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浮動性めまいと回転性めまい

執筆者:

Debara L. Tucci

, MD, MS, MBA , Duke University Medical Center

最終査読/改訂年月 2016年 10月
本ページのリソース

めまいとは,以下のような互いに関連する様々な感覚を表現するために,患者が使用する,不明確な用語である:

  • 失神感(失神が切迫した感覚)

  • ふらつき

  • 平衡異常感または不安定感

  • 漠然とぼうっとする感覚または頭がくらくらする感覚

  • 回転するような感覚

回転性めまいは,自身または周囲が動いているように感じられる誤った感覚である。通常は,知覚される運動は回転(ぐるぐる回る,旋回する感覚)であるが,単に片側に引っ張られるように感じる患者もいる。回転性めまいは診断名ではなく,感覚を説明する用語である。

いずれの感覚も,悪心および嘔吐または平衡障害,歩行困難を伴う場合がある。

おそらく,こうした感覚は,言葉で表現するのが難しいため,患者はしばしば「めまい(dizzinessまたはvertigo)」およびその他の用語を互換的に,かつ一貫性なく使用する。同じ基礎疾患を有する複数の患者が,それぞれの症状を非常に異なる表現で説明する場合もある。質問のしかた次第では,1回の来院中に同じ「めまい」という事象を異なる表現で説明する場合さえある。こうした認識の不一致から,たとえ患者の言うめまい(vertigo)が広義のめまいの一種として明確に区別されているように思えたとしても,多くの医師は2つの症状の可能性を同時に考慮する。

浮動性めまい(dizziness)および回転性めまい(vertigo)がどのように説明されるにしても,煩わしく,活動に支障を来しうる症状である(特に悪心と嘔吐を伴う場合)。これらの症状は,自動車の運転,航空機の操縦,重機の操縦など,厳密さを必要とする作業または危険な作業を行う人では,特に大きな問題となる。

浮動性めまいは医師の受診理由の5~6%を占める。浮動性めまいは,年齢を問わず発生しうるが,加齢に伴い増加し,40歳以上の人口の約40%が,いずれかの時点で経験する。浮動性めまいは一過性の場合または慢性の場合がある。慢性の浮動性めまい(1カ月以上持続するものと定義される)は,高齢者でよくみられる。

病態生理

前庭系は,平衡制御に関与する主な神経系である。前庭系には以下の要素が含まれる:

  • 内耳の前庭器官

  • 第8脳神経(内耳神経)(前庭器官から前庭系の中枢要素に信号を伝導する)

  • 脳幹および小脳にある前庭神経核

内耳および第8脳神経の障害は,末梢系の障害とみなされる。脳幹および小脳内の前庭神経核とその経路の障害は,中枢性の障害とみなされる。

平衡感覚には,また,眼からの視覚刺激の入力および末梢神経からの(脊髄を経由した)固有受容感覚刺激の入力が組み込まれている。大脳皮質は下位中枢からの出力を受け,その情報を統合して運動の知覚を生み出す。

前庭器官

安定,運動,および重力方向の知覚は,前庭器官に由来し,前庭器官は以下の要素から構成される:

  • 三半規管

  • 2つの耳石器—球形嚢および卵形嚢

回転運動が起きると,半規管内で回転運動方向と同じ向きの内リンパの流れが発生する。内リンパの動きは,流れの方向に応じて,半規管内に並んだ有毛細胞からの神経出力を刺激または阻害する。球形嚢および卵形嚢内にある同様の有毛細胞は,炭酸カルシウム結晶(耳石)の基質に埋め込まれている。重力により耳石の位置がずれると,付着している有毛細胞からの神経出力が刺激または阻害される。

病因

原因としては,機能的(外傷,腫瘍,変性),血管性,感染性,毒性(薬剤関連のものを含む),および特発性の病態が数多く存在するが( 浮動性めまいおよび回転性めまいの原因を参照),重篤な疾患に起因するものは全症例の約5%に過ぎない。

回転性めまいを伴う浮動性めまいの最も一般的な原因には,末梢前庭系の何らかの要素が関与している:

比較的頻度は低いが,中枢性疾患(最も頻度が高いものは片頭痛),より全般的な影響を脳機能に及ぼす疾患,精神障害,または視覚もしくは固有受容感覚刺激の入力に影響を及ぼす疾患が原因である。ときに,原因を発見できないこともある。

回転性めまいを伴わない浮動性めまいの最も一般的な原因は,あまり明確ではないが,通常は耳科的な原因ではなく,おそらくは以下の通りである:

  • 薬剤の作用

  • 多因子性または特発性

脳機能に全般的な影響を及ぼす非神経疾患は,ときに浮動性めまいとして現れ,回転性めまいとして現れることはまれである。これら障害には,典型的には,低血圧,低酸素血症,貧血,または低血糖に起因した基質(例,酸素,ブドウ糖)の供給不足が関与しており,こうした障害の一部は,重度の場合,失神として現れることがある。さらに,特定のホルモン変化(例,甲状腺疾患,月経,妊娠と同様のもの)が浮動性めまいを引き起こすことがある。多数の中枢神経系作用薬が,前庭系に対する毒性作用と無関係に,浮動性めまいを引き起こしうる。

ときに浮動性めまいおよび回転性めまいは心因性のことがある。パニック症,過換気症候群,不安,または抑うつのある患者には,浮動性めまいの愁訴がみられることがある。

高齢患者においては,浮動性めまいは薬剤の有害作用および加齢に伴う視覚,前庭感覚,固有受容感覚の機能低下から二次的に起こる多因子性のものである場合が多い。最も一般的な2つの特異的原因は,以下の内耳の障害である:良性発作性頭位めまい症およびメニエール病

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浮動性めまいおよび回転性めまいの原因

原因

示唆する所見

診断アプローチ

末梢前庭系障害a,b

特定の方向に頭部を動かすことで誘発される,重度で持続時間の短い(1分未満)の回転

眼振には1~10秒間の潜時があり,疲労現象がみられる,頭位により誘発される回旋性眼振(beating toward the undermost ear)である

固視を予防するためにフレンツェル眼鏡が必要である

聴覚検査および神経学的診察では異常を認めない

ディックス-ホールパイク法により特徴的な頭位眼振を評価する

片側性の耳鳴,難聴,耳閉感の反復

聴力検査

ガドリニウム造影MRIにより他の原因を除外する

前庭神経炎(ウイルス性の原因が疑われる)

難聴やその他の所見を伴わないが,突然で,身体能力を奪うほどの,重度な回転性めまい

最長1週間にわたり持続し,症状は徐々に軽減する

頭位めまい症に至る場合がある

臨床的評価

ガドリニウム造影MRI

内耳炎(ウイルス性または細菌性)

難聴,耳鳴

化膿性感染症が疑われる場合,側頭骨CT

片側性の難聴および耳鳴の場合,ガドリニウム造影MRI

中耳炎(急性 または慢性,ときに真珠腫を伴う)

慢性耳炎の場合,耳痛,視診での異常所見(分泌物など)

感染症の既往

臨床的評価

真珠腫の場合,半規管瘻孔を除外するためにCT

外傷(例,鼓膜の破裂,迷路の挫傷,外リンパ瘻,側頭骨骨折,脳震盪後)

病歴上明らかな外傷

損傷の部位および程度に応じたその他の所見

原因および所見に応じてCT

緩徐に進行する片側性の難聴,耳鳴,浮動性めまい,平衡障害

まれに顔面のしびれ,筋力低下,またはその両方

聴力検査

聴力の顕著な非対称性または片側性の耳鳴を認める場合,ガドリニウム造影MRI

最近開始されたアミノグリコシド系薬剤による治療,通常は両側性難聴および前庭機能低下を伴う

臨床的評価

電気眼振検査および回転椅子検査による前庭機能の評価

耳帯状疱疹(ラムゼイ-ハント症候群)

膝神経節も侵襲するため,しばしば難聴とともに顔面の筋力低下および味覚喪失が現れる

回転性めまいは起こりうるが,典型的ではない

耳介および外耳道に小水疱がみられる

臨床的評価

慢性の動揺病(下船病)

