長く生きることができ、他者にHIVを感染させる可能性が低くなります。

医師は通常、HIV感染症の危険因子(職場での曝露の可能性、リスクの高い性行為、違法薬物の注射など— ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 : HIVの感染経路)と症状(疲労、発疹、体重減少など)について尋ねます。

医師はまた、リンパ節の腫れや口の中の白斑(鵞口瘡を示す)などの日和見感染症の徴候や、皮膚または口に現れるカポジ肉腫の徴候がないか、身体診察を行って調べます。

スクリーニング検査と診断検査

HIVの感染が疑われる場合は、スクリーニング検査を行って、HIVの有無を調べます。医師はまた、すべての成人と青年(特に妊婦)に対し、どのようなリスクがあるかにかかわらず、スクリーニング検査を受けることを推奨しています。HIVに感染しているかどうかが心配であれば、誰でも検査を受けることができます。検査の秘密は守られ、しばしば無料で受けられます。

現在の(第4世代)複合的なスクリーニング検査では、HIV感染症を示唆する以下の2つの項目が調べられます。

  • HIVに対する抗体

  • HIV抗原(p24抗原)

抗体とは、HIVのような特定の異物による攻撃から体を守るために免疫系が作り出すタンパクです。抗原とは、免疫応答の引き金になる異物のことです。

検査で検出されるのに十分な量の抗体が体内でつくられるまでには数週間かかるため、しばらくの間は抗体検査の結果は当てになりません。しかし、p24抗原検査の結果は、初感染から2週間後には陽性になる可能性があります。この2つを組み合わせた検査は検査室で行われ、速やかに結果が出ます。また、これらをまとめた検査を診療所で行うことも可能です(ベッドサイド検査と呼ばれます)。結果が陽性であれば、HIV-1とHIV-2を区別するための検査と、血液中のHIV RNAの量(ウイルス量)を検出するための検査を行います。

新しい複合的スクリーニング検査では、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いてHIV抗体を検出し、ウェスタンブロット法などのより正確な別の検査を用いて陽性であることを確認しますが、この方法は従来のスクリーニング検査よりも簡便で、速やかに結果が出ます。

ほかにも、比較的古いものの迅速に行えるベッドサイド検査があります。それらの検査は、血液や唾液のサンプルで行うことができます。これらの迅速スクリーニング検査の結果が陽性であれば、ELISA(ウェスタンブロット法を併用する場合もあります)による検査か少なくとも1つの他の迅速検査を繰り返すことで結果を確認します。

低リスクで検査結果が陰性の人は、リスク状態が変化しない限り、再度のスクリーニング検査は行いません。リスクが非常に高く検査結果が陰性の人(特に、性的に活動的な人、複数のセックスパートナーがいる人、安全な性行為を心がけていない人)は、6~12カ月毎に繰り返し検査を受ける必要があります。

HIV RNA検査では、抗体検査が陽性の場合にその結果を確定したり、抗体検査が陰性の場合にHIV感染の証拠を検出したりすることができます。HIV RNA検査では、生物の遺伝物質のコピーを数多く作り出す手法(核酸増幅法)をよく用います。これらの検査は血液中に含まれる非常に微量のHIV RNAを検出でき、非常に正確です。

モニタリング

HIV感染症と診断された場合は、定期的に血液検査を行い、以下の項目を測定する必要があります。

  • CD4陽性細胞数

  • ウイルス量

CD4陽性細胞数が少ない場合は、重篤な感染症を発症しやすく、特定のがんなどHIVの他の合併症にもかかりやすい状態です。ウイルス量は、今後数年間でCD4陽性細胞数が低下する早さを予測するのに役立ちます。

これら2つの測定値は、医師が次のことを判断する際に役立ちます。

  • 抗レトロウイルス薬をどれだけ速やかに開始するか

  • 治療によって、どのような効果が得られそうか

  • 感染症の合併を予防するために他の薬が必要か

治療が成功すれば、ウイルス量は数週間のうちに非常に低い濃度まで下がり、CD4陽性細胞数もゆっくり正常値まで回復します。

エイズの診断

CD4陽性細胞数が血液1マイクロリットル当たり200個を下回った場合、極端な体重減少がみられる場合、ある種の重篤な日和見感染症やがんを発症した場合にはエイズと診断されます。

