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狭心症

執筆者:

Ranya N. Sweis

, MD, MS, Northwestern University Feinberg School of Medicine;


Arif Jivan

, MD, PhD, Northwestern University Feinberg School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 12月
本ページのリソース

狭心症とは,梗塞を伴わない一過性の心筋虚血によって前胸部に不快感または圧迫感が生じる臨床症候群である。狭心症は典型的には労作または精神的ストレスにより増悪し,安静またはニトログリセリンの舌下投与により軽快する。診断は症状,心電図,および心筋イメージングによる。治療法としては,抗血小板薬,硝酸薬,β遮断薬,カルシウム拮抗薬,ACE阻害薬,スタチン系薬剤,冠動脈形成術または冠動脈バイパス術などがある。

冠動脈疾患の概要も参照のこと。)

病因

狭心症は以下の場合に起こる:

  • 心仕事量および心筋の酸素需要が冠動脈の十分な酸素化血液供給を上回る

このような供給と需要の不均衡は,動脈が狭小化すると生じる可能性がある。狭小化は冠動脈に動脈硬化が生じることで起きるのが通常であるが,冠動脈攣縮やまれに冠動脈塞栓によっても生じうる。冠動脈の急性血栓症は,閉塞が部分的または一過性の場合には狭心症を引き起こすことがあるが,通常は急性心筋梗塞を引き起こす。

心筋酸素需要は主に心拍数,収縮期の壁張力,および収縮性により決定されるため,冠動脈の狭小化は,典型的には労作時に発生して安静により軽快する狭心症を引き起こす。

心仕事量は,労作のほか,高血圧大動脈弁狭窄症大動脈弁逆流症肥大型心筋症などの疾患により増加する可能性がある。そのような場合,動脈硬化の有無にかかわらず狭心症が発生しうる。また,これらの疾患では心筋重量が増加する(それにより拡張期血流量が減少する)ため,心筋灌流量が相対的に低下することもある。

酸素供給量の減少(重度の貧血または低酸素症などでみられる)は狭心症の誘発または増悪につながりうる。

病態生理

狭心症は以下のように分けられる:

  • 安定

  • 不安定

安定狭心症では通常,仕事量または酸素需要と虚血との関係が比較的予測しやすい。

不安定狭心症とは,臨床的に悪化する狭心症(例,安静時の狭心症,頻度や重症度の増悪)である。

動脈硬化による動脈内腔の狭小化は完全に固定されたものではなく,全ての人にみられる正常な動脈緊張の変動に伴って変化する。したがって,狭心症は動脈緊張が比較的高まる朝方に発症することが多い。また,内皮機能の異常が動脈緊張の変動の一因となることもあり,例えば,アテロームによる傷害を受けた内皮では,カテコールアミンの急上昇による負荷が血管拡張(正常な反応)ではなく血管収縮を引き起こす。

心筋が虚血に陥ると,冠静脈洞血pHの低下,細胞内カリウムの喪失,乳酸の蓄積,心電図異常の出現,および心室機能(収縮期および拡張期の両方)の悪化がみられる。狭心症の発生中には,通常は左室拡張期圧が上昇し,ときに肺うっ血と呼吸困難を誘発する。虚血により不快感が生じる正確な機序は不明であるが,低酸素状態で生じた代謝物による神経刺激が関与していると考えられる。

症状と徴候

狭心症では,ほとんど気にならない漠然とした痛みのみのこともあれば,前胸部が押しつぶされるような重度の強い感覚が急激に生じることもある。狭心症が「痛み」として表現されることはまれである。 不快感が生じる部位は様々であるが,胸骨の裏側が最も一般的である。不快感は左肩から左腕内側を下方に放散し,ときに指まで達することもあれば,直接背部に放散したり,喉,顎,および歯に広がったり,ときには右腕内側を下方に放散することもある。上腹部に感じられる場合もある。狭心症の不快感が耳より上または臍より下で発生することはない。

非典型的な狭心症(例,腹部膨満,ガス,腹部不快感)を示す患者もいる。そうした患者は,しばしば症状を消化器の異常によるものと考え,げっぷにより症状が軽快するように感じることもある。急激かつ可逆性の左室充満圧の上昇により呼吸困難を示す患者もおり,しばしば虚血を伴う。患者の説明はしばしば不正確であり,問題が狭心症なのか,呼吸困難なのか,またはその両方なのかの見極めが困難なことがある。虚血症状は消失するまでに1分以上かかるため,ごく短時間で消失する感覚が狭心症を反映していることはまれである。

狭心症の発作と発作の間には,さらには発作中でも,身体所見が正常となることがある。しかしながら,通常の発作時には,心拍数は軽度に上昇することがあり,血圧はしばしば上昇し,心音はより小さくなり,心尖拍動がより広範に聴取される。虚血発作時は左室駆出が延長するため,II音が奇異性となることがある。IV音はよく聴取され,III音が発生することもある。虚血により局所的な乳頭筋機能不全が生じ,僧帽弁逆流が発生している場合には,収縮中期または後期に心尖部雑音,振戦(吹鳴様であるが特に大きくはない)がみられることがある。

