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青年期における薬物および物質の使用

執筆者:

Sharon Levy

, MD, MPH, Harvard Medical School

レビュー/改訂 2020年 9月
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青年の物質の使用は,散発的なものから重度の 物質使用障害 物質使用障害 物質使用障害は 物質関連障害の一種であり,物質の使用に関連する重大な問題を体験しているにもかかわらず,患者がその物質を使用し続ける病的な行動パターンを伴う。脳内神経回路の変化などの生理学的臨床像が認められることもある。 関わる物質は多くの場合, 一般的に物質関連障害を引き起こす10の薬物クラスに含まれるものである。このような物質はいずれも脳内報酬系を直接活性化し,快感をもたらす。活性化が非常に強いために,患者はその物質を強く渇望し,その... さらに読む まで多岐にわたる。使用する物質の種類,使用状況,および使用頻度によって,急性ないし長期にわたる影響は最小限から,軽微,または生命を脅かす場合まで様々である。しかし,時折の使用であっても,過剰摂取,自動車事故, 暴力行動 暴力 青年期は自立心が発達する時期である。典型的には,青年は親のルールに疑問を抱いたり異議を唱えたりすることで自立心を発揮するが,これはときにルールを破ることにもつながる。親および医療従事者は,時折生じる判断の誤りと,専門家の介入を要するレベルの問題行動とを鑑別しなければならない。規則違反の深刻度および頻度が参考になる。例えば,大量飲酒を繰り返したり無断欠席または窃盗を繰り返すことは,同じ行為が独立して起こる場合と比べ,はるかに重大である。秩... さらに読む ,および性的接触(例, 妊娠 避妊と青年期の妊娠 多くの青年が性行為を行っているが,避妊,妊娠およびC型肝炎やHIV感染症などの性感染症については十分な情報を与えられていない。衝動性,計画性の欠如,および薬物やアルコールを同時に摂取していることにより,青年がバリア法などによる避妊を行う可能性が低くなる。 成人の 避妊法のいずれも青年は使用できる。最も多い問題は,方法の原理を理解し,能動的に,正しく実施できるか否かである。である(例,経口避妊薬の毎日の服用を忘れる,または,しばしば別の避... さらに読む 性感染症 性感染症の概要 性感染症(sexually transmitted diseas:STD)(sexually transmitted infection[STI]と呼ばれることもある)は,いくつかの微生物によって引き起こされ,それぞれの病原体は大きさ,生活環,引き起こす疾患および症状,ならびに治療法に対する感受性が大きく異なる。... さらに読む )などの重大な害悪を被るリスクが増える可能性がある。物質使用は青年の脳の発達も用量依存的に阻害する。青年期におけるアルコール,マリファナ,ニコチン,その他の薬物の常用は,精神障害の発生率上昇,成人期の機能低下,および嗜癖の発生率上昇と関連している。

青年は様々な理由から物質を使用する:

  • 社会経験を共有するまたは社会的グループの一員と感じるため

  • ストレスを軽減するため

  • 新しい経験を求め危険を冒すため

  • 精神障害の症状(例,抑うつ,不安)を軽減するため

全国調査によると,これまで薬物使用を一切したことがないと報告した高校3年生の割合は,過去40年間で徐々に上昇している。しかし同時に,広範なより強力で危険性の高い製品(例,オピオイド処方薬,高力価のマリファナ製品,フェンタニル)が入手可能となっている。このような製品は,物質使用を開始しようとする青年に急性合併症と長期合併症の両方が発生するリスクを高めるものである。

