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溶血性貧血の概要

執筆者:

Evan M. Braunstein

, MD, PhD, Johns Hopkins School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 1月
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赤血球は正常な寿命(約120日)が尽きると,循環血液から取り除かれる。溶血が起きると赤血球が未熟な段階で破壊され,それにより赤血球寿命が短くなる(120日未満)。骨髄での赤血球産生が赤血球寿命の短縮を代償できなくなると貧血が生じるが,この状態を非代償性溶血性貧血と呼ぶ。骨髄により代償できている場合,その状態を代償性溶血性貧血と呼ぶ。

病因

溶血は以下のいずれかに分類される:

  • 外因性:赤血球外の原因による;赤血球に対する外因性障害は通常は後天性である。

  • 内因性:赤血球内の異常による;赤血球の内因性異常( 溶血性貧血)は通常は遺伝性である。

赤血球に対する外因性障害

赤血球に対する外因性障害の原因としては以下のものがある:

感染性微生物は,毒素(例,Clostridium perfringens,αもしくはβ溶血性レンサ球菌,または髄膜炎菌に由来する毒素)の直接作用,微生物(例,Plasmodium属およびBartonella属)による赤血球への侵入と破壊,または抗体産生(エプスタイン-バー[EB]ウイルス,マイコプラズマ)により,溶血性貧血を引き起こす。

赤血球の内因性異常

溶血を引き起こす可能性のある赤血球の内因性異常には,赤血球膜,細胞代謝,またはヘモグロビン構造の異常が関与している。赤血球異常には,先天的および後天的な細胞膜障害(例,球状赤血球症),赤血球代謝障害(例,G6PD欠損症),および異常ヘモグロビン症(例,鎌状赤血球症サラセミア)がある。特定の赤血球膜タンパク(αおよびβスペクトリン,タンパク4.1,Fアクチン,アンキリン)の量的および機能的異常は,溶血性貧血の原因となる。

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溶血性貧血

機序

障害または病原体/物質

赤血球に対する外因性障害

免疫異常

自己免疫性溶血性貧血:

  • 冷式抗体

  • 薬剤性

  • エプスタイン-バーウイルス

  • 溶血性尿毒症症候群

  • マイコプラズマ

  • 発作性寒冷血色素尿症

  • 血栓性血小板減少性紫斑病

  • 温式抗体

感染性微生物

Babesia

Bartonella bacilliformis

熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum

四日熱マラリア原虫(P. malariae

三日熱マラリア原虫(P. vivax

機械的損傷

行軍血色素尿症

心臓弁膜症

網内系の活動亢進

脾機能亢進症

感染性微生物による毒素産生

Clostridium perfringens

αおよびβ溶血性レンサ球菌

髄膜炎菌

毒素

酸化性化合物(例,ジアフェニルスルホン,フェナゾピリジン)

銅(ウィルソン病)

昆虫毒

蛇毒

赤血球の内因性異常

後天的な赤血球膜異常症

低リン血症

発作性夜間ヘモグロビン尿症

有口赤血球症

先天的な赤血球膜異常症

遺伝性楕円赤血球症

遺伝性球状赤血球症

遺伝性有口赤血球症

ヘモグロビン合成障害

ヘモグロビンC症

ヘモグロビンE症

ヘモグロビンS-C症

鎌状赤血球症

サラセミア

赤血球代謝障害

Embden-Meyerhof経路障害(例,ピルビン酸キナーゼ欠損症)

ヘキソースリン酸側路障害(例,G6PD欠損症)

病態生理

溶血は,急性,慢性,または一過性のいずれもある。溶血は,血管外,血管内,またはその両方で生じることがある。

正常な赤血球の処理

老化した赤血球は細胞膜を失い,その大半は脾臓,肝臓,骨髄,および網内系の食細胞によって循環血から除去される。これらの細胞内では,主にヘムオキシナーゼ系によってヘモグロビンが分解される。鉄は保存および再利用され,ヘムはビリルビンに分解されてから,肝臓で抱合されてビリルビンのグルクロン酸抱合体となり,胆汁中に排泄される。

