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溶血性貧血の概要

執筆者:

Evan M. Braunstein

, MD, PhD, Johns Hopkins University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2019年 3月
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赤血球は正常な寿命(約120日)が尽きると,循環血液から取り除かれる。溶血が起きると赤血球が未熟な段階で破壊され,それにより赤血球寿命が短くなる(120日未満)。骨髄での赤血球産生が赤血球寿命の短縮を代償できなくなると貧血が生じるが,この状態を非代償性溶血性貧血と呼ぶ。骨髄により代償できている場合,その状態を代償性溶血性貧血と呼ぶ。

病因

溶血は以下のいずれかに分類される:

赤血球に対する外因性障害

赤血球に対する外因性障害の原因としては以下のものがある:

感染性微生物は,毒素(例,ウェルシュ菌[Clostridium perfringens],αもしくはβ溶血性レンサ球菌,または髄膜炎菌に由来する毒素)の直接作用,微生物(例,Plasmodium属,Bartonella属)による赤血球への侵入と破壊,または抗体産生(例,エプスタイン-バーウイルス,マイコプラズマ)により,溶血性貧血を引き起こす。

赤血球の内因性異常

溶血を引き起こす可能性のある赤血球の内因性異常には,赤血球膜,細胞代謝,またはヘモグロビン構造の異常が関与している。赤血球異常には,先天性の細胞膜障害(例,遺伝性球状赤血球症 遺伝性球状赤血球症および遺伝性楕円赤血球症 遺伝性球状赤血球症および遺伝性楕円赤血球症は,軽度の溶血性貧血を引き起こす可能性のある先天性の赤血球膜障害である。症状は,一般に遺伝性楕円赤血球症の方が軽度であるが,様々な程度の貧血,黄疸,および脾腫がみられる。診断には,赤血球の浸透圧脆弱性の亢進および直接抗グロブリン試験陰性を証明する必要がある。まれに,45歳未満の症状がある患者で脾臓... さらに読む 遺伝性球状赤血球症および遺伝性楕円赤血球症 ),後天性の細胞膜障害(例,発作性夜間血色素尿症 発作性夜間血色素尿症(PNH) 発作性夜間血色素尿症(PNH)はまれな後天性の疾患で,血管内溶血およびヘモグロビン尿を特徴とする。白血球減少症,血小板減少症,動静脈血栓症,および発作性のクリーゼがよくみられる。診断にはフローサイトメトリーを要する。治療は支持療法と終末補体阻害薬であるエクリズマブの投与である。... さらに読む ),赤血球代謝障害(例,グルコース-6-リン酸脱水素酵素[G6PD]欠損症 グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症 グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症は,黒人に多くみられるX連鎖性の酵素欠損症であり,急性疾患後または酸化性薬物(サリチル酸,スルホンアミド系など)の摂取後に溶血を引き起こすことがある。診断はG6PDの測定に基づくが,急性溶血時の検査ではしばしば偽陰性となる。治療は支持療法である。... さらに読む ),および異常ヘモグロビン症 異常ヘモグロビン症の概要 異常ヘモグロビン症は,ヘモグロビン分子の構造または産生に影響を及ぼす遺伝性疾患である。 ヘモグロビン分子はポリペプチド鎖で構成され,ポリペプチド鎖の化学構造は遺伝的に制御されている。電気泳動の移動度で識別される各種ヘモグロビンは,発見された順にアルファベット(例,A,B,C)で命名されているが,最初に発見された異常ヘモグロビンである鎌状赤... さらに読む (例,鎌状赤血球症 鎌状赤血球症 鎌状赤血球症(異常ヘモグロビン症)は,ほぼ黒人だけに生じる慢性溶血性貧血である。ヘモグロビンS遺伝子がホモ接合性に遺伝することによって生じる。鎌状の赤血球は血管の閉塞を引き起こし,溶血を起こしやすいことから,重度の疼痛発作,臓器虚血,および他の全身性合併症につながる。急性増悪(クリーゼ)が頻繁に起こることがある。感染症,骨髄無形成,または... さらに読む 鎌状赤血球症 サラセミア サラセミア サラセミアは,ヘモグロビン合成障害を特徴とする先天性小球性溶血性貧血の一群である。αサラセミアは,アフリカ,地中海沿岸,または東南アジアに祖先をもつ人々に特に多くみられる。βサラセミアは,地中海沿岸,中東,東南アジア,またはインドに祖先をもつ人々に多くみられる。症状および徴候は,貧血,溶血,脾腫,骨髄過形成の加え,輸血を複数回経験している... さらに読む )がある。特定の赤血球膜タンパク質(αおよびβスペクトリン,タンパク質4.1,Fアクチン,アンキリン)の量的および機能的異常は,溶血性貧血の原因となる。

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病態生理

溶血は以下のように分類できる:

  • 急性

  • 慢性

  • 発作性

溶血は以下のようにも分類できる:

  • 血管外

  • 血管内

  • その両方

正常な赤血球の処理

老化した赤血球は細胞膜を失い,その大半は脾臓,肝臓,骨髄,および網内系の食細胞によって循環血から除去される。これらの細胞内では,主にヘムオキシナーゼ系によってヘモグロビンが分解される。鉄は保存および再利用され,ヘムはビリルビンに分解されてから,肝臓で抱合されてビリルビンのグルクロン酸抱合体となり,胆汁中に排泄される。

血管外溶血

病的な溶血のほとんどは血管外溶血であり,損傷した赤血球または異常な赤血球が脾臓および肝臓によって循環血から除去されて生じる。通常,脾臓は異常赤血球または温式抗体に覆われた赤血球を穏やかに破壊することで溶血に寄与している。腫大した脾臓は正常な赤血球でさえ捕捉する場合がある。異常の程度が大きい赤血球または冷式抗体もしくは補体(C3)に覆われた赤血球は,循環血中および肝臓で破壊され,肝臓は(大量の血流があるため)損傷赤血球を効率的に除去できる。血管外溶血では,血液塗抹検査にて微小球状赤血球を認めるが,寒冷凝集素を伴う場合には,採血直後に血液を温めないと赤血球凝集が生じる。

血管内溶血

血管内溶血は,未成熟な赤血球が破壊される重要な原因の1つであり,通常は以下を含むいくつかの機序のいずれかによって細胞膜がひどく損傷することで生じる:

血管内溶血により,血漿中に放出されたヘモグロビンの量が血漿結合タンパク質のハプトグロビン(正常では血漿中に約100mg/dL[1.0g/L]の濃度で存在するタンパク質)のヘモグロビン結合能を上回る場合に,ヘモグロビン血症が生じ,結果として,未結合血漿ハプトグロビンが減少する。ヘモグロビン血症では,未結合のヘモグロビン2量体が尿中に濾過され,尿細管細胞によって再吸収されるが,その量が再吸収能を超えると,ヘモグロビン尿が生じる。異化されたヘモグロビンから鉄が放出され,尿細管細胞内でヘモジデリンに埋め込まれる;その鉄の一部は再利用のため同化されるが,尿細管細胞が脱落した際に尿に達するものもある。

溶血の影響

ヘモグロビンをビリルビンへ変換する量がビリルビンを抱合および排泄する 胆道機能の概要 肝臓では1日に約500~600mLの胆汁が産生されている。胆汁は血漿と等張の液体で,主な成分は水と電解質であるが,胆汁酸塩やリン脂質(大半がレシチン),コレステロール,ビリルビン,その他の内因性に産生または摂取された化合物(消化管機能を調節するタンパク質や薬物とその代謝物も含む)などの有機化合物も含有する。ビリルビンは,老廃赤血球に由来す... さらに読む 肝臓の能力を超えた場合に,非抱合型高ビリルビン血症(高間接ビリルビン血症)および黄疸 黄疸 黄疸とは,高ビリルビン血症によって皮膚および粘膜が黄色化した状態である。ビリルビン値が約2~3mg/dL(34~51μmol/L)になると,肉眼的に黄疸が明らかとなる。 (肝臓の構造および機能と肝疾患を有する患者の評価も参照のこと。) ビリルビンの大半は,ヘモグロビンが非抱合型ビリルビン(と他の物質)に分解される際に生成される。非抱合型ビ... さらに読む 黄疸 が生じる。ビリルビンの異化により,便中のステルコビリンおよび尿中のウロビリノーゲンが増加し,ときに胆石症 胆石症 胆石症は,胆嚢内に1つまたは複数の結石(胆石)が存在する病態である。先進国では,成人の約10%と65歳以上の高齢者の20%で胆石がみられる。胆石は無症状のことが多い。最も一般的な症状は胆道仙痛であり,胆石によって消化不良や高脂肪食に対する不耐症が生じることはない。より重篤の合併症としては,胆嚢炎,ときに感染(胆管炎)を伴う胆道閉塞(胆管内... さらに読む 胆石症 を引き起こす。

赤血球の過剰な喪失に反応して骨髄が赤血球の産生および放出を促進することで,続発する貧血に対応して腎臓で産生されるエリスロポエチンの増加のために網状赤血球増多が発生する。

症状と徴候

溶血性貧血の全身症状は他の貧血に類似し,蒼白,疲労,めまい,場合によっては低血圧を生じる。強膜黄疸および/または黄疸が生じることがあり,脾臓が腫大することもある。

溶血クリーゼ(急性かつ重度の溶血)はまれである;悪寒,発熱,背部痛,腹痛,極度の疲労,およびショックを伴う場合がある。ヘモグロビン尿では尿が赤色または赤褐色となる。

診断

  • 末梢血塗抹標本,網状赤血球数

  • 血清ビリルビン,乳酸脱水素酵素(LDH),ハプトグロビン,およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)

