作業関連喘息

(職業性喘息)

執筆者:Carrie A. Redlich, MD, MPH, Yale Occupational and Environmental Medicine Program Yale School of Medicine;
Efia S. James, MD, MPH, Bergen New Bridge Medical Center;Brian Linde, MD, MPH, Stanford University
Reviewed ByRichard K. Albert, MD, Department of Medicine, University of Colorado Denver - Anschutz Medical
レビュー/改訂 2023年 10月 | 修正済み 2023年 11月
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作業関連喘息には職業性喘息と作業増悪性喘息の両方が含まれる。職業性喘息は,職場でのアレルゲンまたは刺激物への曝露によって引き起こされる新規発症の喘息であり,さらに感作物質誘発性または刺激物質誘発性に分類される。作業増悪性喘息とは,既存の喘息が職場での条件(極端な温度,塵埃,洗浄剤,湿気の多い環境,環境アレルゲンなど)により悪化するものである。作業関連喘息の症状としては,呼吸困難,喘鳴,咳嗽などがあり,ときに上気道のアレルギー症状がみられる。診断は主に職業歴に基づき,従事している活動,職場における曝露,仕事と症状との時間的関連の評価などを行う。治療としては,曝露量の低減(および必要であれば除去),必要に応じて抗喘息薬の投与,および綿密なモニタリングを行う。

環境性および職業性肺疾患の概要ならびに喘息も参照のこと。)

成人発症喘息の約15%は職業曝露に起因する(1, 2)。喘息がみられる成人では,常に作業関連喘息を疑うべきであり,特に喘息が新たに発症した場合や悪化した場合には強く疑う。

喘息を引き起こしたり増悪させたりする複数の刺激物やアレルゲンが職場に存在することはよくある。具体的な原因物質(例,洗浄剤,ヘアケア製品)を同定することはしばしば困難であるが,通常は不要である。しかしながら,作業関連喘息を,上気道の刺激感,声帯機能不全過敏性肺炎慢性気管支炎など,職場に関連した他の気道疾患と鑑別することが重要である。

作業関連喘息は,誘因となる刺激物やアレルゲンへの曝露がなくなった後も症状を引き起こし続けることがある。

感作物質誘発職業性喘息

感作物質誘発職業性喘息は,職場で曝露した高分子量または低分子量の感作物質に対する免疫応答に続いて発症する。高分子量アレルゲンの例としては,穀物粉塵,ラテックス,洗浄剤製造業および製パン業で使用されるタンパク質分解酵素,動物アレルゲンなどがある。低分子量物質には,化学物質(例,イソシアネート,エポキシ樹脂),医薬品(例,ペニシリン系,テトラサイクリン),金属(例,白金塩,ニッケル),木材粉塵(例,ベイスギ)などがある。職場では何百種類もの物質が喘息を引き起こす可能性がある。

免疫を介した機序には,職場の誘因に対するIgE介在性および非IgE介在性の過敏反応の両方が関与する。感作物質誘発職業性喘息を発症するリスクは,職業および職場で使用される物質の種類によって異なる。さらに,曝露量は初期感作における1つの因子であり,また,アトピーは高分子量抗原に対する重要な危険因子である(3)。

刺激物への曝露および反応性気道機能不全症候群(RADS)

刺激物質誘発職業性喘息とは,職場で呼吸器刺激物質に曝露した後に発生する喘息を指す。感作物質誘発職業性喘息の免疫を介した機序とは対照的に,刺激物質誘発職業性喘息の発生機序は細胞の損傷および炎症によるものである。職場での事故や化学物質の流出などで大量の刺激物に曝露すると,反応性気道機能不全症候群(reactive airways dysfunction syndrome:RADS)が発生する可能性がある。

RADSとは,既知の刺激物に大量に曝露してから24時間以内に新たに発症した喘息症状を指す。その他のRADSの基準としては,気道過敏性と一致する肺機能検査所見,3カ月以上症状が持続すること,症状を説明するための喘息または他の肺疾患の既往がないことなどがある。

刺激物質誘発職業性喘息には,RADSのほか,中等度の量の刺激物に慢性的に曝露している労働者に発症する喘息も含まれる。洗浄剤や消毒薬などの刺激物に少量ずつ慢性的に曝露した後に喘息が発症したとする症例報告や症例集積研究が増えている(4)。

作業増悪性喘息

作業増悪性喘息とは,職場に特異的な刺激物によって引き起こされるものではなく,職場での喘息の誘因によって悪化する既存の喘息のことである。喘息を増悪させうる職業曝露には,極端な温度,湿度の高い環境や湿気の多い環境,塵埃,洗浄剤などがある。患者は職場で,喘息を増悪させる可能性のある一般的な環境アレルゲンに曝露することもある。作業増悪性喘息の症状の時間的パターンは曝露のパターンに依存し,改装工事などの特異的な曝露の場合には一過性となることもあれば,曝露が通常の業務中に発生する場合には日常的となることもある(5)。

