ヒトパピローマウイルス感染症は、いぼや特定の種類の癌を引き起こすウイルスを原因とする病気です。ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、以下の病気の原因となる可能性が非常に高いHPV株による感染症を予防するために役立ちます。
詳細については、米国疾病予防管理センター(CDC)のHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン情報提供文書を参照してください。
(免疫化の基礎知識も参照)
ワクチンの種類
HPVワクチンは組み換え型であるため、HPVウイルスの特定の成分のみを含有しています。これらのワクチンには、研究室で製造され、他の物質と再結合した無害な種類のウイルスのタンパク質が含まれています。その後感染した場合に、体内の免疫系はウイルスのタンパク質を認識し、これと闘うことができるようになります(能動免疫化を参照)。生きたウイルスは一切含んでいないため、このワクチンが原因でHPV感染症が発生することはありません。
以下の3種類のHPVワクチンが開発されています。
9価:9種類のHPV感染を予防する
4価:4種類のHPV感染を予防する
2価:2種類のHPV感染を予防する
これら3種類のいずれのワクチンも、子宮頸がんの約70%、肛門がんの約90%の原因と考えられる2種類のHPV(16型と18型)を予防することができます。
9価ワクチンおよび4価ワクチンについては、陰部のいぼの90%以上の原因となっている2種類のHPV(6型と11型)感染も予防することもできます。男児および男性には9価ワクチンおよび4価ワクチンのみが推奨されています。
米国では現在、9価ワクチンのみが使用されています。
HPVワクチンの用量および推奨事項
HPVワクチンはすべて筋肉内に注射します。ワクチンの種類、年齢、免疫系の健康状態に応じて、2回または3回に分けて接種します。
初回接種が9~14歳で実施される場合は、6~12ヵ月後に2回目と最終接種を行います。
初回接種が15歳以上の場合は、3回の投与を数ヵ月かけて行います。
このワクチンを接種すべき人
HPVワクチンは小児期の定期予防接種に組み込まれています。(CDC:7~18歳の小児に推奨される予防接種、米国、2025年版[Recommended Immunizations for Children 7-18 Years, United States, 2025]も参照)。
このワクチンは以下の人にも推奨されています。
一般に11歳または12歳(9歳から開始することも可能)から26歳までの予防接種を受けたことがない、または適正に予防接種を受けていないすべての男女
一部の27~45歳の成人(新たなHPV感染のリスクと予防接種を受ける利点について医療従事者に相談の後)
HIV感染症などの免疫機能を低下させる病気にかかっている人は、初回接種の年齢に関わらず3回のワクチンを接種するべきです。
このワクチンを接種すべきでない人
HPVワクチンの接種後に、生命を脅かす重篤なアレルギー反応(アナフィラキシー反応など)を起こしたことがある人、またはHPVワクチンのいずれかの成分にアレルギーがある人は、このワクチンを接種するべきではありません。例えば、このワクチンを作るために酵母が使用されているため、酵母に強いアレルギーのある人はHPVワクチンを接種するべきではありません。
妊婦は、分娩後までHPVワクチンを接種するべきではありません。
一時的な病気がある場合、通常ワクチンは病気が消散してから投与します(CDC:これらのワクチンを接種すべきでない人[Who Should NOT Get Vaccinated With These Vaccines?]も参照)。
詳しい情報
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いかねることをご了承ください。
米国疾病予防管理センター(CDC):HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン情報提供文書(Gardasil® vaccine information statement)
欧州疾病予防管理センター(ECDC):ヒトパピローマウイルス感染症(Human Papillomavirus Infection):推奨される予防接種(Recommended vaccinations)