狭心症は典型的には労作または強い感情が引き金となり,通常,持続時間は数分以内で,安静により消失する。労作に対する反応は通常,予測可能であるが,一部の患者では,動脈緊張の変動のため,ある日に耐えられた運動で翌日には狭心症が誘発されることがある。食後の労作や寒冷な気象条件下の労作は症状を増悪させ,風に向かって歩いたり,暖かい部屋から出て冷たい空気に触れたりすることでも,発作が誘発されることがある。症状の重症度は,狭心症をもたらす労作の程度により分類されることが多い(狭心症のCanadian Cardiovascular Society分類の表を参照)。

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狭心症のCanadian Cardiovascular Society分類

クラス

胸痛を誘発する活動

1

激しい,速い,または長時間の労作

通常の身体活動(例,歩行,階段昇降)で誘発されない

2

早足で歩く

坂道を歩いて上る

階段を速く昇る

食後に歩くまたは階段を昇る

寒冷

精神的ストレス

3

通常のペースで平坦な道を1~2ブロック歩く

1階分でも階段を昇る

4

あらゆる身体活動

ときに安静時に発生する

Adapted from Braunwald E, Antman EM, Beasley JW, et al: ACC/AHA Guidelines for the management of patients with unstable angina and non-ST segment elevation myocardial infarction: A report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines (Committee on the management of patients with unstable angina).Journal of American College of Cardiology 36:970–1062, 2000.

発作は1日数回のこともあれば,無症状の間隔が数週間,数カ月,あるいは数年続くこともある。発作の頻度が増加していき(漸増性狭心症[crescendo angina]と呼ばれる),心筋梗塞や死に至ることもあるが,冠循環に十分な側副血行路が発達する場合,虚血領域に梗塞が生じる場合,または心不全もしくは間欠性跛行を併発して活動が制限される場合には,次第に発作回数が減少ないし消失することもある。

夢により呼吸,脈拍数,血圧に著しい変化が生じる場合には,夜間狭心症が起きることがある。夜間狭心症は,繰り返す左室不全の徴候であることもあり,夜間呼吸困難と同様である。臥位では静脈還流が増加し,心筋の伸展および壁張力が増大するため,酸素需要が増加する。

安静時狭心症は,安静時に自然に発生する狭心症である。安静時狭心症は通常,心拍数のわずかな上昇と,ときに血圧の著明な上昇を伴い,それにより酸素需要が増加する。これらの上昇は,安静時狭心症の原因である可能性もあれば,プラーク破綻と血栓形成により誘発された虚血の結果である可能性もある。狭心症が軽快しない場合,充足されていない心筋酸素需要がさらに増大することで,心筋梗塞の可能性が高まる。

不安定狭心症

患者毎の狭心症の特徴は予測可能であるのが通常であるため,いずれの変化(すなわち,安静時狭心症,新たに発症した狭心症,増悪していく狭心症)も重篤と考えるべきであり,とりわけ狭心症が重症(すなわち,Canadian Cardiovascular Society分類のクラス3または4)の場合は特に重要である。このような変化は不安定狭心症と呼ばれ,迅速な評価と治療が必要である。

無症候性心筋虚血

冠動脈疾患患者(特に糖尿病患者)では,無症状の心筋虚血が生じることがある。無症候性心筋虚血はときに,負荷試験や24時間ホルター心電図検査の施行中に一過性かつ無症候性のST-T異常として明らかになることがある。核医学検査では,ときに身体的または精神的ストレスを負荷した際に無症候性の心筋虚血を記録できることがある。無症候性心筋虚血と狭心症が併存することもあるが,これらは異なる時間に発生する。予後は冠動脈疾患の重症度に依存する。

診断

  • 典型的な症状

  • 心電図検査

  • 心電図または画像検査(心エコー検査,核医学検査,またはMRI)を用いた負荷試験

  • 有意な症状または負荷試験の陽性所見に対する冠動脈造影

典型的な胸部不快感がみられ,それが労作により誘発され,安静により軽快する場合,狭心症を疑う。病歴に冠動脈疾患の有意な危険因子が認められれば,報告された症状の重要性が高まる。胸部不快感が20分を超えて持続するか安静時に起こる患者と,失神または心不全がみられる患者には,急性冠症候群に対する評価を行う。

胸部不快感は,たとえ冠血流量が損なわれていない場合でも,消化管疾患(例,胃食道逆流食道痙攣消化不良胆石症),肋軟骨炎,不安パニック発作,過換気,その他の心疾患(例,大動脈解離心膜炎僧帽弁逸脱上室頻拍心房細動)などにより生じることがある。

心電図検査を常に施行する。より特異度の高い検査には,心電図または心筋イメージング(例,心エコー検査,核医学検査,MRI)による負荷試験と冠動脈造影などがある。非侵襲的検査をまず考慮する。