HIV関連疾患の診断

HIV感染症に合併する可能性のある病気がないか確認するために、様々な検査が行われることがあります。具体的には以下の検査があります。

  • 骨髄穿刺と生検:リンパ腫、がん、日和見感染症などによって起こる血球数の減少(貧血を含む)がないか確認するため

  • 造影CT検査またはMRI検査:脳または脊髄の損傷がないか確認するため

予防

現在、HIVの感染を予防する効果的なHIVワクチンや、エイズへの進行を遅らせるHIVワクチンはありません。しかし、HIV感染者を治療することで、他の人に感染が広がるリスクは低下します。

最も多い感染経路である性行為や注射針の共用による感染は、ほぼ完全に予防可能です。しかし、予防に欠かせない対策(性行為を控えるかコンドームを常に使用することと[ コンドームの使用法]、清潔な注射針を使用すること)が個人的に歓迎されなかったり、社会的に普及していない場合があります。薬物依存や性行為の習慣を変えることは難しいことが多いため、多くの人がHIV感染のリスクに身をさらし続けます。また安全な性行為を行っていれば万全というわけでもなく、例えばコンドームは漏れたり破れたりすることがあります。

HIV感染の予防対策

  • 性行為を控える。

  • 感染者またはHIVが陽性か陰性か不明なパートナーと性行為をするときには、毎回必ずラテックス製のコンドームを使用する(腟の殺精子剤や避妊用スポンジはHIV感染予防の役割を果たさない)。

  • オーラルセックスを行う男性は、射精の前に口から陰茎を抜く。

  • 男性は包皮切除を受ける(包皮の切除は、感染した女性と腟性交を行う男性のHIV感染リスクを低下させる)。

  • 新婚の夫婦の場合は、避妊なしでの性交を始める前に、HIV感染症など各種の性感染症の検査を受ける。

  • 注射器や注射針は決して使い回さない。

  • HIVに感染している可能性のある人の体液に触れるときは、ゴム製(できればラテックス製)の手袋を着用する。

  • 誤ってHIVを含む体液にさらされた場合(例えば注射針を刺したときなど)は、感染予防のために抗レトロウイルス薬による治療を受ける。

ラテックス製のコンドームはHIV(および他の一般的な性感染症)に対する優れた保護手段ですが、万全というわけではありません。油性の潤滑剤(ワセリンなど)はラテックスを溶かしてコンドームの有効性を低下させるおそれがあるため、使用しないでください。

助けになる手段はほかにもあります。男性の場合は、費用の安い安全な対策である包皮の環状切除術により、感染した女性との腟性交でHIVに感染するリスクが約半分に低下します。包皮切除を受けることで、他の状況でのHIV感染リスクが低下するかどうかは分かっていません。包皮切除は、HIV感染に対して部分的な保護にしかならないため、あわせて他の予防手段も講じるべきです。例えば、パートナーのいずれかが性感染症やHIV感染症にかかっている場合は、治療を受け、正しい方法で常にコンドームを使用することが必要です。

普遍的な予防策

血液や他の体液を取り扱う仕事に従事している場合は、ラテックス製の手袋、マスク、保護眼鏡などの防護用品を着用すべきです。これらの予防策は、HIV感染者に限らずあらゆる人の体液を扱うときも心がけるべき対策であるため、普遍的な予防策と呼ばれます。普遍的な予防策を講じる理由には、次の2つがあります。

  • 自身がHIVに感染していることに気づいていない人がいるため。

  • 他の重篤な病気(B型肝炎やC型肝炎など)を引き起こすウイルスが体液を介して伝染することがあるため。

HIVは加熱したり、過酸化水素やアルコールなどの一般的な消毒薬を使うことで活性がなくなるため、HIVに汚染された環境表面は簡単に洗浄、消毒することができます。

HIVは空気感染せず、触る、抱く、軽くキスするなどの軽い接触でも感染しないため、別の感染力の高い感染症にかかっていない限り、病院や診療所でHIV感染者の隔離を行うことはありません。

