バソプレシン抵抗症

(腎性尿崩症)

執筆者:L. Aimee Hechanova, MD, Texas Tech University Health Sciences Center, El Paso
Reviewed ByNavin Jaipaul, MD, MHS, Loma Linda University School of Medicine
レビュー/改訂 修正済み 2024年 4月
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バソプレシン抵抗症(arginine vasopressin resistance:AVP-R)は,かつては腎性尿崩症(NDI)として知られていたもので,バソプレシン(ADH)に対する尿細管の反応が障害されることで,尿が濃縮されなくなる結果,希釈尿が大量に排泄されるようになる病態である。遺伝性に発生する場合と,腎臓の濃縮能を障害する病態に続発する場合がある。症状と徴候は,多尿および脱水のほか,高ナトリウム血症に関連するものがみられる。診断は,摂水制限後および外因性バソプレシン投与後の尿浸透圧変化の測定に基づく。治療は十分な水分摂取,サイアザイド系利尿薬,非ステロイド系抗炎症薬,および低塩低タンパク質食で構成される。

尿細管輸送異常に関する序論およびバソプレシン分泌低下症も参照のこと。)

かつては腎性尿崩症(NDI)として知られていたバソプレシン抵抗症(1)は,バソプレシンに対する反応として尿の濃縮が起きないことを特徴とする。バソプレシン分泌低下症(かつては中枢性尿崩症として知られていた)は,バソプレシンの欠乏を特徴とする。バソプレシン抵抗症とバソプレシン分泌低下症は,どちらも完全型と部分型がある。

総論の参考文献

  1. 1.Arima H, Cheetham T, Christ-Crain M, et al: Changing the Name of Diabetes Insipidus: A Position Statement of the Working Group for Renaming Diabetes Insipidus.J Clin Endocrinol Metab 108(1):1-3, 2022.doi: 10.1210/clinem/dgac547

バソプレシン抵抗症の病因

バソプレシン抵抗症は以下の場合がある:

  • 遺伝性

  • 後天性

遺伝性バソプレシン抵抗症

最も頻度の高い遺伝性バソプレシン抵抗症はX連鎖性であり,ヘテロ接合体の女性における浸透率は一定でなく,アルギニンバソプレシン(AVP)受容体2遺伝子に影響を及ぼす。ヘテロ接合体の女性では,全く症状がみられない場合もあれば,様々な程度の多尿および多飲がみられる場合もあり,男性と同等の重症度になることもある。

まれな症例では,バソプレシン抵抗症はアクアポリン2遺伝子に影響を及ぼす常染色体潜性(劣性)または常染色体顕性(優性)変異に起因し,男性および女性のいずれにも影響を及ぼす可能性がある。

後天性バソプレシン抵抗症

後天性バソプレシン抵抗症は疾患(多くは尿細管間質性疾患)または薬剤によって髄質または遠位ネフロンが損傷し,尿濃縮能が損なわれる結果,腎がバソプレシンに対して非感受性の様相を呈することで起こりうる。そのような疾患としては以下のものがある:

後天性バソプレシン抵抗症は特発性の場合もある。軽症型の後天性バソプレシン抵抗症であれば,高齢または健康状態不良な患者や急性または慢性の腎機能不全がある患者なら誰にでも起こりうる。

さらに,特定の臨床症候群がバソプレシン抵抗症と類似する場合もある:

  • 妊娠の後半には,胎盤からバソプレシナーゼが分泌されることがある(妊娠尿崩症と呼ばれる症候群)。

  • 下垂体手術後には,一部の患者ではバソプレシンではなく,活性のないADH前駆体が分泌される。

バソプレシン抵抗症の症状と徴候

大量の希釈尿の生成(3~20L/日)が特徴である。患者は典型的に良好な口渇反応を有し,血清ナトリウム値はほぼ正常を維持する。しかしながら,適切な水分摂取が難しい環境にあるか,口渇を訴えることができない患者(例,乳児,認知症の高齢患者)は,典型的に極度の脱水のために高ナトリウム血症を発症する。高ナトリウム血症は神経症状を引き起こす場合があり,具体的には神経筋の興奮性亢進,錯乱,痙攣発作,昏睡などがある。尿管拡張はまれであるが,尿量の多い重症例で起こる可能性がある。

