受動免疫

執筆者:Margot L. Savoy, MD, MPH, Lewis Katz School of Medicine at Temple University
レビュー/改訂 2022年 10月
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    受動免疫付与には以下の投与を必要とする:

    • 微生物に対する抗体または微生物によって産生された毒素

    受動免疫は以下の状況で行われる:

    • 患者が体内で抗体を合成できないとき

    • 患者が免疫を有していない疾患または合併症を引き起こす可能性が高い疾患に曝露したとき

    • 疾患を発症した患者で毒素の作用を軽減する必要があるとき

    受動免疫では自然免疫は誘導されない。

    米国で使用可能な免疫グロブリンおよび抗毒素製剤については, see table 米国で使用可能な免疫グロブリンおよび抗毒素製剤*を参照のこと。

    表&コラム

    ヒト免疫グロブリン(IG)

    IG製剤は,正常なドナーから採取した血漿より調製される抗体濃縮溶液である。主にIgGから構成されるが,IgA,IgM,および他の血清タンパク質も微量に含有する。IG製剤に感染性ウイルス(例,B型またはC型肝炎ウイルス,HIV)が含まれることは非常にまれであり,4℃で保存すれば何カ月にもわたって安定である。IG製剤は筋肉内投与する。

    筋肉内投与したとき最大血清中抗体濃度への到達には約48時間を要するため,IG製剤は曝露後可及的速やかに投与する必要がある。循環血中でのIGの半減期は約3週間である。

    IG製剤は,以下に曝露したか,以下のリスクがある個人の予防に使用できる:

    IG製剤には一時的な予防効果しかなく,対象の病原体に対する抗体の含有濃度は製剤間で10倍ものばらつきがある。投与には痛みを伴い,アナフィラキシーが発生する可能性がある。

    静注用免疫グロブリン製剤(IVIG)は,ヒト免疫グロブリンの大量反復投与を可能にするために開発された。IVIGは,特に以下のものをはじめとする,細菌性およびウイルス性の重症感染症,自己免疫疾患,および免疫不全疾患の治療または予防に使用される:

    IVIGの有害作用はまれであるが,これまでに発熱,悪寒,頭痛,失神,悪心,嘔吐,過敏症,アナフィラキシー反応,咳嗽,および体液量過剰が認められている。

    皮下注用免疫グロブリン製剤(SCIG)もプールしたヒト血漿から調製される;SCIGは原発性免疫不全症患者が自宅で使用することを意図したものである。

    SCIGでは注射部位反応がよくみられるが,全身性の有害作用(例,発熱,悪寒)はIVIGよりはるかに少ない。

    高力価免疫グロブリン

    高力価免疫グロブリンは,特定の微生物または抗原に対する抗体価が高い人々の血漿から調製される。自然感染からの回復期にある個人,または人工的に免疫を付与したドナーから採取される。

    高力価免疫グロブリンは以下に対して使用できる:

    投与には痛みを伴い,アナフィラキシーが発生する可能性がある。COVID-19から回復した患者に由来する高力価免疫グロブリンが実験的に使用されている。

    モノクローナル抗体

    感染性因子に対して活性を示す特異的モノクローナル抗体に,理論面から大きな関心が寄せられており,現在いくつかのものについて研究が行われている。しかしながら,現時点で使用可能になっているものはパリビズマブのみとなっており,この抗体はRSウイルス(RSV)に対して活性を示し,特定の高リスク小児におけるRSV感染症の予防に使用されている。

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