心房細動

(A Fib)

執筆者:L. Brent Mitchell, MD, Libin Cardiovascular Institute, University of Calgary
Reviewed ByJonathan G. Howlett, MD, Cumming School of Medicine, University of Calgary
レビュー/改訂 2024年 9月 | 修正済み 2024年 12月
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心房細動は,心房における速い絶対的不整(irregularly irregular)の調律である。症状としては,動悸のほか,ときに脱力感,運動耐容能低下,呼吸困難,失神前状態などがみられる。心房内血栓が形成されることがあり,その場合は脳塞栓症のリスクが有意に増大する。診断は心電図検査による。治療としては,薬剤によるレートコントロールと抗凝固療法による血栓塞栓症の予防のほか,ときに洞調律に復帰させるための薬剤投与またはカルディオバージョンを行う。

不整脈の概要も参照のこと。)

心房細動の発生と維持には,複数の電気生理学的および構造的機序が関係する。初期の主要な機序は,局所自動能と微小リエントリー(ドライバー)であり,これは主として心房に隣接する静脈構造,特に肺静脈の袖状の筋組織から発生する。その後,心房の電気的リモデリングにより機能的リエントリー回路が促進され,具体的にはleading circle reentryやrotor(局所で渦巻き状に回転しながら周囲に向かう興奮前面が繰り返し発生する空間・時間的パターン)などがみられる。最後に,心房線維化を含む心房の構造的リモデリングによって構造的リエントリー(瘢痕などの解剖学的障壁を取り囲むリエントリー性の興奮前面)が生じ,他の現象に加えて,無秩序な興奮により多数の小さな心房波が形成される。心房細動では心房は収縮せず,房室伝導系は多くの電気刺激を受けることで,一定しない興奮伝導と絶対的不整の心室拍動を生じさせ,通常その拍動数は頻拍の範囲内に収まる。

心房細動は最も一般的な不整脈の1つであり,米国では約300万~600万人の成人にみられる。男性と白人は,それぞれ女性と黒人より心房細動が発生する可能性が高い。心房細動の生涯発生リスクは男性で約25%,女性で約20%である。有病率は年齢とともに上昇し,50歳で1%未満,65歳で1~4%,80歳で6~15%となる(2)。心房細動は心臓に基礎疾患のある患者で発生しやすい傾向がある。

心房細動の合併症

心房収縮の欠如が血栓形成の素因となり,全体として脳血管塞栓症の年間リスクが3~5%となり,全脳卒中の20~25%が心房細動を原因としている(2)。脳卒中のリスクは,高齢者と中等症から重症の僧帽弁狭窄症,機械弁,甲状腺機能亢進症,高血圧,糖尿病,左室収縮機能障害,または血栓塞栓症の既往を有する患者でより高くなる。将来の血栓塞栓症の発生リスクを予測するCHA(2)DS(2)-VAScスコアなどのスコアリングシステムでは,これらの因子が考慮されており,CHA(2)DS(2)-VAScスコアは中等度から重度の僧帽弁狭窄がなく,機械弁も使用していない患者で広く用いられている(これらがある患者にはCHA(2)DS(2)-VAScスコアに関係なく抗凝固療法が必要である)。全身性塞栓症では,他の臓器(例,心臓,腎臓,消化管,眼)や四肢の機能不全または壊死が生じることもある。

心房細動は心拍出量の低下につながることもあり,心拍数が正常な状態で心房収縮が消失すると,心拍出量は20%も低下する(3)。このような低下は通常は十分に耐容されるが,心室拍数が高くなりすぎる場合(例,140/分を超える)や患者の本来の心拍出量が境界域ないし低値であった場合は例外である。そのような場合には,心不全を来す可能性がある。

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総論の参考文献

  1. 1.  Go AS, Hylek EM, Phillips KA, et al: Prevalence of diagnosed atrial fibrillation in adults: national implications for rhythm management and stroke prevention: the AnTicoagulation and Risk Factors in Atrial Fibrillation (ATRIA) Study.JAMA 285(18):2370–2375, 2001.doi: 10.1001/jama.285.18.2370. 

