類鼻疽は,グラム陰性細菌であるBurkholderia pseudomallei(かつてのPseudomonas pseudomallei)によって引き起こされる感染症である。臨床像は肺炎,敗血症,様々な臓器の限局性感染症などである。診断は染色および培養による。セフタジジムなどの抗菌薬による治療を長期間行う必要がある。
Burkholderia pseudomalleiは土壌および水から分離でき,東南アジア,オーストラリア,中央・西・東アフリカ,インド,中東,および中国に固有で流行している。カリブ諸島,メキシコ,および中南米では散発例の同定が増加している。この細菌は米国南部の土壌からも発見されているが,米国内の症例はほぼ全例が流行地域への旅行後に発生したものである。類鼻疽に罹患するリスクは,冒険旅行者,エコツーリスト,軍人,建設労働者,炭坑労働者のほか,流行地域で汚染された土壌または水と接触して細菌に曝露する可能性がある人々で最も高くなる。
ヒトへの類鼻疽の感染は皮膚の剥離部もしくは熱傷部の汚染,経口摂取,または吸入により起こるが,感染した動物やヒトからの直接伝播は起きない。
流行地域では,以下の患者に起こりやすい:
類鼻疽はバイオテロの手段にもなりうる。
類鼻疽の症状と徴候
類鼻疽は急性に発症する場合もあれば,不顕性の一次感染に続いて何年間も潜伏状態を維持する場合もある。しばしば致死的となる急性敗血症性類鼻疽を除けば,致死率は10%未満である(1)。
急性肺感染症が最も頻度の高い病型である。それは軽度のものから重篤な壊死性肺炎まで様々である。突如として発症する場合と徐々に発症する場合があり,頭痛,食欲不振,胸膜性または鈍い胸痛,全身性の筋肉痛がみられる。発熱は通常39℃を超える。咳嗽,頻呼吸,およびラ音が特徴的である。痰に血液が混じることがある。胸部X線では通常,上葉の浸潤影(consolidation)を認めるほか,しばしば空洞形成がみられ,結核に類似する。結節性病変,薄壁嚢胞,胸水も発生することがある。白血球数は正常から20,000/μL(20 × 109/L)まで幅がある。
急性敗血症性感染症は,敗血症性ショックと多臓器病変で突然発症し,その症状として見当識障害,極度の呼吸困難,重度の頭痛,咽頭炎,上腹部仙痛,下痢,膿疱性皮膚病変などがみられる。高熱,低血圧,頻呼吸,鮮紅色の紅斑性の紅潮,チアノーゼがみられる。筋圧痛が著明となることがある。ときに関節炎または髄膜炎の徴候が生じる。肺の徴候を欠くこともあれば,ラ音,類鼾音,胸膜摩擦音が聴取されることもある。
限局性化膿性感染症は,ほぼ全ての臓器で発生する可能性があるが,頻度が最も高いのは皮膚(または肺)の感染部位と関連リンパ節である。感染の典型的な転移部位としては,肝臓,脾臓,腎臓,前立腺,骨,骨格筋などがある。タイの小児では急性化膿性耳下腺炎がよくみられる。発熱を認めないことがある。
症状と徴候に関する参考文献
1.Currie BJ, Mayo M, Ward LM, et al.The Darwin Prospective Melioidosis Study: a 30-year prospective, observational investigation. Lancet Infect Dis.2021;21(12):1737-1746.doi:10.1016/S1473-3099(21)00022-0
類鼻疽の診断
染色と培養
B. pseudomalleiは,滲出物のメチレンブルーまたはグラム染色および培養により同定できる。血液培養は,著明な菌血症がある場合(例,敗血症)を除き,しばしば陰性のままである。流行地域では,血清学的検査では過去の感染のために陽性となることから,信頼できないことが多い。いくつかの流行国では,様々な抗原検査や核酸検査が利用可能である。
胸部X線では,通常は不整な小結節性(4~10mm)の陰影を認めるが,肺葉性浸潤,両側性気管支肺炎,液貯留,または空洞性病変を認めることもある。
蜂巣様に見えることが多く,臨床像にかかわらず存在する可能性のある膿瘍を検出するために,おそらく肝臓,脾臓,および前立腺の超音波検査またはCTを施行すべきである。肝臓および脾臓を触知できることがある。
肝機能検査,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST),およびビリルビンがしばしば異常値を示す。重症例では腎機能不全および凝固障害が起こることがある。白血球数は正常であるか,20,000/μL(20 × 109/L)程度までわずかに増加する。
類鼻疽の治療
症状のある患者には,抗菌薬の数週間の静注に続き,経口抗菌薬の長期投与
無症候性の類鼻疽には治療は不要である。
症状がある患者には,B. pseudomalleiに対してセフトリアキソンやセフォタキシムより活性が高いセフタジジムを静注で少なくとも10~14日間投与し,より重症または深在性の膿瘍に対しては,より長期間にわたり投与する。イミペネム,メロペネム,およびピペラシリンの静注が代替薬として許容される。続いて,経口抗菌薬(例,トリメトプリム/スルファメトキサゾール[TMP/SMX]またはドキシサイクリン)を3~6カ月間投与する。8歳未満の小児および妊婦では,ドキシサイクリンの代わりにアモキシシリン/クラブラン酸が使用される。
要点
類鼻疽は皮膚接触,摂取,または吸入によって感染が生じるが,感染した動物またはヒトから直接感染することはない。
最もよくみられる臨床像は急性肺感染症(ときに重症)であるが,皮膚や他の多くの臓器で化膿性病変が発生し,結果的に死亡率の高い敗血症に進展することがある。
染色および培養により診断するが,重症敗血症の場合を除いて,血液培養では陰性となることが多い。
症状のある患者にはセフタジジムを静注し,次いでTMP/SMXまたはドキシサイクリンを経口投与する;8歳未満の小児と妊婦には,ドキシサイクリンの代わりにアモキシシリン/クラブラン酸を使用する。



