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Msd マニュアル

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ショック

執筆者:

Marc A. de Moya

, MD, Medical College of Wisconsin

最終査読/改訂年月 2013年 10月
本ページのリソース

ショックとは臓器灌流が低下した状態で,その結果細胞の機能障害および細胞死を生じるものである。関係する機序は,循環血液量の減少,心拍出量の減少,および血管拡張(ときに毛細血管床をバイパスする血液のシャントを伴う)である。症状としては,精神状態の変化,頻脈,低血圧,乏尿などがある。診断は臨床的に下され,血圧測定およびときに組織灌流低下のマーカー(例,血清乳酸濃度,塩基欠乏)も参考にする。治療は急速輸液により行い,必要であれば血液製剤の投与,基礎疾患の是正,ときに昇圧薬の投与も行う。

病態生理

ショックの基礎となる障害は,主要組織への灌流減少である。灌流が低下し,好気性代謝に十分なO2が細胞に運搬されなくなると,細胞の代謝は嫌気性代謝に切り替わり,それに伴いCO2産生が増加して乳酸が蓄積される。細胞機能が低下し,ショックが持続すれば,不可逆的な細胞障害および細胞死が生じる。

ショックの間,灌流が低下した領域で炎症カスケードおよび凝固カスケードが活性化されることがある。低酸素状態の血管内皮細胞は白血球を活性化させ,白血球は内皮に付着して,直接障害物質(例,活性酸素,タンパク分解酵素)および炎症メディエータ(例,サイトカイン,ロイコトリエン,腫瘍壊死因子[TNF])を放出する。これらのメディエータの一部は細胞表面の受容体に結合して核内因子κB(NFκB)を活性化し,NFκBはさらなるサイトカインおよび強力な血管拡張物質である一酸化窒素(NO)の産生を促す。敗血症性ショック( 敗血症および敗血症性ショック)は細菌毒素,特に内毒素 (endotoxin)の作用があるため他の型のショックよりも炎症反応を促進する可能性がある。

敗血症性ショックでは,容量血管が拡張し,「相対的」循環血液量減少(すなわち,循環血液量で満たせないほどの血管容量の増大)が起こることで,血液の貯留および低血圧を来す。局所的に血管が拡張すると血液は毛細血管(交換血管)床を通らないことがあり,心拍出量および血圧が正常であるにもかかわらず,局所的な灌流低下が生じる。さらに,過剰なNOは,ミトコンドリアを傷害してATP産生を減少させるフリーラジカルであるペルオキシナイトライト(peroxynitrite)になる。

敗血症性ショックでは,大血管における血流は保たれていても,毛細血管を含む微小血管への血流は減少する。このように基質の運搬が減少することは,物理的な微小血管閉塞に伴う現象として少なくとも部分的に説明できる。白血球および血小板が内皮に接着し,凝固システムが活性化され,フィブリンの沈着が起こる。

内皮細胞の機能不全と相俟って,多様なメディエータにより微小血管透過性が著しく亢進し,体液および,ときに血漿タンパクが間質腔へ滲出する。消化管では,透過性が亢進することにより腸内細菌が管腔から移動することがあり,これにより敗血症または転移性感染症(metastatic infection)を来す可能性がある。

好中球のアポトーシスが阻害されることで,炎症メディエータの放出が増大する可能性がある。他の細胞ではアポトーシスが促進され,細胞死が増加するので臓器機能が悪化する可能性がある。

ショックの早期では血圧は必ずしも低くない(ただし,ショックが改善されなければ,最終的には低血圧を来す)。同様に,血圧の「低い」患者が,必ずしもショックを起こしているわけではない。低血圧の程度および影響は,十分な生理的代償が行われるかどうか,および患者の基礎疾患によって異なる。したがって,比較的健康な若年者には耐えられる中等度の低血圧でも,相当の動脈硬化がある高齢者では脳,心臓,または腎臓に重度の機能障害を来すことがある。

代償

O2運搬能(DO2)が減少するとき,組織は運搬されたO2からの摂取率を高めることによって,まずは代償する。動脈圧が低下するとアドレナリン作動性応答が惹起され,交感神経を介した血管収縮および,しばしば心拍数の増加を来す。初めのうちは血管収縮は選択的であり,血液を内臓循環から心臓および脳に送る。循環血中βアドレナリン性アミン( アドレナリン ノルアドレナリン)もまた,心臓の収縮性を増大させ,副腎からコルチコステロイド,腎臓からレニン,肝臓からグルコースを放出させる。増加したグルコースは病的状態のミトコンドリアでは処理しきれず,さらなる乳酸の産生を引き起こしうる。

