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急性細菌性髄膜炎

執筆者:

John E. Greenlee

, MD, University of Utah School of Medicine

最終査読/改訂年月 2015年 11月
本ページのリソース

急性細菌性髄膜炎は,急速に進行する髄膜およびくも膜下腔の細菌感染症である。典型的な所見には,頭痛,発熱,項部硬直などがある。診断は髄液検査による。治療は抗菌薬およびコルチコステロイドにより,これらを可及的速やかに投与する。

新生児髄膜炎については, 新生児細菌性髄膜炎を参照のこと。

病態生理

最も一般的には,細菌が血流を介してくも膜下腔および髄膜に達する。細菌はまた,感染した近傍の構造物から,あるいは先天性または後天性の頭蓋骨または脊椎の欠損を介して髄膜に到達することもある( 急性細菌性髄膜炎 : 経路)。

白血球,免疫グロブリン,および補体は正常では髄液にわずかしかないかまたは存在しないため,初期には細菌は炎症を起こすことなく増殖する。その後,細菌が内毒素,タイコ酸,およびその他の物質を放出し,これらが白血球やTNFなどを媒介として炎症反応を惹起する。典型的には,髄液中ではタンパクは増加する一方,細菌がブドウ糖を消費し,髄液中へのブドウ糖の運搬も減るため,ブドウ糖濃度は減少する。

くも膜下腔における炎症は皮質脳炎および脳室炎を伴うことがある。合併症の頻度は高く以下のものがみられることがある:

  • 水頭症(一部の患者)

  • 脳の浅部およびときに深部の動静脈の炎症および血栓症に起因する動脈または静脈梗塞

  • 第6脳神経の炎症による外転麻痺

  • 第8脳神経または中耳構造物の炎症による難聴

  • 硬膜下膿瘍

  • 脳浮腫による頭蓋内圧亢進(ICP)

  • 脳ヘルニア(急性期で最も頻度が高い死因)

  • 全身性合併症(ときに致死的),例えば敗血症性ショック,播種性血管内凝固症候群(DIC),抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)による低ナトリウム血症など

病因

可能性の高い細菌性髄膜炎の原因菌は以下によって変わる:

  • 患者年齢

  • 侵入経路

  • 患者の免疫状態

年齢

小児および若年成人の細菌性髄膜炎で最も一般的な原因は以下のものである:

  • 髄膜炎菌(Neisseria meningitidis

  • 肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae

髄膜炎菌(N. meningitidis)性髄膜炎ではときに数時間以内に死に至る。髄膜炎菌(N. meningitidis)によって引き起こされる敗血症は,ときに両側性の副腎出血性梗塞(Waterhouse-Friderichsen症候群)を来す。

インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)b型は,以前は6歳未満の小児および全体で髄膜炎の最も一般的な原因であったが,現在ではインフルエンザ菌(H. influenzae)ワクチンが広く用いられている米国および西欧ではまれな原因である。しかしながら,ワクチンが広く使用されていない地域では,インフルエンザ菌(H. influenzae)は依然として一般的な原因となっており,特に生後2カ月から6歳の小児でその傾向が強い。

中年成人および高齢者の細菌性髄膜炎で最も一般的な原因は以下のものである:

  • 肺炎球菌(S. pneumoniae

頻度は低いが,髄膜炎菌(N. meningitidis)が中年成人および高齢者に髄膜炎を引き起こすこともある。加齢とともに宿主防御機構が低下すると,L. monocytogenesまたはグラム陰性細菌による髄膜炎を発症しうる。

全ての年齢層において,ときに黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が髄膜炎を引き起こすことがある。

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患者の年齢で分類した細菌性髄膜炎の原因菌

年齢層

細菌

小児および若年成人

髄膜炎菌(Neisseria meningitidis

肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)*

インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)(先進国ではまれであるが,インフルエンザ菌( H. influenzae)b型ワクチンが広く使用されていない国々では依然としてみられる)

中年成人

肺炎球菌(S. pneumoniae

黄色ブドウ球菌(S. aureus)*

髄膜炎菌(N. meningitidis)(この年齢層では頻度が低い)