急性の動揺病後の持続性の症状

臨床的評価

中枢前庭系障害d

脳幹の出血または梗塞

突然の発症

耳症状を引き起こす可能性のある蝸牛動脈の関与

迅速な画像検査

可能であればガドリニウム,造影MRI,そうでなければCT

小脳の出血または梗塞

突然の発症で,運動失調およびその他の小脳所見,しばしば頭痛を伴う

急速に悪化する

迅速な画像検査

可能であれば,ガドリニウム造影MRI,そうでなければCT

一時的に繰り返す再発性の回転性めまいで,片側性の聴覚症状は通常伴わない(耳鳴はみられるが,通常は両側性である)

頭痛がみられる場合があるが,しばしば片頭痛の既往または家族歴がある

羞明,音恐怖症,前兆の視覚症状,その他の前兆がみられる場合があり,診断に有用である。

通常は臨床的評価であるが,その他の原因を除外するために画像検査も行う

片頭痛予防の試行

寛解と反復性の増悪を呈する,多様な中枢神経系の運動および感覚障害

脳および脊椎のガドリニウム造影MRI

椎骨動脈解離

しばしば頭頸部痛

MRアンギオグラフィー

椎骨脳底動脈循環不全

間欠性の短時間エピソードで,ときに転倒発作,視覚障害,錯乱を伴う

MRアンギオグラフィー

中枢神経系機能の全体的な障害e

蒼白,筋力低下,ときに便潜血陽性

血算

中枢神経系作用薬f(聴器毒性のないもの)

最近開始された薬剤または増量;複数の薬剤,特に高齢患者において

運動および姿勢とは無関係の症状

ときに薬物濃度(特定の抗てんかん薬)

試験的な投与中止

低血糖(通常は糖尿病治療薬により引き起こされる)

最近の増量

ときに発汗

指先採血による血糖測定(可能であれば,症状出現時)

低血圧(心疾患,降圧薬,失血,脱水,または体位性頻脈症候群,その他の自律神経失調症を含む起立性低血圧症候群により引き起こされる)

起床時の症状で,ときに迷走神経刺激(例,排尿)により起こるが,頭部の運動時または臥位時には起こらない

臨床像は原因(例,失血,下痢)に強く規定される場合がある。

起立時のバイタルサイン測定と,ときにティルト試験,心電図検査

疑われる原因を対象としたその他の検査

頻呼吸

しばしば,肺疾患の既往

パルスオキシメトリー

その他の原因e

妊娠

認識されていない場合がある

妊娠検査

精神(例,パニック発作,過換気症候群,不安,抑うつ)

慢性で,短時間かつ再発性の症状

運動または姿勢とは無関係であるが,ストレスまたは精神的動揺により生じる場合がある

神経学的および耳鼻咽喉診察の所見は正常である

初期には,末梢前庭機能障害と診断され,適切な管理に反応しない場合がある

臨床的評価

反復性の回転性めまいを併発する両側性の難聴,聴力変動を伴う慢性症状

梅毒血清学的検査

体重変化

耐暑性または耐寒性の低下

甲状腺機能検査

a典型的には,症状が発作性かつ重度で,持続的ではなく,一時的である。耳症状(例,耳鳴,耳閉感,難聴)は,通常,末梢系の障害を示唆する。意識消失は,末梢前庭系の病変に起因する浮動性めまいとは関連しない。

b末梢前庭系障害をおおよその発生頻度順に記載した。

c多数の薬剤(アミノグリコシド系薬剤,クロロキン,フロセミド,およびキニーネを含む)。その他にも数多くの薬剤に聴器毒性があるが,それらは前庭器官よりも蝸牛に対する作用が大きい。

d耳症状はまれにしか存在しないが,歩行/平衡障害はよくみられる。眼振は固視により抑制されない。

eこれらの原因は,耳症状(例,難聴,耳鳴)または局所神経脱落症状(ときに低血糖を伴って生じる)を引き起こさないはずである。回転性めまいの症状はまれであるが,報告されている。

f数多くの薬剤(大半の抗不安薬,抗てんかん薬,抗うつ薬,抗精神病薬,鎮静薬を含む)が存在する。回転性めまいの治療に使用される薬剤も含まれる。

評価

病歴

現病歴の聴取では,患者が感じた感覚を含めるべきであり,自由回答式の質問が最善の方法である(例,「「めまい」という言葉の使い方は人により異なりますが,あなたの感じ方をできるだけ詳しく説明していただけますか?」)。感じ方が失神感,ふらつき,平衡感覚の喪失,回転性めまいのいずれであるかについて,簡潔かつ具体的な質問を行うことで,状況が明らかになる可能性があるが,患者の感覚を分類することに固執する必要はない。その他にも以下の要素が有用かつ明確である:

  • 初回エピソードの重症度

  • その後のエピソードの重症度および特徴

  • 持続性または一時的な症状

  • 一時的な場合,頻度および持続期間

  • 誘発因子および軽快因子(すなわち,頭位/体位の変化による誘発)

  • 関連する前兆症状(例,難聴,耳閉感,耳鳴)

  • 重症度および関連する障害

患者が単発で,突然の急性イベントを有するか,または浮動性めまいが慢性的ならびに反復性であったか?初回エピソードが最も重症であったか(vestibular crisis)?エピソードの持続時間はどれくらいか,ならびに,それらの誘発因子や増悪因子は何と思われるか?頭部の動き,起床時,不安またはストレスの多い状況にあるとき,および月経について,患者に具体的に質問するべきである。重要な随伴症状として,頭痛,難聴,耳鳴,悪心および嘔吐,視覚障害,局所の筋力低下,歩行困難などがある。患者の生活への影響の程度を推定すべきである:患者は転倒したことがあるか?患者は運転や外出を躊躇していないか?患者は仕事を欠勤したことがあるか?

系統的症状把握(review of systems)では,原因となる疾患の症状(上気道感染症状[内耳疾患];胸痛,動悸,またはその両方[心疾患];呼吸困難[肺疾患];暗色便[消化管出血による貧血];体重変化または耐暑性もしくは耐寒性の低下[甲状腺疾患]を含む)がないか探求すべきである。

既往歴の聴取では,最近の頭部外傷(通常は病歴から明らか),片頭痛,糖尿病,心または肺疾患,耐暑性または耐寒性低下,ならびに薬物およびアルコール乱用の有無に注意すべきである。薬歴の聴取では,現在使用中の薬剤を全て確認することに加えて,薬剤,用量,またはその両方の最近の変更を評価すべきである。

身体診察

診察はバイタルサインの評価から開始し,その評価項目には発熱の有無,急速または不規則な脈拍,仰臥位および立位での血圧,起立時の血圧低下(起立性低血圧),ならびに起立による症状誘発の有無を含める。起立により症状が誘発される場合は,患者を仰臥位に戻して症状が消失するまで待ち,それから頭部を回旋させることにより,体位性の症状と頭部の動きにより誘発される症状を鑑別するべきである。

耳鼻咽喉科的診察と神経学的診察が基本となる。具体的には,患者を仰臥位にしてから眼を視診し,自発眼振の有無,方向,および持続時間を確認する(眼振の診察の詳しい説明については, 眼振)。眼振の方向および持続時間と回転性めまいの発生状況に注目する。

ベッドサイドで総合的な聴覚検査を行うとともに,外耳道を視診して分泌物漏出や異物がないか確認し,鼓膜を診察して感染または穿孔の徴候がないか確認する。

歩行を評価し,指鼻試験およびロンベルク試験を行うことにより,小脳機能を検査する( 感覚の評価方法)。専門医が行うUnterberger(または福田)の足踏み検査( 診断)が,片側性の前庭病変の検出に役立つ可能性がある。残りの脳神経の検査を含め,その他の神経学的診察を行う。

眼振

眼振は両眼の律動的な動きであり,様々な原因で起こりうる。前庭疾患では,前庭系と動眼神経核が相互に連絡しているため,眼振を来すことがある。前庭性眼振の存在は前庭疾患の同定に有用であり,ときに中枢性めまいと末梢性めまいを鑑別できる。前庭性眼振には,前庭入力によって引き起こされる緩徐相と,元に戻る急速相(逆方向への動きを引き起こす)がある。眼振の方向は急速相の方向で定義されるが,これは急速相の方が視認しやすいためである。眼振には回旋性,垂直性,水平性があり,また,自発的に起こるもの,注視により起こるもの,頭部の動きにより起こるものがある。