  2. 2.  Andrade J, Khairy P, Dobrev D, et al: The clinical profile and pathophysiology of atrial fibrillation: relationships among clinical features, epidemiology, and mechanisms.Circ Res 114(9):1453–1468, 2014.doi: 10.1161/CIRCRESAHA.114.303211. 

  3. 3.Klavebäck S, Skúladóttir H, Olbers J, et al: Changes in cardiac output, rhythm regularity, and symptom severity after electrical cardioversion of atrial fibrillation.Scand Cardiovasc J 57(1):2236341, 2023.doi: 10.1080/14017431.2023.2236341 

心房細動の病因

心房細動の最も一般的な原因は以下のものである:

心房細動の比較的まれな原因としては以下のものがある:

孤立性心房細動は,60歳未満の患者における原因を同定できない心房細動である。

心房細動の分類

発作性心房細動は,持続時間が1週間未満で,自然にまたは介入により正常洞調律に復帰する心房細動である。再発することがある(1)。

持続性心房細動は,1週間以上持続する心房細動である(1)。

長期持続性心房細動は,1年間以上持続するが,洞調律に復帰する可能性がまだ残っている(1)。

永続性心房細動は,洞調律に戻すことができない(洞調律への復帰を試みないという決定が下された患者もこの用語の範疇に含まれる[1])。心房細動の持続時間が長くなるほど,自発的な回復の可能性は低くなり,心房リモデリング(急速な心房拍動により誘導される心房の電気生理学的変化であり,具体的には心房不応性の低下,心房不応期の空間的分散の増大,心房伝導速度の遅延などが起こる)のためにカルディオバージョンもより困難となる(2)。

分類に関する参考文献

  1. 1.Joglar JA, Chung MK, Armbruster AL, et al: 2023 ACC/AHA/ACCP/HRS Guideline for the Diagnosis and Management of Atrial Fibrillation: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Joint Committee on Clinical Practice Guidelines.Circulation 149(1):e1–e156, 2024.doi: 10.1161/CIR.0000000000001193

  2. 2.Allessie M, Ausma J, Schotten U: Electrical, contractile and structural remodeling during atrial fibrillation.Cardiovasc Res54(2):230–246, 2002.doi: 10.1016/s0008-6363(02)00258-4

心房細動の症状と徴候

心房細動はしばしば無症状であるが,多くの患者は動悸,胸部不快感,または心不全症状(例,脱力感,ふらつき,呼吸困難)を示し,これらの症状は特に心室拍数が非常に高い場合(しばしば140~160/分)によくみられる。急性脳卒中の症候や全身性塞栓症による他の臓器障害の症候がみられることもある。

脈拍は絶対的不整(irregularly irregular)であり,頸静脈拍動ではa波が消失する。心拍と心拍の間隔が非常に短くなると,左室による一回拍出量が常に末梢圧波の生成に十分な水準とならなくなるため,脈拍欠損(心尖部の心拍数が手首で触知される脈拍数より高い)がみられることがある。

心房細動の診断

  • 心電図検査

  • 心エコー検査

  • 甲状腺機能検査

心房細動の診断は心電図検査による(の図を参照)。所見としては以下のものがある:

  • P波の欠如

  • QRS波間のf(細動)波の持続;f波はタイミングと形状ともに不規則;300/分を超える基線の動揺が通常はV1誘導で最もよく観察されるが,全ての誘導に常に出現するわけではない

  • RR間隔の絶対的不整(irregularly irregular)

心房細動

他の不整調律の心電図も心房細動に類似することがあるが,独立したP波または粗動波の存在から鑑別可能であり,これらはときに迷走神経刺激を用いてより鮮明にできる。筋振戦や電気的干渉がf波に類似することがあるが,心室の基本調律は規則的である。

心房細動は心室性期外収縮または心室頻拍に類似する現象(Ashman現象)を引き起こすこともある。この現象は典型的には,長いRR間隔の後に短いRR間隔が続く場合に起こり,長い間隔によりヒス束下伝導系の不応期が延長し,それに続くRR間隔の短いQRS波は変行伝導となり,典型的には右脚ブロックの形態を示す(1)。