輸血と臓器移植による感染の予防

米国では、以下の対策により、臓器移植や輸血によるHIV感染がほとんど発生しなくなっています。

  • 臓器または血液の提供者に対してHIV感染の危険因子に関するスクリーニングを行う

  • 提供された血液に対してHIV感染のスクリーニングを行う

HIVの検査結果にかかわらず、HIV感染の危険因子をもつ人に移植用の血液や臓器を提供しないようにしてもらうことで、リスクはさらに低下します。

しかし、発展途上国では感度の高いHIVスクリーニング検査が普及しておらず、提供者の制限も行われていません。そのため、こうした経路からの感染が現在も問題になっています。

母親から新生児への感染の予防

HIVに感染した妊婦から新生児にウイルスが伝染することがあります。

母親から新生児へのHIV感染を予防するには、以下の方法が役立ちます。

  • 妊婦がHIVに感染していないかどうかを調べる検査を行う

  • 妊婦が感染している場合は、妊娠中と分娩時に抗レトロウイルス薬で治療する(分娩中の治療が特に重要)

  • 経腟分娩ではなく、帝王切で出産する

  • 出産後、新生児にジドブジンを6週間静脈内に投与して治療する

  • 可能であれば、母乳ではなく人工乳を使用する(HIVは母乳を介して感染することがある)

HIVにさらされる前の予防的治療

HIVにさらされる前に抗レトロウイルス薬を投与することで、HIV感染のリスクを減らすことができます。このような予防的治療は、曝露前予防(PrEP)と呼ばれます。しかし、PrEPは高価な上に、毎日薬を服用しなければ効果が得られません。したがって、HIVに感染しているパートナーがいる人など、感染リスクが非常に高い人にしか勧められません。

PrEPは、次のようなリスクの高い性行為を行っている人に勧められることもあります。

  • コンドームを使用せずに男性と肛門性交を行う男性

  • HIVの感染状況が不明だがHIV感染のリスクが高いパートナーとコンドームを使用せずに性交している異性愛者の男性と女性

PrEPを行う人は、それだけでなく、常にコンドームを使用し、注射針の共用をしないなど、他のHIV感染の予防法も行う必要があります。

曝露後の予防的治療

飛び散った血液が体にかかったり、針を刺したり、性的接触をしたことによってHIVにさらされた場合には、抗レトロウイルス薬を4週間服用すると感染の可能性を減らすことができます。このような薬の投与は感染の危険にさらされた後、できるだけ早く開始すると、より効果的です。現在推奨されているのは、2つ以上の薬を服用することです。

医師と感染の危険にさらされた(曝露した)人は通常、これらの予防薬を使用するかどうかを共同で決定します。その決定は、感染の推定リスクと薬の想定される副作用に基づいて下します。曝露源がHIVに感染しているかどうか不明な場合は、曝露源が感染している可能性がどのくらいかを考慮します。ただし、たとえ曝露源がHIVに感染していると分かっていても、どのように曝露したかにより感染リスクは異なります。例えば、血液の飛沫がかかった場合のリスクは、針が刺さった場合よりも小さくなります。

HIVへの曝露直後に行うべき対策は、どのような接触であったかによって異なります。

  • 皮膚に曝露した場合は、石けんと水で洗います。

  • 針を刺した場合は、刺し傷を消毒剤で消毒します。

  • 粘膜に曝露した場合は、その部分を大量の水で洗います。

予防接種

HIVに感染している人は以下のワクチン接種を受けるべきです(詳細については、CDCによる予防接種の推奨(CDC immunization recommendations)を参照してください)。

