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兵器としての生物剤

執筆者:

James M. Madsen

, MD, MPH, U.S. Army Medical Research Institute of Chemical Defense (USAMRICD)

最終査読/改訂年月 2013年 9月
本ページのリソース

生物戦とは,敵対的な目的で病原微生物を使用することである。そのような使用は国際法に反しており,20世紀にほとんどの大国が行った生物剤の大規模な製造および備蓄(複数の薬剤への耐性をもつ株の開発を含む)にもかかわらず,近代史において正式な戦争中に使用された例はほとんどない。最も懸念されるのは,テロリスト集団による生物兵器の使用である。一部の人は生物兵器がテロリストにとっては理想的な兵器であると考えている。秘かに散布される可能性があり,作用が遅効性であり,使用者が特定されないままとなる可能性がある。

米国Centers for Disease Control and Prevention(CDC)は,生物剤および毒素の優先度リストを作成している( CDCの優先度の高い生物剤および毒素)。最優先はカテゴリーAである。

多数の被害者を出す生物兵器の意図的な使用は,おそらく吸入により疾患を引き起こすためのエアロゾルの散布を伴うため,そのような状況では肺炭疽と肺ペストの2つが最も可能性の高い疾患である。

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CDCの優先度の高い生物剤および毒素

カテゴリー

物質

A:最も高い優先度

炭疽菌(Bacillus anthracis),炭疽を引き起こす

ボツリヌス菌( Clostridium botulinum)のボツリヌス毒素,ボツリヌス症を引き起こす

ペスト菌(Yersinia pestis),ペストを引き起こす

天然痘ウイルス,大痘瘡(古典的天然痘)を引き起こす

野兎病菌(Francisella tularensis),野兎病を引き起こす

ウイルス性出血熱(VHF)ウイルス

  • アレナウイルス科,ラッサ熱および新世界VHF(マチュポ,フニン,グアナリト,サビア出血熱)を引き起こす

  • ブンヤウイルス科,クリミア・コンゴ出血熱およびリフトバレー熱を引き起こす

  • フィロウイルス科,エボラウイルス感染症およびマールブルグウイルス感染症を引き起こす

  • フラビウイルス科,黄熱,オムスク出血熱,およびKyasanur Forest病を引き起こす

B:2番目に高い優先度

Brucella属,ブルセラ症を引き起こす

Clostridium perfringensのイプシロン毒素

Salmonella属,大腸菌(Escherichia coli )0157:H7,Shigella属,食中毒を引き起こす

Burkholderia mallei,鼻疽を引き起こす

類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei),類鼻疽を引き起こす

Chlamydia psittaci,オウム病を引き起こす

Coxiella burnetii,Q熱を引き起こす

Ricinus communisのリシン毒素

ブドウ球菌エンテロトキシンB

発疹チフスリケッチア(Rickettsia prowazekii),発疹チフスを引き起こす

ウイルス性脳炎(例,ベネズエラウマ脳炎,東部ウマ脳炎,および西部ウマ脳炎)を引き起こすアルファウイルス属

コレラ菌(Vibrio cholerae),Cryptosporidium parvum,およびその他の病原体,水系感染症を引き起こす

C:3番目に高い優先度

ニパウイルス,ハンタウイルス,SARSコロナウイルス,およびインフルエンザのパンデミックを引き起こす能力があるインフルエンザウイルス

新興感染症に関連する他の病原体

CDC = US Centers for Disease Control and Prevention;SARS = 重症急性呼吸器症候群。

認識

生物兵器の使用は,感染症の自然なアウトブレイクとの区別が難しくなる可能性がある。自然ではなく故意による疾患のアウトブレイクの発生の手がかりとしては以下のものがある:

  • 地域的に通常はみられない疾患

  • 集団の区分間における,症例のまれな分布

  • 建物の中にいた人と外にいた人で有意に異なる発病率

  • 地理的に不連続な地域での別々のアウトブレイク

  • 同じ集団で異なる疾患の複数同時または連続的なアウトブレイク

  • まれな曝露経路(例,吸入)

  • 動物よりもヒトで多く発生している人獣共通感染症

  • 最初に人,続いて典型的な媒介生物で発生している人獣共通感染症

  • 典型的な媒介生物の有病率が低い地域で発生している人獣共通感染症

  • まれな重症度

  • 感染因子のまれな菌株

  • 標準治療に反応しない

症例の疫学的調査と法執行機関との連携が極めて重要であり,また一般市民へのリスクの情報伝達も同様である。

高リスクの生物兵器により生じる疾患の臨床像,診断,および治療については,本マニュアルの別の箇所で考察されている:炭疽( 炭疽),ペスト( ペストおよびその他のエルシニア( Yersinia )感染症),天然痘( 天然痘),野兎病( 野兎病),ウイルス性出血熱( アルボウイルス,アレナウイルス,フィロウイルス)。生物兵器によるアウトブレイクに対する対応は,通常と異なる抗菌薬耐性のパターンに注意が必要であることを除き,自然なアウトブレイクに対する対応と変わらない。

(患者の)隔離および(接触者の)検疫が必要になる場合がある。意図的に拡散される疾患で最も伝播しやすいものは,天然痘(空気感染予防策が必要)および肺ペスト(飛沫感染予防策が必要)である。

対応

生物兵器による疾患は潜伏期間が比較的長いため,ほとんどの患者は病院で助かるか死亡する。入院患者および接触者に対するワクチン,抗菌薬,および抗ウイルス薬の十分な備蓄が必要であり,このような医学的対策を曝露のリスクが高い一般市民に供給する体制が極めて重要である。

本稿で述べられている見解は著者の見解であり,Department of Army,Department of Defense,または米国政府の公式の方針を反映したものではない。

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