初期評価では,心エコー検査および甲状腺機能検査が重要である(2)。

構造的心疾患(例,左房拡大,過去または現在の虚血を示唆する左室壁運動異常,弁膜症,心筋症)の評価と付加的な脳卒中の危険因子(例,心房血のうっ血または血栓,複雑な大動脈プラーク)の同定を目的として,心エコー検査を施行する。心房内血栓は心耳に好発し,経胸壁心エコー検査よりも経食道心エコー検査でより高い精度で検出される。

パール&ピットフォール

  • QRS幅の増大を伴う心房細動はWPW症候群を示唆している場合があり,そのような場合,房室結節を遮断する薬剤の使用は致死的となりうる。

診断に関する参考文献

  1. 1. Morton MB, Morton JB, Mond HG: Aberrant Ventricular Conduction: Revisiting an Old Concept.Heart Lung Circ 32(5):555–566, 2023.doi: 10.1016/j.hlc.2023.03.001

  2. 2.Joglar JA, Chung MK, Armbruster AL, et al: 2023 ACC/AHA/ACCP/HRS Guideline for the Diagnosis and Management of Atrial Fibrillation: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Joint Committee on Clinical Practice Guidelines.Circulation149(1):e1–e156, 2024.doi: 10.1161/CIR.0000000000001193

心房細動の治療

  • 薬剤投与または房室結節のアブレーションによるレートコントロール

  • ときにカルディオバージョン,薬剤,または心房細動基質のアブレーションによるリズムコントロール

  • 血栓塞栓症の予防

血行動態が不安定な心房細動がある患者には,入院が有益となる可能性がある。再発を繰り返す患者では,他の症状から入院の必要性が示唆されない限り,入院は不要である。原因が管理されてからは,心房細動の治療は心室レートコントロール,リズムコントロール,および血栓塞栓症の予防に焦点を当てる。

心室レートコントロール

持続時間にかかわらず心房細動がみられる患者では,症状を管理して頻脈誘発性心筋症を予防するために,レートコントロール(典型的には安静時で100/分未満)が必要である(1)。

頻拍(例,140~160/分)の急性発作に対しては房室伝導抑制薬を静注する(用量についてはの表を参照)。注意:房室副伝導路が関与している(幅の広いQRS波により示唆される)WPW症候群の患者で房室伝導抑制薬を使用してはならない;この種の薬剤は副伝導路を介した伝導頻度を増加させるため,心室細動を引き起こす可能性がある(1)。

カテコラミンの過剰が疑われる場合(例,甲状腺疾患,労作誘発例)は,β遮断薬(例,メトプロロール,エスモロール)が望ましい(1)。

非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬(例,ベラパミル,ジルチアゼム)も効果的である。ジゴキシンは最も効果が低いが,心不全が存在する患者では望ましい場合がある。この種の薬剤は長期のレートコントロールに経口で使用できる(1)。

β遮断薬,非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬,およびジゴキシン(単独または併用)が無効の場合は,アミオダロンが必要になることがある(1)。アミオダロンは心房細動を洞調律に復帰させる可能性もあるが,抗凝固薬を使用していない患者の一部では,この変化が望ましくない場合がある(血栓塞栓症の予防を参照)。

リズムコントロール

心不全患者または新規発症の心房細動に直接起因する他の血行動態障害がある患者では,心拍出量を改善するために正常洞調律を回復させるための治療が適応となる(1)。その他の症例では,心房細動から正常洞調律に復帰させることが至適な治療となるが,それを可能にする抗不整脈薬(Ia群,Ic群,III群)には有害作用のリスクおよび,死亡率を高める可能性がある。洞調律に復帰しても,長期の抗凝固療法が必要であることは変わらない。

早急な除細動の方法としては,カルディオバージョンと薬剤投与がある。

除細動を試みる前に心室拍数を120/分未満にコントロールすべきであり,また心房細動からの復帰は(用いる方法に関係なく)一時的に血栓塞栓症のリスクを高めることから,大半の患者には抗凝固薬を投与すべきである(基準および用法については,リズムコントロール中の血栓塞栓症の予防を参照)。