心電図検査

典型的な労作性症状がみられる場合は,心電図検査の適応となる。狭心症は安静により速やかに消失するため,負荷試験以外で発作中に心電図検査を施行できることはめったにない。

心電図検査が狭心症発作中に行われた場合,可逆的な以下の虚血性変化がみられる可能性が高い:

  • T波とQRSベクトルの不一致

  • ST低下(典型的):

  • ST上昇

  • R波減高

  • 心室内または脚伝導異常

  • 不整脈(通常は心室性期外収縮)

典型的な狭心症の病歴を有する患者では,たとえ広範な3枝病変がある場合でも,非発作時の安静時心電図(および通常は左室機能)は約30%で正常となる。残り70%の患者の心電図では,過去の梗塞または肥大の所見か非特異的なST部分およびT波(ST-T)の異常が認められる。安静時心電図の異常のみでは,診断を確定することも除外することもできない。

負荷試験

診断を確定し,重症度を評価し,患者ごとに適切な運動水準を決定し,予後予測の参考にするために,負荷試験が必要である。臨床診断あるいは暫定診断が不安定狭心症の場合,早期の負荷試験は禁忌である。

運動負荷心電図検査は,患者の安静時心電図所見が正常で,運動ができる場合に行われる。狭心症を示唆する胸部不快感がみられる男性では,負荷心電図検査の特異度は70%,感度は90%である。女性では感度は同程度であるが,特異度はより低く,55歳未満の女性では特に低い(70%未満)。しかしながら,女性は男性と比べて,冠動脈疾患がある場合に安静時心電図が異常となる可能性が高い(32%対23%)。運動負荷心電図検査は,感度は適度に高いが,重度の冠動脈疾患を(左主幹部または3枝病変でさえ)見逃すことがある。症状が典型的でない患者で負荷心電図が陰性となった場合は,通常,狭心症および冠動脈疾患は除外される;陽性の結果は冠動脈虚血を反映していることもあれば,そうでないこともあるため,さらなる検査が必要であることを意味する。

負荷心電図検査ではST変化の偽陽性がよくみられるため,安静時心電図が異常である場合には心筋イメージングによる負荷試験が行われる。運動または薬物負荷(例,ドブタミンまたはジピリダモールの注入)を選択できる。画像検査の選択肢には,負荷心エコー検査,単一光子放出型CT(SPECT)または陽電子放出断層撮影(PET)による心筋血流イメージング,負荷MRIなどがある。画像検査の選択は,各施設での利用可能性と経験に依存する。画像検査は左室機能および負荷に対する反応を調べるのに役立ち,虚血領域,梗塞領域,およびバイアビリティのある組織を同定し,リスクの高い心筋の部位および範囲を決定することができる。負荷心エコー検査では,虚血により誘発された僧帽弁逆流も検出できる。

血管造影

冠動脈造影は冠動脈疾患の診断における標準検査であるが,必ずしも診断確定に必須というわけではない。その主な適応は,血行再建術(経皮的冠動脈インターベンション[PCI]または冠動脈バイパス術[CABG])が考慮されている際に,冠動脈病変の位置を同定し,重症度を評価することである。労働上または生活習慣上の必要性(例,仕事またはスポーツ活動の中止)について助言する上で冠動脈の解剖の情報が必要である場合も,血管造影の適応となりうる。血管造影所見は冠動脈病変の血行動態上の重要性を直接的に示すものではないが,内腔の径が70%を超えて減少している場合は,その閉塞は生理学的に有意であると判定される。この内径の減少は,攣縮または血栓症が併発していない限り,狭心症の存在とよく相関する。

血管内超音波検査では冠動脈構造の画像が得られる。カテーテル先端に取り付けられた超音波プローブを血管造影時に冠動脈に挿入する。この検査からは,冠動脈の解剖に関する情報が他の検査より多く得られ,病変の性質が不明の場合,または疾患の見かけの重症度が症状の重症度と一致しない場合に適応となる。血管形成術と併用することにより,ステントの至適な留置を確実にする一助となる。

圧または流量センサー付きのガイドワイヤーを使用すれば,狭窄部の血流量を推定することができる。血流量は冠血流予備量比(FFR)として表されるが,これは正常な最大血流量に対する狭窄部の最大血流量の比である。これらの血流量の測定は,重症度に疑問のある病変(40~70%狭窄)がある患者で,血管形成またはCABGの必要性を評価する場合に最も有用である。FFRは1.0が正常とされ,0.75~0.8未満は心筋虚血との関連がみられる。FFRが0.8を上回る病変では,ステント留置術が有益となる可能性がやや低くなる。

