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喘息

執筆者:

Victor E. Ortega

, MD, PhD, Center for Genomics and Personalized Medicine Research, Wake Forest School of Medicine;


Frank Genese

, DO, Wake Forest School of Medicine

最終査読/改訂年月 2019年 7月
本ページのリソース

喘息は,様々な誘発刺激により引き起こされ,部分的または完全に可逆的な気管支収縮を生じさせる気道のびまん性炎症疾患である。症状および徴候には,呼吸困難,胸部圧迫感,咳嗽,および喘鳴などがある。診断は病歴,身体診察,および肺機能検査に基づく。治療には誘発因子の制御および薬物療法があり,吸入β2作動薬および吸入コルチコステロイドが最も多く用いられる。治療を行えば予後は良好である。

疫学

喘息の有病率は1970年代以来増加し続けており,WHO によると,世界中で2億3500万人の患者がいると推定されている。米国では2500万人以上が罹患している。喘息は小児期の慢性疾患の中で最も多い疾患の1つであり,米国では600万人以上の小児が罹患している;思春期前の男児および思春期以降の女児により高頻度で発生する。また,非ヒスパニック系黒人およびプエルトリコ人においても発生頻度が比較的高い。

有病率が増加しているにもかかわらず,死亡率は近年低下している。米国では,喘息が原因で毎年およそ3400人が死亡している。しかしながら,死亡率は黒人の方が白人よりも2~3倍高い。喘息は,小児の入院の主たる原因の1つであり,小学校を休む原因として最も多い慢性疾患である。喘息による医療費および生産性損失の総額は560億USドル/年と推定される。

病因

喘息の発症は多因子によるもので,複数の感受性遺伝子と環境因子との相互作用に依存する。

100以上の喘息感受性遺伝子が報告されている。その多くが2型ヘルパーT細胞(TH2)に関連すると考えられ,炎症に関与している可能性がある。その例として,高親和性IgE受容体β鎖をコードするFCER1B遺伝子,L-4,IL-13,IL-4受容体などの特定のインターロイキン(IL)をコードする遺伝子,自然免疫を司る遺伝子(HLA-DRB1,HLA-DQB1,CD14),および細胞炎症に関与する遺伝子(例,顆粒球単球コロニー刺激因子[GM-CSF]および腫瘍壊死因子-α[TNF-α]をコードする遺伝子)などがある。また,ADAM33遺伝子は気道平滑筋と線維芽細胞の増殖およびリモデリングを刺激すると考えられている;これは全ゲノム家系連鎖解析で発見された最初の喘息リスク遺伝子座であった。

より最近では,最も複製が多いのが17q21領域である。この遺伝子座にはアレルゲンでありかつサイトカイン(IL-4/IL-13)誘導遺伝子であるORMDL3遺伝子が含まれ,この遺伝子は,上皮細胞のリモデリングおよびスフィンゴ脂質代謝に関わり気管支の過敏性に影響を及ぼすものである。

環境内にある喘息の危険因子として以下のものが考えられる:

  • アレルゲンへの曝露

  • 食事

  • 周産期の要因

家庭内アレルゲン(例,チリダニ,ゴキブリ,ペット)およびその他の環境アレルゲンが,比較的年長の小児および成人の喘息発症に関連していることがエビデンスにより明確に示されている。ビタミンCおよびE,ならびにω-3脂肪酸が少ない食事は,肥満と同様に,喘息と関連があるとされている;ただし,これらの物質を含む栄養補助食品により喘息が予防されることはないようである。喘息はまた,周産期の要因,例えば母親が若齢,母親の栄養不良,早産,低出生体重,母乳不足などとも関連付けられている。

一方で,生涯の早い時期にエンドトキシンに曝露すると,寛容が誘導される可能性があり,防御となる場合がある。大気汚染は増悪を誘発する可能性があるが,疾患の発症との関連は決定的ではない。小児期のタバコ煙への曝露については議論があり,一因であるとする研究もあれば,予防効果があるとする研究もある。

遺伝的および環境的要素は相互に作用すると考えられている。乳児は,好酸球の増殖および活性化とIgEの産生を特徴とするアレルギー性および炎症性のTH2免疫応答の素因を出生時から有している可能性がある。小児期早期の細菌およびウイルス感染と内毒素への曝露により,身体がTH1反応系へシフトする可能性があり,これによりTH2細胞が抑制され,耐性が生じる。先進国における小家族化および少子化,清潔な室内環境,ならびにワクチンや抗菌薬の早期使用の傾向は,TH2を抑制し耐性を誘発する曝露の機会を小児から奪う可能性があり,先進国において喘息の有病率が上昇し続けている理由の一部と考えられる(衛生仮説)。

反応性気道機能不全症候群(reactive airways dysfunction syndrome[RADS])および刺激物質誘発性喘息

反応性気道機能障害症候群(RADS)は,急速に発症する(曝露後,数分から数時間,ただし24時間以内)喘息様の症候群であり,以下の特徴を有する:

  • 喘息の病歴のない人に発生する

  • 刺激性ガスまたは微粒子相当量の,特異的な単回吸入曝露の後に発生する

  • 3カ月以上持続する

塩素ガス,窒素酸化物,揮発性有機化合物(例,塗料,溶剤,接着剤など)をはじめとする多くの物質が関与する。通常,曝露があったことは患者に明らかで,症状がほぼ直ちに始まった場合は特にわかりやすい。

