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肺炎の概要

執筆者:

Sanjay Sethi

, MD, University at Buffalo SUNY

最終査読/改訂年月 2018年 9月
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肺炎は、肺にある小さな空気の袋(肺胞)やその周辺組織に発生する感染症です。

  • 肺炎は、世界で最も一般的な死因の1つです。

  • 重篤な慢性の病気が他にある患者において、肺炎はしばしば最終的な死因となります。

  • 肺炎の種類によっては、ワクチンの接種によって予防できます。

米国では、毎年約200~300万人が肺炎を発症し、そのうち約6万人が死亡しています。米国では、肺炎はインフルエンザと並んで、死因の第8位であり、感染症による死因の第1位です。肺炎は、入院患者にみられる感染症の中で、最も一般的な死因であり、発展途上国ではあらゆる病気の中でも最も一般的な死因です。肺炎はまた、小児や乳児における重篤な感染症の原因の中で最も多いものの1つであり、欧州と北米では毎年1000人中34~40人の小児や乳児が肺炎にかかっています。

呼吸器の概要も参照のこと。)

原因

肺炎は、細菌ウイルス抗酸菌真菌寄生虫などの様々な微生物によって引き起こされます。細菌やウイルスによる肺炎は、抗酸菌、真菌または寄生虫による肺炎よりもはるかに一般的です。具体的にどのような病原体が肺炎を引き起こすかは、患者の年齢、健康状態、住んでいる場所、その他の要因によって異なります。複数の微生物が関わることもあります。例えば、インフルエンザ(ウイルス感染症)はしばしば細菌性肺炎を合併します。

気道と、肺にある小さな空気の袋は常に微生物にさらされています。鼻やのどには無数の細菌がおり、ときにはウイルスもいます。これらの微生物は空気中から吸入されたり、消化管、口、またはのどから定期的に吸い込まれたりします。通常、吸い込まれた微生物は、以下に挙げるような肺の防御機構によって、すぐに処理されます。

  • せき反射により、粘液とともに異物を排除する

  • 肺へと続く気道の内側に並ぶ細胞は、微生物の肺への侵入を阻止しており、異物が侵入すると粘液とともに上方へ押し出し、せきとともに吐き出させる

  • 肺の細胞が産生するタンパク質は、微生物を攻撃する

  • 肺の中にある白血球は、正常の免疫系に属する細胞で、微生物を攻撃する

肺炎は以下のような場合に発生します。

  • 防御機構が正常に機能しないとき

  • 大量の細菌が吸い込まれ、正常の防御機構で対処できないとき

  • 特に感染性の強い微生物が侵入したとき

肺炎は、一般に上気道から肺へ微生物を吸い込むことで発生しますが、微生物が空気中から吸入されたり、血流によって肺へ運ばれたり、付近の感染部位から直接肺を侵したりして感染症が発生することもあります。

肺炎の分類

環境や条件によって、異なる微生物が存在する傾向にあるため、いつどこで肺炎を発症したかが重要です。病院などの特定の場所にいる微生物は、他の場所にいる微生物に比べて一般に危険で、抗菌薬への耐性も強いことがよくあります。特定の条件の下では、肺炎にかかりやすくなる病気をもつ人が多いこともあります。肺炎には以下のような分類があります。

  • 市中肺炎といって、一般の生活環境で発生するもの

  • 院内肺炎といって、病院内で発生する感染症

医療ケア関連肺炎といって、病院以外の医療ケア施設(介護施設や透析施設など)で発生する感染症のカテゴリーがありましたが、これはもはや一つのカテゴリーとはみなされないようになりました。

肺炎には他に以下のような分類があります。

  • 誤嚥性肺炎といって、口から比較的多くの液体や粒子(例えば、唾液、食べもの、嘔吐したもの)が吸い込まれ、それが肺から除去されないために発生するもの。誤嚥性肺炎は、嚥下困難がある人に起こりやすく、例えば、脳卒中を起こした人、鎮静薬、アルコール、またはその他の理由で意識レベルが低下している人などにみられます。

  • 閉塞性肺炎といって、肺へと至る空気の通り道が腫瘍などでふさがれ、その奥に細菌が蓄積して起こるもの。

「歩く」肺炎(walking pneumonia)という言葉は医学用語ではありませんが、市中肺炎のうち、床上安静や入院を必要としない、軽度の病気を指すのに用いられます。なかには、仕事に行ったり、その他の日常活動に従事できるほど元気な患者さえいます。

