流量,肺気量,およびフローボリューム曲線

執筆者:Karen L. Wood, MD, Grant Medical Center, Ohio Health
Reviewed ByRichard K. Albert, MD, Department of Medicine, University of Colorado Denver - Anschutz Medical
レビュー/改訂 2024年 4月 | 修正済み 2024年 9月
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流量および肺気量の測定値は,閉塞性肺疾患と拘束性肺疾患との鑑別,疾患の重症度の評価,治療への反応の測定に利用できる。

検査としては,吸気流量,呼気流量,および肺気量を測定するスパイロメトリーのほか,特異的な閉塞性および拘束性の異常を明らかにするためにときにフローボリューム曲線検査が行われる。閉塞性の異常がみられる患者では,可逆性および治療に対する反応を評価するため,短時間作用型気管支拡張薬を吸入させた後にスパイロメトリーを再度実施する。

測定値は典型的には,絶対的な流量および気量で表され,また正常な肺機能を有するとみなされる人の大規模集団から得たデータを用いて算出した予測値の百分率で表される。正常値の予測に用いられる変数としては,年齢,性別,民族,身長などがある。

医学計算ツール(学習用)

肺機能検査を解釈する際に,人種および民族で補正するかどうかについては議論がある。人種および民族は,測定された肺機能において観察された差を正確に説明するものではなく,むしろ社会的および環境的な因子の影響を反映するものであり,医療格差にさらに寄与しているというエビデンスが増えつつある。複数の研究により,人種および民族に基づく参照式を用いると,非白人では肺疾患の重症度が過小評価される可能性が高い(したがって過少治療となる)ことが示されている(1, 2)。American Thoracic Society(ATS)は,以前に用いられていた民族または人種特異的な参照式(3)を,Global Lung Function Initiative(GLI)による平均化された式から導かれるものなど,人種を考慮しない参照式から導かれるものに置き換えることを推奨している(4, 5)。2022 European Respiratory Society(ERS)/ATSは,人種を考慮しない参照値の使用が特定の治療(例,手術,肺移植)の適格性の変更につながる可能性があることを認めており,臨床的意思決定と患者のアウトカムに及ぼす潜在的な影響を解明するための継続的な研究の必要性が強調されている(6)。

流量

吸気流量および呼気流量の定量値は,努力肺活量測定により得られる。外鼻孔を閉塞するためにノーズクリップを用いる。

吸気流量および吸気肺気量の評価においては,患者はできる限り完全に呼出し,その後強制的に吸入する。最大吸気量とは1回の深呼吸で吸入される空気の最大量であり,吸気流量とは1秒間に吸入される空気の量である。

呼気流量および呼気量の評価では,患者はできる限り深く吸入し,唇をマウスピース周囲に密着させ,装置に対しできる限り強く完全に呼出すると,装置が呼気量(努力肺活量[FVC])および最初の1秒間で呼出した気量(1秒量[FEV1]―の図を参照)を記録する。

これらの手技で複数の測定値が得られる:

  • FVCとは,患者が最大吸気を行った後に強制的に呼出できる空気の最大量である。

  • FEV1:最初の1秒間に呼出される気量

  • 最大呼気流量(PEF):呼出時の最大気流量

FEV1は最も再現性のある流量のパラメータであり,特に閉塞性肺疾患(例,喘息COPD[慢性閉塞性肺疾患])患者の診断およびモニタリングに有用である。

FEV1およびFVCは閉塞性肺疾患と拘束性肺疾患を鑑別するのに役立つ。FEV1が正常であれば,不可逆的な閉塞性肺疾患の可能性が低くなる。FVCが正常であれば拘束性疾患の可能性が低くなる。FEV1/FVC比の低下は閉塞を示唆する。初回検査で閉塞の所見がみられる患者で,短時間作用型気管支拡張薬吸入前後にFEV1およびFVCを繰り返し測定することは,喘息でみられるような可逆性の気管支攣縮がある患者と,COPDでみられる固定性の閉塞がある患者の鑑別に有用である。

COPDの危険因子(例,喫煙,過去の感染,職業曝露,大気汚染物質への曝露)を有していても,肺機能検査で明らかな閉塞が示されないケースがある。このようなケースはpre-COPD(7)と呼ばれる。この集団の特徴を明らかにするにはさらなる研究が必要であるが,スパイロメトリーの値を経時的に追跡することは,COPDを発症する可能性の高い患者を同定するのに役立つ可能性がある。