総論の参考文献

  1. 1.Blanc PD, Annesi-Maesano I, Balmes JR, et al: The Occupational Burden of Nonmalignant Respiratory Diseases.An Official American Thoracic Society and European Respiratory Society Statement.Am J Respir Crit Care Med 2019;199(11):1312-1334.doi: 10.1164/rccm.201904-0717ST

  2. 2.Hoy R, Burdon J, Chen L, et al.Work-related asthma: A position paper from the Thoracic Society of Australia and New Zealand and the National Asthma Council Australia. Respirology 2020; 25(11):1183-1192.doi:10.1111/resp.13951

  3. 3.Laditka JN, Laditka SB, Arif AA, Hoyle JN.Work-related asthma in the USA: nationally representative estimates with extended follow-up. Occup Environ Med 2020; 77(9):617-622.doi:10.1136/oemed-2019-106121

  4. 4.Lemiere C, Lavoie G, Doyen V, Vandenplas O.Irritant-Induced Asthma. J Allergy Clin Immunol Pract 2020; 10(11):2799-2806. doi:https://dx.doi.org/10.1016/j.jaip.2022.06.045

  5. 5.Maestrelli P, Henneberger PK, Tarlo S, et al.Causes and Phenotypes of Work-Related Asthma. Int J Environ Res Public Health 2020; 17(13):4713. doi:https://dx.doi.org/10.3390/ijerph17134713

作業関連喘息の症状と徴候

職場での物質への感作によって引き起こされる作業関連喘息の症状は,典型的には数週間から数年の潜伏期間を経て発現する。一旦感作されると,その物質に対して非常に低濃度でも反応が起こる可能性があり,感作が生じた労働者にとって曝露対策は容易ではなくなる。

典型的な症状としては,息切れ,胸部圧迫感,喘鳴,咳嗽などがあり,これらには仕事との時間的関連性がある。鼻炎および結膜症状は,高分子量アレルゲンでより多くみられ,典型的な喘息症状が現れる数カ月または数年前に現れることがある。

典型的には,感作物質への曝露後に職場で症状が出現および/または悪化し,仕事が休みの日(例,週末および休日)には改善する。遅発性喘息反応(曝露から4~6時間以上経過してから始まる症状)は,低分子量物質でよくみられ,仕事との関連性を認識することが困難になることがある。職場での曝露が続くと,症状はより慢性的かつ持続的になり,仕事との関連性が不明瞭になる可能性がある。

作業関連喘息の診断

  • 喘息の診断を明確にする(肺機能検査を含む)

  • 喘息に関連する職業曝露を同定する

  • 喘息と仕事の時間的関係を明確にする

喘息が新たに発症した成人や悪化した成人では,常に作業関連喘息を考慮すべきである。仕事が休みの日(例,週末や休日)に喘息症状が改善する場合は,作業関連喘息を疑うべきである。症状の悪化または仕事に関連した抗喘息薬の使用増加がみられる場合も,追加検査を速やかに行うべきである。作業関連喘息の診断は雇用に影響を及ぼす可能性があるため,喘息の診断,既知または疑われる原因物質,および仕事との関連性の根拠を記録することが重要である。

医師は,喘息の典型的な症状ならびに吸入気管支拡張薬およびコルチコステロイドに対する反応の臨床的改善に注意すべきである。

スパイロメトリーで気流閉塞の変動が認められる場合は,喘息の診断を確定する上でスパイロメトリーが役立つことがあり,これは吸入気管支拡張薬の使用後に1秒量(FEV1)が改善することで最もよく示される。喘息治療後または誘因となる曝露の回避後にスパイロメトリーの結果が改善し,呼気一酸化窒素濃度が上昇する場合も,喘息の診断が裏付けられる。

喘息は気流閉塞の変動を特徴とするため,喘息患者の多くは,無症状のときや治療中はスパイロメトリーの結果が正常である。スパイロメトリーが正常で,吸入気管支拡張薬に反応しない場合でも,喘息の診断は除外されず,特に患者が抗喘息薬を使用している場合や無症状の場合はなおさらである。

喘息の記録がない患者において職業に関連した呼吸器症状がある場合は,声帯機能不全,上気道刺激,過敏性肺炎慢性閉塞性肺疾患(COPD),慢性気管支炎など,職業に関連した別の病態を有している可能性がある。他の診断を除外するために検査が必要になることがある。

喘息の診断を明確にした後,医師は喘息症状が現れるタイミングと喘息の発症および進行を患者の仕事と関連づけて記録し,また職場以外での喘息の誘因への曝露についても記録すべきである。役職,業種,業務内容,労働環境や使用材料の説明など,詳細な職業歴を聴取すべきである。喘息は時間とともにより非特異的となるため,原因因子を同定する際には,患者の現在の症状を評価することに加えて,医師は患者の喘息がいつ始まったか,および/または悪化したかに焦点を置くべきであり,特に患者がもはや問題の職場にいない場合には注意が必要である。