肺炎の危険因子

手術(特に腹部)または外傷(特に胸部外傷)の後に肺炎を発症することがありますが、これは痛みのために深い呼吸やせきがしにくくなるためです。深い呼吸やせきができなければ、微生物が肺の中にたまりやすくなり、感染症を発症しやすくなります。ほかにも衰弱した人、寝たきりの人、麻痺のある人、意識のない人などは、深い呼吸やせきができません。このような患者も、肺炎にかかるリスクが高まります。

もう1つの重要なポイントは、肺炎が、健康な人に発生したのか、免疫機能が低下している人に発生したのかということです。免疫機能が低下している人は、普通の人に比べてはるかに肺炎にかかる可能性が高く、このような人では、まれな細菌やウイルスのほか、真菌や寄生虫さえ肺炎の原因となることがあります。また、免疫機能が低下していると、治療を行っても、免疫力が正常な人と同じような効果が得られない可能性があります。免疫機能が低下しているのは、以下に挙げるような人です。

  • 特定の薬剤(コルチコステロイドや化学療法の薬剤など)を使用している人

  • ある種の病気(エイズや種々のがんなど)を有する人

  • 免疫系が未発達の人(乳幼児など)

  • 免疫系を損なう重い病気のある人

肺炎にかかりやすくなる他の要因としては、アルコール依存症、タバコの喫煙糖尿病心不全、高齢(例えば、65歳以上)、慢性閉塞性肺疾患などがあり、これらの病気になると肺の防御機構や免疫系の機能が低下します。

症状

肺炎で最もよくみられる症状は以下のものです。

  • たん(粘り気が強いまたは変色した粘液)がからんだせき

その他の一般的な症状としては以下のものがあります。

  • 胸痛

  • 悪寒

  • 発熱

  • 息切れ

ただし、これらの症状は肺炎の広がりや原因微生物の種類によって異なることがあります。

肺炎の人には、吐き気、下痢、食欲不振などの消化器症状がみられることがあります。

乳児や高齢者では、さらに多様な症状が現れます。発熱がみられないこともあります。また、胸痛がないこともあり、胸痛があっても、それを伝えられない場合があります。唯一の症状が、息が速くなるだけであったり、突然食事を拒否するようになるだけのこともあります。高齢者では、突然の錯乱が、肺炎を示す唯一の徴候である場合もあります。

肺炎の合併症

一般的な合併症には以下のものがあります。

重度の肺炎では、酸素が血流に移行しにくくなることがあり、そうなると患者は息切れを覚えます。酸素レベルの低下は生命を脅かすことがあります。

肺炎の原因微生物が血流に入ったり、感染症に体が過剰反応したりすると、血圧が大きく低下して、生命が脅かされることがあります。この状態を敗血症と呼びます。

肺炎から、肺膿瘍または膿胸になることもあります。膿瘍は、組織内にできたくぼみに膿がたまったものです。肺の一部の小さな領域が死滅して、そこに膿がたまると、肺膿瘍になります。膿胸は、肺と胸壁との間の空間に膿がたまったものです。

激しい感染症にかかったり、感染症に反応して過度の炎症が起こったりした場合、肺が重度に損傷され、ARDSとして現れることがあります。ARDSになると息切れがみられ、通常は呼吸が速く浅くなります。ARDSの患者は、一般に人工呼吸器による呼吸補助を長期間必要とします。

診断

  • 医師の診察

  • 通常は胸部X線検査

  • ときに、原因微生物を特定する検査

医師は、聴診器で胸の音を聞き、肺炎があるかどうかを調べます。通常、肺炎では独特の音が聞かれます。こうした異常音の原因は、気道が狭窄または閉塞したり、正常なら空気で満たされている部位が、炎症細胞や液体で満たされたりするためであり、この過程を肺の硬化と呼びます。ほとんどの場合、胸部X線検査によって肺炎の診断が確定します。

入院が必要な重症患者では、肺炎の原因微生物を特定するため、たん、血液、尿のサンプルの検査がしばしば行われます。非常に状態が悪い患者、免疫系に異常がある患者、または特定のまれな病原体が疑われる患者では、たんのサンプルを採取するために、蒸気を吸入させて深いせきをさせたり(これによりたんが出やすくなります)、気管支鏡(カメラの付いた柔軟な細い管状の機器)を気道に挿入したりすることがあります。せきを誘発させて採取したたんのサンプルや、特に気管支鏡により採取したサンプルは、唾液を含んでいる可能性が低く、自発的に吐き出したたんのサンプルよりも肺炎の原因微生物をはるかに特定しやすくなります。