刺激物質誘発性喘息とは,高濃度の同様の刺激物を複数回または慢性的に吸入した後に発生する,同様の持続的な喘息様反応を指す。臨床像はときに,より潜行性であり,したがって吸入曝露との関係は振り返ってみて初めて明らかになる場合がある。

RADSおよび慢性の刺激物質誘発性喘息は,臨床的に喘息と多くの共通点(例,喘鳴,呼吸困難,咳嗽,気流制限の存在,気管支過敏性)をもち,気管支拡張薬や,多くの場合コルチコステロイドに顕著に反応する。喘息とは異なり,吸入された物質に対する反応はIgEを介したアレルギーとは考えられておらず,また,低レベルの曝露はRADSや刺激物質誘発性喘息を引き起こさない。ただし,刺激物質に繰り返し曝露すると,さらなる症状が現れることもある。

病態生理

喘息には以下が関与する:

  • 気管支収縮

  • 気道浮腫および炎症

  • 気道過敏性

  • 気道のリモデリング

喘息の患者では,TH2細胞およびその他の細胞系(特に好酸球および肥満細胞,加えて他のCD4陽性 サブタイプおよび好中球)が,気道上皮および平滑筋に広範な炎症性浸潤を形成し,気道のリモデリング(すなわち,上皮細胞の剥離,上皮下の線維化,血管新生,平滑筋の肥厚)を引き起こす。平滑筋の肥厚により気道が狭小化し,アレルゲン,感染,刺激物,副交感神経刺激(サブスタンスP,ニューロキニンA, カルシトニン遺伝子関連ペプチドなど炎症性の神経ペプチドの放出を引き起こす),およびその他の気管支収縮の誘因に対する反応性が増大する。

気道過敏性亢進の他の要因として,気管支収縮の阻害物質(上皮由来の弛緩因子,プロスタグランジンE2)の欠損,内因性の気管支収縮物質を代謝するエンドペプチダーゼと呼ばれる物質の欠損などがある。粘液栓子および末梢血好酸球増多もまた喘息における古典的所見であり,気道炎症の随伴徴候でありうる。しかしながら,喘息患者の全てが好酸球増多を呈するわけではない。

喘息の誘因

喘息増悪の一般的誘因には以下のものがある:

  • 環境および職業アレルゲン(多数)

  • 乾燥した冷たい空気

  • 感染症

  • 運動

  • 刺激物の吸入

  • 感情

  • アスピリンおよびその他の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)

  • 胃食道逆流症(GERD)

幼児における感染性の誘因には,RSウイルス,ライノウイルス,およびパラインフルエンザウイルス感染などがある。より年長の小児および成人では,上気道感染症(特にライノウイルスによる)および肺炎が一般的な感染症の誘因である。運動が誘因となることもあり(特に寒冷な環境や乾燥した環境において),冷たい空気だけで症状が惹起されることもある。汚染大気,タバコ煙,香水,および洗浄剤などの刺激物の吸入が喘息患者の症状を誘発することもある。不安,怒り,および興奮などの感情も,ときに増悪を引き起こす。

アスピリンは重症喘息患者の最大30%,全喘息患者の10%未満における誘因である。 アスピリン過敏性の喘息では,典型的に鼻および副鼻腔粘膜のうっ血を伴う鼻茸がみられ,この病態はSamterの三徴(喘息,鼻茸,アスピリンやNSAIDへの過敏性)とも呼ばれる。

GERDは,一部の喘息患者における一般的な誘因であり,おそらく食道の酸による反射性の気管支収縮,または微量の酸の誤嚥によると考えられる。しかしながら,症状を伴わないGERDの治療(例,プロトンポンプ阻害薬による)は,喘息のコントロールを改善しないようである。

アレルギー性鼻炎はしばしば喘息と併存するが,両者が同じアレルギー反応過程の2つの異なる発現形態なのか,鼻炎自体が1つの喘息の誘因なのかは不明である。

反応

誘因の存在下で,可逆的な気道の狭小化および肺の換気不均衡が生じる。気道狭小化部位の遠位側の肺領域では,相対的に血流量が換気量を上回り,その結果,肺胞酸素分圧が低下し,肺胞二酸化炭素分圧が上昇する。通常であれば,このような局所的な低酸素症と高炭酸ガス血症が起きれば,代償性に肺血管収縮が起こることで,その領域の換気と血流の均衡は保たれるが,喘息の増悪中はプロスタグランジンの血管拡張作用が亢進するため,これらの代償機構が機能しない。ほとんどの患者は過換気により代償できるが,重症増悪の場合,びまん性の気管支収縮が重度のエアトラッピングを引き起こし,呼吸筋に著しい物理的負荷がかかり,呼吸仕事量が増加する。このような状況では,低酸素血症が悪化し,PaCO2が上昇する。結果,呼吸性アシドーシスおよび代謝性アシドーシスが生じることもあり,未治療のまま放置すると,呼吸停止および心停止に至る可能性がある。

分類

高血圧とは異なり(例,高血圧では1つのパラメータ[血圧]で疾患の重症度と治療効果が判定される),喘息はいくつかの臨床的異常および検査値異常を引き起こす。また,大抵の種類の高血圧と異なり,喘息の臨床像は典型的には増悪と寛解を示す。このため,喘息のモニタリング(および研究)には使用する用語の一貫性と明確な基準が必要となる。

喘息発作重積状態という用語は,治療抵抗性の,重症で激しい持続性の気管支攣縮を示す。

重症度

重症度は,その疾患経過の本質的な強さ(すなわち,どの程度ひどいか―喘息の重症度分類の表を参照)を示す。治療によく反応している患者はそもそもわずかな症状しか呈さないため,重症度は通常治療開始前にのみ評価できる。喘息の重症度は以下のように分類される:

  • 間欠型

  • 軽症持続型

  • 中等症持続型

  • 重症持続型

疾患の重症度分類によって,患者に起こりうる増悪の重症度は予測できないことを覚えておくことが重要である。例えば,長期間無症状または症状が軽度であり,肺機能も正常である軽症の喘息患者が,生命を脅かす重度の増悪を来す可能性がある。

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*喘息の重症度分類

重症度の指標

間欠型

軽症持続型

中等症持続型

重症持続型

症状の頻度

全年齢:≤ 2 日/週

全年齢:> 2 日/週,しかし毎日ではない

全年齢:毎日

全年齢:一日中

夜間覚醒

成人および ≥ 5歳の小児:≤ 2回/月

0~4歳の小児:0

成人および≥5歳の小児:3~4回/月

0~4 歳の小児:1~2回/月

成人および ≥ 5歳の小児: > 1回/週,しかし毎晩ではない

0~4歳の小児:3~4回/月

成人および ≥ 5歳の小児:しばしば7回/週

0~4歳の小児: > 1回/週

症状に対し,SABAの吸入によるレスキュー治療(EIBの予防のためではない)

≤ 2 日/週

成人および ≥ 5歳の小児: > 2日/週,しかし毎日ではない

0~4歳の小児: > 2日/週,しかし毎日ではない

毎日

数回/日

普段の活動の制限

なし

軽度に制限される

ある程度制限される

極度に制限される

FEV1

成人および ≥ 5歳の小児:予測値の > 80%

0~4歳の小児:適用されない

成人および ≥ 5歳の小児:予測値の > 80%

0~4歳の小児:適用されない

成人および ≥ 5歳の小児:予測値の60~80%

0~4歳の小児:適用されない

成人および ≥ 5歳の小児:予測値の < 60%

0~4歳の小児:適用されない

FEV1/FVC

成人および ≥ 12歳の小児:正常†

5~11歳の小児: > 85%

0~4歳の小児:適用されない

成人および ≥ 12歳の小児:正常†

5~11歳の小児: > 80%

0~4歳の小児:適用されない

成人および ≥ 12歳の小児:5%の低下†

5~11歳の小児:75~80%

0~4歳の小児:適用されない

成人および ≥ 12歳の小児: > 5%の低下†

5~11歳の小児: < 75%

0~4歳の小児:適用されない

経口コルチコステロイドの集中投与(burst)を必要とする喘息増悪の頻度‡

0~1/年

成人および ≥ 5歳の小児: ≥ 2/年

0~4歳の小児:6カ月に2回以上,または1日以上続く喘鳴が4回/年以上あることに加えて持続型喘息の危険因子がある

イベントの発生頻度が高く,程度が激しいほど,重症度が高いことを示す。

イベントの発生頻度が高く,程度が激しいほど,重症度が高いことを示す。

*重症度の分類は,障害の程度および経口コルチコステロイドを必要とする増悪の頻度によって決まる。障害の程度は過去2~4週間,頻度は過去1年の経過から評価される。重症度の分類は,コントローラーによる治療(症状または増悪に対するSABAまたは全身コルチコステロイドの集中投与[burst]ではない)を開始する前の初回受診時に決定するのが最も望ましい。

†気流閉塞の所見は,FEV1/FVCが年齢群ごとの正常予測値より低いことに基づく。年齢群ごとのFEV1/FVCの正常値:8~19歳 = 85%;20~39歳 = 80%;40~59歳 = 75%;60~80 years = 70%

‡現在のところ,増悪の頻度と喘息の各重症度とを関連付けるデータが不十分である。一般には,より頻回で激しい増悪(例,緊急で予定外の治療,入院,または集中治療室入室を要する)は,元々の重症度が高いことを示す。治療上の都合から,2回以上増悪のある患者は持続型喘息とみなされる場合がある。

EIB = 運動誘発性気管支攣縮;FEV1 = 1秒量(1秒間の努力呼気量);FVC = 努力肺活量;ICS = 吸入コルチコステロイド;SABA = 短時間作用型β2作動薬

Adapted from National Heart, Lung, and Blood Institute: Expert Panel Report 3: Guidelines for the diagnosis and management of asthma―full report 2007.August 28, 2007. Available at http://www.nhlbi.nih.gov/guidelines/asthma/asthgdln.htm.

コントロール

コントロールとは,症状,障害,およびリスクが治療によって抑制される程度を示す。コントロールは治療を受けている患者で評価されるパラメータである。目標は,全ての患者が疾患の重症度にかかわらず喘息の良好なコントロールを得ることである。コントロールは以下のように分類される:

  • コントロール良好

  • コントロール不良

  • 極めてコントロール不良

重症度およびコントロールは患者の障害度およびリスクの観点から評価される(喘息の重症度分類および喘息コントロールの分類の表を参照)。

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喘息コントロールの分類*,†

指標

コントロール良好

コントロール不良

極めてコントロール不良

症状

5~11歳の小児を除く全年齢: 2日/週

5~11歳の小児: 2日/週,しかし > 1日1回ではない

5~11歳の小児を除く全年齢:> 2日/週

5~11歳の小児:> 2日/週,または ≤ 2日/週だが複数回

全年齢:一日中

夜間覚醒

成人および ≥ 12歳の小児: ≤ 2/月

5~11歳の小児: 1/月

0~4 歳の小児: 1/月

成人および ≥ 12歳の小児:1~3/週

5~11歳の小児: ≥ 2/月

0~4歳の小児:> 1/月

成人および ≥ 12歳の小児: ≥ 4/週

5~11歳の小児: 2/週

0~4歳の小児:> 1/週

普段の活動の制限

なし

ある程度制限される

極度に制限される

症状コントロールのための短時間作用型β2作動薬の使用(運動誘発喘息の予防のためではない)

