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低栄養の概要

執筆者:

John E. Morley

, MB, BCh, Saint Louis University School of Medicine

医学的にレビューされた 2018年 7月
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低栄養は栄養障害の一種である。(栄養障害には栄養過多も含まれる。)低栄養は,栄養素の不十分な摂取,吸収不良,代謝障害,下痢による栄養素の喪失,または栄養必要量の増大(がんや感染症などで起こる)に起因する。低栄養は段階的に進行する;食欲不振による場合にゆっくりと発生することもあれば,ときにがん関連の急速に進行する悪液質による場合のように非常に急速に発生することもある。まず,血中および組織中の栄養素の濃度が変わり,次に細胞内の生化学的な機能および構造に変化が生じる。最後に,症状および徴候が現れる。診断は,病歴,身体診察,身体組成分析,およびときに臨床検査(例,アルブミン)による。

危険因子

低栄養は,貧困および社会的剥奪を含め,多くの疾患および状況と関連する。

リスクはまた,特定の時期に高まる(すなわち,乳児期,幼児期,青年期,妊娠期,授乳期,および老年期)。

乳児期および小児期

乳児および小児は,エネルギーと必須栄養素の必要量が多いため,特に低栄養に陥りやすい。ビタミンKは胎盤を容易には通過できないため,新生児では欠乏している可能性があり,そのため生後1時間以内に新生児にビタミンKを単回注射して,生命を脅かす疾患である 新生児出血性疾患 失血 を予防している。母乳(通常はビタミンDが少ない)のみを与えられる乳児には,ビタミンDを投与する;母親が完全菜食主義者である場合,乳児は ビタミンB12欠乏症 ビタミンB12欠乏症 食事によるビタミンB12欠乏症は通常,不十分な吸収に起因するが,ビタミンサプリメントを摂らない完全菜食主義者に欠乏症が生じることがある。欠乏症により,巨赤芽球性貧血,脊髄および脳の白質への障害,ならびに末梢神経障害が起こる。診断は通常,血清ビタミンB12値の測定によって行う。シリング試験が病因の特定に役立つ。治療はビタミンB12の経口また... さらに読む を発症する可能性がある。

妊娠期および授乳期

妊娠期および授乳期には,栄養素の必要量が増える。妊娠期には,異食症(粘土や炭のような栄養的に価値のない物質の摂取)など,食事の異常が起こることがある。 鉄欠乏による貧血 妊娠中の鉄欠乏性貧血 正常では,妊娠中には骨髄の赤芽球過形成が起こり,赤血球量は増加する。しかしながら,血漿量の不均衡な増加により血液希釈(妊娠水血症)が生じる:ヘマトクリット(Hct)は妊娠していない健康な女性の場合38~45%であるが,単胎妊娠後期では約34%,多胎妊娠後期では30%に減少する。以下のヘモグロビン(Hb)値およびHct値は貧血として分類され... さらに読む が, 葉酸欠乏による貧血 妊娠中の葉酸欠乏性貧血 正常では,妊娠中には骨髄の赤芽球過形成が起こり,赤血球量は増加する。しかしながら,血漿量の不均衡な増加により血液希釈(妊娠水血症)が生じる:ヘマトクリット(Hct)は妊娠していない健康な女性の場合38~45%であるが,単胎妊娠後期では約34%,多胎妊娠後期では30%に減少する。以下のヘモグロビン(Hb)値およびHct値は貧血として分類され... さらに読む と同様によくみられ,特に経口避妊薬を服用している女性に多い)。妊娠後期には ビタミンD欠乏症 ビタミンD欠乏症および依存症 日光への曝露が不十分であると,ビタミンD欠乏症が起こりやすくなる。欠乏症により,骨石灰化が障害され,小児ではくる病,成人では骨軟化症が引き起こされ,また骨粗鬆症の一因となる可能性がある。診断では,血清25(OH)D(D2およびD3)の測定を行う。治療としては通常,ビタミンDを経口投与し,必要に応じてカルシウムおよびリンを補給する。しばしば... さらに読む がよくみられ,小児に骨量の減少が生じやすくなる。