高齢者

肺炎球菌(S. pneumoniae

黄色ブドウ球菌(S. aureus)*

Listeria monocytogenes

グラム陰性細菌

*黄色ブドウ球菌(S. aureus)は,全ての年齢層で,ときに重度の髄膜炎を引き起こす。穿通性頭部外傷後に発生する髄膜炎の最も一般的な原因である。

経路

侵入経路としては以下のものがある:

  • 血行性感染(最も頻度が高い経路)

  • 頭の内部または周囲の感染した構造物(例,副鼻腔,中耳,乳様突起)から,ときに髄液漏に合併して

  • 穿通性外傷を介して

  • 脳神経外科手技後(例,脳室シャントが感染した場合)

  • 先天性または後天性の頭蓋骨または脊椎の欠損を介して

上のいずれかの病態がある場合は髄膜炎を発症するリスクが高まる。

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経路で分類した細菌性髄膜炎の原因菌

経路

細菌

頭の内部または周囲の感染症(例,副鼻腔炎,耳炎,乳様突起炎),ときに髄液漏に合併

肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae

インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae

嫌気性および微好気性レンサ球菌

Bacteroides

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus

穿通性頭部外傷

黄色ブドウ球菌(S. aureus

皮膚損傷(例,皮膚感染症,膿瘍,褥瘡,広範囲の熱傷)

黄色ブドウ球菌(S. aureus

感染したシャント

表皮ブドウ球菌(S. epidermidis

脳神経外科手技

グラム陰性細菌(例,肺炎桿菌[Klebsiella pneumoniae],Acinetobacter calcoaceticus,大腸菌[Escherichia coli])

免疫状態

全体として,易感染性患者の細菌性髄膜炎で最も一般的な原因は以下のものである:

  • 肺炎球菌(S. pneumoniae

  • L. monocytogenes

  • 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa

  • 結核菌(Mycobacterium tuberculosis

  • 髄膜炎菌(N. meningitidis

  • グラム陰性細菌

しかしながら,最も可能性が高い細菌は免疫不全の病型によって異なる:

  • 細胞性免疫不全(例,AIDS,ホジキンリンパ腫,または薬剤による免疫抑制):L. monocytogenesまたは抗酸菌

  • 液性免疫不全または脾臓摘出:肺炎球菌(S. pneumoniae)またはより頻度は低いが,髄膜炎菌(N. meningitidis) (ともに劇症型髄膜炎の原因となりうる)

  • 好中球減少症:緑膿菌(P. aeruginosa)またはグラム陰性腸内細菌

非常に若齢の乳児(特に未熟児)と高齢者では,T細胞性免疫が弱い可能性があるため,これらの年齢層ではL. monocytogenesによる髄膜炎のリスクがある。

症状と徴候

ほとんどの症例において,細菌性髄膜炎は倦怠感,発熱,易刺激性,嘔吐などの非特異的症状が3~5日間の内に潜行的に進行することにより開始する。しかしながら,より急速に発症することもあり,劇症になる可能性があるため,細菌性髄膜炎はそれまで健常であった若年個人が軽度の症状で入眠し,二度と目覚めない結果となりうる数少ない疾患の1つである。

髄膜炎の典型的な症状および徴候としては以下のものがある:

  • 発熱

  • 頻脈

  • 頭痛

  • 羞明

  • 精神状態の変化(例,嗜眠,意識障害)

  • 項部硬直(全ての患者にみられるわけではない)

  • ときに,黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が原因の場合は背部痛

急性細菌性髄膜炎の小児の最大40%で初期に痙攣発作が起こり,成人でみられることもある。最大12%の患者が昏睡状態で来院する。重症の髄膜炎は乳頭浮腫を生じうるが,たとえ頭蓋内圧が亢進していても初期には乳頭浮腫がみられないことがある。

合併することのある病原体別の全身感染症として,以下のものがある:

  • 発疹,点状出血,または紫斑(髄膜炎菌血症を示唆する)

  • 肺の硬化像(肺炎球菌[S. pneumoniae]による髄膜炎でしばしばみられる)

  • 心雑音(心内膜炎を示唆する—例,黄色ブドウ球菌[S. aureus]または肺炎球菌[S. pneumoniae]が原因であることが多い)