血管外溶血

病的な溶血のほとんどは血管外溶血であり,損傷した赤血球または異常な赤血球が脾臓および肝臓によって循環血から除去されて生じる。通常,脾臓は異常赤血球または温式抗体に覆われた赤血球を穏やかに破壊することで溶血に寄与している。腫大した脾臓は正常な赤血球でさえ捕捉する場合がある。異常の程度が大きい赤血球または冷式抗体もしくは補体(C3)に覆われた赤血球は,循環血中および肝臓で破壊され,肝臓は(大量の血流があるため)損傷赤血球を効率的に除去できる。血管外溶血では,末梢血塗抹標本で微小球状赤血球がみられることがある。

血管内溶血

血管内溶血は,未成熟な赤血球の破壊の重要な原因であり,通常は自己免疫現象,直接的外傷(例,行軍血色素尿症),ずり応力(例,機械弁の不具合),毒素(例,クロストリジウム毒素,毒蛇による咬傷)など,いくつかの機序のいずれかによって細胞膜が重度の損傷を負った場合に生じる。末梢血塗抹標本では,破砕赤血球やその他の断片化された赤血球が認められることがある。

血管内溶血により,血漿中に放出されたヘモグロビンの量が血漿結合タンパクのハプトグロビン(正常では血漿中に約100mg/dL[1.0g/L]の濃度で存在するタンパク)のヘモグロビン結合能を上回る場合に,ヘモグロビン血症が生じる。未結合の血漿ハプトグロビン濃度は低値になる。ヘモグロビン血症では,未結合のヘモグロビン2量体が尿中に濾過されるが,尿細管細胞によって再吸収される;再吸収能を超える場合にヘモグロビン尿が生じる。鉄は尿細管細胞内でヘモジデリンに埋め込まれる;その鉄の一部は再利用のため同化されるが,尿細管細胞が脱落した際に尿に達するものもある。

溶血の影響

ヘモグロビンをビリルビンへ変換する量がビリルビンを抱合および排泄する肝臓の能力を超えた場合に,非抱合型高ビリルビン血症(高間接ビリルビン血症)および黄疸が生じる( 胆道機能の概要)。ビリルビンの異化により,便中のステルコビリンおよび尿中のウロビリノーゲンが増加し,ときに胆石症を引き起こす。

赤血球の過剰な喪失に反応して骨髄が赤血球の産生および放出を促進することで,網状赤血球増多が発生する。

症状と徴候

全身症状は他の貧血に類似し,蒼白,疲労,めまい,場合によっては低血圧を生じる。強膜黄疸および/または黄疸が生じることがあり,脾臓が腫大することがある。

溶血クリーゼ(急性かつ重度の溶血)はまれである;悪寒,発熱,背部痛,腹痛,極度の疲労,およびショックを伴う場合がある。ヘモグロビン尿では尿が赤色または赤褐色となる。

診断

  • 末梢血塗抹標本,網状赤血球数

  • 血清ビリルビン,LDH,ハプトグロビン,ALT

  • クームス試験および/または異常ヘモグロビン症のスクリーニング

溶血は,貧血および網状赤血球増多を認める患者で疑われる。溶血が疑われる場合,末梢血塗抹標本を検査し,血清ビリルビン,LDH,ハプトグロビン,およびALTを測定する。末梢血塗抹検査および網状赤血球数測定が,溶血の診断のために最も重要な検査である。クームス試験または異常ヘモグロビン症のスクリーニング(例,HPLC)は,溶血の原因同定に役立つ。

赤血球の形態異常により溶血の存在および原因が診断できることはほとんどないが,それらが示唆されることは多い( 溶血性貧血における赤血球の形態変化)。その他の示唆的な所見として,ALTが正常な状態でのLDHおよび間接ビリルビンの血清値上昇,ならびに尿中ウロビリノーゲンの存在がある。