再灌流

虚血細胞の再灌流はさらなる障害を引き起こしうる。基質の運搬が再開すると,好中球の活性が高まり,有害なスーパーオキシドおよびヒドロキシルラジカルの産生を増大させることがある。血流が回復すると,炎症メディエータは他の臓器に運ばれる可能性がある。

多臓器不全症候群(MODS)

直接的な障害および再灌流による障害は,MODS(生命を脅かす疾患または障害に起因する複数臓器の進行性機能障害)を引き起こす可能性がある。MODSはあらゆる型のショックに続発しうるが,感染症が関与することが非常に多い;臓器不全は敗血症性ショックを定義する特徴の1つである( 敗血症および敗血症性ショック)。また,MODSは重症外傷患者の > 10%以上に起こり,24時間を超えて生存している重症外傷患者における死因の第1位である。

あらゆる器官系が侵されうるが,最も標的となることが多い臓器は肺で,肺における膜透過性の亢進により,肺胞への体液貯留およびさらなる炎症が生じる。低酸素症の進行に伴い,酸素投与への抵抗性が増大する。この症状は急性肺損傷と呼ばれ,重症の場合,急性呼吸窮迫症候群(ARDS― 急性低酸素血症性呼吸不全 (AHRF,ARDS))と呼ばれる。

腎臓の灌流が著しく低下すると腎臓は障害され,急性尿細管壊死および腎機能不全を来し,血清クレアチニンの進行性の上昇および乏尿を来す。

心臓では,冠灌流の減少およびメディエータ(TNFおよびIL-1を含む)の増加により,収縮能が低下し,心筋のコンプライアンスが悪化し,β受容体のダウンレギュレーションが起こりうる。これらの要因により心拍出量が減少し,心筋および全身の灌流の両方がさらに悪化し,悪循環を来してしばしば死に至る。不整脈を起こすこともある。

消化管ではイレウスおよび粘膜下出血が発生しうる。肝臓の灌流が低下すると,局所的または広範囲の肝細胞壊死,トランスアミナーゼおよびビリルビンの上昇,および凝固因子の産生低下を来しうる。

病因と分類

臓器灌流低下およびショックにはいくつかの機序がある。ショックの原因は,循環血液量の減少(循環血液量減少性ショック),血管拡張(血液分布異常性ショック),一次性の心拍出量の減少(心原性および閉塞性ショックの両方),またはこれらの組み合わせである。

循環血液量減少性ショック

循環血液量減少性ショックは,血管内容量の危機的な減少により生じる。静脈還流(前負荷)が減少すると,心室が充満せず,一回拍出量が減少する。心拍数の増加によって代償されない限り,心拍出量は減少する。

一般的な原因は出血(出血性ショック)で,通常,外傷,外科手術,消化性潰瘍,食道静脈瘤,または大動脈瘤破裂によって起こる。出血は顕性(例,吐血,黒色便)のこともあれば不顕性(例,異所性妊娠の破裂)のこともある。

循環血液量減少性ショックはまた,血液以外の体液の大量喪失によって起こることもある( 体液減少により引き起こされる循環血液量減少性ショック)。

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体液減少により引き起こされる循環血液量減少性ショック

体液喪失部位

喪失の機序

皮膚

熱または化学薬品による熱傷,過度の熱曝露による発汗

消化管

嘔吐,下痢

腎臓

糖尿病または尿崩症,副腎機能不全,塩類喪失性腎炎,急性尿細管障害後の多尿期,強力な利尿薬の使用

血管内容液の血管外への喪失

毛細血管透過性の亢進(炎症または外傷[例,挫滅],低酸素症,心停止,敗血症,腸管虚血,急性膵炎に続発する)

循環血液量減少性ショックは不十分な水分摂取に起因することもある(体液喪失の増加を伴う場合と伴わない場合がある)。水が手に入らない場合,神経学的障害により口渇を感じる機構が損なわれている場合,または身体障害のため物理的に摂取が困難な場合がある。