物質の具体例

青年が最も多く使用する物質は,アルコール,ニコチン(タバコまたは電子タバコ製品に含まれる),およびマリファナである。

アルコール

飲酒は高頻度にみられ,アルコールは青年が最もよく使用する物質である。高校3年生までに,青年の70%以上が飲酒を試したことがあり,約半数が現飲酒者(過去数カ月間内に飲酒)であると考えられる。大量の飲酒も高頻度にみられ,青年の飲酒者に深刻な アルコール中毒 アルコール中毒および離脱 アルコール(エタノール)は中枢抑制薬である。短時間で大量に飲酒すると,呼吸抑制と昏睡を来たし,死に至ることがある。長期にわたる大量の飲酒は,肝臓や他の多くの臓器を損傷する。アルコール離脱症状は振戦から,重度の離脱(振戦せん妄)でみられる痙攣発作,幻覚,および生命を脅かす自律神経不安定状態に至るまで,連続的な病態として現れる。診断は臨床的に行う。 ( アルコール使用障害とリハビリテーションも参照のこと。)... さらに読む がみられることがある。青年の飲酒の約90%はどんちゃん騒ぎの際に起こり,事故,負傷,望まない性行為,および他の不良な結果をまねく危険性がある。

社会およびメディアは,飲酒は容認されているものであり,あたかも格好のいいもののように描いている。このような影響にもかかわらず,親が青年に対し飲酒に関して明確な期待を伝え,一貫して制限を設定し,監視することによって,状況を変えることが可能である。一方,過度に飲酒をする家族がいる青年は飲酒を許容される行動とみなす可能性がある。飲酒を試みる青年の中には,そのまま アルコール使用障害 アルコール使用障害とリハビリテーション アルコール使用障害では,飲酒のパターンが生じ,典型的には渇望と耐性(tolerance)の症状および/または心理社会的な悪影響のある離脱症状が伴う。アルコール依存症およびアルコール乱用は一般的であるが,あまり厳密に定義されていない用語であり,アルコール関連の問題を有する人に適用される。 アルコール使用障害は非常に一般的である。米国では,12カ月間で13.9%の成人にみられると推定される。有病率は若年成人で最も高く,加齢とともに減少する。... さらに読む を発症する者もいる。発症の既知の危険因子には,若年での飲酒開始および遺伝などがある。アルコール使用障害の家族がいる青年には,自身のリスクが高いことを認識させるべきである。

タバコ

青年でのタバコ使用率は1990年代および2000年代に劇的に低下し,現在も低下し続けている。米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の国立薬物乱用研究所(National Institute on Drug Abuse)が行った調査(1 物質の具体例に関する参考文献 青年の物質の使用は,散発的なものから重度の 物質使用障害まで多岐にわたる。使用する物質の種類,使用状況,および使用頻度によって,急性ないし長期にわたる影響は最小限から,軽微,または生命を脅かす場合まで様々である。しかし,時折の使用であっても,過剰摂取,自動車事故, 暴力行動,および性的接触(例, 妊娠, 性感染症)などの重大な害悪を被るリスクが増える可能性がある。物質使用は青年の脳の発達も用量依存的に阻害する。青年期におけるアルコール,... さらに読む )によると,2019年には高校3年生の約5.7%が最近の喫煙経験(過去30日に喫煙)を報告し,これは1991年の8.3%,2018年の7.6%から低下したもので,また毎日喫煙すると回答した高校生は約2%のみであった。しかし,タバコを吸う成人の大多数は,青年期に喫煙を開始する。19歳までに喫煙を試したことがない場合,成人で喫煙者になる可能性は非常に低い。10歳という若年でもタバコを試す可能性がある(2 物質の具体例に関する参考文献 青年の物質の使用は,散発的なものから重度の 物質使用障害まで多岐にわたる。使用する物質の種類,使用状況,および使用頻度によって,急性ないし長期にわたる影響は最小限から,軽微,または生命を脅かす場合まで様々である。しかし,時折の使用であっても,過剰摂取,自動車事故, 暴力行動,および性的接触(例, 妊娠, 性感染症)などの重大な害悪を被るリスクが増える可能性がある。物質使用は青年の脳の発達も用量依存的に阻害する。青年期におけるアルコール,... さらに読む )。

青年の喫煙に対する最も強い危険因子は,親の喫煙(最も予測可能性の高い単独因子),または仲間およびロールモデル(例,有名人)の喫煙である。他の危険因子としては以下のものがある:

  • 学業不振

  • 高リスクの行動(例,特に女子での過度のダイエット;特に男子での暴力による喧嘩および飲酒運転;アルコールまたは他の物質使用)

  • 問題解決能力の低さ

  • タバコの入手し易さ

  • 自尊心の低さ

青年は他の形態のタバコを使用することもある。高校生の約3.5%が無煙タバコを使用している;この率は過去10年間で低下している。無煙タバコとは,噛む(噛みタバコ),下唇と歯肉の間にはさむ(ディップタバコ[dipping tobacco]),または鼻で吸引する(嗅ぎタバコ)ものである。米国ではパイプ喫煙は比較的まれである。12歳以上での葉巻喫煙者の割合は低下している。

親は,好ましいロールモデルとなり(つまり喫煙しない,または噛みタバコを使用しない),タバコの害について率直に話し合い,すでに喫煙または噛みタバコを使用している青年には必要であれば医学的支援を得られるようサポートするなどして禁煙するように励まし,青年期にある子の喫煙および無煙タバコ製品の使用を防ぐことができる( Professional.see page 禁煙 禁煙 ほとんどの喫煙者は禁煙したいと願い,それを試みているが,成功率は限られている。効果的な介入としては,禁煙カウンセリングとバレニクリン,ブプロピオン,ニコチン代替製品などの薬剤投与がある。 米国の喫煙者の約70%は,喫煙をやめることを望んでおり,少なくとも1回は禁煙を試みたことがあると言う。ニコチンの離脱症状は,禁煙の重大な障壁となりうる。 ( タバコおよび ベイピングも参照のこと。)... さらに読む )。

電子タバコ製品(ベイピング製品)

電子タバコは,熱を用いて有効成分(一般的にはニコチンまたはテトラヒドロカンナビノール[THC])を含む液体を揮発させるもので,燃焼は伴わない。電子タバコは当初,成人喫煙者の禁煙用デバイスとして市場に参入した。その後「ベイプ」に姿を変え,過去数年で青年の間で非常に魅力的なものとして使用が広まっており,特に社会経済的地位が中間および上位の青年でその傾向が強い。NIHの調査によると,高校3年生における現在の電子タバコ使用率(ニコチン蒸気のみ,他の物質はカウントせず)は2013年の4.5%から2019年の25.5%へと著しく上昇している(1 物質の具体例に関する参考文献 青年の物質の使用は,散発的なものから重度の 物質使用障害まで多岐にわたる。使用する物質の種類,使用状況,および使用頻度によって,急性ないし長期にわたる影響は最小限から,軽微,または生命を脅かす場合まで様々である。しかし,時折の使用であっても,過剰摂取,自動車事故, 暴力行動,および性的接触(例, 妊娠, 性感染症)などの重大な害悪を被るリスクが増える可能性がある。物質使用は青年の脳の発達も用量依存的に阻害する。青年期におけるアルコール,... さらに読む )。高校3年生の約45.6%が電子タバコ(ニコチンや他の物質)を試したことがある。

タバコの燃焼生成物はないため, 喫煙による健康被害 喫煙の慢性効果 タバコ使用は,個人的にも公衆的にも重大な健康問題である。依存は急速に発生する。主な影響としては,心血管疾患,肺癌やその他多くの種類のがん,COPD(慢性閉塞性肺疾患),その他の疾患による若年死および罹病がある。喫煙する全ての患者には 禁煙介入を勧めるべきである。 米国におけるタバコの使用率は過去50年間で減少しているが,人口増加により,喫... さらに読む と比較した場合,電子タバコは異なる有害作用を引き起こす。しかしながら,ベイピング製品に含まれる他の化学物質が,急性,劇症,または慢性,そして最も重症の場合は致死的となりうる肺の損傷を引き起こす可能性がある。さらに,このような製品では非常に高濃度のニコチンとTHCが送達されうる。THCおよびニコチンは非常に依存性が強く,中毒が起こりうる。電子タバコは青年がニコチンに曝露する最初の製品となってきているが,成人の喫煙率への影響は不明である。電子タバコの他の起こりうる長期的リスクも不明である(1 物質の具体例に関する参考文献 青年の物質の使用は,散発的なものから重度の 物質使用障害まで多岐にわたる。使用する物質の種類,使用状況,および使用頻度によって,急性ないし長期にわたる影響は最小限から,軽微,または生命を脅かす場合まで様々である。しかし,時折の使用であっても,過剰摂取,自動車事故, 暴力行動,および性的接触(例, 妊娠, 性感染症)などの重大な害悪を被るリスクが増える可能性がある。物質使用は青年の脳の発達も用量依存的に阻害する。青年期におけるアルコール,... さらに読む )。

