浮動性めまいと回転性めまい

完全なレビュー: 2025年 1月 執筆者:Eric J. Formeister, MD, MS, Dept. of Head and Neck Surgery and Communication Sciences, Duke University School of Medicine | 査読者Lawrence R. Lustig, MD, Columbia University Medical Center and New York Presbyterian Hospital
最終更新日: 2025年 2月
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めまいとは,以下のような互いに関連する様々な感覚を表現するために患者が使用する,不明確な用語である:

  • 失神感(失神が切迫した感覚)

  • ふらつき

  • 平衡異常感または不安定感

  • 漠然とぼうっとする感覚または頭がくらくらする感覚

  • 回転するような感覚

浮動性めまいは一過性の場合または慢性の場合がある。慢性の浮動性めまい(1カ月以上持続するものと定義される)は,高齢者でよくみられる。

回転性めまいとは,実際には動いていない状況で自身または周囲が動いているように感じられる感覚である。通常,知覚される動きは回転(ぐるぐる回る感覚,体が前後左右に倒れそうになる感覚)であるが,片側に引っ張られるだけのように感じる患者もいる。回転性めまいは診断名ではなく,感覚を説明する用語である。

回転性めまいは典型的には末梢性と中枢性に分類される。

  • 末梢性の回転性めまいは一般に,末梢前庭系の機能障害によって引き起こされる。

  • 中枢性の回転性めまいは通常,脳幹または小脳の機能障害によって引き起こされる。

浮動性めまいと回転性めまいは,いずれも悪心・嘔吐,平衡障害,歩行困難を伴う場合がある。

患者はしばしば「めまい(dizzinessまたはvertigo)」やその他の用語を互換的に一貫性なく使用するが,その理由の1つとして,これらの感覚は言葉で表現するのが難しいことが挙げられる。同じ基礎疾患を有する複数の患者が,それぞれの症状を大きく異なる表現で説明する場合もある。質問の仕方次第では,同じ「めまい」の事象を異なる表現で説明する場合さえある。そのため,医師はしばしばこれら2つの症状を同時に考慮しなければならない。

たとえ患者がどのように説明するとしても,浮動性めまい(dizziness)と回転性めまい(vertigo)は,煩わしく(特に悪心と嘔吐を伴う場合は)日常生活に支障を来すこともある症状である。これらの症状は,自動車の運転,航空機の操縦,重機の操縦など,厳密さを必要とする作業または危険な作業を行う人では,重要な難題となる。重要なことに,浮動性めまいと回転性めまいは転倒の強い危険因子であり,特に高齢者では重要性が高まる(1)。

米国の全国健康調査のデータによると,米国の成人における浮動性めまいの1年有病率は11%である(1)。ある大規模コホート研究では,過去10年間における救急受診の2.5%を回転性めまいと浮動性めまいが占めていた(2)。

総論の参考文献

  1. 1.Lin HW, Bhattacharyya N.Impact of dizziness and obesity on the prevalence of falls and fall-related injuries. Laryngoscope 2014;124(12):2797-2801.doi:10.1002/lary.24806

  2. 2.Kerber KA, Meurer WJ, West BT, Fendrick AM.Dizziness presentations in U.S. emergency departments, 1995-2004. Acad Emerg Med 2008;15(8):744-750.doi:10.1111/j.1553-2712.2008.00189.x

浮動性めまいと回転性めまいの病態生理

前庭系は,平衡制御に関与する主な神経系である。前庭系には以下の要素が含まれる:

  • 内耳の前庭器官

  • 第8脳神経(内耳神経)(前庭器官から中枢前庭系に信号を伝導する)

  • 脳幹および小脳にある前庭神経核

内耳および第8脳神経の障害は,末梢系の障害とみなされる。脳幹内の前庭神経核とその経路および小脳の障害は,中枢性の障害とみなされる。

平衡感覚には,また,眼からの視覚刺激の入力および末梢神経からの(脊髄を経由した)固有受容感覚刺激の入力が組み込まれている。大脳皮質は下位中枢からの出力を受け,その情報を統合して運動の感覚を生み出す。

前庭器官

安定,運動,および重力方向の感覚は,前庭器官に由来し,前庭器官は以下の要素から構成される:

  • 3つの半規管

  • 2つの耳石器―球形嚢および卵形嚢

回転運動が起きると,半規管内で回転運動方向と同じ向きの内リンパの流れが発生する。内リンパの動きは,流れの方向に応じて,半規管内に並んだ有毛細胞からの神経出力を刺激または阻害する。球形嚢および卵形嚢内にある同様の有毛細胞は,炭酸カルシウム結晶(耳石)の基質に埋め込まれている。重力により耳石の位置がずれると,付着している有毛細胞からの神経出力が刺激または阻害される。

浮動性めまいと回転性めまいの病因

浮動性めまいおよび回転性めまいの原因としては,構造的な原因(外傷,腫瘍,変性),血管性の原因,感染,毒性(薬剤関連のものを含む),および特発性など数多くのものがあるが(の表を参照),重篤な疾患に起因する症例は少数に過ぎない。浮動性めまいや回転性めまいの原因が末梢性か中枢性かを特定する枠組みを用いることが助になる。末梢性の回転性めまいや浮動性めまいとは,中耳,内耳(蝸牛,前庭,半規管,卵形嚢,球形嚢),または前庭神経の機能障害によってこれらの症状が生じた場合のことである。中枢性の回転性めまいや浮動性めまいは,中枢神経系または脳レベルに機能障害があることを意味する。浮動性めまいや回転性めまいがある患者では,複数の診断が下されるのが一般的である。特に,良性発作性頭位めまい症の患者(1)とメニエール病の患者(2)では,前庭性片頭痛(回転性めまいと浮動性めまいの中枢性の原因)が比較的多くみられる。

末梢性の浮動性めまいまたは回転性めまいの最も一般的な原因を,以下に頻度の高い順に列挙する(3):

中枢性の浮動性めまいまたは回転性めまいの最も一般的な原因としては,頻度の高い順に以下のものがある:

  • 前庭性片頭痛(4)

  • 薬剤の副作用,特にβ遮断薬などの降圧薬または複数の降圧薬を同時に使用した場合(5)

  • 機能性めまい(持続性知覚性姿勢誘発めまい[PPPD,かつては視性めまいや慢性自覚性めまいとして知られていた],動揺病,下船病)(6)

  • 加齢性前庭障害(7)

米国では,前庭性片頭痛の1年有病率が2.7%であり,浮動性めまいの最も一般的な原因である可能性が高い(4)。

中枢性の回転性めまいの比較的まれな原因としては,脳機能により全般的な影響を及ぼす疾患(例,脳幹の出血または梗塞,多発性硬化症,認知症,パーキンソン病),小脳機能障害,脳腫瘍(特に後頭蓋窩腫瘍),精神疾患,視覚または固有受容感覚刺激の入力に影響を及ぼす疾患などがある。しばしば,明白な原因を発見できないことがある。

聴覚と同様に,内耳および脳の平衡感覚を司る末梢と中枢両レベルの機構に自然な衰えがみられる(加齢性前庭障害)(7)。

診断にかかわらず,浮動性めまい,回転性めまい,または平衡異常は,どのような種類のものであれ,転倒および転倒に関連した外傷のリスクを有意に増大させるため,真剣に受け止めるべきである(8)。平衡機能に関する理学療法(前庭理学療法としても知られる)は,極度の動揺病患者を除く,慢性の浮動性めまいのほぼ全ての患者で助けになる。

回転性めまいを伴わない浮動性めまいの最も一般的な原因は,あまり明確ではないが,通常は耳科的な原因ではなく,おそらくは以下の通りである:

  • 薬剤の作用,特に降圧薬

  • 多因子性または特発性

  • 機能性めまい

脳機能に全般的な影響を及ぼす非神経疾患は,ときに浮動性めまいとして現れるが,回転性めまいとして現れることはまれである。それらの疾患には典型的には低血圧,低酸素血症貧血,または低血糖に起因した基質(例,酸素,ブドウ糖)の供給不足が関与しており,それらの疾患の一部が重症化すると,失神として現れることがある。さらに,特定のホルモン変化(例,甲状腺疾患,月経,妊娠に伴うもの)が浮動性めまいを引き起こすことがある。多数の中枢神経系作用薬が,前庭系に対する毒性作用とは無関係に,浮動性めまいを引き起こす可能性がある。

