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アルボウイルス,アレナウイルス,およびフィロウイルス感染症の概要

執筆者:

Matthew E. Levison

, MD, Drexel University College of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 7月
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アルボウイルス(節足動物媒介ウイルス)という名称は,特定の吸血性節足動物,主に昆虫(ハエおよび蚊)とクモ形網動物(マダニ)を媒介生物としてヒトおよび/または他の脊椎動物に伝播する全てのウイルスに適用される。アルボウイルスは,ウイルスゲノムの性質および構造に基づいた現在のウイルス分類体系には含まれていない。

現在の分類体系で一部のアルボウイルスが含まれる科としては,以下のものがある:

  • ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)(ブニヤウイルス,フレボウイルス,ナイロウイルス,およびハンタウイルス)

  • トガウイルス科

  • フラビウイルス科(Flaviviridae)(フラビウイルスのみ)

  • レオウイルス科(Reoviridae)(コルチウイルスおよびオルビウイルス)

  • トガウイルス科(Togaviridae)(アルファウイルス)

パール&ピットフォール

  • アルボウイルスとは,ウイルス科の名称ではなく,特定の種の節足動物(arthropod)によって伝播されるウイルスという事実だけを意味する用語であり,すなわち節足動物(arthropod)媒介性(borne)ウイルスということである。

  • 様々なウイルス科にアルボウイルスが存在する。

ウイルス性出血熱に関連するウイルスの大半は,アレナウイルス科(Arenaviridae)かフィロウイルス科(Filoviridae)に分類される。しかしながら,一部のフラビウイルス(黄熱 黄熱 黄熱は,南米の熱帯地域およびサハラ以南アフリカの風土病で,蚊を媒介とするフラビウイルス感染症である。症状としては,突然発症する発熱,相対的徐脈,および頭痛のほか,重症例では黄疸,出血,多臓器不全などがみられる。診断はウイルス培養,逆転写PCR,および血清学的検査による。治療は支持療法による。予防にはワクチン接種および蚊の駆除を行う。... さらに読む ウイルス,デング デングウイルス感染症 デングウイルス感染症(dengue)は,フラビウイルスの一種によって引き起こされる蚊媒介性疾患である。デング熱では通常,高熱,頭痛,筋肉痛,関節痛,および全身性リンパ節腫脹が突然発症し,その後無熱期があった後,2度目の発熱に伴い発疹が現れる。咳嗽,咽頭痛,鼻漏などの呼吸器症状が起こりうる。デングウイルスは,出血傾向とショックを伴う致死性の... さらに読む ウイルス)と一部のブニヤウイルス(Bunyaviridae)(リフトバレー熱ウイルス リフトバレー熱 アルボウイルス(節足動物媒介ウイルス)という名称は,特定の吸血性節足動物,主に昆虫(ハエおよび蚊)とクモ形網動物(マダニ)を媒介生物としてヒトおよび/または他の脊椎動物に伝播する全てのウイルスに適用される。 チクングニア熱では,急性熱性疾患に続いて,数カ月または数年続く可能性のある比較的慢性の多関節炎が生じる。死に至ることは極めてまれであ... さらに読む ,クリミア-コンゴ出血熱ウイルス,重症熱性血小板減少症候群ウイルス,およびハンタウイルス ハンタウイルス感染症 ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)に属するハンタウイルス属(Hantavirus)には,少なくとも4つの血清群で構成される9種のウイルスが含まれ,それらのウイルスは2種類の主要な(ときに重複する)臨床症候群を引き起こす: 腎症候性出血熱(HFRS) ハンタウイルス肺症候群(HPS)... さらに読む )は,出血症状に関連している可能性がある。

アルボウイルスは250種を超え,世界中に分布している;少なくとも80種のアルボウイルスがヒトに疾患を引き起こす。鳥類はしばしばアルボウイルスの病原体保有生物になり,ウイルスは蚊を媒介生物としてウマ,その他の家畜,およびヒトへと伝播される。アルボウイルスのその他の病原体保有生物としては,節足動物や脊椎動物(しばしば齧歯類,サル,およびヒト)などがある。これらのウイルスは,ヒト以外の病原体保有生物からヒトへ直接広がることもあれば,ヒトからヒトへ伝播することもある。ほとんどのアルボウイルス感染症は,ヒトから伝播することはないが,これはおそらく一般にヒトに生じる程度のウイルス血症では,媒介節足動物を感染させるのに不十分なためである;しかしながら,デング熱,黄熱,ジカウイルス感染症 ジカウイルス(ZV)感染症 ジカウイルスは蚊を媒介とするフラビウイルス科のウイルスで,抗原的および構造的にデング熱,黄熱,ウエストナイル熱の原因ウイルスに似る。ジカウイルス感染症は一般的には無症状であるが,発熱,発疹,関節痛,または結膜炎を引き起こすこともある;妊娠中にジカウイルス感染症にかかると,胎児に小頭症(重篤な先天異常)や眼の異常が生じることがある。診断は,... さらに読む ,およびチクングニア熱 チクングニア熱 アルボウイルス(節足動物媒介ウイルス)という名称は,特定の吸血性節足動物,主に昆虫(ハエおよび蚊)とクモ形網動物(マダニ)を媒介生物としてヒトおよび/または他の脊椎動物に伝播する全てのウイルスに適用される。 チクングニア熱では,急性熱性疾患に続いて,数カ月または数年続く可能性のある比較的慢性の多関節炎が生じる。死に至ることは極めてまれであ... さらに読む は例外であり,蚊を媒介としてヒトからヒトへ伝播する。また,ジカウイルスは性行為を介しても感染し,症状のある感染した男性からそのセックスパートナーへ,または感染した女性からそのセックスパートナーへと伝播する。