眼振に対する最初の視診は,患者を仰臥位にし,注視の焦点を合わせずに行う(注視の固定を防止するために,+30ジオプトリーのレンズまたはフレンツェル眼鏡を使用できる)。次に,患者の体をゆっくりと回転させて左側臥位とし,さらに回転させて右側臥位とする。眼振の方向および持続時間を観察する。眼振が検出されなければ,ディックス-ホールパイク(またはBarany)法を行う。この手技では,患者をストレッチャーに座らせ,仰向けになったら端から頭が出る位置で直立座位をとらせる。患者の体を支えながら速やかに水平まで倒し,頭を後ろに伸ばして水平線より45度下になるようにして,左側に45度回転させる。眼振の方向および持続時間と回転性めまいの発生を観察する。患者を起座位に戻し,同じ操作を右方向への回転で繰り返す。眼振を引き起こす姿勢または操作があれば,それを繰り返して疲労現象が起こるかどうか確認すべきである。

末梢神経系疾患に続発する眼振には3~10秒の潜時があり,急速に疲労するが,これに対して中枢神経系に続発する眼振は潜時がなく,疲労しない。誘発眼振中は,ある物体に焦点を合わせるよう患者に指示する。末梢前庭障害による眼振は固視により抑制される。フレンツェル眼鏡は固視を妨げるため,固視を評価する際には外さなければならない。

前庭系に障害がなければ,外耳道の温度刺激検査により眼振が誘発される。眼振が誘発されない場合や,両側で持続時間に20~25%を超える差がある場合には,反応が弱い側の病変が示唆される。温度反応の定量は,正式な(コンピュータ式)電気眼振検査により行うのが最善である。

末梢刺激に対する前庭系の反応能力はベッドサイドで評価できる。鼓膜穿孔または慢性感染症が判明している耳には注水しないように注意すべきである。患者を仰臥位にし,頭部を30°挙上して,それぞれの耳に3mLの氷水を順次注入する。代わりに240mLの温水(40~44℃)を使用してもよいが,その場合は温度が高すぎて熱傷を引き起こさないように注意する。冷水は対側への眼振を引き起こし,温水は同側への眼振を引き起こす。覚え方はCOWS(Cold to the Opposite and Warm to the Same)である。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 頭痛または頸部痛

  • 運動失調

  • 意識消失

  • 局所神経脱落症状

  • 重度で,1時間を超えて持続する症状

所見の解釈

従来,鑑別診断は主訴の厳密な性質に基づいてなされてきた(すなわち,浮動性めまいと回転性めまいによるふらつきを区別する)。しかしながら,患者の説明に一貫性がなく,症状に特異性が乏しいことから,この方法は信頼できない。より良好なアプローチとしては,症状の発症およびタイミング,誘因,ならびに随伴する症状および所見(特に耳科的および神経学的なもの)により重点を置く。

特定の一連の所見,特に末梢性前庭疾患と中枢性前庭疾患を鑑別するのに役立つ所見は,非常に示唆的である( 浮動性めまいおよび回転性めまいの原因を参照)。

  • 末梢性:耳症状(例,耳鳴,耳閉感,難聴)は通常,末梢障害を意味する。典型的には,耳症状には回転性めまいが随伴し,全身性の浮動性めまいは随伴しない(非代償性の末梢前庭性の脱力により引き起こされるものは除く)。症状は通常,発作性かつ重度で反復性である;持続性の浮動性めまいは,まれに末梢性の回転性めまいに起因する。意識消失には,末梢前庭系の病変による浮動性めまいは随伴しない。

  • 中枢性:耳症状はまれにみられるが,歩行/平衡障害が一般的である。眼振は固視により抑制されない。

検査

持続性の発作が突然みられた患者には,パルスオキシメトリーと指先採血による血糖測定を行うべきである。女性には妊娠検査を行うべきである。大半の医師は心電図検査も施行する。その他の検査は所見に基づいて行うが( 浮動性めまいおよび回転性めまいの原因を参照),一般的には,急性症状がみられる患者に頭痛,神経学的異常,または中枢神経系の病因を示唆するその他の所見が認められた場合には,ガドリニウム造影MRIの適応となる。