帯状疱疹ワクチンが有用な場合もあります。ただし、血液1マイクロリットル当たりのCD4陽性細胞数が200個未満の場合は、このワクチンの接種は行われません。

治療

  • 抗レトロウイルス薬

  • 日和見感染症の予防薬

  • 症状を和らげる薬

HIV感染に対して治療を行わなければ重篤な合併症が生じることがあり、新たに毒性の低い薬が開発されているため、ほぼすべてのHIV感染者に対し、抗レトロウイルス薬による治療が勧められます。ほとんどの場合、早期の治療が最良の結果につながります。

抗レトロウイルス薬

抗レトロウイルス薬は以下の目的に使用します。

  • 血液中のHIV RNAの量(ウイルス量)を検出不可能な量まで減らす

  • CD4陽性細胞数を正常値に回復させる

HIV感染症の治療には、数種類の抗レトロウイルス薬を組み合わせて使用します。そのような薬には、HIVが人の細胞に侵入するのを阻止する働きや、HIVが人間の細胞内で増殖したり自身の遺伝物質を人間のDNAに組み込んだりするために必要な酵素を阻害する働きがあります。

抗レトロウイルス薬は、HIVに対する作用に基づいて、次のように分類されます。

  • 逆転写酵素阻害薬は、HIVの逆転写酵素がHIVのRNAをDNAに変換するのを阻害します。このタイプの薬には、ヌクレオシド系、ヌクレオチド系、非ヌクレオシド系の3種類があります。

  • プロテアーゼ阻害薬:新しく作り出されたウイルスの中で、プロテアーゼがある種のタンパク質を活性化する働きを阻害します。その結果、HIVは成熟できず、新しい細胞に感染できない、欠陥のあるHIVとなります。

  • 膜融合阻害薬:HIVが細胞内に侵入できないようにします。HIVが人間の細胞に侵入するには、CD4受容体のほかに、CCR-5受容体など別の受容体に結合する必要があります。侵入阻害薬の一種であるCCR-5阻害薬は、CCR-5受容体を遮断することで、HIVが人の細胞内に侵入できないようにします。

  • インテグラーゼ阻害薬:HIVのDNAが人のDNAに組み込まれるのを阻害します。

これらの薬は、細胞内でのHIVの複製を阻止し、数日から数週間で血液中のHIVの量を劇的に減らします。複製速度を十分に抑えられれば、HIVに破壊されるCD4陽性リンパ球が少なくなり、CD4陽性細胞数が増え始めます。その結果、HIVによって免疫系が受けた障害の大部分が回復することがあります。そのような回復を検出するには、CD4陽性細胞数を測定し、この値が数週から数カ月かけて正常レベルに戻りつつあることを確認します。CD4陽性細胞数は数年間にわたって増加しますが、そのペースは次第に落ち着いてきます。

早期に診断すれば、患者のCD4陽性細胞数が減りすぎる前に、医師がHIV感染者を特定できるため、HIV感染は早期に診断することが重要です。抗レトロウイルス薬の使用を早く開始すればするほど、CD4陽性細胞数がすばやく増加し数値が高くなる可能性が高まります。

知っていますか?

  • HIV感染症の治療薬は、感染者が一貫して服用を続けて初めて効果を発揮できます。

  • 服薬を怠ると、ウイルスが増殖して、耐性が生じます。

これらの薬を単独で使用すると、HIVはいずれの薬に対しても必ず耐性をもつようになります。薬の種類とウイルスに応じて、耐性は使用を始めて数日から数カ月で生じます。HIVは、増殖する際に起こる突然変異によって、薬に対する耐性を獲得します。

複数の薬を組み合わせて使用することで、治療の効果が最大になります。このような薬の組合せは、多剤併用抗レトロウイルス併用療法と呼ばれます。多剤併用抗レトロウイルス併用療法が用いられるのは、以下の理由によります。