画像検査

安静時の画像検査により冠動脈を評価できる。

電子線CTでは,冠動脈プラーク内のカルシウムの量を検出できる。カルシウムスコアは,その後の冠動脈イベントのリスクとおおまかに比例する。しかしながら,有意な狭窄がない状況でカルシウムが存在する場合もあることから,カルシウムスコアは血管形成術またはCABGの必要性とは良好な相関を示さない。このため,American Heart Associationは,電子線CTによるスクリーニングは特定の患者集団のみに実施するべきであって,病歴および臨床データと組み合わせて死亡または非致死的心筋梗塞のリスクを推定する場合に最も有用になると推奨している(1)。そのような患者集団としては,10年ASCVDリスクの推定値が中程度(10~20%)である無症状の患者や,負荷試験の結果が不確かで症状を呈する患者などが考えられる。電子線CTは,救急診療部を受診し,非定型の症状がみられ,トロポニン値が正常で,血行動態的に有意な冠動脈疾患の可能性が低い患者において,有意な冠動脈疾患を除外する上で特に有用である。このような患者には外来診療として非侵襲的検査を施行することが可能である。

マルチスライスCTによる冠動脈造影は,冠動脈狭窄を正確に同定することが可能であり,いくつかの長所がある。この検査は非侵襲的で,冠動脈狭窄を高い精度で除外することが可能であり,ステントやバイパスグラフトの開存性を確認でき,心臓および冠静脈の解剖的構造を示すことができ,石灰化および非石灰化プラークの量を評価することができる。しかしながら,放射線被曝量が有意であり,心拍数65/分を超える患者,不整な心拍を呈する患者,妊娠中の女性には適していない。また,患者が検査中3~4回にわたり15~20秒間の息止めを行えなければならない。

マルチスライスCTによる冠動脈造影の適応は拡大を続けており,以下のものが含まれる:

  • 症状のない高リスク患者,非典型的もしくは典型的な狭心症がみられるが運動負荷試験の結果が確定的でないか実施が不可能である患者,または心臓以外の大手術を施行する必要がある患者

  • 侵襲的な冠動脈造影で主要冠動脈またはグラフトの位置を同定できなかった患者

心臓MRIは多くの心臓および大血管異常を評価する上で貴重な手段となっている。いくつかの手法により冠動脈疾患の評価に使用でき,これにより冠動脈狭窄の直接的な視覚化,冠動脈血流量の評価,心筋灌流および代謝の評価,負荷時の壁運動異常の評価,梗塞心筋と生存心筋の比較評価などを行える。

現時点での心臓MRIの適応には,心臓の構造および機能の評価,ならびに心筋バイアビリティの評価などがある。心臓MRI,特に負荷心筋パーフュージョンMRIおよび心筋血流定量解析は,冠動脈疾患が既知または疑われる患者における診断およびリスク評価にも適応となる場合がある。

診断に関する参考文献

予後

狭心症の望ましくない主な転帰は,不安定狭心症心筋梗塞,そして不整脈による突然死である。心筋梗塞の既往がなく,安静時心電図および血圧が正常の狭心症患者における年間死亡率は約1.4%である。しかしながら,冠動脈疾患を有する女性の予後は,より悪い傾向にある。収縮期高血圧がある場合の死亡率は約7.5%であり,心電図異常がある場合は8.4%,両方が存在する場合は12%である。2型糖尿病があると,それぞれの場合の死亡率が約2倍になる。

加齢,狭心症症状の重症化,器質的病変の存在,および心室機能の低下は予後を悪化させる。左冠動脈主幹部または左前下行枝近位部の病変は,特にリスクが高い。予後は罹患冠動脈の数および重症度と相関するが,安定狭心症患者の予後は,心室機能が正常であれば,3枝病変であっても,驚くほど良好である。

治療

  • 危険因子(喫煙,血圧,脂質)の是正

  • 抗血小板薬(アスピリンのほか,ときにクロピドグレル,プラスグレル,チカグレロル)

  • β遮断薬

  • 症状のコントロールのためにニトログリセリンおよびカルシウム拮抗薬

  • ACE阻害薬およびスタチン系薬剤

  • 薬物療法を行っても症状が持続する場合は血行再建術

可逆的な危険因子の是正をできる限り行う。喫煙者は禁煙すべきであり,2年以上の禁煙後には,心筋梗塞のリスクは喫煙経験のない者と同レベルまで低下する。軽度の高血圧でも心仕事量は増加するため,高血圧(冠動脈疾患の患者では > 130/80)は積極的に治療する。しばしば,減量のみで狭心症の重症度が軽減する。軽度の左室不全を治療することで,ときに狭心症が著明に軽減される。逆説的ではあるが,ジギタリスはときに狭心症を悪化させることがあり,これはおそらく心筋収縮性の亢進による酸素需要の増加,動脈緊張の亢進,またはその両方によるものと考えられる。総コレステロール値と低比重リポタンパク質(LDL)コレステロール値を積極的に低下させる治療(食事療法とスタチン系薬剤)は,冠動脈疾患の進行を遅延させ,一部の病変を退縮させることがあり,内皮機能の改善により負荷に対する動脈の反応を改善する。ウォーキングを重視した運動プログラムは,しばしば健康感を増進し,急性虚血イベントのリスクを低下させるとともに,運動耐容能を改善する。

狭心症治療薬

狭心症治療の主な目標は以下の通りである:

  • 急性症状を緩和する

  • 虚血を予防または低減する

  • 将来的な虚血イベントの発生を予防する

冠動脈疾患に対する薬剤の表も参照のこと。)