病気が重い人や免疫系の機能に異常がある人、治療にうまく反応しない人では、肺炎を引き起こしている微生物を特定することが特に重要です。しかし、これらの検査を行っても、ほとんどの肺炎患者では、原因微生物を正確に特定することができません。

予防

肺炎を予防する最も効果的な方法は、禁煙です。

深呼吸の訓練や気道の分泌物を除去する治療は、胸部または腹部の手術を受けた人や衰弱した人など、肺炎になるリスクが高い患者に対して予防効果があります。

ワクチンは肺炎の予防に役立ちます。ワクチンを接種していない人が、肺炎の原因ウイルス(インフルエンザなど)をもつ人に接触した場合、感染と肺炎を予防するため、ある種の抗ウイルス薬を処方されることがあります。

肺炎を予防するワクチン

以下の微生物による肺炎に対し、部分的な予防効果のあるワクチンがあります。

肺炎球菌ワクチン

肺炎球菌ワクチンにより、肺炎球菌 Streptococcus pneumoniaeという細菌が引き起こす肺炎を予防できることがあります。肺炎球菌性肺炎の原因となるこの細菌は、ほかにも血液の感染症や髄膜炎といった多くの肺炎球菌感染症を引き起こす可能性があります。この肺炎球菌ワクチンは、このような重篤な肺炎球菌感染症の多くに対しても予防効果があります。

肺炎球菌ワクチンには以下の2種類の製剤があります。

  • 結合型ワクチン(PCV13)によって予防できる肺炎球菌は13種類ですが、より高い抗体価が得られます。

  • 23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)は23種類の肺炎球菌を予防します

これらの製剤は、様々な集団に対して接種されます。結合型ワクチンは、通常すべての小児に接種し、生後2カ月から接種を始めますが、他の年齢の人に接種される機会も増えています。多糖体ワクチンは通常、65歳以上のすべての人に勧められます。

インフルエンザ菌 Haemophilus influenzae b型ワクチン

インフルエンザ菌b型ワクチンにより、インフルエンザ菌 Haemophilus influenzaeb型が引き起こす肺炎を予防できます。このワクチンにより、肺炎だけでなく、この細菌が引き起こす他の感染症も予防できるため、すべての小児に対して接種が勧められます。米国では、生後2カ月と4カ月、ときには生後6カ月を加えて、3回ないし4回のワクチン接種が行われます。

インフルエンザワクチン

インフルエンザワクチンにより、インフルエンザウイルスによる肺炎を通常予防できます。さらに重要なことに、インフルエンザは免疫系の機能を低下させ、細菌性肺炎にかかりやすくするため、ワクチン接種によるインフルエンザの予防は、細菌性肺炎の予防にも役立ちます。このワクチンに対するアレルギーがない限り、生後6カ月以上のすべての人にこのワクチンを毎年接種することが勧められます。医療従事者や高齢者のほか、COPD、糖尿病、心疾患、腎疾患などの慢性的な病気のある患者では、ワクチン接種が特に重要です。

インフルエンザが最も流行する11~3月にかけて抗体価が最大になるように、毎年秋(9~11月)にワクチンを接種すべきです。どのウイルス株が最も流行する可能性が高いかという予測に基づいて、毎年異なるワクチンが導入されています。

インフルエンザウイルスによる肺炎を予防するワクチンの効果は、ワクチンに用いたウイルスの型がその年に流行したウイルスの型とどれくらいマッチしていたかに左右されます。どの程度予防できるかは年によって異なりますが、それでも年1回のインフルエンザワクチン接種を受けることは有益です。

水痘ワクチン

水痘ワクチンにより、水痘ウイルスが引き起こす肺炎を予防できることがあります。このウイルスによる肺炎は非常にまれです。この水痘ワクチンは、すべての小児向けの定期予防接種スケジュールに組み込まれています。初回のワクチン接種は生後12カ月から15カ月の間に行い、2回目の接種は4歳から6歳の間に行います。