入院患者において,循環不全の初期徴候が誤って心不全と解釈され,輸液を制限されるか,または利尿薬が投与されると,循環血液量減少が悪化しうる。

血液分布異常性ショック

血液分布異常性ショックは,動脈または静脈の拡張により相対的に血管内容量が不十分になることに起因する;循環血液量は正常である。一部の症例では,心拍出量(およびDO2)は高いが,動静脈シャントによって毛細血管床をバイパスする血流が増加する;このバイパスに加え,細胞内酸素運搬の脱共役により,細胞の灌流低下(酸素消費量の減少によって示される)が生じる。また別の状況では,血液が静脈床に貯留し,心拍出量が減少する。

血液分布異常性ショックの原因には,アナフィラキシー(アナフィラキシーショック― アナフィラキシー);内毒素(エンドトキシン)放出を伴う細菌感染症(敗血症性ショック― 敗血症および敗血症性ショック);重度の脊髄損傷,通常T4より高位(神経原性ショック);ならびに硝酸薬,オピオイド,およびアドレナリン遮断薬など,特定の薬物または毒物の摂取などがありうる。アナフィラキシーショックおよび敗血症性ショックは,しばしば循環血液量減少という要素も併せもつ。

心原性および閉塞性ショック

心原性ショックは,一次性心疾患に起因する心拍出量の相対的または絶対的な減少である。閉塞性ショックは,心臓または大血管の充満または駆出を阻害する物理的因子によって,引き起こされる。原因を 心原性および閉塞性ショックの機序に示す。

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心原性および閉塞性ショックの機序

種類

機序

成因

閉塞性

心室充満を妨げる物理的な障害

緊張性気胸,大静脈の圧迫,心タンポナーデ,心房内腫瘍または血栓

心室駆出の妨害

肺塞栓症

心原性

心筋収縮性の低下

心筋虚血または心筋梗塞,心筋炎,薬物

心拍リズムの異常

頻脈,徐脈

心臓の器質的疾患

急性の僧帽弁逆流または大動脈弁逆流,心室中隔破裂,人工弁の機能不全

症状と徴候

嗜眠,錯乱,および傾眠状態がよくみられる。手足は蒼白で冷たく湿り,しばしばチアノーゼを呈し,耳介,鼻,および爪床にもチアノーゼを認める。毛細血管再充満時間は延長し,血液分布異常性ショックを除いては,皮膚は灰色または黒みがかって湿潤する。著明な発汗を生じることがある。末梢の脈拍は弱く一般的には速い;しばしば,大腿動脈または頸動脈の拍動のみ触知できる。頻呼吸および過換気がみられることがある。血圧は低い(収縮期血圧が90mmHg未満)か測定不能となる傾向にある;動脈カテーテルによる直接測定( 血管確保 : 手技)を行った場合,より高くより正確な値が得られることが多い。尿量は少ない。

血液分布異常性ショックでも同様の症状を呈するが,例外的に皮膚は温かいか紅潮していることがある(特に敗血症の場合)。脈拍は弱いというより跳ねるように触れる(bounding pulse)ことがある。敗血症性ショックでは,発熱(通常,悪寒に続いて起こる)がよくみられる。アナフィラキシーショックの患者の中には,蕁麻疹または喘鳴を呈するものもいる。

その他,多くの症状(例,胸痛,呼吸困難,腹痛)が,基礎疾患または続発する臓器不全によって起こりうる。

診断

  • 臨床的評価

  • 検査結果の傾向

診断は主に臨床的に下され,組織灌流が不十分なことを示す所見(意識障害,乏尿,末梢性チアノーゼ)および代償機構が働いていることを示す徴候(頻脈,頻呼吸,発汗)による。具体的な基準には,意識障害,心拍数 > 100回/分,呼吸数 > 22回/分,低血圧(収縮期血圧 < 90mmHg)または通常の血圧から30mmHgの低下,および尿量 < 0.5mL/kg/時などがある。診断を裏付ける臨床検査所見には,乳酸 > 3mmol/L,塩基欠乏 <4mEq/L,およびPaco2< 32mmHgなどがある。しかしながら,これらの所見のいずれも単独では診断の役に立たず,身体徴候も含め各所見は傾向(すなわち悪化しているか改善しているか)および総合的な臨床状況により評価される。最近では,ショックの程度を測定しうる非侵襲的で迅速な技術として舌下PCO2測定および近赤外線分光法が取り入れられつつある;しかしながら,より大規模な研究ではこれらの技術の妥当性は確認されていない。