急性発作に対しては,ニトログリセリンの舌下投与が最も効果的な薬物療法である。

虚血の予防にはいくつかのクラスの薬剤が使用される:

  • 抗血小板薬:冠動脈疾患と診断されているか冠動脈疾患の発生リスクが高い全ての患者

  • β遮断薬:ほとんどの患者(禁忌があるか耐えられない場合を除く)

  • カルシウム拮抗薬および/または長時間作用型硝酸薬:必要であれば

抗血小板薬は血小板凝集を阻害する。アスピリンは血小板と不可逆的に結合し,さらにシクロオキシゲナーゼおよび血小板凝集を阻害する。その他の抗血小板薬(例,クロピドグレル,プラスグレル,チカグレロル)はアデノシン二リン酸による血小板凝集を阻害する。これらの薬剤は虚血イベント(心筋梗塞,突然死)のリスクを低減できるが,併用した場合に最も効果的となる。一方の薬剤に耐えられない患者には,もう一方を単剤で投与すべきである。

β遮断薬は症状を制限し,他の薬剤よりも梗塞および突然死の予防に優れている。β遮断薬は,心臓の交感神経刺激を遮断し,収縮期血圧,心拍数,収縮性,および心拍出量を低下させ,それにより心筋酸素需要を減少させ,運動耐容能を増大させる。β遮断薬は心室細動閾値も上昇させる。これらの薬剤には,ほとんどの患者がよく耐えられる。多くのβ遮断薬が使用可能でかつ効果的である。用量は,徐脈または有害作用により制限されるまで,必要に応じて漸増する。β遮断薬に耐えられない患者には,陰性変時作用をもつカルシウム拮抗薬(例,ジルチアゼム,ベラパミル)を使用する。β遮断薬に耐えられない可能性が高い患者(例,喘息患者)には,おそらく投与前後に薬剤性気管支攣縮を検出する肺機能検査を施行することで,心選択性β遮断薬(例,ビソプロロール)を試験的に投与することができる。

ニトログリセリンは強力な平滑筋弛緩薬であり,血管拡張薬である。その主な作用部位は,末梢血管系(特に静脈系ないし容量血管系)と冠血管にある。重度の動脈硬化を来した血管でも,アテロームのない部分は拡張する可能性がある。ニトログリセリンは収縮期血圧を下げ,全身の静脈を拡張させるため,心筋酸素需要の主要な決定因子である心筋壁張力を低下させる。急性発作に対して,または労作前の予防用としてニトログリセリンを舌下投与する。通常は,劇的な軽快が1.5~3分以内にみられ,約5分で完全に軽快し,その状態が最大30分まで持続する。症状の軽快が不十分な場合は,4~5分毎に3回まで反復投与することができる。狭心症発作時に直ちに使用できるようにするため,ニトログリセリンの錠剤またはエアゾルスプレーを患者に常時携帯させるべきである。薬効が失われないようにするため,錠剤は遮光ガラス製の密閉容器に保存させるべきである。この薬剤はすぐに劣化するため,頻回に少量ずつ入手させるべきである。

β遮断薬を最大用量まで増量しても症状が持続する場合は,長時間作用型硝酸薬(経口または経皮)を使用する。狭心症発作が発生する時間帯を予測できる場合は,それをカバーするように硝酸薬を使用させる。経口の硝酸薬には,二硝酸イソソルビド(硝酸イソソルビド)と一硝酸イソソルビド(二硝酸イソソルビドの活性代謝物)などがある。これらは1~2時間以内に効果を発揮し,4~6時間持続する。一硝酸イソソルビドの徐放性製剤は有効性が1日中維持されるようである。経皮投与については,主に軟膏は不便で汚れの原因となるという理由から,ニトログリセリン軟膏は大部分がニトログリセリンの経皮パッチに取って代わられている。パッチからはニトログリセリンが徐々に放出されるため,作用が長時間持続する;運動耐容量はパッチ貼付から4時間で改善され,18~24時間後には低下する。硝酸薬は耐性が生じることがあり,特に血漿中濃度が一定に保たれる場合に生じやすい。心筋梗塞のリスクは早朝に最も高くなるため,午後や夕方早めによく狭心症を発症する患者でない限り,これらの時間帯は硝酸薬を休薬とするのが妥当である。ニトログリセリンの場合は,休薬時間は8~10時間で十分のようである。イソソルビドでは12時間の休薬が必要なことがある。一硝酸イソソルビドの徐放性製剤は,1日1回投与であれば,耐性は生じないようである。

