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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

(高アンドロゲン状態の慢性無排卵:Stein-Leventhal症候群)

執筆者:

JoAnn V. Pinkerton

, MD, University of Virginia Health System

最終査読/改訂年月 2015年 11月
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多嚢胞性卵巣症候群は,軽度の肥満,不規則な月経または無月経,およびアンドロゲン過剰の徴候(例,男性型多毛症,ざ瘡)を特徴とする臨床症候群である。

  • ほとんどの患者では卵巣内に多発性嚢胞が生じる。

  • 診断は,妊娠検査,ホルモンの測定,画像検査による男性化腫瘍の除外による。

  • 治療は対症療法である。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は5~10%の女性に生じる。米国においては不妊の原因として最も一般的である。

PCOSは通常,卵巣嚢胞の存在ではなく,臨床症候群として定義される。しかし典型的には卵巣に2~6mmの多数の卵胞嚢胞やときに閉鎖細胞を含むさらに大きい嚢胞がみられる。卵巣は,滑らかで肥厚した被膜を伴って腫大するか,正常な大きさであることもある。

この症候群は無排卵または排卵障害および病因不明のアンドロゲン過剰を伴う。しかしながら,いくつかのエビデンスは,患者は17-水酸化酵素(アンドロゲン産生の律速酵素)に影響を与えるチトクロムP450c17の機能異常を有しており,結果としてアンドロゲン産生が増加することを示している。

合併症

多嚢胞性卵巣症候群にはいくつかの重篤な合併症がある。

エストロゲン値が上昇し,子宮内膜増殖症,最終的には子宮内膜癌のリスクが高まる。

アンドロゲン値が上昇することが多く,メタボリックシンドロームのリスクが高まり,男性型多毛症を生じる。 インスリン抵抗性による高インスリン血症を認めることがあり,卵巣でのアンドロゲン産生増加に寄与することがある。長期的には,アンドロゲン過剰は高血圧を含む心血管疾患のリスクを増加させる。アンドロゲン過剰とその合併症のリスクは,過体重でない女性においても,過体重である女性と同様に高い可能性がある。

症状と徴候

症状は典型的には思春期に始まり時間経過とともに悪化する。デヒドロエピアンドロステロン硫酸(DHEAS)過剰,しばしば腋毛の早期発育,体臭,微小面皰性のざ瘡を特徴とする思春期発来(adrenarche)の早期発現がよくみられる。

典型的な症状としては,軽度の肥満,軽度の男性型多毛症,不規則な月経または無月経などがある。しかし,PCOSの女性の最大半数では体重は正常で,一部の女性は低体重である。体毛は男性型に(例,上唇上部および顎,乳首周囲,下腹部白線に沿って)発育することがある。一部の女性ではざ瘡や側頭部の脱毛など他の男性化徴候を認める。

肥厚し黒ずんだ皮膚(黒色表皮腫)の領域が腋窩,首の後ろ,皮膚のしわ,指関節および/または肘に生じることがある;原因は インスリン抵抗性による高 インスリン値である。

診断

  • 臨床基準

  • 血清 テストステロン,卵胞刺激ホルモン,プロラクチン,および甲状腺刺激ホルモン値

  • 骨盤内超音波検査

排卵障害が通常思春期に認められ,原発性無月経を起こす;このため初経後しばらく規則的な月経が起こる場合にはこの症候群の可能性は低い。

診察では通常,高 エストロゲン値を反映する多量の頸管粘液を認める。PCOSは少なくとも2つの典型的な症状がある場合に疑われる。

検査には,妊娠検査,血清総 テストステロン,卵胞刺激ホルモン(FSH),プロラクチン,および甲状腺刺激ホルモン(TSH)を含む;また症状を引き起こす他の原因を除外するために骨盤内超音波検査を行う。血清遊離 テストステロンは総 テストステロンよりも高感度であるが,測定は技術的により難しい( 男性性腺機能低下症 : 原発性および続発性性腺機能低下症の診断)。テストステロンの正常から軽度の上昇,およびFSH値の軽度の低下はPCOSを示唆する。

診断には以下の3つの基準のうち少なくとも2つを満たす必要がある:

  • 排卵障害による月経不順

  • アンドロゲン過剰の臨床的または生化学的所見

  • 各卵巣当たり10個を超える卵胞(骨盤内超音波検査で検出される);通常は卵巣の辺縁に生じ,一連の真珠に似る。

これら基準を満たす女性では,クッシング症候群を除外するために血清 コルチゾールを測定し,副腎性器症候群を除外するために早朝の血清17-ヒドロキシプロゲステロンを測定する。血清DHEASを測定する。DHEASが異常であれば,無月経に関する評価を行う。PCOSの成人女性では,血圧と通常血清血糖値および脂質(脂質プロファイル)を測定しメタボリックシンドロームを評価する。

パール&ピットフォール

  • 初経後しばらく規則的な月経があった場合にはPCOSの可能性は低い。

治療

  • 間欠的プロゲストゲンまたは経口避妊薬

  • 男性型多毛症の管理と成人女性ではホルモン異常による長期的リスクの管理

  • 妊娠を希望する女性には不妊治療

治療は以下を目的とする:

  • ホルモン異常を是正し,これにより エストロゲン過剰のリスク(例,子宮内膜増殖症)およびアンドロゲン過剰のリスク(例,心血管疾患)を低減する

  • 症状を緩和する

体重の減量および定期的な運動が推奨される。これらは排卵を誘発し,月経周期をより規則的にし, インスリン感受性を高め,黒色表皮腫および男性型多毛症を改善するのに有用な可能性がある。

減量がうまくいかない場合や月経が再開しない場合には, インスリン感受性を高めるためにメトホルミン(500~1000mg,1日2回)が使用される。メトホルミンはまた遊離 テストステロン値を下げることもある。メトホルミンを使用する場合,血清血糖値を測定すべきであり,腎機能および肝機能についても定期的に検査すべきである。メトホルミンは排卵を誘発する可能性があるため,妊娠を望まない場合には避妊が必要である。

妊娠を望まない女性では,子宮内膜増殖症および子宮内膜癌のリスクを低減するために,通常,間欠的プロゲスチン(例,メドロキシプロゲステロン5~10mg,経口,1日1回,1~2カ月毎に10~14日間)または経口避妊薬を投与する。これらの治療により循環血中のアンドロゲンも低下し,通常月経周期がより規則的になる。

妊娠を望む女性には,不妊治療(例,クロミフェン,メトホルミン)が行われる。減量も有用な場合がある。避妊効果を有する可能性のあるホルモン療法は避ける。

男性型多毛症に対しては,物理的処理(例,漂白,電気分解,毛抜き,ワックス,除毛)が行われる。eflornithineクリーム(13.9%,1日2回塗布)は,不要な顔毛の除去に有用である。妊娠を望まない成人女性では,アンドロゲン値を低下させるホルモン療法またはスピロノラクトンを試すことができる。

ざ瘡は通常の薬物で治療できる(例,過酸化ベンゾイル,トレチノインクリーム,外用および経口抗菌薬)。

要点

  • PCOSは排卵障害の一般的な原因である。

  • 月経が不規則で,軽度の肥満および軽度の多毛を認める女性ではPCOSを疑うが,PCOSの多くの女性では体重が正常または低体重であることに留意する。

  • 類似の症状を来す可能性のある重篤な疾患(例,クッシング症候群,腫瘍)および合併症(例,メタボリックシンドローム)の検査を行う。

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