成人における非典型的な臨床像

易感染性患者,高齢患者,およびアルコール依存症患者では,発熱および項部硬直がみられないか軽度となることがある。高齢者ではしばしば,それまで意識清明であった人における錯乱や,認知症患者における反応性の変化が唯一の徴候である場合がある。そのような患者では,頭部CTまたはMRIの前に適切な抗菌薬を開始するのが賢明となりうる。

脳神経外科手技後に細菌性髄膜炎が発生する場合は,しばしば症状出現に数日かかる。

診断

  • 髄液検査

急性細菌性髄膜炎が疑われる場合は,直ちに血液培養および髄液検査のため腰椎穿刺(禁忌がない場合)を行う。

  • 細菌性髄膜炎が疑われ,患者の状態が極めて悪い場合は,たとえ腰椎穿刺の施行前であっても,直ちに抗菌薬とコルチコステロイドを投与する。

  • 細菌性髄膜炎が疑われ,CTまたはMRIが未施行で腰椎穿刺が遅れる場合は,抗菌薬とコルチコステロイドは血液培養の後,神経画像検査の前に開始すべきである;診断確定を待って治療を遅らせてはならない。

典型的な症候(通常は発熱,精神状態の変化,項部硬直など)がみられる患者では,細菌性髄膜炎を疑うべきである。しかしながら,新生児および乳児では現れる症候が異なり,また高齢者,アルコール依存症患者,および易感染性患者では症候が認められないか,初期には軽度となる場合があることに留意しておく必要がある。以下の患者では診断が困難になることがある:

  • 脳神経外科的処置を受けた患者(このような処置によっても精神状態の変化と項部硬直が起こる可能性があるため)

  • 高齢者およびアルコール依存症患者(代謝性脳症[複数の原因が想定される]によって,あるいは転倒と硬膜下血腫によって精神状態の変化が起こっている可能性があるため)

焦点発作または局所神経脱落症状は,脳膿瘍などの局所病変を示唆している場合がある。

未治療の細菌性髄膜炎は致死的であるため,髄膜炎の可能性が少しでもあれば検査を行うべきである。乳児,高齢者,アルコール依存症患者,易感染性患者,および脳神経外科手技を受けた患者では,症状が非典型的となることがあるため,検査が特に有用である。

パール&ピットフォール

  • たとえ所見が髄膜炎に特異的でなくとも腰椎穿刺を行うべきであり,特に乳児,高齢者,アルコール依存症患者,易感染性患者,および脳神経外科手術を受けた患者ではなおさらである。

所見から急性細菌性髄膜炎が疑われれば,以下のルーチン検査を行う:

  • 髄液検査

  • 血算および白血球分画

  • 代謝パネル

  • 血液培養に加えPCR(可能であれば)

腰椎穿刺

禁忌がない限り,髄液検査のために直ちに腰椎穿刺を施行するのが診断の基本である。

緊急腰椎穿刺の禁忌は,著明な頭蓋内圧亢進または頭蓋内の腫瘤効果(mass effect)を示唆する徴候(例,浮腫,出血,または腫瘍によるもの)であり,典型的な徴候としては以下のものがある:

  • 局所神経脱落症状

  • 乳頭浮腫

  • 意識レベルの低下

  • 痙攣発作(発症から1週間以内)

  • 易感染状態

  • 中枢神経系疾患の既往(例,腫瘤性病変,脳卒中,局所感染症)

このような場合は,腰椎穿刺は脳ヘルニアの原因となる可能性があるため,神経画像検査(典型的にはCTまたはMRI)を行って頭蓋内圧亢進と腫瘤効果(mass effect)がないか確認するまで,腰椎穿刺は延期する。腰椎穿刺を延期した場合は,治療は直ちに開始するのが最善である(培養のための血液検体採取後かつ神経画像検査前)。頭蓋内圧が低下してから(亢進していた場合),腫瘤効果(mass effect)が検出されなければ,腰椎穿刺を施行できる。

髄液を検査室に提出すべきである:細胞数,タンパク,糖,グラム染色,培養,PCR(可能であれば),およびその他の検査を臨床適応に応じて行う。同時に血液検体を採取し,検査に出して髄液糖/血糖比を確定すべきである。白血球が採取管の壁に付着すると誤って低い値が出ることがあるため,可及的速やかに髄液細胞数を測定すべきである;極めて膿性の髄液では,白血球が溶解することがある。