老年期

加齢は(たとえ疾患も食事による欠乏症もない場合でも)サルコペニア(除脂肪体重の進行性の減少)をもたらし,これは40歳を過ぎてから始まり,最終的には男性で約10kg(22lb),女性で約5kg(11lb)の筋量低下に至る。低栄養はサルコペニアの一因となり,サルコペニアは低栄養の合併症の多くの原因となる(例,窒素バランスの減少,感染性に対する感受性の増大)。

サルコペニアの原因としては以下のものがある:

  • 身体活動の減少

  • 食事摂取量の減少

  • サイトカインの濃度上昇(特にインターロイキン6)

  • 成長ホルモンおよびmechano growth factor(インスリン様成長因子3)の濃度低下

  • 男性におけるアンドロゲン濃度の低下

加齢が進むと,基礎代謝率(主に除脂肪体重の減少による),総体重,身長,および骨量が減少していき,平均体脂肪率(体重に占める割合として)は約40歳から65歳にかけて男性では(20%から)約30%に,女性では(27%から)40%に増加する。

食物摂取量は20歳から80歳にかけて減少し,特に男性で顕著である。

加齢による食欲不振の原因は数多くあり,具体的には以下のものが挙げられる:

ときに,神経性やせ症(ときに高齢者では晩発性食欲不振症[anorexia tardive]と呼ばれる),パラノイア,または躁病が食事を妨げる。歯科疾患があると,咀嚼能力,およびそれに続く食物の消化能力が制限される。嚥下困難(例,脳卒中,その他の神経疾患,食道カンジダ症,または口腔乾燥症による)がよくみられる。貧困や機能障害があると,栄養素へのアクセスが制限される。

施設に入所している高齢者には特にPEUのリスクがある。そのような高齢者は錯乱状態になることが多く,空腹や食物の好みを表現できないことがある。身体的に,自分で食事を摂れないことがある。咀嚼や嚥下が非常に遅いことがあり,他者にとっては食事を十分に与えるのが退屈になることがある。

疾患および医療処置

糖尿病 糖尿病(DM) 糖尿病(DM)はインスリン分泌障害および様々な程度の末梢インスリン抵抗性であり,高血糖をもたらす。初期症状は高血糖に関連し,多飲,過食,多尿,および霧視などがある。晩期合併症には,血管疾患,末梢神経障害,腎症,および易感染性などがある。診断は血漿血糖測定による。治療は食事療法,運動,および血糖値を低下させる薬剤により,薬剤にはインスリンお... さらに読む ,消化管を侵す一部の慢性疾患,腸切除,および他の特定の消化管の外科的手技は,脂溶性ビタミン,ビタミンB12,カルシウム,および鉄の吸収を障害する傾向がある。グルテン腸症,膵機能不全,または他の疾患により, 吸収不良 吸収不良の概要 吸収不良とは,食物中の物質が十分に同化されない状態であり,消化,吸収,または輸送の障害に起因する。 吸収不良は,多量栄養素(例,タンパク質,炭水化物,脂肪),微量栄養素(例,ビタミン,ミネラル),またはその両方に影響を及ぼすことがあり,結果として便中への過剰排泄,栄養欠乏,および消化管症状が起こる。吸収不良は,ほぼ全ての栄養素の吸収障害を... さらに読む が生じることがある。吸収の低下は, 鉄欠乏症 鉄欠乏症 鉄(Fe)はヘモグロビン,ミオグロビン,および体内の多数の酵素の成分である。主に動物性食品に含まれるヘム鉄は,平均的な食事中の鉄分の85%超を占める非ヘム鉄(例,植物および穀物に含まれる)よりもはるかに吸収がよい。しかし,非ヘム鉄は,動物性タンパク質およびビタミンCと一緒に摂取すると吸収が増大する。... さらに読む および 骨粗鬆症 骨粗鬆症 骨粗鬆症は,骨密度(単位体積当たりの骨量)が減少し,骨の構造が劣化する進行性の代謝性骨疾患である。骨格の脆弱性は,軽度または不顕性の外傷による骨折(脆弱性骨折と呼ぶ)の原因となる(特に胸腰椎,手関節,および股関節)。診断は,二重エネルギーX線吸収法(DXA)または脆弱性骨折の確認による。予防および治療には,危険因子の是正,カルシウムおよび... さらに読む 骨粗鬆症 の一因となる可能性がある。