一部の感染症(例,ウエストナイルウイルス感染症,コロラドダニ熱,デングウイルス,ジカウイルス)は,輸血または臓器提供によって広がる。

アレナウイルス科(Arenaviridae)には,リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス リンパ球性脈絡髄膜炎 リンパ球性脈絡髄膜炎はアレナウイルスにより引き起こされる。通常は,インフルエンザ様疾患または無菌性髄膜炎を引き起こし,ときに発疹,関節炎,精巣炎,耳下腺炎,または脳炎を伴う。診断はウイルス分離,PCR,または間接蛍光抗体法による。治療は支持療法による。 リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)は齧歯類の間で流行している。ヒトへの感染は,灰... さらに読む ラッサ熱ウイルス ラッサ熱 ラッサ熱は,主に西アフリカで起こり,しばしば致死となるアレナウイルス感染症である。複数の器官系が侵されることがある。診断は血清学的検査およびPCRによる。治療法にはリバビリン静注などがある。 ラッサ熱のアウトブレイクは,ナイジェリア,リベリア,ギニア,およびシエラレオネで発生している。米国およびイギリスにも症例が輸入されている。... さらに読む ,モペイアウイルス,タカリベウイルス,フニンウイルス,ルジョウイルス,マチュポウイルスなどが含まれ,いずれも齧歯類を介して伝播し,それゆえアルボウイルスではない。ラッサ熱ウイルスはヒトからヒトへ伝播する可能性がある。

フィロウイルス科(Filoviridae)は2つの属,すなわちエボラウイルス属(Ebolavirus)(5種)とマールブルグウイルス属(Marburgvirus)(2種)から構成される。これらのウイルスの特異的媒介生物は確認されていないが,フルーツコウモリが有力な候補とされている;したがって,フィロウイルス科(Filoviridae)はアルボウイルスではない。エボラウイルスおよびマールブルグウイルス マールブルグおよびエボラウイルス感染症 マールブルグおよびエボラウイルスは,出血および多臓器不全を引き起こす,致死率の高いフィロウイルスである。診断は,酵素結合免疫吸着測定法,PCR,または電子顕微鏡検査による。治療は支持療法による。アウトブレイクを封じ込めるために厳重な隔離および検疫処置が必要である。 マールブルグとエボラウイルスは2種類の糸状のフィロウイルスであるが,出血熱... さらに読む のヒトからヒトへの伝播は迅速に起こる。

これらの感染症の多くは無症候性である。症候性の場合,一般に非特異的な軽度のインフルエンザ様疾患として始まり,何らかの症候群に進行することがある(アルボウイルス,アレナウイルス,およびフィロウイルス感染症 アルボウイルス,アレナウイルス,およびフィロウイルス感染症 アルボウイルス(節足動物媒介ウイルス)という名称は,特定の吸血性節足動物,主に昆虫(ハエおよび蚊)とクモ形網動物(マダニ)を媒介生物としてヒトおよび/または他の脊椎動物に伝播する全てのウイルスに適用される。アルボウイルスは,ウイルスゲノムの性質および構造に基づいた現在のウイルス分類体系には含まれていない。... さらに読む の表を参照)。これらの症候群としては,リンパ節腫脹,発疹,無菌性髄膜炎 ウイルス性髄膜炎 ウイルス性髄膜炎は,急性細菌性髄膜炎より軽症となりやすい傾向がある。所見には,頭痛,発熱,項部硬直などがある。診断は髄液検査による。治療は,支持療法,単純ヘルペスの疑い例に対するアシクロビル,およびHIV感染症の疑い例に対する抗レトロウイルス薬による。 (髄膜炎の概要も参照のこと。)... さらに読む 脳炎 脳炎 脳炎は脳実質の炎症であり,ウイルスの直接侵襲に起因する。急性散在性脳脊髄炎は,ウイルスまたはその他の外来タンパク質に対する過敏反応によって脳および脊髄に炎症が生じる病態である。どちらの病態も通常はウイルスが誘因となる。症状としては,発熱,頭痛,精神状態変容などがあり,しばしば痙攣発作や局所神経脱落症状もみられる。診断には髄液検査と神経画像... さらに読む ,関節痛,関節炎,非心原性肺水腫などが生じる。多くが発熱および出血傾向(出血熱)を引き起こす。ビタミンK依存性凝固因子の合成低下,播種性血管内凝固症候群 播種性血管内凝固症候群(DIC) 播種性血管内凝固症候群(DIC)は,循環血中のトロンビンおよびフィブリンの異常な過剰生成に関係する。その過程で血小板凝集および凝固因子消費が亢進する。緩徐に(数週間または数カ月かけて)進行するDICでは,主に静脈の血栓性および塞栓性の症状がみられる;急速に(数時間または数日で)進行するDICでは,主に出血が生じる。重度で急速進行性のDIC... さらに読む ,および血小板機能の変化が出血の一因である。

