髄膜炎菌の血清群のうち,米国で最も多く髄膜炎菌感染症を引き起こしているものは,B群,C群,およびY群である。血清群の情報が入手できた患者に限定したNational Notifiable Diseases Surveillance Systemのデータ傾向から,2006年から2015年までの期間に各血清群の症例が占めていた割合は血清群Bが35.8%,血清群Yが28.5%,血清群Cが22.8%であったことが示された(1)。A群およびW群は米国外で疾患の原因になっている。現行のワクチンは,これらの血清群全てではなく,一部のみを対象とするものである。
(予防接種の概要も参照のこと。)
総論の参考文献
1.MacNeil JR, Blain AE, Wang X, Cohn AC.Current Epidemiology and Trends in Meningococcal Disease-United States, 1996-2015. Clin Infect Dis.2018;66(8):1276-1281.doi:10.1093/cid/cix993
髄膜炎菌ワクチンの製剤
米国では6つの髄膜炎菌ワクチンが使用可能である。
A/C/W/Y群を対象とするもの(4価):
髄膜炎菌結合型ワクチン(4株):MenACWY-CRMまたはMenACWY-TT
B群を対象とするもの(1価):
B群髄膜炎菌ワクチン(3株)(MenB-4C)
B群髄膜炎菌ワクチン(4株)(MenB-FHbp)
A/B/C/W/Y群を対象とするもの(5価):
A群,B群,C群,W群,Y群髄膜炎菌ワクチン(5株)(MenACWY-TT/MenB-FHbp)
A群,B群,C群,W群,Y群髄膜炎菌ワクチン(5株)(MenACWY-CRM/MenB-FHbp)
髄膜炎菌ワクチンの適応
4価の髄膜炎菌結合型ワクチンは,青年を対象としてルーチンの小児予防接種に組み込まれており,可能であれば11または12歳時に接種し,さらに16歳時に追加接種する(1)。より若年で感染リスクが高い小児にも推奨される(2)。
MenACWY結合型ワクチンは,以下のような髄膜炎菌の感染リスクを高める病態のある成人に推奨される(3):
持続性の補体欠損症
補体阻害薬の使用(例,エクリズマブ,ラブリズマブ)
微生物研究施設で髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)の分離菌への日常的な曝露を伴う業務に携わっている
軍隊への入隊
流行地域への旅行または居住
大学寮への入居1年目の学生で,年齢が21歳以下でかつワクチン未接種または16回目の誕生日以降に接種を受けていない
ワクチンの血清群に起因するアウトブレイクへの曝露
21歳以下の大学1年生で16回目の誕生日より前に予防接種を1回だけ受けている場合は,入学前に追加接種を行うべきである。
MenACWYは,HIV感染者も含めて,11~18歳の全ての青年に推奨される。
11~55歳の個人,過去にMenACWYによる予防接種を受けて再接種が必要になった55歳以上の個人,ならびに複数回のワクチン接種が必要となりうる55歳以上の個人には,MenACWYが望ましい。また,リスクのある55歳以上の個人で過去にMenACWYの接種を受けておらず,かつ1回の接種で十分である個人(例,旅行者)にも,MenACWYが望ましい。
過去にMenACWYの接種を受けたが,依然として感染リスクが高い成人には,MenACWYの5年毎の再接種が推奨される(上にある適応の一覧を参照)。
MenB-4CまたはMenB-FHbpは,リスクの高い特定の条件を満たす10歳以上の個人(例,機能的無脾症または補体欠損症の患者,エクリズマブまたはラブリズマブを使用している患者,髄膜炎菌[N. meningitidis]に日常的に曝露する微生物学者,血清群Bによるものとされる髄膜炎菌感染症のアウトブレイクが原因でリスクに曝されている個人)で適応となる。CDCは,血清群B髄膜炎菌ワクチンを全ての青年にルーチンに接種することを推奨していない。ただし,16~23歳の個人には個別の臨床意思決定に基づいて接種してもよく,推奨接種年齢は16~18歳である。追加接種は一般に推奨されない。
MenACWY-TT/MenB-FHbpは10~25歳を適応年齢とする。特に16~23歳の健常者において,MenACWYとMenB-4C/MenB-FHbpの両方のワクチン接種が適切で,かつ臨床的な意思決定でMenBワクチン接種が支持された場合に推奨される。さらに,髄膜炎菌感染症のリスクが高い10歳以上の易感染性患者(例,慢性補体欠損症の患者,補体阻害薬を使用中の患者,機能的または解剖学的無脾症の患者)にも,両方のワクチンが推奨される。
MenACWY-CRM/MenB-FHbpの適応は,MenACWY-TT/MenB-FHbpのそれと同様である。
適応に関する参考文献
1.CDC.Child and Adolescent Immunization Schedule by Age.May 2025.