細菌性髄膜炎の典型的な髄液所見としては以下のものがある:

  • 髄液圧亢進

  • しばしば髄液の混濁

  • 白血球数高値(多形核白血球優位)

  • タンパク上昇

  • 髄液糖/血糖比の低値

髄液糖/血糖比 < 50%は髄膜炎の可能性を示唆する。髄液糖 ≤ 18mg/dLまたは髄液糖/血糖比 < 0.23の場合は,細菌性髄膜炎が強く示唆される。しかしながら,髄液糖の変化は血糖値の変化に対して30~120分遅れる可能性がある。急性細菌性髄膜炎では,タンパク上昇(通常100~500mg/dL)は血液脳関門の損傷を示唆する。

急性細菌性髄膜炎患者における髄液細胞数ならびにタンパクおよび糖値は常に典型的であるとは限らない。非典型的な髄液所見としては以下のものがありうる:

  • 早期では細菌が認められる以外は正常

  • 約14%の患者においてリンパ球優位,特にグラム陰性菌による髄膜炎の新生児,L. monocytogenesによる髄膜炎患者,および部分的に治療を受けた細菌性髄膜炎患者の一部

  • 約9%の患者で糖値が正常である

  • 重度の免疫抑制患者では白血球数が正常である

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髄膜炎における髄液所見

状態

優位な細胞型*

タンパク*

糖*

特異的検査

正常髄液

全てリンパ球(0~5/μL)

<>

血糖値の50%を超える

なし

細菌性髄膜炎

白血球(通常PMN),しばしば大幅に増加

上昇

血糖値の50%未満(極めて低値のこともある)

グラム染色(105細菌コロニー形成単位/mLがみられれば診断率が高い)

細菌培養

可能であればPCR

ウイルス性髄膜炎

リンパ球(混合性のことがある;最初の24~48時間はPMNおよびリンパ球)

上昇

通常は正常

PCR(エンテロウイルスまたは単純ヘルペス,帯状疱疹,あるいはウエストナイルウイルスを確認するため)

IgM(ウエストナイルウイルスまたはその他のアルボウイルスを確認するため)

結核性髄膜炎

PMNおよびリンパ球(通常細胞数増加)

上昇

血糖値の50%未満(極めて低値のこともある)

抗酸菌染色

PCR

抗酸菌培養(30mL以上の髄液検体を用いるのが理想的)

血清および(可能であれば)髄液インターフェロンγ検査

真菌性髄膜炎

通常リンパ球

上昇

血糖値の50%未満(極めて低値のこともある)

クリプトコッカス抗原検査

Coccidioides immitisまたはHistoplasma属真菌の抗原に対する血清学的検査,特に最近の流行地域滞在歴がある場合

真菌培養(30mL以上の髄液検体を使用するのが理想的)

墨汁染色(Cryptococcus属真菌が対象)

*重度の易感染性患者では,細胞数,糖,およびタンパクの変化が最小限に留まることがある。

結核性髄膜炎では,髄液の抗酸菌染色は感度が低く,PCRの感度もわずか約50%であり,培養には最大8週間かかる。髄液インターフェロンγ検査陽性は結核性髄膜炎を意味するが,血清インターフェロンγ検査の結果は過去の感染を示しているに過ぎない場合がある。このように結核性髄膜炎の診断確定は困難であるため,たとえ診断が確定していなくとも結核性髄膜炎が強く疑われるならば,推定的に治療を行う。

新生児または痙攣発作後では,正常でも少数の細胞がみられる可能性がある。

PCR = ポリメラーゼ連鎖反応検査;PMN = 多形核好中球。

原因菌の同定方法は,グラム染色,培養,可能な場合はPCRなどである。グラム染色はすぐに結果が出るが,得られる情報は限られている。細菌をグラム染色で確実に同定するには,105/mm3の菌数が必要である。髄液の扱いが適切でない場合,髄液が静置された後細菌が十分に浮遊しない場合,あるいは脱色またはスライドグラスの判読過程でエラーが起こった場合は,結果が偽陰性となることがある。

