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ダウン症候群(21トリソミー)

(ダウン症候群;Gトリソミー)

執筆者:

Nina N. Powell-Hamilton

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2016年 3月
本ページのリソース

ダウン症候群は21番染色体の異常であり,知的障害,小頭症,低身長,および特徴的顔貌を引き起こす。診断は身体奇形と発達異常から示唆され,細胞遺伝学的検査によって確定される。治療法は具体的な臨床像および奇形に応じて異なる。

出生児における全体の発生率は約1/700であるが,母体年齢が上がるにつれてリスクが増大する。母体年齢別の出生児におけるリスクは,20歳で1/2000,35歳で1/365,40歳で1/100である。しかしながら,大半の出生は比較的若年の女性によるものであるため,ダウン症候群児の大多数は35歳未満の女性から出生しており,35歳 以上 の女性から出生するダウン症候群児は約20%に過ぎない。

病因

症例の約95%が21番染色体全体の過剰(21トリソミー)であり,そのうちほぼ全例が母親由来である。そのような症例では47本の染色体がみられる。

ダウン症候群の残りの5%は,46本の正常な数の染色体を有するが,21番染色体の過剰部分が他の染色体上に転座している(これによる異常染色体は1本として数える)。

最も頻度の高い転座はt(14;21)であり,この場合,21番染色体の過剰部分は14番染色体に付着している。t(14;21)転座例の約半数は両親とも正常核型であるが,このことは,その転座がde novoであったことを意味している。残る半数においては,一方の親(ほぼ全例で母親)が表現型は正常であるが染色体を45本しか有しておらず,そのうちの1つがt(14;21)となっている。理論的には,保因者である母親の児がダウン症候群を有する確率は1/3であるが,実際のリスクはこれよりも低い(約1/10)。一方,父親が保因者である場合のリスクは1/20に過ぎない。

次に頻度が高い転座はt(21;22)である。このケースでは,保因者である母親の児がダウン症候群を有する確率は約1/10であり,父親が保因者であるときのリスクはこれより低い。

過剰な21番染色体が別の21番染色体に付着した場合に発生する21q21q転座は,上記よりはるかにまれである。親が21q21q転座の保因者またはモザイク(正常な細胞と21q21q転座を伴う染色体数45本の細胞が混在する)であるかどうかを特定することが特に重要となる。このケースでは,転座保因者の児はダウン症候群または21モノソミーのいずれかとなる(後者は典型的には生存不可能である)。親がモザイクの場合も,リスクは同様であるが,染色体が正常な児が産まれる可能性もある。

ダウン症候群のモザイクは,胚内での細胞分裂中の不分離(染色体が分離細胞へ移行できない場合)によって生じるものと推測される。モザイク型ダウン症候群の個人には2つの細胞系列があり,1つは正常な染色体数46本の細胞系列,もう1つは過剰な21番染色体を含む47本の細胞系列である。知能予後および医学的合併症のリスクは脳などそれぞれ異なる組織中の21トリソミー細胞の比率に依存すると考えられる。しかし臨床では,体内の1つ1つの細胞の核型を確認することは不可能なため,リスクを予測できない。モザイク型ダウン症候群の一部では,非常に軽微な臨床徴候しかみられず知能も正常であるが,たとえ検出可能なモザイクがない症例でも,非常に多様な所見を示す可能性がある。片方の親に21トリソミーの生殖細胞系モザイクがある場合は,2人目の罹患児が産まれるリスクが高くなる。

病態生理

染色体不均衡により生じる大半の病態と同様に,ダウン症候群では複数の器官系が侵され,構造的異常と機能的異常の両方が引き起こされる( ダウン症候群の主な合併症*)。全ての個人に全ての異常がみられるわけではない。

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ダウン症候群の主な合併症*

器官系

異常

心臓

先天性心疾患,最も頻度が高いものはVSDおよび共通房室弁口

僧帽弁逸脱症および大動脈弁逆流症(成人でより頻度が高い)のリスク増大

中枢神経系

認知障害(軽度~重度)

運動および言語発達遅滞

自閉的行動

消化管

十二指腸閉鎖または狭窄

内分泌

糖尿病

EENT

眼疾患(例,先天性白内障,緑内障,斜視,屈折異常)