喘息を引き起こしうる刺激物やアレルゲンを同定するために,安全データシートが使用されることがあり,これは米国の全ての職場で作成が義務づけられている。ただし,既知の刺激物が安全データシートに記載されていない場合であっても,作業関連喘息の診断が除外されるわけではない。特定の動物や穀物など,市販のアレルギー検査が利用できる少数の喘息原因物質については,アレルギー検査が原因物質の同定に役立つことがあるが,偽陰性および偽陽性となる可能性もある。

職業曝露とそれ以外の曝露の特徴が明らかになったら,患者の症状と仕事との関係を評価して記録することが重要である。職場および職場以外でのピークフローの連続的な測定,職場および職場以外での吸入器の使用の変化,ならびにアレルギー検査によって,診断の確実性を高めることができる。患者が喘息の原因となった職場を離れてしまうと,作業関連喘息の診断はより困難になる。したがって,患者が重度の症状を呈していない限り,作業関連喘息の可能性のある診断を評価している間は,患者を職場から離脱させないことが一般的に望ましい。

作業増悪性喘息

作業増悪性喘息の診断は,既存の喘息の病歴(症状,病歴,薬剤の使用,気流閉塞の変動)および職場で喘息を増悪させる条件の有無(一般的な刺激物,アレルゲン,極端な温度や湿度,および身体活動などに伴って喘息症状および/または吸入器使用が増加する)に基づく。仕事に関連した喘息の悪化は,症状の悪化,喘息症状による受診頻度の増加,抗喘息薬の使用量の増加,またはまれに仕事に関連した肺機能(ピークフロー,スパイロメトリー)の悪化に注目することで確認できる。治まっていた喘息の再発が新たな作業関連喘息の発症となる場合がある。

作業関連喘息の治療

  • 曝露の排除

  • 喘息に対する薬物療法

  • 職場の改修または変更

作業関連喘息の薬物療法は,他の病型の喘息に対するものと同様である。全ての病型の作業関連喘息では,職場および家庭において誘因となる曝露や条件を最小限に抑えるべきである。喘息症状の悪化および薬剤使用の増加がないか患者をモニタリングすべきである。

感作物質誘発職業性喘息の患者は,一旦感作されると,空気中の物質に対し極めて低レベルの曝露で反応するようになる可能性がある。そのため,推奨される管理方針は,感作物質を特定することおよびその物質へのさらなる曝露を完全に回避することである。完全な離職では社会経済的に大きな影響が生じる可能性があることから,同じ職場の別の作業場への移動や工学的対策の改善がときに試みられる。感作物質への曝露が継続する可能性がある状況では,症状,薬剤の使用状況および肺機能を含め,喘息の悪化がないか綿密にモニタリングすることが不可欠である。感作物質を早期に発見して迅速に除去することがより良好な結果をもたらすが,喘息は一般的に感作物質を回避しても持続する。

刺激物質誘発職業性喘息および作業増悪性喘息の患者に対しては,誘因となる曝露や条件を減少させるための十分な対策が講じられれば,労働者がその仕事を継続できることが期待される。具体的な対策としては,刺激物への曝露に対する工学的対策の改善や,高温または低温の部屋での作業など特定の作業や場所を回避するための配慮などが挙げられる。喘息の症状とコントロールを定期的にモニタリングすることが重要である。喘息が仕事中に悪化した場合は,雇用の変更を含め,仕事のさらなる改善が必要になることがある。標準的な喘息治療(薬物療法,家庭や環境の誘因を最小限に抑えることなど)が推奨される。

感作物質誘発性および刺激物質誘発性の喘息はいずれも,原因となる曝露を回避しても一般的に持続し,患者には抗喘息薬の長期使用が必要になることがある。医師は仕事に関する推奨を行う前に,作業関連喘息の診断および具体的な原因因子を記録すべきである。

作業関連喘息の予防

作業関連喘息を適時に認識することが,喘息のさらなる予防に重要な役割を果たす。職業性喘息の症例が職場で同定された場合,医師は他の労働者が曝露する可能性を考慮すべきである。職場および公衆衛生当局との連携は,その職場の労働者の健康への悪影響を防止するためのさらなる評価および取組みを促進する。換気やその他の工学的対策といった労働衛生対策を講じることなどにより,職業性感作物質および刺激物への曝露を低減または排除することが,新規症例の予防に役立つ。

要点

  • 喘息が新たに発症した成人や悪化した成人では,常に作業関連喘息を考慮すべきである。

  • 診断は,喘息の診断を明確にすること,喘息に関連する職場での曝露を同定すること,および喘息と仕事の時間的関係を明確にすることから成る。

  • 職場および家庭において誘因となる曝露や条件を可能な限り最小限に抑えるべきである。

  • 作業関連喘息の薬物療法は,他の病型の喘息に対する治療と同様である。

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