バソプレシン抵抗症の診断

  • 24時間尿量および浸透圧

  • 血清電解質

  • 水制限試験

多尿がみられる場合,全例でバソプレシン抵抗症が疑われる。乳児では,多尿が養育者によって気づかれる場合があり,それ以外の場合には脱水が最初の症状となることがある。

最初の検査には尿量および浸透圧に関する24時間蓄尿(水分制限はしない)および血清電解質がある。

バソプレシン抵抗症の患者は1日の尿量が50mL/kgを上回る(多尿)。尿浸透圧が300mOsm/kg[300mmol/L]未満の場合(水利尿として知られる)は,バソプレシン分泌低下症または抵抗症である可能性が高い。バソプレシン抵抗症では,循環血液量減少の臨床徴候にもかかわらず,尿浸透圧が典型的には200mOsm/kg(200mmol/L)未満となる(バソプレシン抵抗症がなければ,循環血液量減少がある患者の尿浸透圧は高値となる)。浸透圧が300mOsm/kg(300mmol/L)を超える場合,溶質利尿の可能性が高い。糖尿および溶質利尿のその他の原因が除外されなければならない。

血清ナトリウム値は,水分を十分に摂取している患者では軽度に上昇するが(142~145mEq/Lまたは142~145mmol/L),水分摂取が不十分な患者では劇的に上昇することがある。

水制限試験

最大尿濃縮能と外因性バソプレシンに対する反応を評価する水制限試験によって,診断が確定される。

この検査では,尿量と尿浸透圧を1時間毎に測定し,血清浸透圧を2時間毎に測定する。3~6時間の摂水制限後に尿の最大浸透圧を測定すると,バソプレシン抵抗症の患者では異常低値となる(300mOsm/kgまたは300mmol/L未満)。バソプレシン抵抗症とバソプレシン分泌低下症(バソプレシンの欠乏)の鑑別は,外因性バソプレシン(水性バソプレシン5単位,皮下,またはデスモプレシン10μg,鼻腔内)を投与して,尿浸透圧を測定することで可能である。バソプレシン分泌低下症の患者では,外因性バソプレシンの投与後2時間にわたり尿浸透圧が50~100%(部分型バソプレシン分泌低下症では15~45%)上昇する。バソプレシン抵抗症の患者では通常,尿浸透圧の上昇は最小限のみである(50mOsm/kg[50mmol/L]未満,部分型バソプレシン抵抗症患者では最大45%)。

バソプレシン抵抗症の治療

  • 十分な水分摂取

  • 塩分およびタンパク質の食事制限

  • 原因の是正

  • ときにサイアザイド系利尿薬,非ステロイド系抗炎症薬(NSAID),アミロライド(amiloride)

治療は,十分な水分摂取の確保,低塩低タンパク質食,および原因の是正または可能性の高い腎毒性物質の中止で構成される。随意の水分摂取が可能な患者においては,重篤な続発症はまれである。

これらの処置にもかかわらず症状が持続する場合は,尿量を低下させるため薬剤を投与することができる。サイアザイド系利尿薬(例,ヒドロクロロチアジド,25mg,経口,1日1回または1日2回)は,集合管のバソプレシン感受性部位への水の送達を低下させることで,逆説的に尿量を減少させることができる。NSAID(例,インドメタシン)またはアミロライド(amiloride)も役立つ可能性がある。

バソプレシン抵抗症の予後

遺伝性バソプレシン抵抗症の乳児に対して早期に治療が開始されないと,不可逆的な知的障害を伴う脳損傷が起こる可能性がある。治療を行った場合も,患児の身体発育はおそらく頻回の脱水のためにしばしば遅滞する。バソプレシン抵抗症の合併症は,尿管拡張以外は,いずれも十分な水分摂取により予防が可能である。

要点

  • バソプレシン抵抗症の患者はバソプレシンに対する尿細管の反応が障害されているため,尿を濃縮できない。

  • 典型的には大量の希釈尿の排泄がみられ,適切な口渇反応を呈し,血清ナトリウム値はほぼ正常である。

  • 多尿または家族歴を有する乳児では,遺伝性バソプレシン抵抗症を考慮して予防可能な神経学的後遺症を最小限にとどめる。

  • 24時間尿量および浸透圧ならびに血清電解質を測定する。

  • 診断は水制限試験によって確定する。

  • 十分な水分摂取を確保し,食事での塩分およびタンパク質の摂取を制限し,必要に応じてサイアザイド系利尿薬またはアミロライド(amiloride)を使用する。

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