肝疾患はビタミンAおよびB12の貯蔵を妨げ,タンパク質およびエネルギー源の代謝を阻害する。腎機能不全は,タンパク質,鉄,およびビタミンD欠乏症の素因となる。

一部のがんまたはうつ病患者および多くのAIDS患者は,食欲不振により食物の摂取量が不十分になる。

感染症,外傷,甲状腺機能亢進症,広範囲熱傷,および長引く発熱では,代謝要求が増大する。サイトカインを増加させる状態はいずれも筋量低下,脂肪分解,アルブミン低値,および食欲不振を伴うことがある。

菜食

果物だけの食事は,タンパク質,ナトリウム,および多くの微量栄養素が不足するため推奨されない。

流行ダイエット(fad diet)

一部の流行ダイエットにより,ビタミン,ミネラルおよびタンパク質が欠乏して,心疾患,腎疾患,および代謝性疾患を来し,ときに死に至ることがある。超低カロリー食(400kcal/日未満)では,健康を長く維持できない。

薬物および栄養補助食品

多くの薬物(例,食欲抑制薬,ジゴキシン)が食欲を低下させる;栄養素の吸収または代謝が障害されるものもある。一部の薬物には異化作用がある(例,刺激剤)。特定の薬物は多くの栄養素の吸収を障害することがあり,例えば,抗てんかん薬はビタミンの吸収を障害する。

アルコールまたは薬物依存症

アルコール依存症または薬物依存症の患者は栄養上の必要性を無視することがある。栄養素の吸収と代謝が障害されることもある。静注薬物依存者は通常は低栄養に陥り,また1クォート(0.95L)/日以上の蒸留酒を摂取するアルコール依存症患者も同様である。アルコール依存症は,マグネシウム,亜鉛,および特定のビタミン(チアミンなど)の欠乏症を引き起こすことがある。

症状と徴候

評価

病歴

病歴聴取には以下の質問を含めるべきである:

3カ月の間に普段の体重の10%以上の意図しない体重減少がみられたら,低栄養の可能性が高いことを意味する。社会歴には,食物を買うお金があるか,買い物と調理ができるかどうかについての質問を含めるべきである。

簡易栄養状態評価表(mini nutritional assessment:MNA)

Guigoz Y and Garry PJ. 簡易栄養状態評価表(mini nutritional assessment)。A practical assessment tool for grading the nutritional status of elderly patients. Facts and Research in Gerontology. Supplement 2:15-59, 1994. Rubenstein LZ, Jarker J, Guigoz Y, and Vellas B. Comprehensive geriatric assessment (CGA) and the MNA: An overview of the CGA, nutritional assessment and development of a shortened version of the MNA. In Mini nutritional assessment (MNA): Research and practice in the elderly. Vellas B, Garry PJ, and Guigoz Y, editors. Nestlé Nutrition Workshop Series. Clinical & Performance Programme, vol. 1, Karger, Bale, 1997. ® Société des Produits Nestlé S.A., Vevey, Switzerland, trademark owners. Reprinted with permission.

簡易栄養状態評価表(mini nutritional assessment:MNA)

システムレビュー(review of systems)では,栄養欠乏の症状に焦点を合わせるべきである(栄養欠乏症の症状と徴候 栄養欠乏症の症状と徴候 栄養欠乏症の症状と徴候 の表を参照)。例えば,夜間視力の障害はビタミンA欠乏症を示唆していることがある。

身体診察

身体診察では以下を行うべきである:

  • 身長および体重の測定

  • 体脂肪分布の視診

  • 除脂肪体重に関する身体測定

BMI BMI(Body Mass Index) BMI(Body Mass Index) (body mass index = 体重[kg]/ 身長[m]2)は,体重を身長に基づいて補正するものである。体重が身長から予測される値の80%未満である場合,またはBMIが18以下の場合は,低栄養を疑うべきである。これらの所見は,低栄養の診断に有用であり,容認できるほどに感度が高いが,特異度には欠ける。