  • 血液中のHIV量を減らす上で、薬を単独で投与するより組み合わせた方が強力である。

  • 組み合わせることで、薬剤耐性の発生予防に役立つ。

  • リトナビルなど一部のHIV薬は、他のHIV薬(大半のプロテアーゼ阻害薬など)の排泄を遅らせることで、その薬の血中濃度を高め、有効性を向上させる。

多剤併用抗レトロウイルス併用療法では、HIV感染者のCD4陽性細胞数を増やすことで、免疫系を強化して余命を延ばすことができます。

抗レトロウイルス薬の副作用

抗レトロウイルス薬の併用による副作用が、不快な場合や重篤な場合があります。しかし、医師は定期的な診察と血液検査によって、多くの重篤な問題(貧血、肝炎、腎障害、膵炎など)を予防できます。血液検査を行うと、副作用が重篤になる前に発見することができ、医師は必要な場合には抗レトロウイルス薬を変更できます。医師はほとんどの患者に、最も副作用の小さい薬の組合せを見つけることができます。

主にプロテアーゼ阻害薬によると考えられますが、脂肪代謝が障害されることがあります。その結果、以下のことが起こる可能性があります。

  • 脂肪が腹部や女性の乳房に蓄積し(中心性肥満と呼ばれる)、顔、腕、脚の脂肪が減る。

  • インスリンが作用しにくい体になる( インスリン抵抗性)。

  • 血液中のコレステロールと中性脂肪(どちらも血液中の脂肪)が増加する。

これらの問題が組み合わさると(メタボリックシンドロームと呼ばれる)、心臓発作、脳卒中、認知症のリスクが高まります。

発疹(皮膚反応)は多くの薬の副作用です。ときに非常に危険な皮膚反応が起こることがあり、特にネビラピンまたはアバカビルにはそうした懸念があります。

特定の核酸系逆転写酵素阻害薬を用いると、ミトコンドリア(細胞内でエネルギーを作る構造物)が損傷を受けることがあります。副作用には、貧血、神経の損傷(神経障害)による足の痛み、ときに重度の肝不全に進行する肝傷害、心不全に至ることもある心臓の損傷などがあります。個々の薬によってそのような問題を引き起こす傾向は異なります。

多剤併用抗レトロウイルス併用療法を行うと、骨密度が減少し、骨減少症や骨粗しょう症のリスクが増加する可能性があります。これらの病気では症状が出ないことがほとんどですが、骨折するリスクが高まります。

免疫再構築症候群

多剤併用抗レトロウイルス併用療法がうまくいっている人で、ときに免疫再構築症候群(IRIS)という病気が発生することがあります。

IRISでは、免疫機能が改善(再構築)された結果として感染部位の炎症が強くなるために、様々な感染症の症状が現れたり悪化したりします。死んだウイルスの一部が残っていて、免疫反応を誘発し、症状が悪化することもあります。

この症候群には以下の2つの種類があります。

  • 逆説的IRISでは、すでに診断された感染症の症状が悪化する

  • 顕在化IRISでは、まだ診断されていない感染症の症状が初めて現れる

逆説的IRISは通常、治療の最初の数カ月に起こり、多くは自然に治ります。治まらない場合は、しばしば短期間のコルチコステロイドの投与が効果的です。日和見感染症の治療が始まってすぐに多剤併用抗レトロウイルス併用療法を開始すると、逆説的IRISによる症状が現れやすく、しかも重症になりやすい傾向があります。したがって、一部の(すべてではない)日和見感染症では、治療によって日和見感染症が軽快または根治するまで多剤併用抗レトロウイルス併用療法を延期します。

顕在化IRISの患者では、医師は新しく特定した日和見感染症を抗菌薬で治療します。症状が重度の場合はコルチコステロイドを用いることもあります。通常、顕在化IRISが発生しても、多剤併用抗レトロウイルス併用療法は継続されます。ただし、クリプトコッカス感染症が脳に発生した場合は例外です。このときは、感染症が制御されるまで多剤併用抗レトロウイルス併用療法を一時中止します。

抗レトロウイルス薬の相互作用

抗レトロウイルス薬と他の薬の間、または2種類の抗レトロウイルス薬の間で、薬物相互作用が起こることがあります。そのため、服用しているすべての薬を主治医にきちんと伝えることが重要です。

