ウエストナイルウイルス感染症

執筆者:Stefania Carmona, MD, University of Alabama at Birmingham
Reviewed ByChristina A. Muzny, MD, MSPH, Division of Infectious Diseases, University of Alabama at Birmingham
レビュー/改訂 修正済み 2025年 8月
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ウエストナイルウイルスは,現在米国におけるアルボウイルス脳炎の主因となっているフラビウイルスの一種である。大半の患者は軽症または無症状である。約150人に1人の患者で中枢神経系を侵す重症感染症が起こる。診断は血清学的検査による。治療は支持療法であり,重症感染症に対しては綿密なモニタリングを行う。

ウエストナイルウイルスは,1999年に米国で初めてニューヨーク市に出現した。現在では,米国本土の48州全て,カナダ南部,メキシコ,中南米,およびカリブ諸島に存在する。ウエストナイルウイルスはアフリカ,中東,南欧,ロシア,インド,およびインドネシアにも広く分布している。

ウエストナイルウイルスは多くの鳥類の体内に存在する。感染した鳥の多くは無症状であるが,他の鳥,特にカラスやカケスは発病して死に至るため,地域内での発症状況の指標となる可能性がある。ウエストナイルウイルスに感染したウマは発病して死に至ることがあり,ウマ症例の発生も地域内でのウエストナイルウイルス伝播の指標となる。ウマ用ワクチンが利用可能である。主にイエカによって伝播されるが,輸血や臓器移植による伝播や,ときに経胎盤的な胎児への伝播もみられることもある。

ウエストナイルウイルス感染症の症状と徴候

ウエストナイルウイルス感染症患者の大半(5人に4人)は無症状である。約5例に1例の頻度で発熱がみられ,加えて頭痛,全身痛,関節痛,嘔吐,下痢,斑状丘疹状発疹など,他の症状もみられる。約150人に1人の患者が,脳炎髄膜炎,または弛緩性麻痺を伴う重度の中枢神経系疾患を発症する(1)。中枢神経系感染症の症状としては,高熱,頭痛,項部硬直,昏迷,見当識障害,昏睡,振戦,痙攣,筋力低下,視力障害,しびれ,麻痺などがある。重症化はどの年齢でも起こりうるが,60歳以上の患者と特定の慢性疾患(例,糖尿病)または易感染状態の患者ではリスクがより高くなる。重度の中枢神経系感染症が起きた患者での死亡率は約10%である(2)。

ウエストナイルウイルスによる急性弛緩性麻痺は,臨床的および病理学的にポリオのそれと同じで,前角細胞の損傷がみられる。急性弛緩性麻痺は,発熱や明らかなウイルス性の前駆症状を伴わずに生じることがあり,しばしば四肢の孤立性の不全麻痺または麻痺として現れ,機械的人工換気を必要とする呼吸麻痺に進行することがある。

典型的な発熱および筋肉痛がみられる患者の大半は完全に回復するが,疲労感と筋力低下は数週間から数カ月間持続することがある。ウエストナイルウイルス脳炎または急性弛緩性麻痺から回復した患者には,しばしば神経脱落症状が残存する。

症状と徴候に関する参考文献

  1. 1.Centers for Disease Control and Prevention: West Nile Virus: About West Nile.May 15, 2024.Accessed June 18, 2025.

  2. 2.Centers for Disease Control and Prevention: West Nile Virus: Clinical Signs and Symptoms of West Nile Virus Disease.May 15, 2024.Accessed June 18, 2025.

ウエストナイルウイルス感染症の診断

  • 血清学的検査

  • 逆転写PCR(RT-PCR)検査

ウエストナイルウイルス感染症は,血清または髄液中にウエストナイルウイルス特異的IgM抗体を検出することにより診断される。これらの抗体は発症から通常3~8日後に検出可能になり,30~90日間持続するが,より長期間の持続も報告されている。血清学的検査では,他のフラビウイルスの感染による交差反応抗体,フラビウイルスワクチンによる最近の予防接種(黄熱または日本脳炎),または非特異的な反応のために偽陽性の判定が出ることがある。

髄液検査の所見はウイルス性髄膜炎と一致し,タンパク質と白血球数が高値になる。通常は,当初は好中球優位であったのが,時間経過とともにリンパ球優位に移行する。

一部の州の公衆衛生研究所や米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)などの基準となる検査施設で実施するプラーク減少中和試験(PRNT)は,感染しているフラビウイルス種(ウエストナイルウイルスを含む)の特定に役立つ可能性がある。PRNTはまた,2~3週間の間隔を空けて採取した急性期と回復期の血清検体間でウエストナイルウイルス特異的中和抗体力価に4倍以上の変化がみられることを証明することによって,急性感染を確認することもできる。

感染の確定には,血清または髄液検体でのウイルス培養およびウイルスRNAを検出する検査(例,RT-PCR検査)が利用できる。

ウエストナイルウイルス感染症の治療

  • 支持療法

重症のウエストナイルウイルス感染症に対する支持療法としては,以下のものがある:

  • 脳炎患者では頭蓋内圧亢進および痙攣発作の発生がないか綿密にモニタリングする

  • 脳炎または急性弛緩性麻痺がある患者では,気道保護能力の低下がないか綿密にモニタリングする

  • 必要であれば,機械的人工換気

急性呼吸不全が急速に発生することがあり,長期の換気補助が必要になることがある。

ウエストナイルウイルス感染症の予防

  • 地域社会レベルの蚊防除プログラム

  • 蚊に刺されないようにするための個人的な防御対策

ヒトに使用可能なウエストナイルウイルスワクチンはない。

ジエチルトルアミド(DEET),蚊帳,防護服をはじめとする,感染した蚊への曝露を減らす個人的な防御対策も行うべきである。

供血者および一部の臓器ドナーには,核酸検査によるウエストナイルウイルスのスクリーニングを行う。医療従事者は,輸血または臓器移植を介したウエストナイルウイルスの伝播の可能性を常に意識しておくべきである。

鳥の死骸や感染した鳥を扱ったことでヒトがウエストナイルウイルスに感染したという証拠はないが,CDCは鳥(またはあらゆる動物)の死骸を扱う際に手袋を着用することを推奨している。

要点

  • ウエストナイルウイルスは鳥の間で広がり,感染した蚊に刺されることでヒトに伝播する。

  • 大半の患者は軽症または無症状であるが,一部の患者では中枢神経系を侵す重症感染症が起こる。

  • 診断は,ウエストナイルウイルス特異的IgMに対する血清学的検査,またはプラーク減少中和試験を用いて急性期と回復期のIgGペア血清間での有意な上昇を示すことによる。

  • 重症感染症を発症した患者では,頭蓋内圧亢進,気道保護能力の低下,および機械的人工換気を必要とする呼吸不全がないか,綿密なモニタリングを行うべきである。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Clark MB, Schaefer TJ.West Nile Virus.[Updated 2023 Aug 8].In: StatPearls [Internet].Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2025 Jan-. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK544246/

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