2日/週

> 2日/週

数回/日

FEV1またはピークフロー

予測値または自己最良値の > 80%

予測値または自己最良値の60~80%

予測値または自己最良値の < 60%

FEV1/FVC(5~11歳の小児)

> 80%

75~80%

< 75%

経口コルチコステロイドの全身投与を必要とする増悪‡

0~1/年

成人および ≥ 5歳の小児: ≥ 2/年

0~4歳の小児:2~3/年

成人および ≥ 5歳の小児: ≥ 2/年

0~4歳の小児:> 3/年

妥当性確認済みの質問票:

  • ATAQ

0

1~2

3~4

  • ACQ

0.75†

1.5

Ν/Α

  • ACT

20

16~19

15

推奨される行動

現在のステップを維持

1~6カ月毎のフォローアップ

3カ月以上コントロール良好であれば,ステップダウンを考慮

1段階ステップアップ

2~6週後に再評価

有害作用に対しては,治療の選択肢を考慮

短期間のコルチコステロイドの全身投与を考慮

1または2段階ステップアップ

2週間後に再評価

有害作用に対しては,治療の選択肢を考慮

*特に明記しない限り全年齢を表す。

†コントロールのレベルは,最も重度の障害またはリスクカテゴリーに基づく。追加で考慮すべき因子は,肺機能検査における進行性の肺機能低下,重大な有害作用,ならびに増悪の重症度および間隔(すなわち,挿管を要する増悪や1カ月に2回の入院は極めてコントロール不良と考えられる)である。

‡現在のところ,増悪の頻度と喘息コントロールの各レベルとを関連付けるデータが不十分である。一般には,より頻回で激しい増悪(例,緊急で予定外の治療,入院,または集中治療室入室を要する)は,喘息コントロールがより不良であることを示す。

ACQ = asthma control questionnaire(喘息コントロール質問票); ACT = asthma control test(喘息コントロールテスト);ATAQ = asthma therapy assessment questionnaire(喘息治療評価質問票);FEV1 = 1秒量(1秒間の努力呼気量);FVC = 努力肺活量。

Adapted from National Heart, Lung, and Blood Institute: Expert Panel Report 3: Guidelines for the diagnosis and management of asthma―full report 2007.August 28, 2007. Available at http://www.nhlbi.nih.gov/guidelines/asthma/asthgdln.htm.

障害度

障害度は,患者の症状および機能制限の頻度および強度を示す(喘息の重症度分類の表を参照)。障害度と重症度の違いは,障害度は症状と機能制限に重きを置くのに対し,重症度は病態そのものの強度に重きを置く点である。障害度は,スパイロメトリーによる主に1秒量(FEV1)および FEV1の努力肺活量(FVC)に対する比を用いて評価できるが,以下のような臨床的特徴として現れることもある:

  • 症状出現の頻度

  • 夜間覚醒の頻度

  • 症状の緩和に短時間作用型β2作動薬を用いる頻度

  • 喘息により普段の活動に支障を来す頻度

リスク

リスクは,将来の増悪または肺機能低下の可能性および薬物有害作用のリスクを示す 。リスクの評価には,スパイロメトリーにおける長期的傾向および以下のような臨床的特徴を用いる:

  • 経口コルチコステロイドを必要とする頻度

  • 入院の必要性

  • 集中治療室(ICU)入室の必要性

  • 挿管の必要性

症状と徴候

軽症の喘息患者は,増悪の合間は典型的には無症状である。より重症の患者および増悪期にある患者は,呼吸困難,胸部圧迫感,聴取可能な喘鳴,および咳嗽を呈する。一部の患者では,咳嗽が唯一の症状である場合がある(咳喘息)。症状は概日リズムに従って変化し,睡眠中(しばしば午前4時頃)に悪化することがある。さらに重症の場合は,多くが夜間覚醒を伴う(夜間喘息)。

徴候には,喘鳴,奇脈(すなわち,吸気時の収縮期血圧の低下が > 10mmHg),頻呼吸,頻脈,および目に見える努力呼吸(頸や胸骨上の筋[補助筋]の使用,立位,すぼめた唇,会話不能)などがある。呼吸の呼気相が長くなり,吸気:呼気の比は少なくとも1:3となる。笛音は両相または呼気相でのみ認めるが,重症の気管支収縮がある場合は,著しい気流制限のため,喘鳴が聴取されないこともある。

重度の増悪および呼吸不全の切迫状態にある患者では,典型的に,意識変容,チアノーゼ,> 15mmHgの奇脈,酸素飽和度 < 90%,PaCO2 > 45mmHg,または過膨張のうち,いくつかの所見を有する。まれに,気胸または縦隔気腫が胸部X線上でみられる。

症状および徴候は増悪期の合間には消失するが,一部の無症状の患者では,安静時の強制呼気の際または運動後に,軽微な笛音を聴取できることがある。長期間コントロールされていない喘息患者では,肺の過膨張が胸壁を変化させ,樽状胸を来す場合がある。