  • 抗グロブリン(クームス)試験および/または異常ヘモグロビン症のスクリーニング

溶血は,貧血および網状赤血球増多を認める患者で疑われる。溶血が疑われる場合,末梢血塗抹標本を検査し,血清ビリルビン,LDH,ハプトグロビン,およびALTを測定する。末梢血塗抹検査および網状赤血球数測定が,溶血の診断のために最も重要な検査である。抗グロブリン試験または異常ヘモグロビン症のスクリーニング(例,高速液体クロマトグラフィー[HPLC])は,溶血の原因同定に役立つ。

赤血球の形態異常により溶血の存在および原因が診断できることはほとんどないが,それらが示唆されることは多い(溶血性貧血における赤血球の形態学的変化 溶血性貧血における赤血球の形態変化 赤血球は正常な寿命(約120日)が尽きると,循環血液から取り除かれる。溶血が起きると赤血球が未熟な段階で破壊され,それにより赤血球寿命が短くなる(120日未満)。骨髄での赤血球産生が赤血球寿命の短縮を代償できなくなると貧血が生じるが,この状態を非代償性溶血性貧血と呼ぶ。骨髄により代償できている場合,その状態を代償性溶血性貧血と呼ぶ。... さらに読む 溶血性貧血における赤血球の形態変化 の表を参照)。末梢血塗抹標本では,破砕赤血球のほか,機械的溶血により断片化された赤血球を認める。その他の示唆的な所見として,ALTが正常な状態でのLDHおよび間接ビリルビンの血清値上昇,ならびに尿中ウロビリノーゲンの存在がある。

末梢血塗抹標本での赤血球断片(破砕赤血球)および血清ハプトグロビン値の低下により,血管内溶血が示唆される;ただし,ハプトグロビン値は肝細胞機能障害のために低下することがあり,全身性炎症のために上昇することもある。また,尿中ヘモジデリンによっても血管内溶血が示唆される。尿中ヘモグロビンは,血尿およびミオグロビン尿と同様に,試験紙法でベンジジン反応陽性となる;尿の顕微鏡検査で赤血球が認められないことで血尿と鑑別可能である。遊離ヘモグロビンにより血漿が赤褐色になることがあり,血液を遠心分離した際に気づかれることが多い;ミオグロビンではみられない。

溶血が同定された場合は,病因を検索する。溶血性貧血の鑑別診断を絞り込むために以下のことを行う:

  • 危険因子(例,地域,遺伝的特徴,基礎疾患)を検討する

  • 脾腫について診察する

  • 直接抗グロブリン試験(直接クームス試験)を実施する

溶血性貧血のほとんどが,これらの方法のいずれかで異常を示すことから,検査結果が追加検査の指針となる可能性がある。

溶血の原因の識別に役立つ可能性がある他の臨床検査としては以下のものがある:

  • 定量的ヘモグロビン電気泳動

  • 赤血球内酵素測定

  • フローサイトメトリー

  • 寒冷凝集素

  • 浸透圧脆弱性

直接抗グロブリン試験(直接クームス試験)

直接抗グロブリン試験(直接クームス試験)は,赤血球に結合した抗体(IgG)または補体(C3)が赤血球膜上に存在するかどうかを判定するために用いられる。患者の赤血球にヒトIgGおよびC3に対する抗体を加えてインキュベートする。IgGまたはC3が赤血球膜に結合していれば,凝集が起き,陽性と判定する。陽性判定は赤血球に対する自己抗体の存在を示唆する。偽陽性となる可能性もあり,常に溶血とみなせるわけではない。そのため結果は常に,臨床的な徴候・症状と関連付けて評価すべきである。

直接抗グロブリン試験(直接クームス試験)

間接抗グロブリン試験(間接クームス試験)

間接抗グロブリン試験(間接クームス試験)は,患者血漿中の赤血球に対するIgG抗体を検出するために用いる。患者血漿を赤血球試薬とともにインキュベートした後,クームス血清(ヒトIgGに対する抗体,すなわちヒト抗IgG抗体)を添加する。凝集が生じる場合は,赤血球に対するIgG抗体(自己抗体または同種抗体)が存在する。この試験は同種抗体に対する特異性を判定するためにも用いられる。

間接抗グロブリン試験(間接クームス試験)

いくつかの試験が血管内溶血を血管外溶血と鑑別するのに役立つ可能性があるが,ときに鑑別を困難にすることがある。赤血球の破壊亢進時には,両形態の溶血が関与していることが多いが,関与の程度は異なる。

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治療

治療法は溶血の具体的な機序により異なる。

特にsplenic sequestration(脾臓での血球の滞溜)が赤血球破壊の主な原因である場合など,一部の状況では脾臓摘出が有益となる。可能であれば,以下のワクチン接種後2週間が経過するまで脾臓摘出を延期する:

寒冷凝集素症では,寒冷の回避が推奨され,輸血前に血液を温める必要がある。長期にわたり溶血が持続している患者に対しては,葉酸の補充が必要である。

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