治療

  • 抗菌薬のほか、ときに抗ウイルス薬、抗真菌薬または抗寄生虫薬

  • 呼吸を補助する治療

肺炎患者では、気道の分泌物を除去する必要もあり、深呼吸の訓練が有益な可能性があります。肺炎患者に息切れがある場合や、血液中の酸素レベルが低い場合は、酸素投与が行われます。酸素投与には通常、鼻孔に挿入する合成樹脂の細い管(鼻カニューレ)を用います。安静は治療の重要な要素ですが、完全に寝たきりの状態が続くと体に悪いこともあるため、体を頻繁に動かしたりベッドから椅子へ移動したりすることが勧められます。

通常、細菌性肺炎が疑われる場合は、原因微生物が特定される前であっても、抗菌薬の投与を開始します。抗菌薬の使用開始が早ければ、肺炎の重症度や、死に至りうる合併症を起こす可能性が低下します。

抗菌薬

医師が抗菌薬を選択する際、どの微生物が原因である可能性が高いかを検討します。肺炎の原因微生物の手がかりをつかむには、以下のような要因を考慮します。

  • 肺炎の種類(市中肺炎、院内肺炎、閉塞性肺炎、誤嚥性肺炎)

  • 患者の年齢

  • 患者の免疫系が正常に機能しているかどうか、また他の肺疾患を併発しているかどうか

  • 肺炎の重症度

  • 過去90日以内の抗菌薬の静脈内投与

  • その地域でよくみられる微生物や、その微生物に有効な抗菌薬に関する情報

  • 診断検査から得られるあらゆる情報(たんから培養された細菌の特定など)

以下のような状況では、医師は一般に「より広域の(抗菌薬がより広範囲の微生物に対して効果をもつという意味)」抗菌薬を選択します(このような抗菌薬は、広い範囲の微生物を標的としているため、なかには抗菌薬に耐性を示す微生物も存在します)。

  • 肺炎が重度の場合

  • 患者の免疫系が正常に機能していない場合

  • 院内肺炎、または一部の抗菌薬に耐性のある微生物に引き起こされる肺炎に対する他の危険因子がある(例えば、介護施設で生活しており一人で日常生活を送れない、最近の抗菌薬治療)

医師は微生物を特定して、様々な抗菌薬に対する感受性を調べた後で、別の抗菌薬に変更することもあります。

ちなみに、「広域」の抗菌薬は、腸内に住む正常な細菌も殺してしまい、生命を脅かしうる重度の下痢を引き起こすことがあります。この状態をクロストリジウム・ディフィシルクロストリジウム・ディフィシル腸炎または抗菌薬関連大腸炎と呼びます。そのため、広域抗菌薬は、上述のような状況でしか使用されません。それに対して、より軽症の肺炎患者や、健康状態が良好な患者に対しては、通常、肺炎の最も一般的な原因微生物に対して有効な「より狭域の」抗菌薬が選択されます。これらの抗菌薬でも下痢が起こりますが、頻度は下がります。これらの抗菌薬は通常よく効き、より広域の抗菌薬でよくみられるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)腸炎のリスクを低下させることができます。

抗ウイルス薬と抗真菌薬

抗菌薬は、ウイルス性肺炎には効果がありません。インフルエンザや水痘といった、ある種のウイルス感染症が疑われる場合、特定の抗ウイルス薬が投与されることがあります。インフルエンザに対して、症状が始まってから48時間以内に、特定の抗ウイルス薬(オセルタミビルやザナミビルなど)を服用すると、病気の持続時間が短くなり、重症度が下がります。しかし、いったんインフルエンザ肺炎になってしまうと、その抗ウイルス薬が役に立つかどうかよく分かっていません。それでも通常は投与されます。しばしば、ウイルス感染症に続いて細菌性肺炎が発生することがあります。この場合、医師は抗菌薬を投与します。

まれに、真菌または寄生虫が肺炎の原因となることもあり、そのような場合、抗真菌薬または抗寄生虫薬が投与されます。

自宅療養か入院か

肺炎の症状が軽い患者であれば、経口の抗菌薬を服用して、自宅療養することもよくあります。高齢者や乳児のほか、息切れがあったり、病状が重かったり、もともと肺または心臓の病気がある人は、通常は入院して、抗菌薬、抗ウイルス薬、または抗真菌薬の静脈内投与を開始します。抗菌薬は通常、数日後には経口投与に変更されます。入院が必要な患者では、酸素投与や輸液も必要になることがあります。病状が非常に重い患者には、鎮静薬を投与し、一時的に人工呼吸器(のどに挿入した管を介して肺へ空気を出し入れする装置)による管理を行うこともあります。

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