特定の細菌が原因であることの診断および抗菌薬感受性の判定には細菌培養を要する。嫌気性菌感染またはその他のまれな細菌が疑われる場合は,検体培養が開始される前に検査室にその旨を報告すべきである。先に抗菌薬療法が開始された場合は,グラム染色および培養による診断率は低下する可能性がある。PCRが利用可能であれば,有用な補助検査となる可能性があり,特に抗菌薬がすでに投与された患者ではその可能性が高い。

髄膜炎の原因が確定するまで,髄液または血液検体を使用して髄膜炎のその他の原因,例えばウイルス(特に単純ヘルペス),真菌,癌細胞などがないかを確認することもある。

その他の検査

感染が疑われる他の部位(例,尿路または呼吸器)からの検体も培養する。

予後

19歳未満の小児では,死亡率は3%と低いこともあるが,しばしばより高率である;生存児には難聴および精神神経学的障害が残ることがある。60歳未満の成人での死亡率は約17%であるが,60歳以上では最大37%である。黄色ブドウ球菌(S. aureus)による市中髄膜炎の死亡率は43%である。

一般に,死亡率は意識障害または昏睡の深度と相関する。予後不良に関連する因子としては以下のものがある:

痙攣発作および髄液糖/血糖比の低下もまた予後不良を示すことがある。

治療

  • 抗菌薬

  • 脳の炎症および浮腫を軽減するためコルチコステロイド

治療の中心は抗菌薬である。抗菌薬に加え,脳および脳神経の炎症や頭蓋内圧亢進を軽減する処置などを行う。

患者のほとんどはICUに収容される。

抗菌薬

抗菌薬は原因菌に対し殺菌作用のあるものでなければならず,また血液脳関門を貫通できるものでなければならない。

患者の状態が悪く,所見から髄膜炎が示唆される場合は,血液培養用の検体を採取し次第,たとえ腰椎穿刺を行う前であっても,直ちに抗菌薬( 急性細菌性髄膜炎に対する初期抗菌薬)とコルチコステロイドを開始する。また,神経画像検査の結果が出るまで腰椎穿刺を延期する場合は,神経画像検査を行う前に抗菌薬とコルチコステロイドによる治療を開始する。

パール&ピットフォール

  • 患者の状態が悪く見え,急性髄膜炎が疑われる場合は,血液培養検体を採取後できる限り早く,抗菌薬およびコルチコステロイドによる治療を開始するべきである。

適切な経験的抗菌薬は,患者の年齢および免疫状態ならびに感染経路によって異なる( 急性細菌性髄膜炎に対する初期抗菌薬)。一般に,肺炎球菌,髄膜炎菌,および黄色ブドウ球菌に効果を示す抗菌薬を使用すべきである。ときに(例,新生児および一部の免疫抑制患者において)単純ヘルペス脳炎が除外できないことがある;そのため,アシクロビルを追加する。抗菌薬療法は,培養および感受性試験の結果に応じて変更が必要になる場合がある。

一般的に使用されている抗菌薬としては以下のものがある:

  • 肺炎球菌(S. pneumoniae)および髄膜炎菌(N. meningitidis)に対して,第3世代セファロスポリン系抗菌薬

  • L. monocytogenesに対して,アンピシリン

  • 肺炎球菌(S. pneumoniae)のペニシリン耐性株および黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対して,バンコマイシン

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急性細菌性髄膜炎に対する初期抗菌薬

患者群

疑われる細菌

暫定的抗菌薬

年齢

生後3カ月未満

Streptococcus agalactiae

大腸菌(Escherichia coli )またはその他のグラム陰性細菌

Listeria monocytogenes

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)*

アンピシリン

および

セフトリアキソンまたはセフォタキシム

生後3カ月~18歳

髄膜炎菌(Neisseria meningitidis

肺炎球菌(S. pneumoniae

黄色ブドウ球菌(S. aureus)*

インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae

セフォタキシムまたはセフトリアキソン

および

バンコマイシン

18~50歳

肺炎球菌(S. pneumoniae

髄膜炎菌(N. meningitidis

黄色ブドウ球菌(S. aureus)*

セフトリアキソンまたはセフォタキシム

および

バンコマイシン

50歳以上

肺炎球菌(S. pneumoniae

L. monocytogenes

黄色ブドウ球菌(S. aureus

グラム陰性細菌

髄膜炎菌(N. meningitidis)(この年齢層ではまれ)