硝酸薬の使用にもかかわらず症状が持続する場合や患者が硝酸薬に耐えられない場合は,カルシウム拮抗薬を使用することができる。カルシウム拮抗薬は,高血圧または冠攣縮もみられる場合に特に有用である。カルシウム拮抗薬は種類によって作用が異なる。ジヒドロピリジン系薬剤(例,ニフェジピン,アムロジピン,フェロジピン)は変時作用がなく,陰性変力作用には大きな差がみられる。短時間作用型のジヒドロピリジン系薬剤は,反射性頻脈を引き起こすことがあり,冠動脈疾患患者では死亡率の上昇と関連しており,安定狭心症の治療に単剤で使用してはならない。ジヒドロピリジン系薬剤の長時間作用型製剤は頻拍作用がより少なく,β遮断薬との併用で最もよく使用されている。長時間作用型ジヒドロピリジン系薬剤の中では,アムロジピンが最も陰性変力作用が弱く,左室収縮機能障害のある患者に使用できる。他の種類のカルシウム拮抗薬であるジルチアゼムとベラパミルは,陰性変時作用と陰性変力作用を有する。これらの薬剤は,β遮断薬に耐えられない患者や左室収縮機能が正常な喘息患者に単剤で使用できるが,左室収縮機能障害のある患者では心血管死亡率を上昇させる可能性がある。

ラノラジン(ranolazine)は,慢性狭心症の治療に使用可能なナトリウムチャネル遮断薬である。ラノラジン(ranolazine)はQTc延長を引き起こす可能性もあるため,他の狭心症治療薬による至適な治療を行っても症状が持続する患者のみに使用されるのが通常である。ラノラジン(ranolazine)は,女性には男性ほど効果的ではない可能性がある。めまい,頭痛,便秘,および悪心が最も頻度の高い有害作用である。

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冠動脈疾患に対する薬剤*

薬剤

用量

用途

ACE阻害薬

ベナゼプリル

カプトプリル

エナラプリル

ホシノプリル(fosinopril

リシノプリル

モエキシプリル(moexipril

ペリンドプリル

キナプリル

ラミプリル

トランドラプリル

一定ではない

冠動脈疾患患者の全例,特に広範囲の梗塞,腎機能不全,心不全高血圧,または糖尿病がある患者

禁忌には,低血圧,高カリウム血症,両側腎動脈狭窄,妊娠,既知のアレルギーなどがある

アンジオテンシンII受容体拮抗薬

カンデサルタン

エプロサルタン(eprosartan

イルベサルタン

ロサルタン

オルメサルタン

テルミサルタン

バルサルタン

一定ではない

ACE阻害薬に耐えられない患者(例,咳嗽のため)に効果的な代替薬であるが,現在では心筋梗塞後の第1選択薬ではない

禁忌には,低血圧,高カリウム血症,両側腎動脈狭窄,妊娠,既知のアレルギーなどがある

抗凝固薬

アルガトロバン

350µg/kg(急速静注)に続いて25µg/kg/分(点滴静注)

ヘパリン起因性血小板減少症の既往が判明しているかその疑いがあるACS患者に対するヘパリンの代替薬として

ビバリルジン(bivalirudin

一定ではない

フォンダパリヌクス

2.5mgを24時間毎に皮下投与

アピキサバン

5mg,経口1日2回

非弁膜症性心房細動の患者に長期的に有用な可能性がある。

ダビガトラン

150mg,経口1日2回(P2Y12阻害薬を併用している患者には110~150mg,経口1日2回)

リバーロキサバン

20mg,経口1日1回(P2Y12阻害薬を併用している患者には15mg,経口1日1回)

低分子ヘパリン

  • ダルテパリン

  • エノキサパリン

  • チンザパリン

一定ではない

不安定狭心症またはNSTEMIの患者

テネクテプラーゼ(tenecteplase)の投与を受けている75歳未満の患者

ほぼ全てのSTEMI患者(ただしPCIの適応があり,90分以内に施行できる場合を除く)に対する未分画ヘパリンの代替薬として;PCIまたはCABGが施行されるか患者が退院するまで投与を継続する

未分画ヘパリン

60~70単位/kgを静注(最大5000単位;急速静注),その後12~15単位/kg/時(最大1000単位/時)で48時間またはPCIが完了するまで

不安定狭心症またはNSTEMIの患者に対するエノキサパリンの 代替薬として

アルテプラーゼ,レテプラーゼ(reteplase),またはテネクテプラーゼ(tenecteplase)を開始する際に60単位/kgを静注(最大4000単位;急速静注),その後12単位/kg/時(最大1000単位/時)で48時間またはPCIが完了するまで投与

緊急血管造影およびPCIを受けるSTEMI患者またはテネクテプラーゼ(tenecteplase)の投与を受けている75歳以上の患者

ワルファリン

INRが2.5~3.5に維持されるように経口用量を調節する

全身性塞栓症のリスクが高い患者(すなわち,心房細動,機械弁,静脈血栓塞栓症,凝固亢進疾患,または左室血栓のある患者)の一次予防に推奨される

出血リスクが低い場合,前壁無収縮(akinesis)または奇異性収縮(dyskinesis)がみられるSTEMI患者の一次予防に有用となる可能性がある

無症候性の壁在血栓のある患者に妥当

抗血小板薬

アスピリン

安定狭心症の場合75mgまたは81mg,経口,1日1回(腸溶錠)