原因の診断

ショックの原因を認識することは,ショックの型を分類することより重要である。原因は明らかであるか,病歴および身体所見に簡単な検査を加えることで,すぐに認識できることが多い。

胸痛(呼吸困難を伴うまたは伴わない)は心筋梗塞,大動脈解離,または肺塞栓を示唆する。収縮期雑音は,急性心筋梗塞による心室中隔破裂または僧帽弁閉鎖不全を示す。拡張期雑音は大動脈基部にかかる大動脈解離による大動脈弁逆流を示す。心タンポナーデは頸静脈怒張,心音減弱,および奇脈によって示唆される。ショックを引き起こすほど重症の肺塞栓は,一般的には酸素飽和度を低下させ,長期臥床や手術後といった特殊な状況下により多くみられる。検査には,心電図,トロポニンI,胸部X線,動脈血ガス,肺シンチグラフィー,ヘリカルCT,心エコー検査などがある。

腹部または背部の痛み,もしくは腹部の圧痛は,膵炎,腹部大動脈瘤破裂,腹膜炎,および,妊娠可能年齢の女性では異所性妊娠破裂を示唆する。正中部の拍動性腫瘤は,腹部大動脈瘤破裂を示唆する。付属器腫瘤の圧痛は異所性妊娠を示唆する。一般的に行う検査には,腹部CT(患者が不安定な場合はベッドサイド超音波検査が役立つことがある),血算,アミラーゼ,リパーゼ,妊娠可能年齢の女性では尿妊娠検査などがある。

発熱,悪寒,および局所の感染徴候は敗血症性ショックを示唆し,特に易感染性患者ではその可能性が高い。発熱のみを認める場合は,病歴と臨床状況によっては,熱中症を示唆している可能性がある。検査には胸部X線,尿検査,血算,ならびに傷,血液,尿,および他の関連する体液の培養などがある。

ごく一部の患者では,原因が臨床的に明らかでない。原因を示唆する局所の症状または徴候がない患者では,心電図,心筋酵素,胸部X線,および動脈血ガスを施行すべきである。これらの検査結果が正常であれば,最も可能性の高い原因は薬物過剰摂取,潜在する感染症(毒素性ショックも含む),アナフィラキシー,および閉塞性ショックなどである。

補助検査

まだ行っていなければ,心電図,胸部X線,血算,血清電解質,BUN,クレアチニン,PT,PTT,肝機能検査,フィブリノーゲンおよびフィブリン分解産物の検査を行うことにより,ベースラインの値をとり,患者の状態をモニタリングする。患者の血液量の判定が困難な場合は,中心静脈圧(CVP)または肺動脈楔入圧(PAOP)のモニタリングが有用となることがある。CVPが5mmHg未満(7cmH2O未満)またはPAOPが8mmHg未満の場合,循環血液量減少が示唆されるが,肺高血圧症を有する血液量減少患者では,CVPがその値よりも高いことがある。ショックの評価では,心臓が十分充満し機能に異常がないかを評価するため,ベッドサイドでの迅速心エコー検査(治療に当たっている医師による)の使用頻度が高まっている。

予後と治療

無治療の場合,ショックは通常致死的である。たとえ治療されても,心筋梗塞に続発する心原性ショックの死亡率(60~65%)および敗血症性ショックの死亡率(30~40%)は高い。予後は,原因,基礎疾患または合併症,発症から診断までの時間,ならびに治療の迅速さおよび適正さに左右される。

一般的な管理

応急処置として患者を保温する。外出血をコントロールし,気道および換気を確認し,必要であれば呼吸補助を行う。経口では何も与えず,嘔吐が起こった場合の誤嚥を避けるために患者の頭部を横に向ける。

評価と同時に治療を開始する。フェイスマスクによる酸素投与を行う。ショックが重度である,または換気が不十分である場合,挿管して機械的人工換気( 気管挿管)を行う必要がある。2本の太い(14~16G)静脈カテーテルを,別々の末梢静脈に挿入する。末梢静脈が速やかに確保できないとき,特に小児では,中心静脈ラインまたは骨髄針が代用される( 血管確保 : 骨髄内輸液)。