抗レトロウイルス薬同士で相互作用が起こると、それらの薬の有効性が強くなったり弱くなったりすることがあります。

また、他の物質も体内でのHIV薬の作用に影響を及ぼします。そうした物質には以下のものがあります。

  • グレープフルーツジュースはサキナビルの濃度を高め、副作用のリスクを高めます。

  • セイヨウオトギリソウ(薬用ハーブ)は、体内でのプロテアーゼ阻害薬と非核酸系逆転写酵素阻害薬の処理を速めるため、それらの薬の効果が薄くなります。

抗レトロウイルス薬の使用

抗レトロウイルス治療が有益となるのは、医師の指示通りに服用した場合のみです。服薬を怠ると、ウイルスが増殖して、耐性が生じます。

多くの場合、治療により血液などの体液や組織に含まれるHIVの量が検出不能なレベルまで減少しますが、ウイルスを体内から完全に排除することはできません。検出不能なレベルまでウイルスを減らすことが治療の目標です。治療を中止すれば、HIVのレベルが増加し、CD4陽性細胞数が低下し始めます。

それほど病状がひどくなく、CD4陽性細胞数がまだ500以上の人(正常値は500~1000)でも、できるだけ早く薬物治療を開始することが望まれます。かつてはCD4陽性細胞数が500未満になるまで、薬物療法は開始されませんでした。しかし、研究の結果、抗レトロウイルス薬による治療を迅速に受けた人の方が、エイズ関連の合併症を起こす確率が低く、死亡しにくいことが分かりました。

治療を開始する前に、患者は以下の点の必要性について説明を受けます。

  • 指示通りに薬を飲むこと

  • 毎回必ず服用すること

  • 残りの生涯にわたって薬を服用すること

生涯にわたって指示通りに服薬することは簡単ではありません。患者の中には(休薬期間と称して)服用を抜かしたり中止したりする人もいます。こうした行動は、HIVが薬への耐性を獲得する一因になり危険です。

また、HIV治療薬は不規則に服用すると薬剤耐性が発生することが多いため、医療従事者は、患者が自分の意志で確実に治療計画に従うことが可能かどうか、確認するように努めます。投薬スケジュールを分かりやすくして、指示通りに薬を飲みやすくするために、医師は1つの錠剤に複数の薬を入れ、1日1回飲めば済むようにして処方することがよくあります。

治療を必要とするほかの病気が発生した場合や、副作用が重く、原因になっている薬を特定する必要がある場合には、医師の判断で一時的に治療を中断することがあります。すべての薬の使用を同時に止めるのであれば、通常は治療の中断は安全です。問題を引き起こしている薬の用量を減らすか、別の薬に変更し、かつ医師が治療を再開しても安全であると判断したら、薬剤の投与を再開します。ただし、アバカビルは例外です。アバカビルを服用しているときに発熱または発疹がみられた場合は、この薬を永久に中止する必要があります。そのような人がアバカビルを再び服用すると、死に至ることもある重篤な副作用が起きる可能性があります。

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HIV感染症の治療薬

薬*

主な副作用

膜融合阻害薬

エンフビルチド(enfuvirtide)(T-20)

注射部位の痛みを伴う発疹、アレルギー(過敏)反応(発疹、発熱、悪寒、吐き気、低血圧など)、手足のしびれやチクチク感(末梢神経障害)、不眠、食欲不振

肺炎発生リスクの増加

マラビロク(CCR-5阻害薬)

心臓への血流不足(虚血)、心臓発作

インテグラーゼ阻害薬

ドルテグラビル

発疹(ときに重度であったり、生命を脅かしたりすることがある)、頭痛、不眠症、筋肉痛などのアレルギー(過敏)反応

エルビテグラビル

吐き気と下痢

ラルテグラビル

発疹(ときに重度であったり、生命を脅かしたりすることがある)や筋肉痛などのアレルギー(過敏)反応

非核酸系逆転写酵素阻害薬

この種類の薬すべて

発疹(重症化したり生命を脅かすこともある)、肝機能障害

エファビレンツ

めまい、眠気、悪夢、錯乱、興奮、もの忘れ、強い幸福感(多幸感)

エトラビリン

重度または生命を脅かす発疹

ネビラピン

重度または生命を脅かす肝機能障害と発疹(特に治療初期の18週間)