カルディオバージョン(二相性で200J,その後は必要に応じて二相性で300および360J)により,約90%の患者で心房細動から正常洞調律に復帰するが,再発率が高い(2)。手技後の洞調律の効果および維持は,手技開始前24~48時間の間にIa群,Ic群,またはIII群抗不整脈薬を使用することで改善される。カルディオバージョンは,持続時間の短い心房細動,孤立性心房細動,または可逆的な原因による心房細動の患者で効果がより高く,左房拡大(> 5cm)がある場合,または有意な構造的心疾患が基礎にある場合には,効果が低くなる。

心房細動を洞調律に復帰させるための薬剤としては,Ia群(プロカインアミド,キニジン,ジソピラミド),Ic群(フレカイニド,プロパフェノン),およびIII群(アミオダロン,ドフェチリド,ドロネダロン[dronedarone],イブチリド[ibutilide],ソタロール,ベルナカラント[vernakalant])の抗不整脈薬がある(の表を参照)。あるメタアナリシスでは,薬剤別に見た4時間時点での洞調律復帰率が約25~65%と報告され,最も効果が高かった薬剤は静注のベルナカラント(vernakalant),静注のフレカイニド,静注のプロパフェノン,経口のフレカイニド,および静注のイブチリド(ibutilide)であった(3)。心房細動に対する心室の反応頻度も低下させるアミオダロンソタロールを除き,この種の薬剤はレートコントロールが得られるまで使用すべきではない。

洞調律への復帰を促す経口剤は,洞調律の長期維持にも用いられる(カルディオバージョンの既往の有無は問わない)。Cochrane Reviewでは,抗不整脈薬の有効性は33~57%となり,アミオダロンが最も効果的であった(4)。それでも,この用途での抗不整脈薬の使用には,死亡を含む有害事象増加との関連が認められた。発作のタイミングが迷走神経緊張が亢進している安静時または睡眠時に完全またはほぼ限定されている発作性心房細動には,迷走神経抑制作用を有する薬剤(例,ジソピラミド)が特に効果的となりうる。労作誘発性AFはβ遮断薬で効果的に予防できる。

再発性発作性心房細動があり,症状によってその発生を特定することが可能な一部の患者では,フレカイニド(体重70kg以上の患者は300mg,それ以外では200mg)またはプロパフェノン(70kg以上の患者は600mg,それ以外では450mg)の経口負荷量を1回分だけ処方して患者に携帯させ,動悸が発生した時点で自己投与させる医師もいる(「pill in the pocket」アプローチ)(5)。このアプローチは,洞房結節または房室結節機能不全,脚ブロック,QT延長,ブルガダ症候群,構造的心疾患をいずれも有していない患者のみに適用対象を限定する必要がある。考えられる重大な危険として,心房細動が拍動数200~240/分で1:1の比率で伝導するやや緩徐な心房粗動に移行する可能性(1%と推定される)がある(5)。この潜在的合併症については,心房伝導抑制薬(例,β遮断薬または非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬)の併用により発現頻度を低下させることが可能である。

アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB),およびアルドステロン遮断薬は,心房細動基質となる心筋線維化を軽減できる可能性があるが,ルーチンの心房細動治療でこれらの薬剤が果たす役割はまだ確立されていない。

心房細動に対するアブレーション手技

レートコントロールおよびリズムコントロールの適応がない患者やこれらのアプローチが不成功に終わったには,房室結節のアブレーションにより完全房室ブロックを惹起する治療が可能であるが,その後に恒久型ペースメーカーの植込みが必要になる。房室結節の伝導速度の遅い伝導路(slow pathway)に対するアブレーションでも,心室に到達する心房興奮の数が減少してペースメーカーの必要性がなくなるが,このアプローチは房室結節の完全なアブレーションより効果が小さいと考えられており,採用されることはまれである。