慢性症状がみられる患者に対しては,ガドリニウム造影MRIを施行し,脳卒中,多発性硬化症,またはその他の中枢神経系病変を検索する。

聴覚および前庭機能に関するベッドサイド検査の結果が異常または不確実な患者に対しては,聴力検査および電気眼振検査による正式な検査を行うべきである。

心機能を評価するため,心電図検査,心拍リズムの異常を調べるホルター心電図検査,心エコー検査,および運動負荷試験を施行してもよい。

臨床検査が有用となることはまれであるが,例外として,慢性の回転性めまいと両側性の難聴がある患者は,梅毒血清学的検査の適応となる。

治療

治療は原因に対して行い,原因薬剤の中止,減量,切替えなどがある。

前庭疾患が存在し,それが活動期の メニエール病または前庭神経炎もしくは内耳炎に続発したものと考えられる場合には,最も効果的な前庭神経抑制薬は,ジアゼパム(2~5mg,経口,6~8時間毎,重度の回転性めまいには監視下で用量を増加)または経口抗ヒスタミン薬/抗コリン薬(例,メクリジン25~50mg,1日3回)である。これらの薬剤はいずれも眠気を引き起こす可能性があるため,特定の患者では使用が制限される。悪心は,プロクロルペラジン(10mg,筋注,1日4回または25mg,直腸内,1日2回)により治療できる。良性発作性頭位めまい症に伴う回転性めまいは,経験豊富な医師によるエプリー法(耳石置換法)により治療する。メニエール病については,この慢性疾患の管理の訓練を積んだ耳鼻咽喉科医が管理するのが最善であるが,初期管理は減塩食とカリウム保持性利尿薬からなる。

片側性の前庭の反応低下に続発する持続性または再発性の回転性めまい(前庭神経炎に続発するものなど)の患者には,通常,経験豊富な理学療法士による平衡訓練が有益である。ほとんどの患者で十分な代償が得られるが,一部の患者(特に高齢者)では比較的困難である。理学療法では,高齢者または顕著な障害のある患者にとって重要な安全上の情報も得られる。

老年医学的重要事項

加齢に伴い,平衡感覚に関与する臓器の機能は低下する。例えば,薄暗い光の中で物を見ることがより困難になり,内耳の構造が劣化し,固有受容感覚は感度が低下し,血圧制御機構の反応性が低下する(例,体位変換,摂食後の変化に対する反応)。また,高齢者は浮動性めまいに寄与しうる心疾患または脳血管疾患を有する可能性も高い。さらに,高齢者は高血圧,狭心症,心不全,痙攣,および不安に対する薬剤のほか,特定の抗菌薬,抗ヒスタミン薬,睡眠補助薬といった浮動性めまいを引き起こしうる薬剤を服用している可能性も高い。そのため,高齢患者の浮動性めまいには,通常,複数の原因がある。

浮動性および回転性めまいによる影響は,年齢を問わず不快であるが,高齢患者にとっては特に大きな問題となる。フレイルな患者では,転倒とそれに伴う骨折のリスクが著明に高くなるが,こうした患者の移動および転倒への恐怖が,しばしば日常生活動作の遂行能力を著しく低下させることになる。

浮動性めまいまたは回転性めまいのある高齢患者には,特異的な原因の治療に加えて,理学療法および運動により筋力を強化し,可能な限り長期にわたり自立歩行の維持を支援することが,有益である可能性がある。

要点

  • 説明に一貫性のない曖昧な症状であっても,重篤な病態が関連している可能性がある。

  • 脳血管疾患および薬剤の作用を検索すべきである(特に高齢患者)。

  • 末梢前庭系障害と中枢前庭系障害を鑑別すべきである。

  • 症状に頭痛,局所の神経学的異常,またはその両方を伴っている場合は,直ちに神経画像検査を施行すべきである。

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