2.Mbaeyi SA, Bozio CH, Duffy J, et al.Meningococcal Vaccination: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices, United States, 2020. MMWR Recomm Rep.2020;69(9):1-41.Published 2020 Sep 25.doi:10.15585/mmwr.rr6909a1
3.CDC.Adult Immunization Schedule by Age.May 2025.
髄膜炎菌ワクチンの禁忌および注意事項
髄膜炎菌ワクチンの主な禁忌は以下の通りである:
過去の接種後またはワクチン成分に対する重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)の既往
髄膜炎菌ワクチンの主な注意事項は以下の通りである:
発熱の有無を問わず,中等症または重症の疾患(可能であれば軽快するまで接種を延期する)
早産(MenACWYのみ)
妊娠中(MenBのみ)
ラテックスに対する過敏症(MenB-4Cのみ)
髄膜炎菌結合型ワクチンは,血清群A,C,W,またはYの髄膜炎菌感染症のリスクが高い妊婦に接種されることがある。
妊娠中のMenBワクチンの接種は,血清群Bの感染リスクが高く,ワクチン接種のベネフィットが潜在的なリスクを上回ると考えられない限り,延期することが推奨される。
機能的または解剖学的無脾症の小児に対しては,MenACWYと肺炎球菌結合型ワクチンを1回の来院で一度に接種してはならず,4週間以上の間隔を空けるべきである。
髄膜炎菌ワクチンの用量および用法
10歳以上の患者には,適応があればMenBワクチンをMenACWYと同時に接種してもよいが,可能であれば,それぞれ異なる部位に接種する。MenACWYとMenBを同日に接種するのなら,それぞれ個別に接種する代わりに,いずれかの5価MenACWY/MenBワクチンを単回接種してもよい。
MenACWYワクチン
用量は0.5mLの筋肉内接種である。
解剖学的もしくは機能的無脾症,HIV感染症,または持続性の補体欠損症を有するかエクリズマブまたはラブリズマブを使用している成人には,MenACWYを2回(8週間以上の間隔を空ける)接種し,それ以降も5年毎に追加接種を行う必要がある。HIVに感染している11~18歳の青年には,8週間の間隔を空けた2回の初回接種をルーチンに行う。
髄膜炎菌(N. meningitidis)の分離菌に日常的に曝露している微生物学者,軍隊の入隊者,ワクチンの血清群に起因するアウトブレイク時に高リスクの状態にある個人,ならびに流行地域への旅行者または居住者には,髄膜炎菌ワクチンであるMenACWYの単回接種を行う。リスクが持続する場合(例,微生物学者が髄膜炎菌(N. meningitidis)を取り扱う業務を続ける場合)は,5年毎に追加接種を行う。
MenBワクチン
用量は0.5mLの筋肉内接種である。
話し合いによる共同での臨床的意思決定に基づき,髄膜炎菌感染症のリスクが高くない16~23歳(16~18歳が望ましい)の青年および若年成人には,MenB-4CまたはMenB-FHbpを6カ月以上の間隔を空けて計2回接種する(2回目の接種が1回目の接種から6カ月以内に行われた場合は,3回目の接種は2回目の接種から4カ月以上空けて行うべきである)。全ての接種で同じMenBワクチンを使用する必要がある。
リスクの高い特定の条件を満たす10歳以上の個人(解剖学的または機能的無脾症の患者,持続性の補体欠損症の患者,補体阻害薬[例,エクリズマブ,ラブリズマブ]を使用している患者,髄膜炎菌[N. meningitidis]に日常的に曝露する微生物学者など),および血清群Bによる髄膜炎菌感染症のアウトブレイクが原因でリスクが高いと同定された個人には,MenB-4CまたはMenB-FHbpを0,1~2,および6カ月時点で計3回接種する(2回目を1回目から6カ月以上空けて接種した場合,3回目は不要である;3回目を2回目から4カ月未満で接種した場合,4回目は3回目から4カ月以上空けて接種すべきである)。全ての接種で同じMenBワクチンを使用する必要がある。
髄膜炎菌ワクチンの有害作用
有害作用は通常,軽度である。具体的には,注射部位の疼痛および紅斑や発熱,頭痛,疲労感などがある。
これらのワクチンの有害作用に関する詳細については,処方情報を参照のこと。
より詳細な情報
有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP): ACIP Recommendations: Meningococcal Vaccine
ACIP: Changes in the 2025 Child and Adolescent Immunization Schedule
Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Meningococcal
European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC): Meningococcal Disease: Recommended vaccinations