症状および徴候は全て非特異的であり,時宜を得た治療を行えば可逆的であり,典型的には1つまたは複数の誘因への曝露により引き起こされる。

診断

  • 臨床的評価

  • 肺機能検査

診断は病歴および身体診察に基づき,肺機能検査により確定する。原因の診断,および喘鳴を引き起こすその他の疾患との鑑別も重要である。喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)はときに混同されやすい;両者は類似した症状を引き起こし,肺機能検査でも類似した結果を示すが,重要な生物学的機序において異なっており,これは必ずしも臨床的に明らかな違いとして現れない。

コントロール困難な喘息またはコントローラーによる一般的な治療に抵抗性の喘息では,発作性喘鳴,咳嗽,呼吸困難を引き起こすその他の原因(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症気管支拡張症声帯機能不全など)に対する評価を行うべきである。

肺機能検査

喘息が疑われる患者には,気道閉塞の重症度および可逆性を確認し定量化するため,肺機能検査を実施すべきである。肺機能検査のデータの質は患者の努力に左右されるため,検査前には患者への指導が必要である。もし安全であれば,気管支拡張薬は検査前に中止すべきである:サルブタモールなどの短時間作用型β2作動薬は8時間前;イプラトロピウムは24時間前;テオフィリンは12~48時間前;サルメテロールおよびホルモテロールなどの長時間作用型β2作動薬は48時間前;チオトロピウムは1週間前に中止する。

スパイロメトリーは,短時間作用型気管支拡張薬の吸入の前と後に行うべきである。気管支拡張薬吸入前の気流制限の徴候には,FEV1の減少およびFEV1/FVC比の減少などがある。エアトラッピングのためFVCが低下することもあり,その結果,肺気量測定値のうち残気量,機能的残気量,またはその両方が増加することがある。気管支拡張薬による治療に反応しFEV1が12%を超えて,または予測値に対して10%以上改善すれば,気道閉塞の可逆性が確定するが,この所見がない場合でも長時間作用型気管支拡張薬の試験的投与を除外すべきではない。

また,フローボリューム曲線を評価し,上気道閉塞の一般的な原因であり喘息に類似している声帯機能不全がないかを診断すべきである。ただし,声帯機能不全は間欠的なものであり,フローボリューム曲線が正常であってもこの病態は除外されないことに注意すべきである。

喘息が疑われるがスパイロメトリーおよびフローボリューム検査の所見が正常である患者,ならびに咳喘息が疑われる患者では,禁忌がなければ,吸入メサコリン(あるいは吸入ヒスタミン,アデノシン,もしくはブラジキニン,または運動負荷試験などで代用できる)を使用して気管支収縮を誘発する誘発試験が適応となる。禁忌には,FEV1 < 1Lまたは予測値の < 50%,最近の心筋梗塞または脳卒中,および重度の高血圧(収縮期血圧 > 200mmHg;拡張期血圧 > 100mmHg)などがある。誘発試験プロトコルにおける > 20%の FEV1の低下は,喘息の診断に比較的特異的である。しかしながら,COPDなど他の疾患でも,これらの薬剤に反応してFEV1が減少しうる。試験プロトコルの終了までにFEV1の減少が20%未満の場合は,喘息の可能性はより低い。

その他の検査

その他の検査も状況によっては役立つ場合がある:

  • 一酸化炭素拡散能(DLCO)

  • 胸部X線

  • アレルギーテスト

DLCO試験は喘息を慢性閉塞性肺疾患と鑑別するのに役立つ可能性がある。数値は,喘息では正常または上昇し,COPDでは通常低下する(特に肺気腫の患者で)。

胸部X線は,喘息の主な原因または心不全肺炎などの別の診断を除外するのに役立つことがある。喘息の胸部X線は通常正常であるが,過膨張または区域性無気肺(粘液栓子の徴候である)を示すこともある。浸潤影は,特に出現および消失を繰り返し,中枢性気管支拡張の所見を伴う場合,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症を示唆する。

病歴からアレルギー性誘因(特にアレルギー性鼻炎)が示唆される小児は,免疫療法が有益である可能性があるため,アレルギーテストの適応となりうる。成人では,病歴からアレルゲン回避による症状の緩和が示される場合,および試験的抗IgE抗体療法を考慮している場合にアレルギーテストを考慮すべきである。皮膚テストおよび放射性アレルゲン吸着試験(RAST)によるアレルゲン特異的IgEの測定によって,特異的なアレルギー性の誘因を同定できる。

血液検査を行う場合がある。血中好酸球の増加(> 400/μL[> 0.4×10 9/L])および非特異的IgE値の上昇は病態を示唆するものではあるが,アレルギー性喘息の診断に対して感度も特異性も高くない。

喀痰中の好酸球検査は一般的には行われていない;好酸球が多数見つかれば喘息を示唆するが,感度および特異度ともに低い。

安価な携帯型の流量計による最大呼気流量(PEF)測定が,疾患重症度の在宅モニタリングおよび治療の指標とするために推奨されている。

増悪の評価

喘息の急性増悪は,臨床基準を用いて評価すべきであるが,ときには以下の検査も行う必要がある:

  • パルスオキシメトリー

  • ときに最大呼気流量(PEF)の測定

増悪を治療するかどうかの判断は,主に徴候および症状の評価に基づく。PEFの測定は,増悪の重症度の判定に役立つ可能性があるが,外来患者における治療への反応のモニタリングに用いられることが最も多い。PEF値は患者の自己最良値を基に評価するが,この値は同程度の喘息コントロールができている患者間でも大きく異なる。このベースラインからの15~20%の低下は,有意な増悪を示す。ベースラインの値が不明である場合,年齢,身長,性別に基づいて予測されたPEFに対する百分率(%FEV)を使用できるが,患者の自己最良値との比較よりは精度が劣る。

