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アイゼンメンジャー症候群

(アイゼンメンジャー症候群;肺血管閉塞性病変)

執筆者:

Jeanne Marie Baffa

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2016年 11月

心血管系の先天異常の概要も参照のこと。)

アイゼンメンジャー症候群は,大量の心内左右短絡が是正されない場合に発生する合併症である。肺血管抵抗が経時的に増大するにつれて,短絡が両方向性となり,最終的に右左短絡となる。脱酸素化された血液が体循環に流入することにより,低酸素症の症状が引き起こされる。心雑音および心音は基礎にある奇形に依存する。診断は心エコー検査または心臓カテーテル検査による。治療は一般に支持療法となるが,症状が重度の場合は心肺同時移植が選択肢の1つとなりうる。心内膜炎予防が推奨される。

無治療ではアイゼンメンジャー症候群を来す可能性がある先天性心奇形としては,以下のものがある:

米国では,原因奇形の早期診断と根治的修復によって発生率が著明に定価している。

アイゼンメンジャー症候群により右左短絡が生じると,チアノーゼとその合併症が生じる。体循環血の酸素飽和度低下により,指趾のばち状変形,二次性赤血球増多症,過粘稠度症候群,喀血,中枢神経系事象(例,脳膿瘍,脳血管発作),赤血球代謝の亢進による続発症(例,痛風を引き起こす高尿酸血症,胆石症を引き起こす高ビリルビン血症,貧血を伴うまたは伴わない鉄欠乏症)などを来す。

症状と徴候

通常,アイゼンメンジャー症候群の症状は20~40歳まで出現しないものの,発症した場合はチアノーゼ,失神,労作時呼吸困難,疲労,胸痛,動悸,心房性および心室性不整脈などのほか,まれではあるが右心不全(例,肝腫大,末梢浮腫,頸静脈怒張)も起こりうる。

喀血は遅発症状である。脳塞栓現象,脳膿瘍,または心内膜炎の徴候がみられることもある。

二次性赤血球増多症による症状(例,言語不明瞭または他の神経症状を伴う一過性脳虚血発作,視力障害,頭痛,疲労増大,血栓塞栓症の徴候)がよくみられる。胆石症による腹痛が発生することもある。

身体診察では,中枢性チアノーゼとばち状指が検出される。まれに,右室不全の徴候がみられることがある。三尖弁逆流による全収縮期雑音が胸骨左縁下部に聴取されることがある。肺動脈弁閉鎖不全に起因する高調な漸減性の拡張前期雑音が胸骨左縁に聴取されることもある。大きな単一II音(S2)が一貫してみられる所見であり,駆出音もよく聴取される。約3分の1の患者に脊柱側弯症が認められる。

診断

  • 胸部X線および心電図

  • 心エコー検査または心臓カテーテル検査

アイゼンメンジャー症候群の診断は,未修復の先天性心疾患の病歴から疑われ,胸部X線および心電図によって裏付けを得て,カラードプラ法を用いた2次元心エコー検査によって確定する。心臓カテーテル検査は,肺動脈圧,肺血管抵抗,および肺血管拡張薬への反応を測定するためにしばしば施行される。

臨床検査では,Hct値が55%を超える赤血球増多を認める。赤血球代謝の亢進は,鉄の欠乏状態(例,小赤血球症),高尿酸血症,および高ビリルビン血症を反映している可能性がある。

胸部X線では通常,中枢側肺動脈の拡張,末梢肺血管陰影の消失,および右心拡大を認める。心電図では,右室肥大と右軸偏位のほか,ときに右房拡大も認める。

治療

  • 肺動脈性肺高血圧の治療薬(例,プロスタサイクリン拮抗薬,エンドセリン拮抗薬,一酸化窒素産生促進薬)

  • 「treat and repair」アプローチ

  • 支持療法

  • 心肺同時移植

理想的には,アイゼンメンジャー症候群への移行を予防するために早期に修復手術を施行すべきである。この症候群が発症すると,心肺同時移植以外に特異的な治療法はなくなるが,肺動脈圧を低下させる薬剤の研究が現在進められている。

プロスタサイクリン拮抗薬(例,トレプロスチニル,エポプロステノール),エンドセリン拮抗薬(例,ボセンタン),および一酸化窒素産生促進薬(例,シルデナフィル)の投与により,6分間歩行試験の結果が改善し,N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)の測定値が低下することが示されている。少数の患者では,新しい肺血管拡張薬による積極的治療によって,正味の血行動態が左右短絡となって,基礎疾患の心奇形に対する外科的修復が可能となり,平均肺動脈圧を有意に低下させることができる。この戦略はtreat and repairアプローチと呼ばれている。

支持療法としては,本症候群を増悪させる可能性がある状態の回避(例,妊娠,体液量減少,等尺性運動,高所への移動)や酸素投与などがある。

症候性の赤血球増多症は,慎重な瀉血と生理食塩水による体液補充を同時に行うことで治療可能であり,Hctを55~65%まで低下させる。ただし,代償性および無症候性の赤血球増多症には,Hct値を問わず瀉血は必要なく,瀉血は最終的に鉄欠乏につながる一方,自然経過を変えることはない。

高尿酸血症はアロプリノール300mg,経口,1日1回で治療できる。ワルファリンによる抗凝固療法は有害となる可能性があり,その使用は個別化すべきであるが,血栓性合併症を予防するためにアスピリン81mg,経口,1日1回の投与が適応となる。

期待余命は基礎にある先天奇形の種類および重症度に依存し,その範囲は20~50年で,死亡年齢の中央値は37歳である。しかしながら,運動耐容能の低下と二次性の合併症によって患者の生活の質は著しく制限される。

心臓移植肺移植も選択肢となりうるが,許容できないほど生活の質を障害する重度の症状を呈する患者のみが対象となる。移植後の長期生存率も有望とは言えない。

全例において,菌血症につながる可能性が高い歯科的または外科的処置を受ける際は,事前に心内膜炎予防を受けさせるべきである。

要点

  • 大量の心内左右短絡を伴う心奇形は,しばしば肺血管抵抗の上昇を引き起こし,それにより短絡が両方向性となり,最終的には右左短絡が生じる(短絡の逆転)。

  • 短絡の逆転に伴い,酸素化される前の血液が体循環に入るようになる結果,低酸素症とその合併症(例,手足のばち状指,二次性赤血球増多症)が発生する;赤血球増多症により,過粘稠度症候群,脳卒中や他の血栓塞栓症,高尿酸血症などが引き起こされる可能性もある。

  • 通常,症状は20~40歳まで出現しないものの,発症した場合はチアノーゼ,失神,労作時呼吸困難,疲労,胸痛,動悸,心房性および心室性不整脈などのほか,まれではあるが右心不全も起こりうる。

  • アイゼンメンジャー症候群の発生を予防するため,基礎にある心奇形に対する修復手術を適切な年齢で施行すべきである。

  • この症候群が発症すると,心肺同時移植以外に特異的な治療法はなくなるが,肺動脈圧を低下させる薬剤(例,プロスタサイクリン拮抗薬,エンドセリン拮抗薬,一酸化窒素産生促進薬)の研究が現在進められている。

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