リルピビリン

抑うつ、頭痛、不眠症(ただし脳機能に影響を及ぼす副作用はエファビレンツより少ない)

核酸系逆転写酵素阻害薬(ヌクレオシド系)

この種類の薬すべて

生命を脅かすこともある乳酸アシドーシス(代謝により生じる老廃物である乳酸の蓄積)、肝傷害

アバカビル(ABC)

発熱、発疹、吐き気、嘔吐、呼吸困難、のどの痛み、せきなどを伴う、ときに死に至ることもある重度のアレルギー反応

食欲不振、吐き気、嘔吐

ジダノシン(ddl)

末梢神経の損傷、生命を脅かしうる膵臓の炎症(膵炎)、吐き気、下痢、肝臓腫大

エムトリシタビン(FTC)

頭痛、吐き気、下痢、皮膚(特に手のひらと足裏)の黒ずみ(色素沈着)

ラミブジン(3TC)

頭痛、疲労感、末梢神経の損傷

まれに膵臓の炎症(膵炎)

スタブジン(stavudine、d4T)

末梢神経の損傷、顔、腕、脚の脂肪の減少

まれに、生命を脅かす膵臓の炎症(膵炎)

ザルシタビン(zalcitabine、ddC)

末梢神経の損傷、生命を脅かしうる膵臓の炎症、口内炎

ジドブジン(AZTまたはZDV)

貧血、感染症にかかりやすくなる(骨髄の障害による)、肝傷害、脱力感、筋肉痛

まれに膵臓の炎症

核酸系逆転写酵素阻害薬(ヌクレオチド系)

テノホビルアラフェナミドフマル酸塩(TAF)

テノホビルジソプロキシルフマル酸塩よりも腎臓や骨密度関連の副作用が少ない

テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(TDF)

腎外傷

骨密度の低下

下痢、吐き気、嘔吐、頭痛

プロテアーゼ阻害薬

この種類の薬すべて

吐き気、嘔吐、下痢、腹部不快感、血糖値とコレステロールの増加(よくみられる)、腹部の脂肪の増加、肝機能障害、出血傾向(特に血友病患者)

アンプレナビル(amprenavir、APV)

発疹

アタザナビル(ATV)

発疹と、皮膚や白眼の黄色化(黄疸[おうだん])

ダルナビル

肝障害

頭痛、下痢、重度の発疹、発熱、アレルギー反応

ホスアンプレナビル

発疹

インジナビル(IND)

腎結石、赤血球の急速な破壊(溶血性貧血)、高血糖、肝障害、腹痛、吐き気

ロピナビル(LPV)

口の中のチクチク感、味覚の変化

ネルフィナビル(NLF)

下痢

リトナビル(RIT)

口の中のチクチク感、味覚の変化

サキナビル(SQV)

リトナビルと併用した場合に吐き気、嘔吐、下痢

チプラナビル(tipranavir:TPV)

生命を脅かしうる肝臓の炎症と脳内の出血

*エンフビルチド(enfuvirtide)以外はすべて経口薬です。エンフビルチド(enfuvirtide)は皮膚の下に注射します。

薬の種類に対して挙げている副作用は、その種類のどの薬を使用しても生じることがあります。

日和見感染症の予防

CD4陽性細胞数が低い場合は、次のように日和見感染症を予防する薬が処方されます。

  • CD4陽性細胞数が血液1マイクロリットル当たり200個を下回った場合、ニューモシスチス肺炎の予防のために、抗菌薬のトリメトプリム-スルファメトキサゾールの合剤が処方されます。この抗菌薬は、脳に損傷を起こすことがあるトキソプラズマ症の予防にもなります。

  • CD4陽性細胞数が血液1マイクロリットル当たり50個を下回った場合は、アジスロマイシンを週1回、またはクラリスロマイシンを毎日服用することで、マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス症を予防できます。これらの薬を使用できない患者には、リファブチンを投与します。

