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肝臓および胆嚢の臨床検査

執筆者:

Nicholas T. Orfanidis

, MD, Thomas Jefferson University Hospital

最終査読/改訂年月 2017年 3月
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本ページのリソース

臨床検査は一般に以下の目的に効果的である:

  • 肝機能障害の検出

  • 肝損傷の重症度の評価

  • 肝疾患の経過および治療効果のモニタリング

  • 診断の絞り込み

(American Gastroenterological Associationの肝生化学検査の評価に関するMedical Position StatementおよびTechnical Review も参照のこと。)

肝臓の生化学および排泄機能を調べる多くの検査は,肝機能検査と呼ばれている。しかしながら,それらの検査のいくつかは,肝機能の評価というよりも,血中に放出された肝酵素(例,損傷した肝細胞からのアミノトランスフェラーゼの放出,胆汁うっ滞によるアルカリホスファターゼの放出)を測定するものである。胆汁排泄(例,ビリルビン)や肝臓の合成能(例,通常INRとして報告されるPT,アルブミン)を評価することにより実際に肝機能を評価する検査は,一部のみである。

肝疾患のスクリーニングに最も有用な臨床検査は,血清アミノトランスフェラーゼ(最も頻用される肝機能検査),ビリルビン,およびアルカリホスファターゼである。特定のパターンの生化学的異常は,肝細胞傷害を胆汁排泄障害と鑑別する上で有用な所見となる(胆汁うっ滞― Professional.see table 臨床検査値異常の一般的なパターン 臨床検査値異常の一般的なパターン 臨床検査値異常の一般的なパターン 参照)。ウイルス性肝炎,肝臓の炎症,免疫調節異常などを検出する検査項目として, 肝炎の血清学的検査 血清学的検査 急性ウイルス性肝炎は,多様な伝播様式と疫学的性質を有する一群の肝親和性ウイルスによって引き起こされる,肝臓のびまん性炎症である。ウイルス感染による非特異的な前駆症状に続いて,食欲不振,悪心,しばしば発熱または右上腹部痛がみられる。黄疸がしばしばがみられ,典型的には他の症状が消失し始める頃に発生する。ほとんどの症例で自然消失するが,慢性肝炎... さらに読む ,免疫グロブリン,抗体,自己抗体などがある。

単独で診断に至る臨床検査もいくつかあり,具体的には以下のものがある:

肝損傷の検査

アミノトランスフェラーゼ

アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)とアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)は損傷した細胞から漏出するため,これらの酵素は肝損傷に対する高感度の指標となる。顕著な高値(> 500IU/L;正常は 40 IU/L)は肝細胞の急性壊死または損傷を意味し,通常は以下に示す病態によって生じる:

通常は高値が数日間,ウイルス性肝炎では数週間持続する。上昇の程度は,肝損傷の範囲を反映しない場合がある。単回測定よりも複数回の連続測定を行った方が,重症度と予後をより精度よく反映した結果が得られる。ビリルビンの増加やPT延長またはINR上昇(劇症肝不全 劇症肝炎 劇症肝炎は,肝実質の広範な壊死と肝臓の縮小(急性黄色肝萎縮症)を特徴とし,通常は特定の肝炎ウイルスへの感染後,毒性物質への曝露後,または薬剤性肝障害の発生後にみられる,まれな症候群である。 ( 肝疾患を有する患者の評価と 急性ウイルス性肝炎の概要も参照のこと。) B型肝炎ウイルスはときに劇症肝炎の原因とされるが,B型劇症肝炎症例の最大50... さらに読む を示唆する)を伴わない限り,正常範囲までの低下は回復を意味する。劇症肝不全では,酵素の漏出源となりうる肝細胞数が減少する。

アミノトランスフェラーゼ値は,以下の場合でも著明に高値となる:

軽度の増加(300IU/L未満)は非特異的で,しばしば以下のような疾患でみられる:

アミノトランスフェラーゼは,以下のような特定の肝疾患では正常値を示すこともある:

ALT値の上昇は,肝損傷にある程度特異的である。ASTは心臓,骨格筋,腎臓,膵臓にも存在するため,AST値の上昇は横紋筋融解症やこれらの臓器の損傷を反映していることもある。ほとんどの肝疾患で,AST/ALT比は1未満となる。しかしながら,アルコール関連性肝疾患ではこの比が2を超えることが特徴的で,これはALT合成には必須であるがAST合成にはそれほど必要でないピリドキサル-5'-リン酸がアルコール依存症患者では欠乏しているからである。アルコール依存症の患者においてALTおよびASTの上昇が軽度(300IU/L未満)であることも,この欠乏によって説明できる。