肺静脈を左房から電気的に隔離するカテーテルアブレーション手技により,房室ブロックをもたらすことなく心房細動を予防することが可能である。肺静脈隔離術は,上室性不整脈の治療に用いられるアブレーション手技と比較して,成功率が低く(60~80%),重大な合併症の発生率が高い(1~5%)(6)。抗不整脈薬の使用歴がない患者を対象とした複数のランダム化試験により,17カ月間の追跡後に心房性頻拍性不整脈の再発率がアブレーション群(約30%)で薬物療法群(約50%)より低く,重大な有害事象に有意差がなかったことが示されている(7)。さらにメタアナリシスでは,内科的治療と比較して,カテーテルアブレーションは全死亡率(心不全を併発している患者で最も顕著)を低下させ,発作性心房細動の患者と心不全の有無にかかわらず持続性心房細動の患者で入院を減少させることが示唆されている(8)。そのためガイドラインでは,抗不整脈薬を用いたリズムコントロールのアプローチが不成功に終わった心房細動患者,駆出率が低下した心不全を併発している患者,および心房細動の経過早期に初回治療を受ける選択された患者を対象として,リズムコントロールのためのカテーテルアブレーションにクラスIの適応が設定されている(1)。

心房細動治療のための開心術によるアブレーション手技(メイズ手術)もあるが,ほとんどの場合,単独の手技としては用いられず,開心手術の他の適応がある患者のみに用いられる(9)。

成功と思われるアブレーション手技の後に経口抗凝固薬を長期間継続する必要性について検討するランダム化臨床試験が進行中である。ガイドラインでは,アブレーションが見かけ上成功したか否かを問わず,アブレーションを受けなかった場合と同じ指針に従って,アブレーション後の長期抗凝固薬投与が推奨されている(1)。

血栓塞栓症の予防

特定の心房細動患者には,個々に推定される脳卒中のリスクと出血のリスクを(例えば[8]やなどのツールに従って[10])比較した上で,血栓塞栓症を予防するための長期的な対策を講じる。

表&コラム
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心房細動に対する抗凝固療法のガイドラインには地域差がみられる。米国のガイドラインは以下の通りである(1):

以下に該当する心房細動患者には,長期の経口抗凝固療法が推奨される(クラスIの推奨)。

  • 中等症から重症のリウマチ性僧帽弁狭窄症

  • 機械弁(心房細動の有無は問わない)

  • 非弁膜症性心房細動(すなわち,中等症から重症のリウマチ性僧帽弁狭窄症がなく,機械弁を使用していない場合)でCHA(2)DS(2)-VAScスコアが男性で2以上,女性で3以上

  • 肥大型心筋症

該当する患者における血栓塞栓症の年間リスクは2%以上である。

以下の患者には長期の経口抗凝固療法が妥当である(クラスIIaの推奨):

  • 非弁膜症性心房細動でCHA(2)DS(2)-VAScスコアが男性で1,女性で2である

該当する患者における血栓塞栓症の年間リスクは1~2%である。

以下の患者には長期の経口抗凝固療法は推奨されない:

  • 非弁膜症性心房細動でCHA(2)DS(2)-VAScスコアが男性で0,女性で1

該当する患者における血栓塞栓症の年間リスクは1%未満である。

抗凝固療法の方法については,以下の推奨事項が適用される:

  • 機械弁を使用している心房細動患者はワルファリンで治療する(クラスIの推奨)。

  • 中等症から重症のリウマチ性僧帽弁狭窄症を有する心房細動患者はワルファリンで治療する(クラスIの推奨)。

  • 経口抗凝固薬による治療を受ける非弁膜症性心房細動の患者には,ワルファリン,アピキサバン,ダビガトラン,エドキサバン,またはリバーロキサバンを投与する(クラスIの推奨)。

  • ワルファリンを使用する場合,国際標準化比(INR)2.0~3.0を目標とする。

  • ワルファリン(または他のビタミンK拮抗薬)または非ビタミンK拮抗抗凝固薬(アピキサバン,ダビガトラン,エドキサバン,リバーロキサバンなど)による抗凝固療法に適格な患者には,非ビタミンK拮抗抗凝固薬が望ましい(クラスIの推奨)。