アスピリンに耐えられないか禁忌がある場合を除き,全ての冠動脈疾患患者および冠動脈疾患の発生リスクが高い患者;長期投与する

ACSの場合:救急部門到着時に160~325mgを咀嚼服用(非腸溶性)で投与し,その後の入院中は1日1回,退院後は81mgを経口で1日1回長期投与する

クロピドグレル

75mg,経口,1日1回

アスピリンと併用するか,アスピリンに耐えられない患者には単剤投与する

PCIを受ける患者には,300~600mg,経口,1日1回,その後は75mg,経口,1日1回で1~12カ月

待機的PCIに対して,ベアメタルステントでは1カ月以上,薬剤溶出性ステントでは6~12カ月以上の維持療法が必要である

ACSに対して,12カ月以上の抗血小板薬2剤併用療法(通常はアスピリンを使用する)が推奨される(ステントの種類を問わない)

プラスグレル

60mgを経口で単回投与後,10mg,経口,1日1回

PCIを受けるACS患者のみ

血栓溶解療法とは併用しない

チカグレロル

PCIを受ける患者では,手技の開始前に180mgを経口で単回投与後,90mg,経口,1日2回

チクロピジン

250mg,経口,1日2回

好中球減少症のリスクがあるため,ルーチンに使用されることはまれであり,白血球数を定期的にモニタリングしなければならない

糖タンパク質IIb/IIIa阻害薬

アブシキシマブ

一定ではない

一部のACS患者,特にPCIによるステント留置を受ける患者と不安定狭心症またはNSTEMIがあり大きな塞栓負荷のある高リスク患者

投与はPCI実施中から開始し,以降6~24時間継続する

エプチフィバチド(eptifibatide

一定ではない

チロフィバン(tirofiban

一定ではない

β遮断薬

アテノロール

急性期は50mg,経口,12時間毎;長期投与は50~100mg,経口,1日2回

β遮断薬に耐えられないか禁忌がある場合を除き,全てのACS患者,特に高リスク患者;長期投与する。

通常の措置を講じても胸痛が続いている患者,頻脈が続いている患者,不安定狭心症または心筋梗塞の状態で高血圧がある患者には,β遮断薬を静注で使用してもよい。低血圧または血行動態の不安定性を示すその他の所見がある患者では,注意が必要である。

ビソプロロール

2.5~5mg,経口,1日1回,心拍数および血圧反応に応じて10~15mg,1日1回に増量

カルベジロール

25mg,経口,1日2回(心不全または他の血行動態不安定性を呈する患者では,開始量を1.625~3.125mg,1日2回の低用量とし,耐容性に応じて極めて緩徐に増量する)

メトプロロール

25~50mg,経口,6時間毎で48時間継続した後,100mg,1日2回または200mg,1日1回で長期投与する

カルシウム拮抗薬

アムロジピン

5~10mg,経口,1日1回

安定狭心症患者で,硝酸薬を使用しても症状が持続する場合,または硝酸薬に耐えられない場合

ジルチアゼム(徐放性)

180~360mg,経口,1日1回

フェロジピン

2.5~10mg,経口,1日1回

ニフェジピン(徐放性)

30~90mg,経口,1日1回

ベラパミル(徐放性)

120~360mg,経口,1日1回

スタチン系薬剤

アトルバスタチン

フルバスタチン

ロバスタチン

プラバスタチン

ロスバスタチン

シンバスタチン

一定ではない

冠動脈疾患の患者には,最大忍容用量のスタチン系薬剤を投与すべきである

硝酸薬:短時間作用型

ニトログリセリンの舌下投与(錠剤またはスプレー剤)

0.3~0.6mg,4~5分毎,最大3回まで

迅速な胸痛軽減のため全例に投与;必要に応じて使用

ニトログリセリン,持続静注

5μg/分から開始し,必要な反応が得られるまで数分毎に2.5~5.0μgずつ増量する

選択されたACS患者:

最初の24~48時間,心不全(ただし低血圧がある場合を除く),広範前壁梗塞,持続する狭心症,または高血圧がみられる患者(血圧を10~20mmHg低下させるが,収縮期血圧が80~90mmHgを下回らないようにする)

長期使用,狭心症を繰り返す患者および肺うっ血が持続する患者

硝酸薬:長時間作用型

硝酸イソソルビド

10~20mg,経口,1日3回;40mg,1日3回まで増量できる

不安定狭心症または持続する重症狭心症を呈し,β遮断薬を最大量まで増量しても狭心症症状が持続する患者

耐性を回避するため,硝酸薬は8~10時間の休薬時間(典型的には夜間)を設けることが推奨される

二硝酸イソソルビド(硝酸イソソルビド)(徐放性)

40~80mg,経口,1日2回(典型的には午前8時と午後2時に投与)

一硝酸イソソルビド

20mg,経口投与,1日2回,1回目と2回目の投与間隔は7時間

一硝酸イソソルビド(徐放性)