セフトリアキソンまたはセフォタキシム

および

アンピシリン

および

バンコマイシン

経路

副鼻腔炎,耳炎,髄液漏

肺炎球菌(S. pneumoniae

インフルエンザ菌(H. influenzae

緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を含むグラム陰性細菌

嫌気性または微好気性レンサ球菌

Bacteroides fragilis

黄色ブドウ球菌(S. aureus)*

バンコマイシン

および

セフタジジムまたはメロペネム

および

メトロニダゾール

穿通性頭部外傷,脳神経外科手技,シャント感染

黄色ブドウ球菌(S. aureus

表皮ブドウ球菌(S. epidermidis

緑膿菌(P. aeruginosa)を含むグラム陰性細菌

肺炎球菌(S. pneumoniae

バンコマイシン

および

セフタジジム

免疫状態

AIDS,その他の細胞性免疫不全状態

肺炎球菌(S. pneumoniae

L. monocytogenes

緑膿菌(P. aeruginosa)を含むグラム陰性細菌

黄色ブドウ球菌(S. aureus)*

アンピシリン

および

セフタジジム

および

バンコマイシン

*黄色ブドウ球菌(S. aureus)が髄膜炎の原因となることは,穿通性頭部外傷または脳神経外科手技が感染経路である場合を除いて,まれである。しかしながら,全ての患者群で髄膜炎の原因となりうる。そのため,この細菌が原因である可能性が(たとえ低くとも)あると臨床医が判断した場合は,バンコマイシンかブドウ球菌に有効な他の抗菌薬を投与すべきである。

肺炎球菌(S. pneumoniae)は髄液漏または急性耳炎のある患者において最も頻度の高い原因菌である。そのような患者はバンコマイシンおよびセフトリアキソンまたはセフォタキシムにより治療することがある。しかしながら,髄膜炎に硬膜下膿瘍を合併する場合,または髄膜炎が脳神経外科手技後に発生した場合は,緑膿菌(P. aeruginosa)を含むその他の細菌が存在する可能性がより高くなる;そのような症例では,初期治療にバンコマイシン + セ0フタジジム + メトロニダゾールを含めるべきである。

5歳未満の小児でインフルエンザ菌(H. influenzae)b型結合型ワクチン接種歴がない場合は,インフルエンザ菌(H. influenzae)を考慮すべきである。

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急性細菌性髄膜炎に対する特異的な抗菌薬

細菌

年齢層

抗菌薬*

備考

グラム陽性細菌(不明)

小児および成人

バンコマイシン

および

セフトリアキソン(セフォタキシム)およびアンピシリン

グラム陰性桿菌(不明)

小児および成人

セフォタキシム(あるいはセフトリアキソン,メロペネム,またはセフタジジムのうちいずれか)

および

全身感染症が疑われる場合は,ゲンタマイシン,トブラマイシン,またはアミカシン

インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)b型

小児および成人

セフトリアキソン(セフォタキシム)

髄膜炎菌(Neisseria meningitidis

小児および成人

セフトリアキソン(セフォタキシム)

感受性を確認した上で,感性株にはベンジルペニシリンを使用する。

肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae

小児および成人

バンコマイシンおよびセフトリアキソン(セフォタキシム)

感受性を確認した上で,感性株にはベンジルペニシリンを使用してもよい。

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および表皮ブドウ球菌(S. epidermidis

小児および成人

バンコマイシンとリファンピシンの併用またはバンコマイシン単剤

メチシリン耐性株にはバンコマイシンを使用するか,感受性が判明した後であれば,ナフシリンまたはオキサシリンを使用してもよい。

バンコマイシンまたはナフシリンで改善がみられない場合は,リファンピシンを追加する。

Listeria

小児および成人

アンピシリン(ベンジルペニシリン)

または

トリメトプリム/スルファメトキサゾール

感受性を確認した上で,感性株にはベンジルペニシリンを使用する。

ペニシリンアレルギーのある患者には,トリメトプリム/スルファメトキサゾールを使用する。

グラム陰性腸内細菌(例,大腸菌(Escherichia coli),Klebsiella属,Proteus属)