  • アスピリン単剤療法は血栓塞栓症の予防には推奨されない。

以上の一般的なガイドラインは,中等度を超える腎障害を有する患者においては,腎障害が慢性腎臓病のステージ1,2,3(eGFR > 30mL/min[クラスIの推奨])から,慢性腎臓病のステージ4(eGFR 15~30mL/min[クラスIIaの推奨]),慢性腎臓病のステージ5(eGFR < 15mL/minまたは透析[クラスIIbの推奨])へと進行するにつれて,抗凝固療法に対する積極性が下がっていくのに従い,変更を加えていく。

非弁膜症性心房細動の患者に発生する左房血栓は90%が左心耳に位置するため,このような患者における脳卒中の予防は,左心耳の外科的結紮またはカテーテルデバイスによる閉塞によって達成できる可能性がある。ガイドラインでは,CHA(2)DS(2)-VAScスコアが2以上で適切な抗血栓療法の禁忌がある心房細動患者に対して左心耳閉鎖術がクラスIIaの適応とされており,また同様の患者で患者の希望に基づく場合はクラスIIbの適応とされている(1)。

個々の患者の出血リスクは,いくつかある予後予測ツールのいずれを用いても推定できるが,最もよく用いられるのはHAS-BLEDである(11)(の表を参照)。HAS-BLEDスコアは,抗凝固薬を投与すべきでない出血リスクの高い患者を同定することよりも,是正すれば出血リスクを低減できる病態を同定するのに最適である。

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カルディオバージョンを行う患者における血栓塞栓症の予防

ガイドラインでは,カルディオバージョン前後の予防として以下の対策が提唱されている(1):

カルディオバージョンを行う患者に対する抗凝固療法

* TEEで心房血栓が認められない場合は,抗凝固薬を最長3週間投与することができる。

TEE = 経食道心エコー検査(左房血栓を除外するため)。

  • 心房細動の持続時間が48時間を超えている場合は,典型的には抗不整脈薬の投与またはカルディオバージョンに先立って3週間以上にわたり経口抗凝固薬を投与すべきである。カルディオバージョンを直ちに施行することが望ましい場合は,カルディオバージョンに先立って心房血栓を除外するために,経食道心エコー検査(TEE)が推奨される。TEEで左房に血栓を認めない場合は,カルディオバージョン前の抗凝固薬の投与期間を短縮することができる。カルディオバージョン後は抗凝固療法を4週間以上継続すべきである(それぞれクラスIの推奨)。

  • CHA(2)DS(2)-VAScスコアが2以上で3週間を超える抗凝固療法を受けていない患者で心房細動の持続時間が48時間未満であった場合は,カルディオバージョン前に左心房血栓を除外するために,TEEを施行すべきである(クラスIIbの推奨)。

  • CHA(2)DS(2)-VAScスコアが0~1(の表を参照)の患者で心房細動の持続時間が12時間未満であった場合については,カルディオバージョン前のTEEやカルディオバージョン前の抗凝固療法の便益が不明である(このことは,明言はできないものの,この患者集団は事前のTEEや抗凝固療法なしでカルディオバージョンを受けてもよい可能性があることを暗に意味している)。

パール&ピットフォール

  • 可能であれば,心房細動から洞調律への復帰を試みる前に抗凝固療法を施行する。

  • 洞調律に復帰しても,その基準を満たす患者には長期の抗凝固療法が必要であることに変わりはない。

治療に関する参考文献

  1. 1.  Joglar JA, Chung MK, Armbruster AL, et al: 2023 ACC/AHA/ACCP/HRS Guideline for the Diagnosis and Management of Atrial Fibrillation: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Joint Committee on Clinical Practice Guidelines.Circulation 149(1):e1–e156, 2024.doi: 10.1161/CIR.0000000000001193 