スパイロメトリー(例,FEV1)はPEFより正確に気流を反映するものの,緊急性の非常に高い外来患者や救急外来では実用的でない;ただし,外来で治療をモニタリングする場合や客観的な測定値が必要な場合(例,患者の主観や周囲の認識より増悪の重症度が重いと考えられる場合)には使用されることがある。

ほとんどの増悪では胸部X線検査を行う必要はないが,肺炎気胸,または縦隔気腫を示唆する症状または徴候のある患者には行うべきである。

動脈または静脈血ガス測定は,著明な呼吸窮迫,または切迫した呼吸不全の症状および徴候のある患者で行うべきである。

予後

多くの小児で喘息は消失するが,最大4人に1人で喘鳴が成人まで持続するか,何年か後に再発する。女性,喫煙,若年での発症,および家庭内のチリダニへの感作は,喘息の持続および再発の危険因子である。

喘息による死亡者数は毎年かなりの数にのぼるが,その大半は治療していれば回避できた死である。したがって,治療に対するアクセスおよびアドヒアランスが十分であれば,予後は良好である。死亡の危険因子には,入院前の経口コルチコステロイド必要量の増加,急性増悪による入院歴,および診察時のPEF値の低下などがある。複数の研究が,吸入コルチコステロイドの使用により入院回数および死亡率が減少することを示している。

一部の喘息患者では,経時的に気道が永久的な構造的変化(リモデリング)を来し,完全には可逆的でないベースライン気流の閉塞が残る。抗炎症薬を早期から積極的に使用することで,このリモデリングの予防に役立つ可能性がある。

治療

  • 誘因のコントロール

  • 薬物療法

  • モニタリング

  • 患者教育

  • 急性増悪の治療

治療の目的は,増悪の予防および夜間覚醒などの慢性症状の最小化をはじめとする障害度およびリスクの最小化;救急診療部の受診や入院の必要性の最小化;ベースラインの(正常の)肺機能および活動レベルの維持;ならびに治療による有害作用の回避などである。

誘発因子のコントロール

一部の患者では,合成繊維の枕および不浸透性の敷布団カバーの使用,ならびにシーツ,枕カバー,および毛布を湯で頻繁に洗うことで誘発因子をコントロールできることがある。チリダニおよび動物の鱗屑を減らすため,布張りの家具,ぬいぐるみ,カーペット,カーテンを少なくとも寝室からは除去し,ペットの飼育は避けるのが理想である。地下室や換気不良で高湿度の部屋では,カビを減らすために除湿器を用いるべきである。スチームによる家屋の清掃によってチリダニアレルゲンは減少する。ゴキブリへの曝露除去を目的とした家屋の清掃および駆除は特に重要である。都会での誘因コントロールはより困難であるが,これらの対策の重要性が減ることはない。

HEPA(high-efficiency particulate air)フィルター搭載の電気掃除機やHEPAフィルターの使用により症状は緩和しうるが,肺機能および薬剤の必要性に対する有益な影響は認められていない。

亜硫酸塩に感受性のある患者は亜硫酸塩を含む食品(例,特定のワインやサラダのドレッシング)を避けるべきである。

タバコ煙,強い香り,刺激ガス,寒冷,高湿度などの非アレルギー性の誘因も,可能であれば回避またはコントロールすべきである。ウイルス性上気道感染症の患者への曝露を制限することも重要である。ただし運動は健康上重要であるため,運動誘発喘息では運動を避けるという治療選択肢はとられない。その代わり,運動前および運動中または必要に応じて運動後に短時間作用型気管支拡張薬が予防的に投与される(レスキュー吸入);運動によって誘発される症状がレスキュー吸入に反応しないか,連日またはそれ以上の頻度で発生する場合は,コントローラー療法(喘息管理のステップの表のステップ1および2)を開始する必要がある。

アスピリン過敏性の喘息患者は,NSAIDの代わりに,アセトアミノフェン,サリチル酸コリンマグネシウム,またはセレコキシブを使用できる。

喘息では,外用製剤を含む非選択的β遮断薬(例,プロプラノロール,チモロール,カルベジロール,ナドロール,ソタロール)の使用は相対的禁忌であるが,心選択性薬(例,メトプロロール,アテノロール)は,おそらく有害作用を有さない。

薬物療法

喘息および喘息増悪の治療に一般的に用いられる主要な薬剤の種類は以下の通りである:

これらの薬剤(慢性喘息に対する薬物治療の表を参照)は吸入,経口,皮下注射または静脈内注射で投与される;吸入薬には霧状および粉末状のものがある。霧状の吸入薬使用時にスペーサーまたはチャンバーを用いることで,薬剤が咽頭よりも気道に沈着しやすくなる;細菌汚染を防ぐために,スペーサーは使用毎に洗って乾かすよう患者に指示する。また,霧状の吸入薬では,吸入器の作動(薬剤の供給)と患者の吸入が同調して行われる必要がある;粉末状の吸入薬では,患者の吸入時のみ薬剤が供給されるため同調の必要性が減少する。詳細については,喘息に対する薬物治療を参照のこと。

気管支サーモプラスティ

気管支サーモプラスティとは,局所的に制御された高周波を伝える機器を介して気道に熱を与える気管支鏡手技である。熱により,喘息に伴って起こる気道平滑筋のリモデリング(ひいては平滑筋の塊)の量が減少する。複数の治療を行ってもコントロールできない重症喘息の患者を対象にした臨床試験では,増悪の頻度がやや減少し,症状のコントロールに改善がみられた。しかしながら,中には症状が直ちに悪化した患者もおり,ときに処置後速やかに入院が必要となった患者もいる。