正常のスパイログラム

FEF25–75% = FVCの25~75%を呼出する間の努力呼気流量;FEV1= 努力肺活量の測定における最初の1秒間の努力呼気量;FVC = 努力肺活量(最大吸気を行った後に強制的に呼出する空気の最大量)。

FVCの25~75%を呼出する間の平均努力呼気流量は,細気道の軽度の気流制限を検出するマーカーとしてFEV1よりも感度が高い可能性があるが,この変数は再現性が不良である。

最大呼気流量(PEF)は呼出中の最大流量である。これは喘息患者の在宅モニタリングおよび流量の日内変動の測定に用いられる。PEFを自己最良値と比較することによって喘息をモニタリングできる。

これらの測定値の解釈は,患者の良質な努力に依存し,これは実際の手技時に指導を行うことでしばしば改善される。許容可能なスパイログラムの所見は以下の通りである:

  • 検査開始が良好(例,迅速で最大努力を伴った呼気開始)

  • 咳嗽がない

  • 曲線が滑らか

  • 呼気の早期終了がみられない(例,少なくとも6秒間呼気が持続し,最後の1秒間の気量に変化がない)

他の呼吸努力との差が5%以内または100mL以内であれば,再現性があるとみなされる。これらの最低限の許容基準を満たさない結果については,解釈に注意が必要である。

肺気量

肺気量は,機能的残気量(FRC)の検査により測定する。FRCは,正常な呼気後に肺に残っている空気の量である。全肺気量(TLC)は,最大吸気の終わりに肺に存在するガスの量である。FRCがわかれば,肺気量をスパイロメトリーで測定または計算で得られる下位の気量に分割できる(の図を参照)。正常では,FRCはTLCの約40%に相当する。

正常な肺気量

ERV = 予備呼気量;FRC = 機能的残気量;IC = 最大吸気量;IRV = 予備吸気量;RV = 残気量;TLC = 全肺気量;VC = 肺活量;VT= 1回換気量。

FRC = RV + ERV;IC = VT + IRV;VC = VT+ IRV + ERV。

FRCをガス希釈法またはプレスチモグラフ(気流制限およびエアトラッピングがある患者ではこちらの方がより正確である)により測定する。

ガス希釈法としては以下のものがある:

  • 窒素洗い出し法

  • ヘリウム平衡法

窒素洗い出し法では,患者に安静呼気位まで呼出させた後,100%酸素を満たしたスパイロメーターから呼吸させる。この検査は呼出された窒素濃度がゼロになった時点で終了する。呼出された窒素の採取量は,最初のFRCの81%に相当する。

ヘリウム平衡法では,患者は安静呼気位まで呼出した後,既知量のヘリウムおよび酸素を含有する閉鎖回路に接続される。ヘリウム濃度の測定は,吸入時と呼出時の濃度が同じになるまで続けるが,これはヘリウム濃度が肺内のガス量と平衡に達したことを意味しており,認められたヘリウム濃度の変化からこのガス量を推定できる。

これら2つの方法は共に,気道と換気している肺気量のみを測定するため,FRCを過小評価する可能性がある。重度の気流制限がある患者では,とらえ込まれた相当量のガスは,ほとんどまたは全く換気しない可能性がある。

体プレチスモグラフィーは,ボイルの法則(P1V1 = P2V2,ここでPは圧力,Vは体積)を利用して胸郭内の圧縮性のガス容量を測定するものである。体プレチスモグラフィーはガス希釈法よりも正確である。患者は気密性のボックス内に座り,安静呼気位から密封したマウスピースに対して吸入を試みる。胸壁が広がると,閉鎖されたボックス内の圧力が上昇する。吸気前のボックスの容量と吸気努力前後のボックス内の圧力を把握しておくことで,ボックスの容量の変化量が計算により得られるが,これは肺気量の変化と一致するはずである。

医学計算ツール(学習用)

フローボリューム曲線

気量を(Lで表す)経時的に(秒で表す)示すスパイログラムとは対照的に,フローボリューム曲線では,流量(L/秒で表す)を,完全呼出(残気量[RV]位)から最大吸入する間,および完全吸入(TLC位)から最大呼出する間の肺気量(Lで表す)との関係で表示する。フローボリューム曲線の第一の利点は,流量が特定の肺気量に対して妥当であるか否かを示せることにある。例えば,正常では肺気量が少ない場合,流量が少ないが,これは肺気量が少ないと弾性収縮力が弱いからである。肺線維症の患者では肺気量が低下するため,流量は単独で測定すると減少してみえる。しかしながら,肺気量の1機能として流量が示されると,実際には流量が正常より高いことが明らかになる(線維化した肺の特徴である弾性収縮力増大の結果である)。