ときに浮動性めまいおよび回転性めまいは心因性のことがある。パニック症過換気症候群不安,または抑うつのある患者では,浮動性めまいがみられることがある。慢性の浮動性めまいがある患者の最大50%に抑うつ,不安,またはその両方がみられる(9)。

持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)は,ときに慢性的な身体内部の揺れと表現され,臥位で消失し,3カ月を超えて持続するが,その持続性について臨床的に説明ができない状態であり,慢性機能性疾患に分類される。BPPVや前庭性片頭痛などの他の急性疾患によって誘発されることもあれば,不安症の一症状であることもある。

非代償性の末梢前庭機能低下は,回転性めまいではなく平衡障害を引き起こし,しばしば頭部回転に伴う霧視を引き起こす。前庭神経炎,回転性めまいを伴う片頭痛,メニエール病,頭部外傷,または内耳手術の結果として生じる可能性がある。

高齢患者においては,浮動性めまいは薬剤の有害作用および加齢に伴う視覚,前庭感覚,固有受容感覚の機能低下から二次的に起こる多因子性のものである場合が多い。最も一般的な2つの特異的原因は,以下の内耳の障害である:BPPVおよびメニエール病

表&コラム
表&コラム

病因論に関する参考文献

  1. 1.Çakır S, Sahin A, Gedik-Soyuyuce O, et al. Assessing the impact of migraine on benign paroxysmal positional vertigo symptoms and recovery. BMC Neurol 24(1):148, 2024.https://doi.org/10.1186/s12883-024-03606-2

  2. 2.Kim SY, Lee CH, Yoo DM, et al.Association Between Meniere Disease and Migraine. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg 148(5):457–464, 2022.doi:10.1001/jamaoto.2022.0331

  3. 3.Neuhauser HK.Chapter 5.The epidemiology of dizziness and vertigo. In: Handbook of Clinical Neurology, 2016 Vol.137 (3rd series), Neuro-Otology J.M.Furman and T.Lempert, Editors http://dx.doi.org/10.1016/B978-0-444-63437-5.00005-4

  4. 4.Formeister EJ, Rizk HG, Kohn MA, Sharon JD.The Epidemiology of Vestibular Migraine: A Population-based Survey Study. Otol Neurotol 39(8):1037-1044, 2018.doi:10.1097/MAO.0000000000001900

  5. 5.Shoair OA, Nyandege AN, Slattum PW.Medication-Related Dizziness in the Older Adult.Otolaryngol Clin North Am 44(2):455-471, 2011.doi:10.1016/j.otc.2011.01.014

  6. 6.Popkirov S, Staab JP, Stone J.Persistent postural-perceptual dizziness (PPPD): a common, characteristic and treatable cause of chronic dizziness.Pract Neurol 18(1):5-13, 2018.doi:10.1136/practneurol-2017-001809

  7. 7.Davalos-Bichara M, Agrawal Y.Normative Results of Healthy Older Adults on Standard Clinical Vestibular Tests.Otol Neurotol 35(2):297-300, 2014.doi:10.1097/MAO.0b013e3182a09ca8

  8. 8.Lin HW, Bhattacharyya N.Impact of dizziness and obesity on the prevalence of falls and fall-related injuries. Laryngoscope 124(12):2797-2801, 2014.doi:10.1002/lary.24806

  9. 9.Feng S, Zang J.The effect of accompanying anxiety and depression on patients with different vestibular syndromes. Front Aging Neurosci 15:1208392, 2023.doi:10.3389/fnagi.2023.1208392

浮動性めまいと回転性めまいの評価

病歴

現病歴の聴取では,患者が感じた感覚を含めるべきであり,自由回答式の質問が最善の方法である(例,「「めまい」という言葉の使い方は人により異なりますが,あなたの感じ方をできるだけ詳しく説明していただけますか?」)。感じ方が失神感,ふらつき,平衡感覚の喪失,回転性めまいのいずれであるかについて,簡潔かつ具体的な質問を行うことで,状況が明らかになる可能性があるが,患者の感覚を分類することに固執する必要はない。そのほかにも以下の要素が有用かつ明確である:

  • 初回エピソードの重症度

  • その後のエピソードの重症度および特徴

  • 症状が持続的か一時的か

  • 一時的な場合,頻度および持続期間

  • 誘発因子および軽快因子(頭位/体位の変化によって引き起こされる)