気管支サーモプラスティを考慮する際の基準は,吸入コルチコステロイドや長時間作用型β作動薬でコントロールできない重度の喘息で,経口コルチコステロイドの間欠的または持続的な使用があり,FEV1 が予測値の ≥ 50%であり,かつ生命を脅かす増悪の既往がないことである。患者はこの処置を受ける前に,処置後の喘息の増悪および入院の必要のリスクがあることを理解しておくべきである。気管支サーモプラスティの長期的な効果と安全性は不明である。年に4回以上の増悪がある患者,またはFEV1の予測値に対し < 50%の患者は臨床試験から除外されたため,これらの患者に関するデータはない。

治療に対する反応のモニタリング

ガイドラインは,気流制限の測定ならびに障害度およびリスク評価のため,診察室でのスパイロメトリー(FEV1,FEV1/FVC,FVC)の使用を推奨している。スパイロメトリーは,疾患の進行をモニタリングするために喘息患者では少なくとも1~2年毎に行うべきであり,肺機能が低下したり,気流閉塞の所見を伴う障害がみられたりする場合は,治療のステップアップが必要になることがある(喘息コントロールの分類の表を参照)。診察室以外では,患者による症状日記および喘息アクションプラン(asthma action plan)の使用に加え,在宅にてPEFモニタリングを行うことが,中等症持続型から重症持続型喘息患者における疾患の進行および治療への反応の記録に特に有用である。喘息の無症状期間には,朝1回のPEF測定で十分である。万一PEFが患者の自己最良値の80%未満まで減少した場合は,日内変動を評価するために1日2回のモニタリングを行うことが有用となる。20%を超える日内変動は,気道の不安定性および治療レジメン再検討の必要性を示唆する。

患者教育

患者教育の重要性はいかに強調してもし過ぎることはない。患者は,何が増悪を誘発するのか,どの薬をいつ使用するのか,吸入器の適切な使用技術,スペーサーはどのようにして定量噴霧式吸入器(MDI)と一緒に使用するのか,および増悪時のコルチコステロイドによる早期治療の重要性など,喘息についてよく知れば知るほど,よりよく対処できる。個々の患者は,日々の管理,特に急性増悪の管理に対する書面化したアクションプランをもつべきであり,そのプランは最大呼気流量の予測正常値ではなく,自己最良値に基づいて作成すべきである。そうしたプランは喘息コントロールの大幅な改善につながり,それは主に治療に対するアドヒアランスの向上に帰するものである。

喘息の急性増悪の治療

喘息増悪の治療の目標は,症状を軽減し,肺機能を患者の最良の状態に回復させることである。治療法としては以下のものがある:

  • 吸入気管支拡張薬(β2作動薬および抗コリン薬)

  • 通常コルチコステロイドの全身投与

入院を要する重度の発作を含む喘息の急性増悪の治療の詳細については,本マニュアルの別の箇所で考察されている。

慢性喘息の治療

現在の喘息ガイドラインは,重症度分類に基づいた治療を推奨している。治療の継続はコントロールの評価に基づく(慢性喘息コントロールの分類の表を参照)。障害度およびリスクの最善のコントロールが達成されるまで,治療は段階的に増強(ステップアップ)する(喘息管理のステップの表を参照)。ステップアップの前に,アドヒアランス,環境因子への曝露(例,誘発因子への曝露),および併存症の存在(例,肥満アレルギー性鼻炎GERDCOPD閉塞性睡眠時無呼吸症候群声帯機能不全,吸入コカインの使用)がないか再評価すべきである。これらの因子に対しては,薬物療法を増強する前に対処すべきである。少なくとも3カ月間喘息が良好にコントロールされれば,薬物療法を可能な場合は良好なコントロールを維持できる最低レベルまで減らす(ステップダウン)。具体的な薬剤および投与量については,慢性喘息に対する薬物治療の表を参照のこと。

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喘息管理のステップ*

ステップ

望ましい治療

代替治療

1(間欠型喘息の開始点)

必要に応じて短時間作用型β2作動薬†

2(軽症持続型喘息の開始点)

低用量吸入コルチコステロイド

肥満細胞安定化薬,ロイコトリエン受容体拮抗薬,またはテオフィリン

3(中等症持続型喘息の開始点)

中用量吸入コルチコステロイド

または

低用量吸入コルチコステロイドおよび長時間作用型β2作動薬の併用

低用量吸入コルチコステロイドおよび次のうち1つの併用:ロイコトリエン受容体拮抗薬,テオフィリン,またはジロートン(zileuton

4

中用量吸入コルチコステロイドおよび長時間作用型β2作動薬の併用

中用量吸入コルチコステロイドおよび次のうち1つの併用:ロイコトリエン受容体拮抗薬,テオフィリン,またはジロートン(zileuton

5(重症持続型喘息の開始点)

高用量吸入コルチコステロイドおよび長時間作用型β2作動薬の併用ならびに

アレルギー性喘息の患者には場合によりオマリズマブ

6

高用量吸入コルチコステロイドおよび長時間作用型β2作動薬および経口コルチコステロイドの併用ならびに

アレルギー喘息の所見がある患者にはおそらくオマリズマブ,メポリズマブ,レスリズマブ(reslizumab

*ステップアップの前に,アドヒアランス,環境因子(例,誘発因子への曝露),および併存症がないかを再確認し,必要があれば対処すべきである。

†短時間作用型β2作動薬は全ステップにおける症状の速やかな緩和,および運動誘発喘息の予防に適応がある。

運動誘発喘息

運動誘発喘息は,一般に運動開始前に短時間作用型β2作動薬または肥満細胞安定化薬をあらかじめ吸入することにより予防できる。β2作動薬が効果的でない場合,または運動誘発喘息が連日もしくはそれ以上の頻度で症状を引き起こしている場合,コントローラーによる治療を要する。