フローボリューム曲線には完全な肺気量の測定が必要である。残念なことに,多くの施設では単にFVCに対して流量をプロットするにとどまっており,流量-FVC曲線には吸気時の曲線がないため,相応の情報が提供されない。

総論の参考文献

  1. 1.Baugh AD, Shiboski S, Hansel NN, et al.Reconsidering the Utility of Race-Specific Lung Function Prediction Equations [published correction appears in Am J Respir Crit Care Med 2022 Jul 15;206(2):230]. Am J Respir Crit Care Med 2022;205(7):819-829.doi:10.1164/rccm.202105-1246OC

  2. 2.Ekström M, Mannino D.Research race-specific reference values and lung function impairment, breathlessness and prognosis: Analysis of NHANES 2007-2012 [published correction appears in Respir Res 2023 Feb 3;24(1):41]. Respir Res 2022;23(1):271.Published 2022 Oct 1.doi:10.1186/s12931-022-02194-4

  3. 3.Bhakta NR, Bime C, Kaminsky DA, et al.Race and Ethnicity in Pulmonary Function Test Interpretation: An Official American Thoracic Society Statement. Am J Respir Crit Care Med 2023;207(8):978-995.doi:10.1164/rccm.202302-0310ST

  4. 4.Quanjer PH, Stanojevic S, Cole TJ, et al.Multi-ethnic reference values for spirometry for the 3-95-yr age range: the global lung function 2012 equations. Eur Respir J 2012;40(6):1324-1343.doi:10.1183/09031936.00080312

  5. 5.Bowerman C, Bhakta NR, Brazzale D, et al.A Race-neutral Approach to the Interpretation of Lung Function Measurements. Am J Respir Crit Care Med 2023;207(6):768-774.doi:10.1164/rccm.202205-0963OC

  6. 6.Stanojevic S, Kaminsky DA, Miller MR, et al.ERS/ATS technical standard on interpretive strategies for routine lung function tests. Eur Respir J 2022;60(1):2101499.Published 2022 Jul 13.doi:10.1183/13993003.01499-2021

  7. 7.Han MK, Agusti A, Celli BR, et al.From GOLD 0 to Pre-COPD. Am J Respir Crit Care Med 2021;203(4):414-423.doi:10.1164/rccm.202008-3328PP

異常パターン

最も一般的な呼吸器疾患は,流量と肺気量に基づいて閉塞性または拘束性に分類できる(の表を参照)。

表&コラム
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閉塞性障害

閉塞性障害では,流量,特にFEV1およびFVCの百分率で示されるFEV1(FEV1/FVC)が低下することを特徴とする。予測値と比較したFEV1の低下度合により,閉塞性障害の程度がわかる。閉塞性障害は以下の原因により引き起こされる:

  • 気道内腔の異常(例,腫瘍,分泌物,粘膜の肥厚)による気流への抵抗の増加

  • 気道壁の変化(例,平滑筋の収縮,浮腫)

  • 弾性収縮力の低下(例,肺気腫で生じる肺実質の破壊)

流量低下に伴い,呼気時間は通常より長くなり,不完全な呼出のために空気が肺内にとらえ込まれることがあり,これにより肺気量(例,TLC,RV)が増加する。

閉塞性疾患の最も一般的な例はCOPD喘息気管支拡張症である。

ERSおよびATSは,閉塞性肺疾患の重症度評価における肺機能検査の解釈に関するガイドラインを更新した(の表を参照)(1)。このガイドラインでは,重症度の評価において,スパイロメトリー,肺気量,および肺拡散能(DLCO)を含む全ての測定値を,予測値の百分率ではなく,zスコアで表すことを推奨している。zスコアが-1.645未満の場合は,値が健康対照に基づく予測値の5パーセンタイル未満であることを示す。また,このガイドラインでは,気管支拡張薬に対する反応の判定において(ベースライン値ではなく)個人の予測値に対する変化率を用いることを推奨しているほか,FEV1および/またはFVCの10%以上の改善を気道過敏症の基準として用いることを推奨している。

表&コラム
表&コラム

拘束性障害

拘束性障害は肺気量の減少,具体的にはTLCが正常下限を下回ること(zスコアが-1.65未満,これは健康対照に基づく予測値の5パーセンタイル未満に相当する)を特徴とする。しかしながら,早期の拘束性疾患では,TLCは(強い吸気努力の結果として)正常となる可能性があり,唯一の異常がRVの減少である場合もある。TLCの減少が拘束の重症度を決定する。肺気量の減少は流量の低下をもたらす(FEV1の低下)。しかしながら,肺気量に対する流量が増加するため,FEV1/FVC比は正常または増加する。