難聴

中耳炎の発生率上昇

成長

低身長

肥満

血液

血小板減少症

新生児赤血球増多症

一過性骨髄異形成疾患

急性巨核芽球性白血病

筋骨格系

環軸椎および後頭環椎不安定性

関節弛緩

*1人の患者に全ての合併症がみられるわけではないが,非罹患集団と比較すると発生率が高い。

AV=房室;EENT = 眼,耳,鼻,咽喉; VSD=心室中隔欠損症。

大半の症例でいくらかの認知障害がみられ,重度(IQ20~35)から軽度(IQ50~75)までに及ぶ。粗大運動および言語発達の遅滞も生後早期から明らかとなる。しばしば身長が低く,肥満のリスクが高い。罹患した新生児の約50%に先天性心疾患がみられ,心室中隔欠損症と共通房室弁口(心内膜床欠損症)が最も多くみられる。約5%の症例で消化管奇形,特に十二指腸閉鎖(ときに輪状膵を合併する)がよくみられる。ヒルシュスプルング病とセリアック病も比較的頻度が高い。多くの症例で甲状腺疾患(甲状腺機能低下症が最も多い)や糖尿病などの内分泌障害が発生する。後頭環椎および環軸椎の過可動性や頸椎奇形によって後頭環椎および頸部不安定性が発生する可能性があり,それにより筋力低下や麻痺が生じることがある。約60%で先天性白内障,緑内障,斜視,屈折異常などの眼障害がみられる。大半の症例で難聴がみられ,耳感染症が非常によくみられる。

老化が加速すると考えられている。期待余命は約55歳であるが,最近では70代や80代まで生存している例もある。期待余命の短縮につながっている第1の要因は心疾患であるが,感染症や急性骨髄性白血病に対する易罹患性も(比較的程度は小さいものの)一因となっている。比較的若年時からアルツハイマー病のリスク増大がみられ,ダウン症候群の成人の剖検では,脳に典型的な顕微鏡所見が認められる。最近の研究結果から,ダウン症候群の黒人は白人と比べて寿命がかなり短いことが示されている。この知見は,医療,教育,その他の支援サービスへのアクセス不良によるものと考えられる。

罹患した女性の胎児がダウン症候群を有する可能性は50%である。しかしながら,罹患した胎児の多くは自然流産となる。ダウン症候群の男性は,モザイク型のものを除くと,全例が不妊である。

症状と徴候

全般的な外観

罹患した新生児は,おとなしく,めったに泣かず,筋緊張低下を示すという傾向がある。ほとんどの症例で扁平な側貌(特に鼻根部扁平)がみられるが,出生時には通常とは異なる身体的特徴が目立たず,乳児期になってから特徴的顔貌が顕著になる場合もある。また後頭部扁平,小頭症,および頸部背面周囲の余剰皮膚がよくみられる。目がつり上がり,通常は目頭に内眼角贅皮がみられる。Brushfield斑(虹彩辺縁の周辺にできる塩粒に似た灰色ないし白色の斑点)を視認できることがある。口はしばしば開いたままで,大きな溝状舌(中央の亀裂はみられない)を突き出している。耳介は小さく円形であることが多い。

手は短く幅広く,しばしば猿線(単一手掌屈曲線)がみられる。手指はしばしば短く,特に第5指は弯曲指(内弯)で,しばしば指節骨が2本のみである。足では第1趾・第2趾間が離開し,足底の溝がしばしば足の後方にまで及ぶ。また手足に特徴的な皮膚紋理がみられる。

成長および発達

成長につれて,身体および精神の発達遅延が急速に顕著になってくる。身長は低く,IQの平均は約50である。小児期には注意欠如・多動症を示唆する行動がしばしばみられ,自閉的行動の発生率が高い(特に著明な知的障害がある小児の場合)。抑うつが小児および成人でよくみられる。

心症状

心疾患の症状は,心奇形の種類および程度によって決定される。心室中隔欠損症のある乳児は,無症状の場合もあれば,心不全の徴候(例,努力性呼吸,呼吸促迫,哺乳困難,発汗,体重増加不良)がみられる場合もある。欠損孔の大きさに応じて2/6度以上の高調な収縮期雑音が聴取される。共通房室弁口のある乳児では,心不全徴候がみられるか,最初は無症状のこともある。特徴的な心音所見はII音の広い固定性分裂などである。雑音は認識されないこともあるが,いくつかの雑音が聴取されることもある。

消化管の症状

ヒルシュスプルング病のある乳児では通常,出生後48時間にわたり胎便の排出が遅延する。重症例では腸閉塞の徴候(例,胆汁性嘔吐,排便障害,腹部膨隆)がみられることがある。十二指腸閉鎖または狭窄は,狭窄の程度に応じて,胆汁性嘔吐を呈するか,無症状で経過する。

診断

  • 出生前の絨毛採取および/または羊水穿刺による核型分析および/または染色体マイクロアレイ解析

  • 新生児の核型分析(出生前核型分析が行われていない場合)

ダウン症候群の診断としては,胎児超音波検査で検出された身体奇形(例,NT[nuchal translucency]肥厚)に基づいて,あるいは母体血清スクリーニングで測定された第1トリメスター後期の血漿プロテインA,ならびに第2トリメスター早期(妊娠15~16週)のα-フェトプロテイン,β-hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン),非抱合型エストリオール,およびインヒビンの異常値に基づいて,出生前に本症が疑われることがある。母体循環から得られた胎児DNAを検査する無侵襲的出生前スクリーニング(NIPS)も,最近では21トリソミースクリーニングの1つの選択肢となっている。