マリファナ

高校生を対象としたNIHの調査(1 物質の具体例に関する参考文献 青年の物質の使用は,散発的なものから重度の 物質使用障害まで多岐にわたる。使用する物質の種類,使用状況,および使用頻度によって,急性ないし長期にわたる影響は最小限から,軽微,または生命を脅かす場合まで様々である。しかし,時折の使用であっても,過剰摂取,自動車事故, 暴力行動,および性的接触(例, 妊娠, 性感染症)などの重大な害悪を被るリスクが増える可能性がある。物質使用は青年の脳の発達も用量依存的に阻害する。青年期におけるアルコール,... さらに読む )によると,2019年の高校生における マリファナ マリファナ(大麻) マリファナは多幸感をもたらすが,一部の使用者では鎮静や不快気分を引き起こすことがある。長期使用により精神依存が生じうるが,身体依存はほとんどないことが臨床的に明らかである。離脱症状は不快であるが,必要なのは支持療法だけである。 マリファナは最も多く使用される違法薬物であり,一時的に用いられることが多いが,社会的または精神的な機能不全を示すというエビデンスはない。マリファナの活性成分はカンナビノイドと呼ばれる;精神活性作用のある主要な植物... さらに読む 現使用率は22.3%であり,2009年の20.6%から上昇している。高校生の約43.7%が,これまでに1回以上マリファナを使用したことがあると回答している。2010年にマリファナ現使用率は初めてタバコ現使用率を上回った。

マリファナ使用の最も顕著な増加はTHCのベイピングにおけるものである。THCのベイピングと回答した高校3年生の数は,2017年の4.9%から2019年には14%に増加した(1 物質の具体例に関する参考文献 青年の物質の使用は,散発的なものから重度の 物質使用障害まで多岐にわたる。使用する物質の種類,使用状況,および使用頻度によって,急性ないし長期にわたる影響は最小限から,軽微,または生命を脅かす場合まで様々である。しかし,時折の使用であっても,過剰摂取,自動車事故, 暴力行動,および性的接触(例, 妊娠, 性感染症)などの重大な害悪を被るリスクが増える可能性がある。物質使用は青年の脳の発達も用量依存的に阻害する。青年期におけるアルコール,... さらに読む ベイピング製品 電子タバコ製品(ベイピング製品) 青年の物質の使用は,散発的なものから重度の 物質使用障害まで多岐にわたる。使用する物質の種類,使用状況,および使用頻度によって,急性ないし長期にわたる影響は最小限から,軽微,または生命を脅かす場合まで様々である。しかし,時折の使用であっても,過剰摂取,自動車事故, 暴力行動,および性的接触(例, 妊娠, 性感染症)などの重大な害悪を被るリスクが増える可能性がある。物質使用は青年の脳の発達も用量依存的に阻害する。青年期におけるアルコール,... さらに読む も参照)。