拘束性障害は以下の原因によって引き起こされる:

  • 肺気量の喪失(例,葉切除)

  • 肺周囲の構造異常(例,胸膜疾患,脊柱後弯症,肥満)

  • 吸気筋の筋力低下(例,神経筋疾患)

  • 肺実質の異常(例,肺線維症

全てに共通する特徴は,肺,胸壁,またはその両方のコンプライアンスの低下である。

異常パターンに関する参考文献

  1. 1.Stanojevic S, Kaminsky DA, Miller MR, et al.ERS/ATS technical standard on interpretive strategies for routine lung function tests. Eur Respir J 2022;60(1):2101499.Published 2022 Jul 13.doi:10.1183/13993003.01499-2021

  2. 2.Coates AL, Wanger J, Cockcroft DW, et al.ERS technical standard on bronchial challenge testing: general considerations and performance of methacholine challenge tests. Eur Respir J 2017;49(5):1601526.Published 2017 May 1.doi:10.1183/13993003.01526-2016

  3. 3.Parsons JP, Hallstrand TS, Mastronarde JG, et al.An official American Thoracic Society clinical practice guideline: exercise-induced bronchoconstriction. Am J Respir Crit Care Med 2013;187(9):1016-1027.doi:10.1164/rccm.201303-0437ST

気管支誘発試験

気管支誘発試験は,喘息などの病態を診断するために用いられ,特にスパイロメトリーは正常であるが,気道過敏性が疑われる場合に行われる。検査は,メサコリン吸入,運動のほか,常温もしくは冷気を用いたeucapnic voluntary hyperventilation(EVH)により行うことができる。

一部の喘息患者では増悪期間の合間に,正常な肺機能および正常なスパイロメトリーの値を示すことがある。スパイロメトリーの結果が正常であるにもかかわらず喘息の疑いが高く残る場合は,非特異的な気管支刺激物であるアセチルコリンの合成アナログのメサコリンを用いた気管支誘発試験が適応となり,これにより気管支収縮を検出または除外する。メサコリン吸入試験では,ベースライン時とメサコリンを増量させながらの吸入後に,スパイロメトリーのパラメータを測定する。FEV1を20%低下させるメサコリンの用量をPD20と呼ぶ。施設によって気道過敏性の定義は異なるが,一般には,FEV1がベースラインより少なくとも20%低下した時のメサコリンの吸入用量(PD20)が < 25μgの患者では気管支反応性の上昇を診断し,PD20 > 400μgであればこの診断を除外するとされる。PD20の値が25~400μgの範囲にある場合は結論は得られない(1)。

運動負荷試験は運動誘発喘息の検出に用いられることがあるが,一般的な気道過敏症の検出においてはメサコリン吸入試験より感度が低い。運動負荷試験では,予測最大心拍数の80%の心拍数が得られるように運動強度を選択し,トレッドミルまたは自転車エルゴメーターに乗って一定のレベルの運動を6~8分間行う。FEV1とFVCを,運動前および運動後5,15,30分経過時に測定する。運動誘発性気管支攣縮では,運動後のFEV1またはFVCが10~15%以上低下する(2)。

運動誘発喘息の診断には,EVHも用いられることがある。EVHでは,5%二酸化炭素および21%酸素の混合ガスを最大自発呼吸の85%の強度で6分間過換気させる。その後,一定の間隔を置いてFEV1を複数回測定する。その他の気管支吸入試験と同様,運動誘発性気管支攣縮を診断するFEV1の低下量は施設によって異なる。

寒冷による過敏性は同様の検査で評価できるが,この検査では患者に混合ガスを-10~-20℃に冷却して3~6分間過換気させる。この検査には特別な冷却設備が必要であり,どこの検査室でもこの設備が利用可能というわけではない。

気管支誘発試験に関する参考文献

  1. 1.Coates AL, Wanger J, Cockcroft DW, et al.ERS technical standard on bronchial challenge testing: general considerations and performance of methacholine challenge tests. Eur Respir J 2017;49(5):1601526.Published 2017 May 1.doi:10.1183/13993003.01526-2016

  2. 2.Parsons JP, Hallstrand TS, Mastronarde JG, et al.An official American Thoracic Society clinical practice guideline: exercise-induced bronchoconstriction. Am J Respir Crit Care Med 2013;187(9):1016-1027.doi:10.1164/rccm.201303-0437ST

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