乳酸脱水素酵素

LDHは,一般的にルーチンの分析項目に含められるが,他の多くの組織にも存在し,肝細胞傷害に対する感度および特異度はともに高くない。LDH値は虚血性肝炎や肝臓に広範に浸潤した癌で上昇するのが典型的である。

胆汁うっ滞の検査

ビリルビン

ビリルビンは,ヘムタンパク質(主として老化赤血球内のヘモグロビンのヘム部分)の分解物から産生される胆汁色素である。非抱合型(遊離型)ビリルビンは水に不溶性のため,尿中に排泄できず,ほとんどの非抱合型ビリルビンは血漿中でアルブミンと結合している。ビリルビンは肝臓でグルクロン酸抱合され,水溶性のビリルビンジグルクロニドが形成される。抱合を受けたビリルビン(抱合型ビリルビン)はその後,胆道を介して十二指腸内へと排泄され,そこでウロビリノーゲン(一部は再吸収されて胆汁中に再分泌される),そして橙色のウロビリン(大半が便中に排泄される)に代謝される。これらの胆汁色素が典型的な便の色の素となっている。

高ビリルビン血症は,以下の要因のうちの1つまたは複数の結果として生じる:

正常時は総ビリルビンの大半が非抱合型であり,その値は1.2mg/dL未満(20μmol/L未満)である。ビリルビン分画によって抱合型ビリルビンの割合を測定できる(溶媒を必要とせずに直接測定できることから直接ビリルビンとも呼ばれる)。ビリルビン分画は,新生児黄疸の評価のほか,ビリルビン値の上昇はみられるが,その他の肝機能検査結果が正常で肝胆道系の機能障害が原因でないことが示唆される場合の評価で最も参考になる。

非抱合型高ビリルビン血症(間接ビリルビンの割合が85%を超える場合)は,ビリルビン産生の増加(例,溶血)あるいは肝臓への取込みまたは抱合の異常を反映する(例,ジルベール症候群)。このような非抱合型ビリルビン値の上昇は,肝損傷を伴わない限り,通常は正常上限値の5倍未満(6mg/dL未満[100μmol/L未満]まで)である。

抱合型高ビリルビン血症(直接ビリルビンの割合が50%を超える場合)は,胆汁産生または排泄の減少(胆汁うっ滞)の結果として生じる。他の肝機能検査でも異常所見がみられる場合,血清ビリルビン高値は肝細胞機能障害を意味する。血清ビリルビン値は肝機能障害に対する感度がいくぶん低い。しかしながら, 原発性胆汁性胆管炎 原発性胆汁性胆管炎( PBC ) 原発性胆汁性胆管炎(PBC;以前は原発性胆汁性肝硬変として知られていた)は,肝内胆管の進行性の破壊を特徴とし,胆汁うっ滞, 肝硬変,肝不全に至る自己免疫性肝疾患である。初診時には通常は無症状であるが,疲労感がある場合や胆汁うっ滞(例,そう痒,脂肪便)または肝硬変(例, 門脈圧亢進症,腹水)の症状がみられる場合もある。臨床検査では,胆汁うっ... さらに読む (原発性胆汁性肝硬変とも呼ばれる),アルコール性肝炎, 急性肝不全 急性肝不全 急性肝不全は,薬物および肝炎ウイルスによって引き起こされる場合が最も多い。主な臨床像は,黄疸,凝固障害,および脳症である。診断は臨床的に行う。治療は支持療法が中心であるが,ときに肝移植および/または特異的な治療(例,アセトアミノフェンの毒性に対するN-アセチルシステイン)も行う。... さらに読む における重度の高ビリルビン血症の発生は,予後不良を示唆する。

ビリルビン尿は,尿中での抱合型ビリルビンの存在を反映し,血中濃度が大きく上昇したためにビリルビンが尿中にあふれ出したもので,重度の疾患を意味する。非抱合型ビリルビンは水に不溶性でアルブミンと結合しているため,尿中に排泄されない。ビリルビン尿は, 急性ウイルス性肝炎 急性ウイルス性肝炎の概要 急性ウイルス性肝炎は,多様な伝播様式と疫学的性質を有する一群の肝親和性ウイルスによって引き起こされる,肝臓のびまん性炎症である。ウイルス感染による非特異的な前駆症状に続いて,食欲不振,悪心,しばしば発熱または右上腹部痛がみられる。黄疸がしばしばがみられ,典型的には他の症状が消失し始める頃に発生する。ほとんどの症例で自然消失するが,慢性肝炎... さらに読む やその他の肝胆道疾患では,黄疸が現れる前でも,市販の尿試験紙を用いてベッドサイドで検出することができる。しかしながら,このような尿検査は診断精度に限界がある。尿検体の長期保存,ビタミンCの摂取,尿中の硝酸塩(例,UTIによる)などがあると,偽陰性となることがある。同様に,ウロビリノーゲン値の上昇も特異度および感度が低い。