診断検査としては,しばしばウイルス培養,PCR,電子顕微鏡検査,可能であれば抗原および抗体検出法が行われる。

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治療

  • 支持療法

  • ときにリバビリン

これらの感染症の大半に対する治療は支持療法である。

出血熱では,出血によりフィトナジオン(ビタミンK ビタミンK欠乏症 ビタミンK欠乏症は,極めて不十分な摂取,脂肪の吸収不良,またはクマリン系抗凝固薬の使用によって起こる。欠乏症は母乳栄養の乳児に特によくみられる。欠乏すると,血液凝固が障害される。診断は,ルーチンの凝固検査所見に基づいて疑い,ビタミンK投与に対する反応によって確定する。治療は,ビタミンKの経口投与か,脂肪の吸収不良が原因である場合,または出... さらに読む 1)投与を要することがある。濃厚赤血球または新鮮凍結血漿の輸血も必要となりうる。アスピリンとその他のNSAIDは抗血小板活性があるため,禁忌である。ハンタウイルス心肺症候群の進行した症例では,体外式膜型人工肺(ECMO)が必要になることがある。

ラッサ熱,リフトバレー熱,クリミア-コンゴ出血熱など,アレナウイルスまたはブニヤウイルスによって引き起こされる出血熱には,以下の薬剤が推奨される:

  • リバビリン30mg/kg(最大2g),静注の負荷投与に続いて,16mg/kg(最大1g/回),静注,6時間毎で4日間,さらに8mg/kg(最大500mg/回),静注,8時間毎で6日間投与する

他の症候群に対する抗ウイルス療法はまだ十分に研究されていない。リバビリンは,フィロウイルスおよびフラビウイルス感染症の動物モデルで効果がみられたことはない。

予防

  • 媒介生物の管理

  • 媒介生物による刺咬の予防

  • ときにワクチン接種

アルボウイルスは数が多く多様であるため,特異的なワクチンや薬物療法を開発するよりも,媒介節足動物を駆除し,刺咬を防止し,生息場所を除去することの方が,感染制御策としてより簡単で安価であることが多い。

媒介生物の管理および刺咬の予防

蚊またはマダニによって媒介される疾患は,多くの場合,以下の対策で予防できる:

齧歯類の排泄物によって伝播される疾患は,以下の対策で予防できる:

  • マウスがいた閉鎖空間は洗浄する前に15分間以上換気する。

  • 掃き掃除または拭き掃除の前に,漂白剤で家具などの表面を湿らせる。

  • ホコリを舞い散らさない。

  • 齧歯類が家屋や付近の建物に侵入できるような穴を塞ぐ。

  • 齧歯類を食物に近づけない。

  • 家の周りに齧歯類が巣を作りそうな場所があれば除去する。

齧歯類の排泄物の清掃および齧歯類の排泄物が存在する可能性のある場所での作業に関するガイドラインが,CDCから入手できる。

フィロウイルス科に属するエボラウイルスおよびマールブルグウイルスの伝播は,ヒトからヒトによるものが優勢であるため,伝播の予防には厳重な検疫および隔離措置を要する。

予防接種

現状では,黄熱ウイルス 予防 黄熱は,南米の熱帯地域およびサハラ以南アフリカの風土病で,蚊を媒介とするフラビウイルス感染症である。症状としては,突然発症する発熱,相対的徐脈,および頭痛のほか,重症例では黄疸,出血,多臓器不全などがみられる。診断はウイルス培養,逆転写PCR,および血清学的検査による。治療は支持療法による。予防にはワクチン接種および蚊の駆除を行う。... さらに読む および日本脳炎ウイルスにのみ効果的なワクチンがある。ダニ媒介性脳炎のワクチンは,欧州,ロシア,および中国で入手できる。デングウイルス感染症に対するワクチン 予防 デングウイルス感染症(dengue)は,フラビウイルスの一種によって引き起こされる蚊媒介性疾患である。デング熱では通常,高熱,頭痛,筋肉痛,関節痛,および全身性リンパ節腫脹が突然発症し,その後無熱期があった後,2度目の発熱に伴い発疹が現れる。咳嗽,咽頭痛,鼻漏などの呼吸器症状が起こりうる。デングウイルスは,出血傾向とショックを伴う致死性の... さらに読む は,米国以外のいくつかの国で承認されているが,その効力は限られており,デングウイルスに対する免疫状態,血清型や患者の年齢によっても変動する;現在研究が進められている。

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