一般的には,1L(または,小児では20mL/kg)の生理食塩水が15分かけて輸液される。大出血の場合は,乳酸リンゲル液が一般的に用いられる。臨床的パラメータが正常に戻るまで,輸液を繰り返す。右心負荷が高い徴候(例,頸静脈怒張)がある患者,または急性心筋梗塞の患者に対しては,より低容量(例,250~500mL)が用いられる。肺水腫の徴候がある患者への輸液は,おそらく行うべきでない。さらなる輸液療法は基礎疾患に基づいて行い,CVPまたはPAOPのモニタリングを必要とすることがある。ベッドサイドでの心臓超音波検査によって収縮力および大静脈の呼吸性変動を評価することは,輸液の追加か強心薬による補助のどちらが必要かを決定するのに役に立つことがある。

ショック状態の患者は重症(critically ill)であり,ICUに収容すべきである。モニタリングでは,心電図;収縮期,拡張期,および平均血圧(動脈カテーテルによる測定が望ましい);呼吸の回数および深さ;パルスオキシメトリー;尿量(膀胱留置カテーテルによる);体温;意識(例,グラスゴー昏睡スケール[Glasgow Coma Scale]― グラスゴー昏睡スケール(Glasgow Coma Scale)*),容積脈波(pulse volume),皮膚温,および皮膚色といった臨床状態などを調べる。先端バルーン付き肺動脈カテーテル ( 集中治療が必要な患者のモニタリングおよび検査 : 手技)を用いて,CVP,PAOP,および熱希釈法による心拍出量を測定することは,原因不明もしくは病因が複数あるショック,または重度のショックの患者における診断および初期管理に役立ち,特に乏尿もしくは肺水腫を伴う場合に有用である。心エコー検査(ベッドサイドまたは経食道による)は侵襲性の低い代用手段である。動脈血ガス,ヘマトクリット,電解質,血清クレアチニン,および血中乳酸を継続して測定すべきである。舌下CO2測定( その他の種類のモニタリング)が利用できるならば,内臓灌流を非侵襲的にモニタリングできる。これらのモニタリングには,よく設計されたフローシートが役に立つ。

組織灌流低下により筋肉内投与での吸収があてにできなくたるため,全ての非経口(parenteral)薬剤は静脈内投与される。オピオイドは血管拡張を起こしうるため一般的に避けられるが,重度の痛みの治療としてモルヒネ1~4mgを2分間かけて静脈内投与することがあり,必要であればこれを10~15分毎に繰り返す。脳の灌流が低下すると不安を呈することがあるが,鎮静薬または精神安定薬はルーチンには投与しない。

初期対応としての蘇生処置の後,背景となる病態の改善に向けて特異的治療が行われる。引き続いて行われる支持療法はショックの型による。

出血性ショック

出血性ショックでは,外科的な止血処置が最も優先される。補液( 急速輸液)は,外科的止血の前ではなく同時に行う。血液製剤および電解質輸液が蘇生処置として使用される;しかしながら,大量の輸液が必要となる可能性が高い患者では,早めに濃厚赤血球および血漿を1対1の比率で使用することを考慮する( 血液製剤)。反応がなければ,通常,投与量不足または進行中の出血が見逃されていることが示唆される。心原性,閉塞性,または血液分布異常性の原因が併存している場合を除き,出血性ショックの治療で昇圧薬は適応とならない。

血液分布異常性ショック

血液分布異常性ショックがあり,生理食塩水による初期の補液後も著しい低血圧を伴う場合は,強心薬または昇圧薬(例,ドパミン,ノルアドレナリン― 変力性および血管作動性のカテコールアミン)によって治療されることがある。敗血症性ショックの患者には広域抗菌薬も投与する( 抗菌薬)。アナフィラキシーショックの患者が輸液負荷に反応しない場合(特に気管支収縮を伴う場合),アドレナリン0.05~0.1mgの静注を行い,その後,アドレナリン5mgを5%ブドウ糖溶液500mLに溶解し,10mL/時または0.02μg/kg/分で点滴する( アナフィラキシー)。