小児および成人

セフトリアキソン(セフォタキシム)

および

全身感染症が疑われる場合は,ゲンタマイシン,トブラマイシン,またはアミカシン

Pseudomonas

小児および成人

メロペネム(セフタジジムまたはセフェピム),通常単独投与であるが,ときにアミノグリコシド系と併用される

または

アズトレオナム

*括弧内に代替抗菌薬を表示。

グラム陽性細菌が多型性であれば,Listeria属をカバーするためにアンピシリンを含める。

アミカシンはゲンタマイシン耐性がよくみられる地域で使用されている。アミノグリコシド系は髄液移行性が低いため,髄膜炎の治療に用いられることはまれである。アミノグリコシド系薬剤が必要な場合は,髄腔内またはOmmaya reservoirでの投与が必要になることがある(特にPseudomonas属細菌による髄膜炎の場合)。アミノグリコシド系薬剤を使用する場合は,腎機能をモニタリングすべきである。

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急性細菌性髄膜炎に対する一般的な抗菌薬の用量*

抗菌薬

用量

生後1カ月以上の小児

成人

セフトリアキソン

50mg/kg,12時間毎

2g,12時間毎

セフォタキシム

50mg/kg,6時間毎

2g,4~6時間毎

セフタジジム

50mg/kg,8時間毎

2g,8時間毎

セフェピム

2g,12時間毎

2g,8~12時間毎

アンピシリン

75mg/kg,6時間毎

2~3g,4時間毎

ベンジルペニシリン

4百万単位,4時間毎

4百万単位,4時間毎

ナフシリンおよびオキサシリン

50mg/kg,6時間毎

2g,4時間毎

バンコマイシン

15mg/kg,6時間毎

10~15mg/kg,8時間毎

メロペネム

40mg/kg,8時間毎

2g,8時間毎

ゲンタマイシンおよびトブラマイシン

2.5mg/kg,8時間毎

2mg/kg,8時間毎

アミカシン

10mg/kg,8時間毎

7.5mg/kg,12時間毎

リファンピシン

6.7mg/kg,8時間毎

600mg,24時間毎

*新生児向けの用量については, 新生児に対する主な注射用抗菌薬の推奨用量を参照のこと。

腎機能をモニタリングすべきである。

コルチコステロイド

デキサメタゾンは脳および脳神経の炎症と浮腫を軽減するために使用するが,治療開始時に投与すべきである。用量は成人では10mg,静注,小児では0.15mg/kg,静注とする。デキサメタゾンは,抗菌薬の開始直前または開始と同時に投与し,6時間間隔で4日間継続する。

デキサメタゾンについては,肺炎球菌性髄膜炎の患者に対する使用が最もよく確立されている。

その他の対策

その他の対策の有効性はあまり証明されていない。

乳頭浮腫または切迫する脳ヘルニアの徴候がみられる患者には,頭蓋内圧亢進に対する以下の治療を行う:

  • ベッドの頭側を30˚挙上する

  • PCO2が27~30mmHgになるまで過換気を行い,頭蓋内の血管収縮を促す

  • マンニトールの静注による浸透圧利尿

通常,成人にはマンニトール1g/kgを30分かけて急速静注し,必要に応じてこれを3~4時間毎に繰り返すか,または0.25g/kgを2~3時間毎に繰り返す一方,小児には0.5~2.0g/kgを30分かけて急速静注し,これを必要に応じて繰り返す。

さらなる対策としては以下のものがある:

  • 輸液

  • 抗てんかん薬

  • 併存する感染症の治療

  • 特定の合併症に対する治療(例,Waterhouse-Friderichsen症候群に対するコルチコステロイド,硬膜下膿瘍に対する外科的ドレナージ)

予防

インフルエンザ菌(H. influenzae)b型に対するワクチン,ならびにより程度は低いが髄膜炎菌(N. meningitidis)および肺炎球菌(S. pneumoniae)に対するワクチンは細菌性髄膜炎の発生率を下げた。

