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遺伝性および後天性の血管性浮腫

(後天性C1インヒビター欠損症)

執筆者:

Peter J. Delves

, PhD, University College London, London, UK

最終査読/改訂年月 2016年 6月
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遺伝性および後天性の血管性浮腫(後天性C1インヒビター欠損症)は,補体活性化の古典経路を制御するタンパクであるC1インヒビターの欠損または機能不全によって引き起こされる。診断は補体濃度の測定による。C1インヒビターは急性発作の治療に用いる。予防は,C1インヒビターの濃度を増加させる弱化アンドロゲンによる。

C1インヒビターは,キニン系の経路において活性化したカリクレイン(ブラジキニンの産生に必要)を阻害するため,C1インヒビターの欠損または機能不全はブラジキニン濃度の上昇を招く。

遺伝性血管性浮腫

遺伝性血管性浮腫には以下の2つがある:

  • 1型(85%):C1インヒビターの欠損を特徴とする

  • 2型(15%):C1インヒビターの機能不全を特徴とする

遺伝形式は常染色体優性である。臨床像は通常,小児期または青年期にみられる。

後天性C1インヒビター欠損症

C1インヒビター欠損症は以下の場合に後天性となることがある:

  • 腫瘍性疾患(例,B細胞リンパ腫)または免疫複合体疾患で補体が消費される。

  • 単クローン性免疫グロブリン血症でC1インヒビターに対する自己抗体が産生される。

  • まれに,自己免疫疾患(例,SLE,皮膚筋炎)でC1インヒビターに対する自己抗体が産生される。

患者に関連疾患がある場合は通常,臨床像がより高い年齢で現れる。

誘因

遺伝性および後天性の血管性浮腫の全ての型で,軽度の外傷(例,歯の治療,舌ピアス),ウイルス性疾患,寒冷曝露,妊娠,または特定の食物摂取によって発作が引き起こされることがある;また,血管性浮腫は精神的ストレスによって悪化することがある。

症状と徴候

症状と徴候は,他の型のブラジキニン介在性の血管性浮腫と類似しており,非対称性で軽度の有痛性の腫脹がみられ,顔面,口唇,および/または舌に及ぶことが多い。さらに手もしくは足の甲または生殖器に腫脹が生じることもある。

消化管が侵されることが多く,腸閉塞が示唆される悪心,嘔吐,および仙痛の不快感などの症状がみられる。

そう痒,蕁麻疹,および気管支攣縮は起こらないが,喉頭浮腫がみられることがあり,吸気性喘鳴を引き起こす(ときに死に至ることもある)。

腫脹は,発症してから約1~3日以内に消退する。遺伝性血管性浮腫では,補体成分が消費されるにつれて,症状が消失する。

診断

  • 補体濃度の測定

C4,C1インヒビター,およびC1q(C1の一成分)の濃度を測定する。遺伝性血管性浮腫または後天性C1インヒビター欠損症の診断は,以下によって確定される:

  • C4(および,測定した場合はC2)低値

  • C1インヒビターの機能の低下

他の所見としては以下のものがある:

  • 1型の遺伝性血管性浮腫:C1インヒビターが低値およびC1qが正常値

  • 2型の遺伝性血管性浮腫:C1インヒビターが正常値または高値およびC1qが正常値

  • 後天性C1インヒビター欠損症:C1qの低値

血管性浮腫に蕁麻疹が伴わず,明確な原因なしに再発する場合は,遺伝性血管性浮腫または後天性C1インヒビター欠損症を疑うべきである。家系員に認められる場合は,遺伝性血管性浮腫を疑うべきである。

治療

  • 急性発作に対しては,C1インヒビター,エカランチド,またはイカチバント

  • 予防には,弱化アンドロゲン

急性発作は,精製ヒトC1インヒビター,エカランチド,またはイカチバントにより治療する。これらの薬剤がいずれも入手不能であれば,新鮮凍結血漿または欧州連合でトラネキサム酸が用いられている。遺伝子組換えC1インヒビター(組換えヒトC1インヒビター[rhC1INH]製剤,つまりconestat alfa)が欧州では利用できる。

気道が侵されている場合,気道の確保を最優先する。急性発作で気道が侵されている場合,アドレナリンにより一時的に有益となることがある。しかし,その有益性は十分でないことも,一過性のこともある;次に気管挿管が必要な場合がある。コルチコステロイドおよび抗ヒスタミン薬は効果がない。

鎮痛薬,制吐薬,および補液を用いて症状を緩和することができる。

パール&ピットフォール

  • 抗ヒスタミン薬およびコルチコステロイドは,遺伝性または後天性血管性浮腫に対して効果がない。

長期予防のために,弱化アンドロゲン(例,スタノゾロール2mgを1日3回経口投与,またはダナゾール200mgを1日3回経口投与)を用いて肝臓でのC1インヒビター合成を促進する。この治療法は,後天性型に対してそれほど効果的でないことがある。C1インヒビターは効果的であるが,高価である。

短期予防は,急性発作の治療にC1インヒビターが利用できない場合,高リスクの手技(例,歯科治療または気道手術)を行う前に適応となる。通常は手技の5日前から2日後まで弱化アンドロゲンを投与する。C1インヒビターが利用できる場合は,短期予防に弱化アンドロゲンを用いるよりむしろハイリスクの手技を行う1時間前にC1インヒビターを投与するよう提唱している専門家もいる。

要点

  • 発症は通常,小児期もしくは青年期(遺伝性)またはその後の成人期(後天性)であり,後天性のものは腫瘍性または自己免疫疾患の患者に多くみられる。

  • 軽度の外傷,ウイルス性疾患,寒冷曝露,妊娠,または特定の食物の摂取により発作が誘発されることがある;精神的ストレスにより悪化することもある。

  • 補体濃度を測定する;C4が低値でC1インヒビターの機能低下が認められた場合,遺伝性血管性浮腫または後天性C1インヒビター欠損症が示唆される。

  • 急性発作に対しては,精製ヒトC1インヒビター,エカランチド,またはイカチバントを用い,症状の緩和には,鎮痛薬,制吐薬,および補液を用いる;抗ヒスタミン薬およびコルチコステロイドは効果がない。

  • 予防(長期および短期—例,歯科治療または気道手術の前)には,弱化アンドロゲン(例,スタノゾロール,ダナゾール)を検討する;短期予防ではC1インヒビターを検討してもよい。

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