  • 関連する前兆症状(例,難聴,耳閉感,耳鳴)

  • 重症度および関連する障害

単発かつ突然の急性症状が起きているのか,それとも浮動性めまいが慢性化して反復しているのか?初回エピソードが最も重症であったか(vestibular crisis)?エピソードの持続時間はどれくらいか,ならびに,それらの誘発因子や増悪因子は何と思われるか?頭部の動き,起床時,不安またはストレスの多い状況にあるとき,および月経について,患者に具体的に質問するべきである。重要な随伴症状として,頭痛,難聴,耳鳴,悪心および嘔吐,視覚障害,局所の筋力低下,歩行困難などがある。患者の生活への影響の程度を推定すべきである:患者は転倒したことがあるか?患者は運転や外出を躊躇していないか?患者は仕事を欠勤したことがあるか?

浮動性めまいを引き起こす疾患の症状には大きな重複があるため,診断を確定するには,エピソードの正確なタイミング,頻度,持続時間,および特徴を同定することが必要である。浮動性めまいを引き起こす疾患の大半は臨床的に診断される。浮動性めまいのある患者には,しばしば複数の診断が下され,特に浮動性めまいが慢性の場合はそうなる傾向が強い。例えば,一般集団と比較して片頭痛患者ではメニエール病とBPPVがはるかに多くみられる(1, 2)。

システムレビュー(review of systems)では,原因となる疾患の症状(上気道感染症状[内耳疾患];胸痛,動悸,またはその両方[心疾患];呼吸困難[肺疾患];暗色便[消化管出血による貧血];体重変化または耐暑性もしくは耐寒性の低下[甲状腺疾患]を含む)がないか探求すべきである。

既往歴の聴取では,最近の頭部外傷(通常は病歴から明らか),片頭痛,糖尿病,心疾患,肺疾患,不安または抑うつ,薬物使用症,およびアルコール使用症の有無に注意すべきである。薬歴の聴取では,使用中の薬剤を全て特定することに加えて,薬剤,用量,またはその両方の最近の変更を評価すべきである。

身体診察

診察はバイタルサインの評価から開始し,その評価項目には発熱の有無,急速または不規則な脈拍,仰臥位および立位での血圧,起立時の血圧低下(起立性低血圧),ならびに起立による症状誘発の有無を含める。起立により症状が誘発される場合は,患者を仰臥位に戻して症状が消失するまで待ち,それから頭部を回旋させることにより,体位性の症状と頭部の動きにより引き起こされる症状を鑑別するべきである。

耳科的診察と神経学的診察が基本となる。具体的には,患者を仰臥位にしてから眼を視診し,自発眼振の有無,方向,および持続時間を確認する。眼振の方向および持続時間と回転性めまいの発生に注目する。後半規管型BPPV(三半規管のうち圧倒的に最も侵されやすい)または前半規管型BPPVの診断にはDix-Hallpike法を,水平半規管型BPPVの診断にはsupine roll testを用いる。

ベッドサイドで大まかな聴覚検査を行うとともに,外耳道を視診して分泌物漏出や異物がないか確認し,鼓膜を診察して感染または穿孔の徴候がないか確認する。

歩行を評価し,指鼻試験およびロンベルク試験を行うことにより,小脳機能を検査する(感覚の評価を参照)。片側性の前庭病変の検出には,専門医による福田の足踏み検査(両眼を閉じてその場で足踏みをする)が役立つ可能性がある。残りの脳神経の検査を含め,その他の神経学的診察を行う。HINTS法(Head Impulse, Nystagmus, Test of Skew exam)は,感度および特異度が非常に高いベッドサイド検査であり,中枢性の原因を末梢前庭系の原因と鑑別することができる(3)。特に,水平方向のヘッドインパルス検査での正常所見,偏心固視における方向交代性眼振,および垂直方向の斜偏視はいずれも,末梢の病因ではなく,中枢(脳血管,脳腫瘍,器質的病変)の病因を強く示唆する。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見には特に注意が必要である:

  • 頭痛または頸部痛

  • 運動失調

  • 意識消失

  • 局所神経脱落症状

  • 重度で,1時間を超えて持続する症状

所見の解釈

鑑別診断は多くの場合,主訴の厳密な性質に基づく(すなわち,ふらつきによる浮動性めまいを回転性めまいと区別する)。しかしながら,患者の説明に一貫性がなく,症状に特異性が乏しいことから,このアプローチは信頼できない。よりよいアプローチとしては,症状の発症およびタイミング,症状を誘発する因子,ならびに随伴する症状および所見(特に耳科的および神経学的なもの)に重点を置く。

特定の一連の所見,特に末梢性前庭疾患と中枢性前庭疾患を鑑別するのに役立つ所見は,非常に示唆的である(の表を参照)。

  • 末梢性:耳症状(例,耳鳴,耳閉感,難聴)は通常,末梢障害を意味する。典型的には,耳症状には回転性めまいが随伴し,全身性の浮動性めまいは随伴しない(非代償性の末梢前庭機能低下により引き起こされるものは除く)。症状は通常,発作性かつ重度で反復性である;持続性の浮動性めまいは,まれに末梢性の回転性めまいに起因する。意識消失には末梢前庭系の病変による浮動性めまいは随伴しないため,患者が説明する症状が浮動性めまいであるなら,別の診断を検索する必要がある。

  • 中枢性:耳症状はまれにみられるが,歩行/平衡障害が一般的である。眼振は固視により抑制されない。

検査

持続性の発作が突然みられた患者には,パルスオキシメトリーと指先採血による血糖測定を行うべきである。女性患者には妊娠検査を行うべきである。大半の医師は心電図検査も施行する。その他の検査は所見に基づいて行うが(の表を参照),一般に,急性症状がみられる患者に頭痛,神経学的異常,または中枢神経系の病因を示唆するその他の所見が認められた場合は,ガドリニウム造影MRIの適応となる。

中枢前庭系の病因に起因する慢性症状がみられる患者に対しては,ガドリニウム造影MRIを施行して,脳卒中多発性硬化症,またはその他の中枢神経系病変の所見を検索する。

聴覚および前庭機能に関するベッドサイド検査の結果が異常または不確実な患者に対しては,聴力検査および電気眼振検査による正式な検査を行うべきである。

心機能を評価するため,心電図検査,心拍リズムの異常を調べるホルター心電図検査,心エコー検査,および運動負荷試験を施行してもよい。

臨床検査が役立つことはまれであるが,例外として,慢性の回転性めまいと両側性の難聴がある患者は,梅毒血清学的検査の適応となる。

評価に関する参考文献

  1. 1.Kim SK, Hong SM, Park IS, Choi HG.Association Between Migraine and Benign Paroxysmal Positional Vertigo Among Adults in South Korea. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg 2019;145(4):307-312.doi:10.1001/jamaoto.2018.4016

  2. 2.Radtke A, Lempert T, Gresty MA, Brookes GB, Bronstein AM, Neuhauser H.Migraine and Ménière's disease: is there a link? Neurology 2002;59(11):1700-1704.doi:10.1212/01.wnl.0000036903.22461.39

  3. 3.Kattah JC, Talkad AV, Wang DZ, Hsieh YH, Newman-Toker DE.HINTS to diagnose stroke in the acute vestibular syndrome: three-step bedside oculomotor examination more sensitive than early MRI diffusion-weighted imaging. Stroke 2009;40(11):3504-3510.doi:10.1161/STROKEAHA.109.551234

浮動性めまいと回転性めまいの治療

浮動性および回転性めまいの治療は原因に対して行うが,それには原因薬剤の中止,減量,または変更が含まれる。

前庭疾患が存在し,それが活動期のメニエール病または前庭神経炎内耳炎に続発したものと考えられる場合には,経口抗ヒスタミン薬/抗コリン薬(例,メクリジン,プロメタジン)またはベンゾジアゼピン系薬剤(例,ジアゼパム,クロナゼパム)が最も効果的な前庭神経抑制薬となる。これらの薬剤はいずれも眠気を引き起こす可能性があるため,特定の患者では使用が制限される。これらの前庭機能抑制薬は,長期間使用すると中枢の代償機能を阻害し,症状を長引かせる可能性があるため,急性の回転性めまいの発生中(メニエール病)と発症後の最初の数日間(前庭神経炎または内耳炎)に限定して使用するべきである。