上腕筋面積は除脂肪体重を推定するものである。この面積は上腕三頭筋部皮下脂肪厚(TSF)および上腕周囲長から求める。右腕を力を抜いた状態にさせ,2つの値を同じ部位で測定する。平均上腕周囲長は,男性で約34.1cm,女性で31.9cmである(1 評価に関する参考文献 低栄養は栄養障害の一種である。(栄養障害には栄養過多も含まれる。)低栄養は,栄養素の不十分な摂取,吸収不良,代謝障害,下痢による栄養素の喪失,または栄養必要量の増大(がんや感染症などで起こる)に起因する。低栄養は段階的に進行する;食欲不振による場合にゆっくりと発生することもあれば,ときにがん関連の急速に進行する悪液質による場合のように非常... さらに読む )。上腕筋面積をcm2で求める式は以下の通りである:

equation

この式は上腕面積を脂肪および骨に対して補正するものである。上腕筋面積の平均値は,男性で54 ± 11cm2,女性で30 ± 7cm2である。値がこの標準値(年齢によって異なる)の75%未満であれば,除脂肪体重の減少が示唆される(成人の上腕筋面積 成人の上腕筋面積 成人の上腕筋面積 の表を参照)。この測定値は,身体活動,遺伝因子,および加齢に伴う筋量低下の影響を受けることがある。

身体診察では,特定の栄養欠乏の徴候に焦点を合わせるべきである。PEUの徴候(例,浮腫,筋萎縮,皮膚の変化)を検索すべきである。診察ではまた,歯科疾患など栄養欠乏の素因となりうる病態の徴候にも焦点を合わせるべきである。うつ病および認知障害が体重減少につながることがあるため, 精神状態 精神状態の評価 まず注意の持続時間を評価する;注意力のない患者は十分な協力ができず,診察を困難にする。認知機能低下を示唆する徴候があれば,精神医学的診察( Professional.see sidebar 精神医学的診察)を行う必要があり,その中で認知機能を以下のように多面的に検査する: 時間,場所,人の見当識... さらに読む を評価すべきである。

以下の評価ツールが有用となりうる:

Simplified Nutrition Assessment Questionnaire(SNAQ)

Simplified Nutrition Assessment Questionnaire(SNAQ)

検査

必要な臨床検査の範囲は明確ではなく,患者の状況によって異なることがある。原因が明らかかつ是正可能であれば(例,遭難生還者状態),おそらく検査の便益はほとんどない。他の患者にはより詳しい評価が必要になることもある。

血清アルブミンの測定は,最も頻用される臨床検査である。アルブミンおよび他のタンパク質(例,プレアルブミン[トランスサイレチン],トランスフェリン,レチノール結合タンパク質)の減少は,タンパク質欠乏症またはPEUを示唆している場合がある。低栄養が進行するにつれ,アルブミンがゆっくりと減少する;プレアルブミン,トランスフェリン,およびレチノール結合タンパク質は急速に減少する。アルブミンの測定は安価であり,他のタンパク質の測定よりも罹病率および死亡率の予測に優れている。しかし,アルブミンと罹病率および死亡率との相関には,栄養因子の他に非栄養因子も関係している可能性がある。炎症は,アルブミンおよびその他のタンパク質マーカーを溢出させて血清中濃度を低下させるサイトカインを産生する。飢餓状態では,プレアルブミン,トランスフェリン,およびレチノール結合タンパク質がアルブミンよりも急速に減少するため,急性飢餓状態の重症度を診断または評価するために,ときにそれらの測定値を用いることがある。しかし,これらの感度または特異度がアルブミンよりも高いかどうかは明らかでない。

低栄養が進行するにつれて減少することの多い総リンパ球数を測定することがある。低栄養はCD4陽性Tリンパ球の著明な減少を引き起こすため,AIDSの患者ではこの値は有用ではないことがある。

抗原を用いた 皮膚テスト 初回検査 では,PEUおよび他の低栄養の一部における細胞性免疫障害を検出できる。

ビタミンおよびミネラル濃度の測定など,他の臨床検査を,特定の欠乏症を診断するために選択的に用いる。

評価に関する参考文献

  • 1.Fryar CD, Gu Q, Ogden CL, Flegal KM: Anthropometric reference data for children and adults: United States, 2011–2014.National Center for Health Statistics.Vital Health Stat 3 (39), 2016.

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