  • クリプトコッカス髄膜炎肺炎鵞口瘡腟のカンジダ感染症が再発する場合は、抗真菌薬のフルコナゾールを長期間服用します。

  • 単純ヘルペス感染症が口、唇、性器、直腸に繰り返し起こる場合は、抗ウイルス薬(アシクロビルなど)による長期治療が必要になることがあります。

その他の薬

このほか、HIV感染症で起こる筋力低下や体重減少、中心性肥満に効く薬もあります。

  • メゲストロール(megestrol)とドロナビノール(dronabinol、マリファナから作られる)には食欲増進作用があります。天然のマリファナの方が効果的と考える患者も多く、米国のいくつかの州では、この目的でのマリファナ使用が合法化されています。

  • テストステロン濃度が低く、加えて疲労や貧血、筋肉減少がみられる男性には、注射または皮膚に貼るパッチでテストステロンを投与することがあります。テストステロン治療は、 テストステロン濃度を高めて症状を軽減することができます。

  • 成長ホルモンとテサモレリン(成長ホルモンの分泌を引き起こす注射薬)はHIVやその治療によって発生しうる中心性肥満を軽減します。

インスリン抵抗性が生じた場合は、 インスリンへの感受性を高める薬が役立つことがあります。血液中のコレステロールや中性脂肪(トリグリセリド)の測定値が高くなった場合は、脂質低下薬(スタチン系薬剤)を使用して低下させることができます。

予後(経過の見通し)

HIVにさらされても必ず感染するわけではなく、長年にわたって何度もHIVにさらされながら感染しない人もいます。さらに、HIV感染から10年以上経過しても発病しない人も少なくありません。HIVに感染し、治療を受けていないのに、20年以上発病しない人も非常に少数ながら存在します。発症までの期間に大きな個人差がある理由は完全には分かっていませんが、いくつかの遺伝的要因が感染の起こりやすさや感染後のエイズへの進行に影響しているようです。

感染した人が治療を受けない場合、ほとんどの人がエイズを発症します。CD4陽性細胞数がどのくらいの速さで減少するか、HIV感染症がいつエイズに進行するかは、人によって大きく異なります。総合的にみて、治療しない場合に感染者がエイズを発症する割合を専門家は次のように推定しています。

  • 感染後最初の数年間:毎年1~2%

  • その後毎年:5~6%

  • 10~11年以内:50%

  • それ以降:95%以上、高齢まで生きれば全員の可能性もあり

こうした予測はあるものの、効果的な治療を受けて、HIV RNAの値を検出不可能なレベルにまで下げ、CD4陽性細胞数を劇的に増やすことで、感染者は生産的で活動的な生活を続けることができます。病気や死亡のリスクは低下しますが、HIVに感染していない同年代の人に比べるとリスクは高いままです。また、感染者が薬の副作用に耐えられない場合や着実な服用を続けられない場合は、HIV感染症と免疫不全が進行し、重篤な症状と合併症が起こります。

通常は、HIV感染症が直接の死因になることはありません。代わりに、HIV感染症によって大幅な体重減少(るいそう)、日和見感染症、がん、その他の病気が起こり、それらが死につながります。

治癒は今のところ不可能と考えられていますが、感染者からすべての潜伏状態のHIVを取り除く方法が精力的に研究されています。

終末期の問題

エイズの患者が突然死亡することはめったにないため、患者は通常、自身の状態が悪化したときに受ける医療の種類について、時間をかけて計画を立てることができます。とはいえ、早めにそうした計画を法的文書に記録し、希望するケアの種類について明確な指示を書いておくべきです(事前指示書)。委任状や遺言など、他の法的文書も準備しておきます。特に同性のカップルでは、パートナーの資産や権利(面会や意思決定など)を保護する必要があるため、これらの文書が重要です。

人生の最期が近づいてくると、多くの患者では痛みや他の悩ましい症状(興奮など)がみられ、通常は食欲不振に陥ります。ホスピスプログラムは、特にそうした問題に対処するための取り組みです。主に患者の症状を管理し、死を目前にした人の自立を支え、介護者の支援を行うために、包括的なサポートとケアを提供します。

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