他の物質

青年期に,アルコール,ニコチン,マリファナ以外の物質が使用されることは比較的まれである。

特に誤用されている処方薬として, オピオイド鎮痛薬 オピオイド鎮痛薬 非オピオイドおよびオピオイド鎮痛薬が疼痛治療に主に用いられる薬剤である。抗うつ薬,抗てんかん薬,その他の中枢神経系作用薬も慢性疼痛や神経障害性疼痛に使用されており,一部の病態に対しては第1選択の治療となっている。脊髄幹輸注(neuraxial infusion),神経刺激,注射療法,および神経ブロックは特定の患者に役立つ可能性がある。認知行動療法(例,家庭内の対人関係の変化,リラクゼーション法の系統的な利用,催眠術,バイオフィードバック... さらに読む (例,オキシコドン), 刺激薬 精神刺激薬 注意欠如・多動症(ADHD)は,不注意,多動性,および衝動性から構成される症候群である。不注意優勢型,多動性・衝動性優勢型,混合型の3つの病型に分類される。診断は臨床的な基準により下される。治療では通常,精神刺激薬による薬物療法,行動療法,教育的介入などが行われる。 注意欠如・多動症(ADHD)は,神経発達障害と考えられている。神経発達障... さらに読む (例,メチルフェニデートまたはデキストロアンフェタミンなどのADHD薬),および 鎮静薬 抗不安薬と鎮静薬 抗不安薬と鎮静薬には,ベンゾジアゼピン系,バルビツール酸系,およびこれらに関連する薬剤がある。高用量の薬剤は昏迷や呼吸抑制を引き起こすことがあり,その場合は 気管挿管と 機械的人工換気により管理する。長期薬剤使用者は激越と痙攣発作の離脱症候群を呈する場合があるため,代替薬(ペントバルビタールまたはフェノバルビタール)を併用下または非併用下でゆっくりと減薬することによって依存を管理する。... さらに読む (例,ベンゾジアゼピン系)などがある。

物質の具体例に関する参考文献

  • 1.Johnston LD, Miech RA, O’Malley PM, et al: Monitoring the Future national survey results on drug use 1975-2019: 2019 Overview, key findings on adolescent drug use.Ann Arbor, Institute for Social Research, University of Michigan, 2020.

  • 2.Kann L, McManus T, Harris WA, et al: Youth Risk Behavior Surveillance—United States, 2017.MMWR Surveill Summ 67(No. SS-8):1–114, 2018.doi: 10.15585/mmwr.ss6708a1

診断

  • ルーチンでのスクリーニングなどの臨床的評価

物質使用障害の可能性について親が心配になる行動には以下のものがある:

  • 薬物または薬物使用のための道具が見つかる

  • 常軌を逸した行動

  • 抑うつおよび気分変動

  • 友人の変化

  • 学業成績の低下

  • 趣味への関心の消失

青年の物質使用スクリーニング

医師は健診毎にタバコ,アルコールおよび他の薬物の使用についてチェックし,OTC医薬品および処方薬の安全な使用と監視について青年と親の双方に助言すべきである。普遍的な物質使用スクリーニングを行うことで,物質使用に関する話し合いを標準化し,健康的な行動および選択を強化し,問題のある物質使用のリスクがある青年を同定し,介入の指針を示し,物質使用障害の治療に紹介が必要な青年を同定することが可能となる。

妥当性が確認されたスクリーニングツールがいくつか存在する。例えば,国立薬物乱用研究所(National Institute on Drug Abuse:NIDA)は,12~17歳の患者に使用できる電子的スクリーニングツールであるBrief Screener for Tobacco, Alcohol, and other Drugs(BSTAD)ツールおよびScreening to Brief Intervention(S2BI)ツールを提供している。各スクリーニングツールへの回答は,患者が自分自身で行うか,医療専門家が行うかのいずれかである。口頭でのインタビュー形式で行うよりも情報が開示される割合が高いため,可能であれば患者が自分自身で回答を入力することが推奨される。ツールは,過去1年間のタバコ,アルコール,マリファナの使用頻度に関する質問で始まる。肯定的な回答を行うと,他の種類の物質使用に関する質問が表示される。このツールでは,薬物使用障害の3つのリスクカテゴリー(使用無,低リスク,高リスク)のいずれかに青年をトリアージする。その結果に基き,専門家のコンセンサスから導き出されたガイダンスに基づく行動計画がツールより提示される。回答所要時間はツールに回答する方法や,表示される質問の数によって異なるが,通常は2分未満である。