末梢血塗抹標本での赤血球断片(破砕赤血球)および血清ハプトグロビン値の低下により,血管内溶血が示唆される;ただし,ハプトグロビン値は肝細胞機能障害のために低下することがあり,全身性炎症のために上昇することもある。また,尿中ヘモジデリンによっても血管内溶血が示唆される。尿中ヘモグロビンは,血尿およびミオグロビン尿と同様に,試験紙法でベンジジン反応陽性となる;尿の顕微鏡検査で赤血球が認められないことで血尿と鑑別可能である。遊離ヘモグロビンにより血漿が赤褐色になることがあり,血液を遠心分離した際に気づかれることが多い;ミオグロビンではみられない。

溶血が同定された場合は,病因を検索する。溶血性貧血の鑑別診断を絞り込むために以下のことを行う:

  • 危険因子(例,地域,遺伝的特徴,基礎疾患)を検討する

  • 脾腫について診察する

  • 直接抗グロブリン(直接クームス)試験を実施する

溶血性貧血のほとんどが,これらの方法のいずれかで異常を示し,それが追加検査の指針となりえる。

溶血の原因の識別に有用となりうるその他の臨床検査としては以下のものがある:

  • 定量的ヘモグロビン電気泳動

  • 赤血球内酵素測定

  • フローサイトメトリー

  • 寒冷凝集素

  • 浸透圧脆弱性

直接抗グロブリン(直接クームス)試験

直接抗グロブリン試験(クームス)試験は,赤血球に結合した抗体(IgG)または補体(C3)が赤血球膜上に存在するかどうかを判定するために用いられる。患者の赤血球にヒトIgGおよびC3に対する抗体を加えてインキュベートする。IgGまたはC3が赤血球膜に結合していれば,凝集が起き,陽性と判定する。陽性判定により,赤血球に対する自己抗体(患者が過去3カ月以内に輸血を受けていない場合),輸血された赤血球に対する同種抗体(通常は急性型または遅延型の溶血反応でみられる),または薬物依存性もしくは薬物誘発性の抗赤血球抗体の存在が示唆される。

直接抗グロブリン(直接クームス)試験

間接抗グロブリン(間接クームス)試験

間接抗グロブリン(間接クームス)試験は,患者血清中の赤血球に対するIgG抗体を検出するために用いる。患者血清を赤血球試薬とともにインキュベートする;その後,クームス血清(ヒトIgGに対する抗体,すなわちヒト抗IgG抗体)を添加する。凝集が生じる場合は,赤血球に対するIgG抗体(自己抗体または同種抗体)が存在する。この試験は同種抗体に対する特異性を判定するためにも用いられる。

間接抗グロブリン(間接クームス)試験

いくつかの試験は血管内溶血を血管外溶血と鑑別するのに有用な可能性があるが,鑑別が困難な場合がある。赤血球の破壊亢進時には,両形態の溶血が関与していることが多いが,関与の程度は異なる。

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溶血性貧血における赤血球の形態変化

赤血球形態

原因

球状赤血球

輸血

温式抗体による溶血性貧血

遺伝性球状赤血球症

破砕赤血球

微小血管症

血管内器具

標的赤血球

異常ヘモグロビン症(鎌状赤血球症,ヘモグロビンC症,サラセミア)

肝機能障害

鎌状赤血球

鎌状赤血球症

凝集した赤血球

寒冷凝集素症

ハインツ小体または咬傷赤血球

G6PD欠損症

酸化ストレス

不安定ヘモグロビン症

有核赤芽球および好塩基性亢進

サラセミアメジャー

有棘赤血球

肝疾患

無βリポタンパク血症

治療

治療法は溶血の具体的な機序により異なる。

温式抗体による自己免疫性溶血の初期治療では,コルチコステロイドが有用である。長期の輸血療法では,過度の鉄蓄積を生じ,キレート療法を要することがある。特に脾臓による捕捉が赤血球破壊の主な原因である場合など,状況によっては脾臓摘出が有益である。可能であれば,肺炎球菌,インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae),および髄膜炎菌のワクチン接種後2週間が経過するまで脾臓摘出を延期する。寒冷凝集素症では,寒冷の回避を推奨し,赤血球輸血を行う際にはときに血液を温める。長期にわたり溶血が持続している患者に対しては,葉酸の補充が必要である。

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