  2. 2.Crijns HJ, Weijs B, Fairley AM, et al: Contemporary real life cardioversion of atrial fibrillation: Results from the multinational RHYTHM-AF study. Int J Cardiol 172(3):588–594, 2014.doi:10.1016/j.ijcard.2014.01.099

  3. 3.Tsiachris D, Doundoulakis I, Pagkalidou E, et al: Pharmacologic Cardioversion in Patients with Paroxysmal Atrial Fibrillation: A Network Meta-Analysis.Cardiovasc Drugs Ther 35(2):293–308, 2021.doi: 10.1007/s10557-020-07127-1 

  4. 4.Valembois L, Audureau E, Takeda A, et al: Antiarrhythmics for maintaining sinus rhythm after cardioversion of atrial fibrillation.Cochrane Database Syst Rev 9(9):CD005049, 2019.doi: 10.1002/14651858.CD005049.pub5

  5. 5.Ibrahim OA, Belley-Côté EP, Um KJ, et al: Single-dose oral anti-arrhythmic drugs for cardioversion of recent-onset atrial fibrillation: a systematic review and network meta-analysis of randomized controlled trials.Europace 23(8):1200–1210, 2021.doi: 10.1093/europace/euab014

  6. 6.Voskoboinik A, Moskovitch JT, Harel N, Sanders P, Kistler PM, Kalman JM: Revisiting pulmonary vein isolation alone for persistent atrial fibrillation: A systematic review and meta-analysis. Heart Rhythm 14(5):661–667, 2017.doi:10.1016/j.hrthm.2017.01.003

  7. 7.Razzack AA, Lak HM, Pothuru S, et al: Efficacy and Safety of Catheter Ablation vs Antiarrhythmic Drugs as Initial Therapy for Management of Symptomatic Paroxysmal Atrial Fibrillation: A Meta-Analysis.Rev Cardiovasc Med 23(3):112, 2022.doi: 10.31083/j.rcm2303112

  8. 8.Ravi V, Poudyal A, Lin L, et al: Mortality benefit of catheter ablation versus medical therapy in atrial fibrillation: An RCT only meta-analysis.J Cardiovasc Electrophysiol 33(2):178–193, 2022.doi: 10.1111/jce.15330

  9. 9.Guo Q, Yan F, Ouyang P, et al: Bi-atrial or left atrial ablation of atrial fibrillation during concomitant cardiac surgery: A Bayesian network meta-analysis of randomized controlled trials. J Cardiovasc Electrophysiol 32(8):2316–2328, 2021.doi:10.1111/jce.15127

  10. 10.Lip GY, Nieuwlaat R, Pisters R, et al: Refining clinical risk stratification for predicting stroke and thromboembolism in atrial fibrillation using a novel risk factor-based approach: the Euro Hart Survey on atrial fibrillation.Chest 137(2):263–272, 2010.doi: 10.1378/chest.09-1584

  11. 11.Pisters R, Lane DA, Nieuwlaat R, et al: A novel user-friendly score (HAS-BLED) to assess 1-year risk of major bleeding in patients with atrial fibrillation: the Euro Heart Survey.Chest 138(5):1093–1100, 2010.doi: 10.1378/chest.10-0134 

要点

  • 心房細動は,心房における絶対的不整(irregularly irregular)の調律であり,発作性または持続性に生じることがある。

  • QRS幅は典型的には狭いが,心室内伝導障害またはWPW症候群がある場合は幅の広いQRS波がみられる。

  • 心電図検査,心エコー検査,および甲状腺機能検査を施行すべきである。

  • 心拍数を典型的には安静時100/分未満にコントロールするが,第1選択薬としてはβ遮断薬や非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬(例,ベラパミル,ジルチアゼム)などがある。

  • 洞調律への復帰は,抗凝固療法の必要性を解消することにはならないが,症状が持続する患者や血行動態不良(例,心不全)を呈する患者では有用となる可能性があり,その方法としては,カルディオバージョンと薬剤投与がある。

  • 血栓塞栓症の危険因子を有する患者では,脳卒中予防のために長期の経口抗凝固薬投与が必要となる。

  • カルディオバージョンの前には,通常は抗凝固療法が必要である。

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