母体血清スクリーニングや超音波検査によりダウン症候群が疑われる場合,胎児または新生児の確定診断検査が推奨される。確定診断の方法には,絨毛採取および/または羊水穿刺による核型分析および/または染色体マイクロアレイ解析(CMA)などがある。特に,スクリーニング結果が不確定ないし不明瞭な症例,または無侵襲的出生前スクリーニングの陽性適中率が低い若年女性には確定診断検査を行い,また他の胎児染色体異常を診断することを目的として確定診断検査を行う。妊娠中絶などの管理に関する決定は,無侵襲的出生前スクリーニングの結果のみに基づいて行うべきではない。転座の合併を診断するため核型分析も用いられ,これにより親は再発リスクに関する適切な遺伝カウンセリングを受けられる。

母体年齢を問わず妊娠20週前に出生前ケアのために受診した女性全例に対して,ダウン症候群に対する母体血清スクリーニングおよび診断検査が推奨される。

American College of Obstetricians and Gynecologists Committee on GeneticsおよびSociety for Maternal–Fetal Medicine committee opinionは,異数性リスクが高い患者に細胞フリー胎児DNA検査を行うよう推奨している。リスクのある患者として,35歳以上の女性,胎児超音波検査所見がリスク増大を示す例などが挙げられる。細胞フリー胎児DNAは,絨毛採取または羊水穿刺による出生前検査の精度および診断的正確性に代わるものではないと委員会は勧告している。

出生前に診断されなかった場合,新生児における診断は身体奇形に基づき,細胞遺伝学的検査によって確定する。

併発症

年齢に応じた特定のルーチンスクリーニングが,ダウン症候群の合併症を同定する助けとなる(2011年のAmerican Academy of Pediatrics Guidelines Health Supervision for Children with Down Syndromeを参照):

  • 心エコー検査:妊婦健診時または出生時

  • 甲状腺スクリーニング(甲状腺刺激ホルモン[TSH]値):出生時,生後6カ月,12カ月,その後は1年毎

  • 聴力検査:出生時,その後は正常な聴力が確立されるまで(4歳頃)6カ月毎,それ以降は1年毎

  • 眼科検査:生後6カ月までに,その後は5歳まで1年毎;13歳までは2年毎,21歳までは3年毎(適応があればより頻回)

  • 成長:毎回の健診時に身長,体重,および頭囲をダウン症候群用の成長曲線にプロットする

  • 4歳までに閉塞性睡眠時無呼吸症候群の評価を完了する

環軸椎不安定性およびセリアック病のルーチンスクリーニングは,もはや推奨されていない。臨床的な疑いに基づいて検査を行うとともに,頸部痛,根性痛,筋力低下,脊髄症を示唆する他の神経症状の既往がある患者には中立位の頸椎X線検査が推奨される;疑わしい異常がみられない場合は,屈曲位および伸展位でX線検査を施行すべきである。

治療

  • 具体的な症状や徴候を治療する。

  • 遺伝カウンセリング

基礎疾患を完治させることはできない。管理方針は具体的な臨床像に依存する。一部の先天性心奇形は外科的に修復する。甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの補充により治療する。

ケアの一環として,家族向けの遺伝カウンセリング,社会的支援,および知的機能の水準に合わせた教育プログラムの策定を行うべきである( 知的能力障害)。

要点

  • ダウン症候群では,21番染色体の過剰(分離した1本の染色体または別の染色体への転座のいずれか)がみられる。

  • 診断としては,胎児超音波検査で検出された奇形(例,NT[nuchal translucency]肥厚)に基づいて,または母体血中細胞フリー胎児DNA分析もしくは第1トリメスター後期の血漿プロテインA,ならびに第2トリメスター早期のα-フェトプロテイン,β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG),非抱合型エストリオール,およびインヒビンといった複数の母体マーカースクリーニングに基づいて,出生前に本症が疑われることがある。

  • 第1トリメスターの絨毛採取もしくは第2トリメスターの羊水穿刺による核型分析または染色体マイクロアレイ解析(CMA),または出生後の血液検体の細胞遺伝学的検査によって診断を確定するべきである。

  • 期待余命の短縮につながっている第1の要因は心疾患であるが,感染症,急性骨髄性白血病,および早期発症型アルツハイマー病に対する易罹患性も比較的程度は小さいものの一因となっている。

  • 合併症(例,心奇形,甲状腺機能低下症)を検出するために年齢に応じたルーチンスクリーニングを行う。

  • 個々の臨床像に応じた治療を行うとともに,社会的支援,教育支援,および遺伝カウンセリングを提供する。

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