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変力性および血管作動性のカテコールアミン

薬剤

用量

血行動態に及ぼす作用

ノルアドレナリン

5%ブドウ糖溶液250mLまたは500mL中に4mg溶解し,8~12μg/分で持続静注を開始し,その後2~4μg/分で維持するが,投与速度には大きな幅がある

αアドレナリン作用:血管収縮

βアドレナリン作用:変力作用,変時作用*

ドパミン

5%ブドウ糖溶液500mL中に400mgを溶解し,0.3mL~1.25mL(250~1000μg)/分で持続静注

低用量では2~10μg/kg/分

高用量では20μg/kg/分

αアドレナリン作用:血管収縮

βアドレナリン作用:変力作用,変時作用,血管拡張

非アドレナリン作用:腎臓および内臓の血管拡張

ドブタミン

5%ブドウ糖溶液250mL中に250mgを溶解し,2.5~10μg/kg/分で持続静注

βアドレナリン作用:変力作用

*動脈圧が過剰に上昇している場合,効果は明らかではない。

作用は投与量および基礎にある病態生理に左右される。

変時作用,不整脈を起こす作用,および血管への直接作用は,低用量では最小である。

心原性ショック

心原性ショックでは,器質的疾患(例,弁機能不全,中隔破裂)は外科的に修復される。冠動脈血栓症は,経皮的インターベンション(血管形成術,ステント留置術),冠動脈バイパス手術,または血栓溶解療法( 冠動脈疾患の概要)のいずれかによって治療される。頻拍性不整脈(例,頻拍性心房細動,心室頻拍)は,電気的除細動または薬剤の使用によりコントロールする。徐脈は経皮または経静脈ペーシングにより治療され,ペースメーカーを留置するまでは,アトロピン0.5mg(最大で4回)が静注で5分毎に投与されることがある。もしアトロピンが無効ならば,イソプロテレノール(5%ブドウ糖溶液500mLに2mgを溶解し,1~4μg/分[0.25~1mL/分])がときとして有用であるが,冠動脈疾患による心筋虚血の患者には推奨されない。

急性心筋梗塞後のショックは,PAOPが低いまたは正常であれば循環血液量の増量により治療される;PAOPは15~18mmHgが至適と考えられている。肺動脈カテーテルが留置されていない場合,慎重に輸液(生理食塩水250~500mLのボーラス投与)を試みることがあるが,一方で体液過剰の徴候をチェックするため胸部を頻繁に聴診する。右室梗塞後のショックは,通常部分的には輸液に反応する;しかしながら,昇圧薬が必要になることもある。ベッドサイドでの心臓超音波検査によって収縮力および大静脈の呼吸性変動を評価することは,輸液の追加か昇圧薬による補助のどちらが必要かを決定するのに役に立つことがある;心室充満が正常または正常以上の患者では,強心薬による補助の方がよい。

中等度の低血圧(例,平均動脈圧[MAP]が70~90mmHg)であれば,心拍出量を増大させ,左室充満圧を低下させるためにドブタミンを点滴することがある。ドブタミンの投与中は,特に高用量の場合,ときに頻拍および不整脈が起こり,投与量を少なくすることが必要となる。血管拡張薬(例,ニトロプルシド,ニトログリセリン)は,静脈容量を増加させるまたは全身血管抵抗を低下させるので,重度の低血圧がない患者では,障害された心筋にかかる仕事量を軽減させ,また心拍出量を増加させることもある。併用療法(例,ドパミンまたはドブタミンにニトロプルシドまたはニトログリセリンを併用)が特に有用な場合もあるが,心電図ならびに肺および全身の血行動態の綿密なモニタリングが必要である。

より重篤な低血圧(MAPが70mmHg未満)の場合,収縮期血圧80~90mmHg(110mmHgを超えないこと)を目標として,ノルアドレナリンまたはドパミンが投与される。大動脈内バルーンパンピングによるカウンターパルセーションは,急性心筋梗塞の患者で一時的にショックを改善するのに役に立つ。急性心筋梗塞の患者で心室中隔破裂を合併する場合,または重度の急性僧帽弁逆流を合併し > 30分の昇圧薬の投与を必要とする場合,この治療法は,外科的介入の前に心臓カテーテル検査および冠動脈造影を行うための橋渡しとみなすべきである。

閉塞性ショックにおいて,外傷によらない心タンポナーデは迅速な心嚢穿刺を必要とするが,処置はベッドサイドで行える。外傷に関連する心タンポナーデは,外科的減圧および修復を必要とする。緊張性気胸は,第2肋間鎖骨中線上からカテーテルを挿入することによって直ちに減圧すべきである;その後,胸腔ドレーンを挿入する。ショックを引き起こす広範な肺塞栓は,抗凝固療法および血栓溶解療法,外科的塞栓除去術,または特定の症例では体外式膜型人工肺によって治療される。

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