CRAFFT質問票は,アルコール使用および薬物使用に対する妥当性が確認された古くからのスクリーニングツールである。ただし,CRAFFT質問票にはタバコ使用のスクリーニング,使用頻度の情報提供,薬物使用とアルコール摂取の区別がないためもはや広くは使用されておらず,他のスクリーニングツールが開発されている(例えば,タバコおよびニコチン使用に関する質問が追加されたCRAFFT 2.1+N質問票など)。

アルコールスクリーニング

より特異的で包括的なアルコールスクリーニングを目的として,米国国立アルコール乱用・アルコール依存症研究所(National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism:NIAAA)は手引き(guide)を開発し,2つの質問からスクリーニングを始めることを提案している。質問および回答の解釈は年齢によって異なる(NIAAA Alcohol Screening Questions for Children and Adolescents NIAAA Alcohol Screening Questions for Children and Adolescents NIAAA Alcohol Screening Questions for Children and Adolescents の表を参照)。

中リスクおよび最高リスク患者には以下について尋ねる

  • 飲酒のパターン:通常飲酒量および最大飲酒量

  • 飲酒によって起こった問題または負ったリスク:欠席,喧嘩,外傷,自動車事故

  • 他の物質の使用:ハイ状態を得るために用いた他の物

NIAAAの手引きでは,明らかにされた問題に対処する有用な戦略も提供している。

薬物検査

薬物検査 薬物検査 薬物検査は主に,系統的にまたはランダムに選択された人々を対象として,乱用の可能性がある物質を1種以上使用した証拠をスクリーニングするために行われる。検査は以下を対象として行われる: 特定の集団の人々(一般的には学生,アスリート,囚人など) 特定の職種(例,パイロット,トラック運転手)に応募または従事している人々 自動車やボートの事故または仕事中の事故に巻き込まれた人々 不明確な手段で自殺を図った人々 さらに読む は有用であるが,大きな限界がある。親が薬物検査の実施を求めると,対立した雰囲気を生じさせ,正確な物質使用歴を入手し,青年との治療上の協力関係を築くことが困難になる可能性がある。スクリーニング検査は一般的に,尿検体での免疫測定法による定性的な迅速検査であるが,一定数の偽陽性および偽陰性が生じる。さらに,検査では物質使用の頻度および程度を明らかにできないため,一時的使用者とより深刻な問題のある者とを鑑別できない。物質使用がどの程度まで各青年の生活に影響を与えているのかを確認するため,医師は他の方法(例,徹底的な病歴聴取,質問票)を用いなければならない。

このような懸念事項および限界を考慮すると,物質使用障害の専門家に相談し,その状況下で薬物検査が必要かどうかの決定に助言を求めることもしばしば有用である。しかし,薬物検査を施行しないという決定により,疑いのある物質使用障害または精神障害の評価を途中で中止するべきではない。物質使用障害または精神障害の非特異的徴候を有する青年は,詳細な評価のため専門医へ紹介すべきである。

治療

  • 青年の状況に合わせた行動療法

典型的には,中等度または重度の物質使用障害の青年には,さらなる評価および治療のために専門医を紹介する。一般に, 物質使用障害の成人で使用される行動療法 治療 物質使用障害は 物質関連障害の一種であり,物質の使用に関連する重大な問題を体験しているにもかかわらず,患者がその物質を使用し続ける病的な行動パターンを伴う。脳内神経回路の変化などの生理学的臨床像が認められることもある。 関わる物質は多くの場合, 一般的に物質関連障害を引き起こす10の薬物クラスに含まれるものである。このような物質はいずれも脳内報酬系を直接活性化し,快感をもたらす。活性化が非常に強いために,患者はその物質を強く渇望し,その... さらに読む と同じものが青年にも使用できる。しかしながら,このような行動療法は青年期に合わせて調整すべきである。青年は成人と同じプログラムで治療すべきではなく,青年用プログラムおよび物質使用障害の青年の治療に精通した療法士による治療を受けさせるべきである。

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

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