アルカリホスファターゼ

この肝細胞酵素の増加は胆汁うっ滞を示唆する。アルカリホスファターゼは複数のアイソザイムで構成され,肝臓以外にも広く(例,胎盤,小腸,白血球,腎臓,特に骨など)分布するため,特異的でない場合がある。

アルカリホスファターゼ値は,閉塞部位とは無関係に,胆道閉塞の発症後1~2日で正常上限値の4倍以上に上昇する。アルカリホスファターゼの半減期は約7日間であるため,閉塞が解消されてからも数日間高値のまま持続する。以下を含む多くの肝疾患において,正常上限値の3倍までの上昇が発現する:

単独の上昇(すなわち,他の肝機能検査が正常な場合)は以下を伴うことがある:

単独の上昇は,以下の病態では明らかな肝または胆道疾患がなくても起こりうる:

  • 明らかな肝病変を伴わない癌(例,肺癌,ホジキンリンパ腫,腎細胞癌)

  • 高脂肪食の摂取後(小腸内で産生される酵素のため)

  • 妊娠(胎盤で産生される酵素のため)

  • 成長期の小児および青年(骨成長のため)

  • 慢性腎不全(腸管および骨で産生される酵素のため)

技術的に困難なアルカリホスファターゼ分画を評価するより,γ-グルタミルトランスペプチダーゼや5ヌクレオチダーゼなど,より肝臓に特異的な酵素値を評価することで,アルカリホスファターゼの由来が肝臓かそれ以外かを鑑別することができる。また,他に症状のない高齢者では,アルカリホスファターゼ値の上昇は通常骨に由来し(例,パジェット病),肝障害に対するさらなる検査は必要としないことがある。

5ヌクレオチダーゼ

この酵素の測定値の上昇は,胆汁うっ滞および胆道閉塞の検出についてアルカリホスファターゼと同等の感度をもつが,特異度はより高く,ほぼ常に肝胆道障害を意味する。アルカリホスファターゼと5ヌクレオチダーゼの測定値は必ずしも相関するわけではなく,一方が正常で,もう一方が上昇する場合もある。

γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)

この酵素の測定値は肝胆道障害,特に胆汁うっ滞の発生時に上昇し,アルカリホスファターゼおよび5ヌクレオチダーゼ値と緩やかに相関する。骨病変による上昇や小児期または妊娠中の上昇はみられない。しかしながら,アルコールや特定の薬物(例,抗てんかん薬,ワルファリン)は肝ミクロソーム酵素(チトクロムP450)を誘導し,GGTを顕著に増加させるため,特異度にある程度の限界がある。

肝合成能の検査

PTおよびINR

PTは時間(秒),または(より好ましい指標として)検査機関の対照値に対する各患者のPT測定値の比(INR― Professional.see page 検査 検査 )として示す。INRは,抗凝固療法のモニタリングではPTより精度が高い。PTまたはINRは,肝臓におけるフィブリノーゲンおよびビタミンK依存性凝固因子(第II因子[プロトロンビン],第VII因子,第IX因子,第X因子)の合成能を評価する上で価値ある指標である。関連する凝固因子の中には生物学的半減期が短いものもあるため(例,第VII因子は6時間),急速に変化することがある。異常は重度の肝細胞機能障害を示唆し,これは急性肝疾患における悪い徴候である。慢性肝疾患では,PTの延長またはINRの上昇は肝不全への進行を示唆する。PTまたはINRは軽度の肝細胞機能障害では増加せず,肝硬変ではしばしば正常である。