物理的な予防策

治療の最初の24時間,患者を(飛沫感染予防策を用いて)空気感染隔離することは,髄膜炎の拡散予防に役立つ可能性がある。手袋,マスク,およびガウンを使用する。

予防接種

予防接種により,特定の病型の細菌性髄膜炎を予防することができる。

肺炎球菌結合型ワクチンは髄膜炎の原因菌の80%以上を占める13の血清型に対し効果があり,全ての小児に推奨される( 0~6歳を対象期間とする推奨予防接種スケジュール)。

インフルエンザ菌(H. influenzae)b型に対するルーチンのワクチン接種は非常に効果が高く,生後2カ月から開始する。

以下のような患者には4価髄膜炎菌ワクチンを接種する:

  • 2~10歳の小児で免疫不全または機能的無脾症がある場合

  • 11~12歳の全ての小児

  • より年長の小児,寮生活をする大学生,および軍隊の新兵で,以前にワクチンを接種されたことがない者

  • 流行地域への旅行者または居住者

  • 日常的に髄膜炎菌検体を取り扱う検査室職員

髄膜炎の流行中は,リスク集団(例,大学生,小さな町)を同定しなければならず,集団ワクチン接種を開始する前にリスク集団の大きさを判定しなければならない。取り組みには費用がかかり,公共教育および支援が必要であるが,これにより命が救われ,合併症が軽減する。

髄膜炎菌ワクチンに血清型Bの髄膜炎菌性髄膜炎に対する予防効果はなく,ワクチンを接種済みの患者が髄膜炎症状で来院した場合は,このことに留意すべきである。

化学予防

髄膜炎を有する患者と対面で長時間接触した個人(例,家庭またはデイケアでの接触,医療関係者および患者の口腔内分泌物に曝露されるその他の人々)には,曝露後化学予防を行うべきである。

髄膜炎菌性髄膜炎に対する化学予防は,以下のいずれかで構成される:

  • リファンピシン600mg(生後1カ月以上の小児には10mg/kg;1カ月未満の小児には5mg/kg),経口,12時間毎,4回

  • セフトリアキソン250mg(15歳未満の小児には125mg),筋注,1回

  • 成人には,フルオロキノロン系薬剤(シプロフロキサシンもしくはレボフロキサシン500mgまたはオフロキサシン400mg),経口,1回

インフルエンザ菌(H. influenzaeb型による髄膜炎に対しては,化学予防として,リファンピシンを20mg/kg,経口,1日1回(最大600mg/日)4日間投与する。2歳未満の小児に保育施設での曝露に対する予防措置が必要であるかに関して見解の一致は得られていない。

その他の型の細菌性髄膜炎患者との接触に対する化学予防は通常必要ない。

要点

  • 小児および成人における一般的な原因菌としては髄膜炎菌(N. meningitidis)や肺炎球菌(S. pneumoniae)などがあり,乳児および高齢者における一般的な原因菌としてはListeria属などがある;黄色ブドウ球菌(S. aureus)は全ての年齢層でときに髄膜炎を引き起こす。

  • 乳児,アルコール依存症患者,高齢者,易感染性患者,および脳神経外科手技後に髄膜炎を発症した患者では,典型的な特徴がないか,または軽微な可能性がある。

  • 局所神経脱落症状,意識障害,痙攣発作,または乳頭浮腫(頭蓋内圧亢進または腫瘤効果[mass effect]を示唆する)がある場合は,神経画像検査の結果が出るまで腰椎穿刺を延期する。

  • 急性細菌性髄膜炎は,たとえ診断確定前であっても,可及的速やかに治療を開始する。

  • 経験的に選択される一般的な抗菌薬レジメンには,しばしば第3世代セファロスポリン系薬剤(肺炎球菌[S. pneumoniae]および髄膜炎菌[N. meningitidis)]に対して),アンピシリン(L. monocytogenesに対して),バンコマイシン(肺炎球菌[S. pneumoniae ]のペニシリン耐性株および黄色ブドウ球菌[S. aureus)]に対して)が含まれる。

  • 肺炎球菌(S. pneumoniae)および髄膜炎菌(N. meningitidis)に対するルーチンのワクチン接種,ならびに髄膜炎菌(N. meningitidis)に対する化学予防は髄膜炎予防に役立つ。

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