30または60mg,1日1回,120mgまたはまれに240mgまで増量

ニトログリセリンパッチ

午前6時から9時までの間に0.2~0.8mg/時で貼付し,耐性を回避するため12~14時間後に除去する

ニトログリセリン軟膏2%製剤(15mg/2.5cm)

1.25cmを6~8時間毎に体幹上部または腕に均一に塗布して合成樹脂で被覆し,耐容性に応じて7.5cmまで増量し,耐性を回避するため,毎日8~12時間にわたり除去する

オピオイド

モルヒネ

2~4mg,静注,必要に応じて反復投与

死亡率が上昇する可能性があるだけでなく,P2Y12受容体阻害薬の活性が減弱する可能性もあるため,モルヒネは慎重を期して使用すべきである(例,ニトログリセリンが禁忌である場合,または最大用量のニトログリセリンを投与しているにもかかわらず症状がある場合)。

その他の薬剤

イバブラジン

5mg,経口,1日2回,必要に応じて7.5mg,経口,1日2回に増量

洞結節を阻害する。

β遮断薬を使用できない正常洞調律の患者における慢性安定狭心症の対症療法

β遮断薬のみではコントロール不良で心拍数が60/分を超えている患者においてβ遮断薬と併用する

ラノラジン(ranolazine

500mg,経口,1日2回,必要に応じて1000mg,経口,1日2回に増量

他の狭心症治療薬による治療にもかかわらず症状が持続している患者

*医師は認められる冠動脈疾患の種類に応じて,様々な組合せで薬剤を使用することがある。

アスピリンをより高用量にしても,保護効果は高まらず,有害作用のリスクが増大する。

低分子ヘパリン(LMWH)の中ではエノキサパリンが望ましい。

ACS = 急性冠症候群;CABG = 冠動脈バイパス術;CAD = 冠動脈疾患;LV = 左室;MI = 心筋梗塞;NSTEMI = 非ST上昇型心筋梗塞;PCI = 経皮的冠動脈インターベンション;STEMI = ST上昇型心筋梗塞。

血行再建術

薬物療法を行っても狭心症が持続し,生活の質が悪化している場合,または(血管造影で認めた)器質的病変から死亡リスクの上昇が想定される場合は,PCI(例,血管形成術,ステント留置術)またはCABGによる血行再建を考慮すべきである。PCIかCABGかの選択は,器質的病変の範囲および部位,外科医および医療施設の経験,そしてある程度は患者の希望に依存する。

PCIは通常,解剖学的に適した状態にある1枝または2枝病変に対して選択されるが,3枝病変への施行例も増加してきている。長い病変や分岐部に近い病変はPCIに適さないことが多い。しかしながら,ステント技術の改善に伴い,より複雑な症例にもPCIが使用されるようになってきている。

CABGは選択された狭心症患者では非常に効果的である。糖尿病の患者とバイパス術が適した多枝病変がある患者では,PCIよりCABGの方が優れている。理想的な適応は,局所病変を有する重度の狭心症患者と,糖尿病患者である。約85%の患者で症状の完全な消失または劇的な軽快が得られる。運動負荷試験では,グラフトの開存と運動耐容能の改善との間に正の相関がみられるが,運動耐容能はときにグラフトが閉塞しても改善を維持することがある。

左主幹部病変を有する患者,3枝病変で左室機能が低下した患者,および2枝病変を有する一部の患者は,CABGにより生存期間が延長する。しかしながら,軽度または中等度の狭心症(CCSクラス1または2)患者と心室機能が良好な3枝病変の患者では,CABGによる生存期間の延長はごくわずかのようである。保護されていない(すなわち,左前下行枝または左回旋枝へのグラフトを行っていない)左主幹部狭窄に対してPCIが選択されることが増えてきており,1年時点での成績はCABDと同程度である。1枝病変の患者では,薬物療法,PCI,およびCABGのいずれでも成績は同様であるが,例外として左主幹部病変と左前下行枝近位部病変があり,これらには血行再建術が優れているようである。

要点

  • 狭心症は,心仕事量が十分量の酸素化血液を供給する冠動脈の能力を上回ったときに発生する。

  • 安定狭心症の症状は,ほとんど気にならない漠然とした痛みから,前胸部が押しつぶされるような重度の強い感覚まであり,典型的には労作により誘発され,数分以上は持続せず,安静により消失する。

  • 安静時心電図が正常の患者には,心電図検査による負荷試験を,安静時心電図で異常を認めた患者には,心筋イメージング(例,心エコー検査,核医学検査,MRI)による負荷試験を施行する。

  • 血行再建術(経皮的冠動脈インターベンションまたは冠動脈バイパス術)を考慮している場合は,冠動脈造影を施行する。

  • 狭心症には迅速な症状緩和のため,ニトログリセリンを投与する。

  • 抗血小板薬,β遮断薬,およびスタチン系薬剤の投与を継続し,再発予防のため,必要に応じてカルシウム拮抗薬を追加する。

  • 薬物療法を行っても重大な狭心症が持続する場合,または血管造影で認めた病変から死亡リスクの上昇が示唆される場合は,血行再建術を考慮する。

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