悪心はプロクロルペラジンまたはオンダンセトロンで治療できる。

良性発作性頭位めまい症に伴う回転性めまいは,経験豊富な専門家(例,前庭理学療法士)によるEpley法(浮遊耳石置換法)で治療する。ときに患者に自己治療法を指導する。BPPV単独の患者は薬剤の適応とならない。

メニエール病については,この慢性疾患の管理の訓練を積んだ耳鼻咽喉科医が管理するのが最善であるが,初期管理は典型的には減塩食とカリウム保持性利尿薬,またはベタヒスチンで構成される(1)。

前庭性片頭痛の患者は管理のために神経科医に紹介すべきである。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)阻害薬は,前庭性片頭痛の前庭症状の治療に効果的である可能性がある(2)。

基礎にある不安または抑うつの要素が疑われる場合は,プライマリケア医または精神科医のいずれかを通じて患者を適切に治療すべきである。

片側性の末梢前庭機能低下に続発する持続性または再発性の回転性めまい(前庭神経炎に続発するものなど)の患者には,経験豊富な前庭理学療法士による平衡訓練が有益である。大半の患者で十分な代償が得られるが,一部の患者(特に高齢患者)では比較的困難である。理学療法では,高齢患者や顕著な障害のある患者にとって重要な安全上の情報を提供することができる。平衡訓練は,前庭性片頭痛(3)やPPPD(4)など,非末梢性の病因を含んだ浮動性めまいが生じる他の慢性疾患に対しても非常に効果的である。

治療に関する参考文献

  1. 1.Basura GJ, Adams ME, Monfared A, et al.Clinical Practice Guideline: Ménière's Disease.Otolaryngol Head Neck Surg 162(2_suppl):S1-S55, 2020.doi: 10.1177/0194599820909438

  2. 2.Russo CV, Saccà F, Braca S, et al.Anti-calcitonin gene-related peptide monoclonal antibodies for the treatment of vestibular migraine: A prospective observational cohort study.Cephalalgia p43(4):3331024231161809, 2023.doi: 10.1177/03331024231161809

  3. 3.Balci B, Akdal G.Outcome of vestibular rehabilitation in vestibular migraine. J Neurol 269(12):6246-6253, 2022.doi:10.1007/s00415-022-11250-4

  4. 4.Ibrahim NMK, Hazza NMA, Yaseen DM, Galal EM.Effect of vestibular rehabilitation games in patients with persistent postural perceptual dizziness and its relation to anxiety and depression: prospective study.Eur Arch Otorhinolaryngol 281(6):2861-2869, 2024.doi: 10.1007/s00405-023-08369-z

老年医学的重要事項:浮動性めまいと回転性めまい

加齢に伴い,平衡感覚に関与する臓器の機能は低下する。例えば,薄暗い光の中で物を見ることがより困難になり,内耳の構造が劣化し,固有受容感覚は感度が低下し,血圧制御機構の反応性が低下する(例,体位変換,摂食後の変化に対する反応)。また,高齢者は浮動性めまいに寄与しうる心疾患または脳血管疾患を有する可能性も高い。さらに,高齢者は高血圧,狭心症,心不全,痙攣,および不安に対する薬剤のほか,特定の抗菌薬,抗ヒスタミン薬,睡眠補助薬といった浮動性めまいを引き起こす可能性のある薬剤を服用している可能性も高い。そのため,高齢患者の浮動性めまいには,通常,複数の原因がある。

浮動性および回転性めまいによる影響は,年齢を問わず不快であるが,高齢患者にとっては特に大きな問題となる。フレイルの患者では,転倒とそれに伴う骨折のリスクが著明に高くなるが,こうした患者の移動および転倒への恐怖が,しばしば日常生活動作の遂行能力を著しく低下させることになる。

浮動性めまいまたは回転性めまいのある高齢患者には,特異的な原因の治療に加えて,理学療法および運動により筋力を強化し,可能な限り長期にわたり自立歩行の維持を支援することが,有益である可能性がある。

要点

  • 説明に一貫性のない曖昧な症状であっても,重篤な病態が関連している可能性がある。

  • 脳血管疾患および薬剤の作用を検索すべきである(特に高齢患者)。

  • 末梢前庭系障害と中枢前庭系障害を鑑別すべきである。

  • 症状に頭痛,局所の神経学的異常,またはその両方を伴っている場合は,直ちに神経画像検査を施行すべきである。

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