アスピリン過敏性喘息

アスピリン過敏性喘息の治療は,第一にアスピリンやその他のNSAIDの回避である。セレコキシブは誘因ではないと考えられる。ロイコトリエン修飾薬(leukotriene modifier)はNSAIDに対する反応を鈍化させうる。あるいは, アスピリン感受性と喘息の重症度に応じて入院または外来のいずれかで脱感作を行うことができる;脱感作は,治療を1年以上継続できた患者の大多数で成功している。

今後の治療法

炎症カスケードを構成する特定の要素を標的とした多くの治療法が開発されている。インターロイキン6(IL-6),胸腺間質性リンパ球新生因子(thymic stromal lymphopoietin),TNF-α,その他のケモカイン,およびサイトカインまたはその受容体は全て治療の標的として研究または検討されている。

特別な集団

乳児,小児,および青年

乳児の喘息の診断は困難であり,そのため過小認識および過小治療がよくみられる(乳幼児における呼気性喘鳴および喘息を参照)。吸入気管支拡張薬および抗炎症薬による経験的治療の試みがその両方に役立つ可能性がある。薬物は,ネブライザー,またはチャンバーのついたMDIにより投与し,フェイスマスクは使用しても使用しなくてもよい。週2回を超える治療が必要な5歳未満の乳児および幼児には,吸入コルチコステロイド(望ましい),ロイコトリエン受容体拮抗薬,またはクロモグリク酸(cromolyn)による抗炎症療法を毎日行うべきである。

喘息のある5歳以上の小児および青年には,成人と同様の治療を行う。 これらの患者には身体活動,運動,およびスポーツへの参加を続けるよう奨励すべきである。青年における肺機能検査の予測基準値は小児(成人ではなく)の基準により近い。青年および年少でも判断能力のある小児は,アドヒアランス向上のため,自身の喘息管理計画の作成および自らの治療目標の設定に参画すべきである。レスキュー薬が確実かつ迅速に利用できるよう,アクションプランは教師および養護教諭にも理解してもらうべきである。クロモグリク酸(cromolyn)とネドクロミルは,この患者群でしばしば試験的に使用されるが,吸入コルチコステロイドほど有益ではない。長時間作用型の薬剤は,学校で服薬する際生じる問題(例,不便,恥ずかしさ)を予防する。

妊婦

妊娠した女性喘息患者のうち,約3分の1は症状の軽快を感じ,もう3分の1は悪化(ときには重症になる)を感じ,残りの3分の1は変化を感じない。GERDは妊娠時の症候性疾患の重要な要因となる。母親の疾患コントロールが悪いと,胎児死亡率,早産,および低出生体重のリスクが増加する可能性があるため,妊娠中の喘息のコントロールは不可欠である。

喘息の薬剤に胎児への有害作用があることは示されていないが,安全性データは不十分である。(National Asthma Education and Prevention Program, Managing Asthma During Pregnancy: Recommendations for Pharmacologic Treatment–Update 2004も参照のこと。)一般に,薬物有害作用より,コントロールを欠く喘息自体が,母体および胎児に対してより大きなリスクをもたらす。妊娠中の血中PCO2の正常値は約32mmHgである。そのため,PCO2が40mmHgに近づくと二酸化炭素の滞留が起きつつある可能性がある。

パール&ピットフォール

  • 喘息のコントロールが不良でPCO2値が40mmHgに近い妊婦では,二酸化炭素の滞留および呼吸不全がないかを疑うこと。

高齢患者

高齢者は他の閉塞性肺疾患(例,COPD)の有病率が高いため,気流閉塞(airflow obstruction)の可逆性の程度を判定することが重要である(例,2~3週間の吸入コルチコステロイドの試用または気管支拡張薬を用いた肺機能検査による)。高齢者はβ2作動薬および吸入コルチコステロイドの有害作用に,感受性がより高い。吸入コルチコステロイドを必要とする患者,特に骨粗鬆症の危険因子がある患者は,骨密度を保つ対策(例,カルシウムおよびビタミンDのサプリメント,ビスホスホネート)により便益を得られる場合がある。

要点

  • 喘息の誘因は,環境アレルゲンおよび呼吸器刺激物から,感染症,アスピリン,運動,感情,および胃食道逆流症に至るまで様々である。

  • 原因不明の持続性咳嗽が,特に夜間にみられる患者では喘息を考慮する。

  • 喘息が疑われれば,肺機能検査(必要に応じてメサコリン誘発を含む)を手配する。

  • 誘因を回避する方法について患者教育を行う。

  • 慢性喘息のコントロールには,アレルギー反応および免疫応答を調節する薬剤(通常,吸入コルチコステロイド)を用い,喘息の重症度に基づいてその他の薬剤(例,長時間作用型気管支拡張薬,肥満細胞安定化薬,ロイコトリエン阻害薬)を追加する。

  • 急性増悪は,吸入β2作動薬および抗コリン薬,コルチコステロイドの全身投与,ならびにときにアドレナリン注射により治療する。

  • 妊娠中の喘息は積極的に治療する。

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