PT延長とINR異常は,その他の凝固異常によって生じることもあり,具体的には 消費性凝固障害 播種性血管内凝固症候群(DIC) 播種性血管内凝固症候群(DIC)は,循環血中のトロンビンおよびフィブリンの異常な過剰生成に関係する。その過程で血小板凝集および凝固因子消費が亢進する。緩徐に(数週間または数カ月かけて)進行するDICでは,主に静脈の血栓性および塞栓性の症状がみられる;急速に(数時間または数日で)進行するDICでは,主に出血が生じる。重度で急速進行性のDIC... さらに読む ビタミンK欠乏症 ビタミンK欠乏症 ビタミンK欠乏症は,極めて不十分な摂取,脂肪の吸収不良,またはクマリン系抗凝固薬の使用によって起こる。欠乏症は母乳栄養の乳児に特によくみられる。欠乏すると,血液凝固が障害される。診断は,ルーチンの凝固検査所見に基づいて疑い,ビタミンK投与に対する反応によって確定する。治療は,ビタミンKの経口投与か,脂肪の吸収不良が原因である場合,または出... さらに読む などがある。胆汁うっ滞などの脂肪吸収不良によってビタミンK欠乏症が生じることがある。慢性胆汁うっ滞では,ビタミンKの補充(10mg,皮下)によって24時間以内にPTが30%以上是正される場合は,著明な肝細胞機能障害を除外することができる。

血清タンパク質

ほとんどの血清タンパク質は肝細胞によって合成され,具体的にはα-およびβ-グロブリン,アルブミン,ほとんどの凝固因子などがある(血管内皮で産生される第VIII因子,B細胞が産生するγ-グロブリンは除く)。肝細胞からは,特定の疾患の診断に参考となるタンパク質も産生される:

これらのタンパク質値は様々な組織の損傷(例,炎症)に反応して上昇するため,測定値の上昇は必ずしも肝疾患を特異的に反映するわけではない。

血清アルブミンは,一般的に慢性肝疾患で減少するが,これは分布容積の増加(例,腹水による)や肝臓での合成低下,またはその両方が原因である。測定値が3g/dL未満(30g/L未満)の場合,以下の原因のいずれかによる合成の減少が示唆される:

アルブミンの半減期は約20日間であるため,血清中濃度の上昇または低下には数週間を要する。

その他の臨床検査

アンモニア

結腸に到達した窒素化合物(例,摂取されたタンパク質,分泌された尿素)は,常在細菌により分解され,アンモニアとして放出される。その後,アンモニアは吸収され,門脈を介して肝臓に輸送される。正常な肝臓では,アンモニアは直ちに門脈から除去されてグルタミンに変換され,グルタミンは腎臓で尿素に代謝されて排泄される。門脈大循環シャントのある患者では,障害された肝臓がアンモニアを除去できず,アンモニアが大循環に入って 門脈大循環性脳症(肝性脳症) 門脈大循環性脳症 門脈大循環性脳症は精神神経症状を生じる症候群である。ほとんどの場合,門脈大循環シャントが形成された患者において,腸管内タンパク質の増加または急性の代謝ストレス(例,消化管出血,感染,電解質異常)の結果として発生する。主に精神神経症状がみられる(例,錯乱,羽ばたき振戦,昏睡)。診断は臨床所見に基づく。治療は通常,原因となっている急性の病態の... さらに読む の原因となる可能性がある。肝性脳症ではアンモニア値が上昇するが,低値となることもあり,必ずしも病態を正しく反映しない。進行した肝疾患では,以下の要因がアンモニア値を上昇させることがある:

  • 高タンパク質食

  • 消化管出血

  • 低カリウム血症

  • 代謝性アルカローシス

  • 特定の薬物(例,アルコール,バルビツール酸系,利尿薬,オピオイド,バルプロ酸)

  • 大量化学療法

  • 静脈栄養

  • 腎機能不全

  • 極度の筋労作および筋萎縮

  • サリチル酸塩中毒

  • ショック

  • 尿管S状結腸吻合術

  • ウレアーゼ産生菌(例,Proteus mirabilis)による尿路感染症

アンモニア値の上昇幅は肝性脳症の重症度とあまり相関しないため,治療のモニタリングにおけるアンモニア値の有用性は限られている。

血清免疫グロブリン

慢性肝疾患では,しばしば血清中の免疫グロブリンが増加する。しかしながら,その上昇は特異的でないため,通常は臨床的に参考にならない。測定値は急性肝炎ではわずかに,慢性活動性肝炎では中等度に,自己免疫性肝炎では著明に上昇する。免疫グロブリン値の上昇パターンは,新たに得られる情報量は少ないものの,通常は疾患によって著高を示す免疫グロブリンの種類が異なる:

抗ミトコンドリア抗体

この種の不均一な抗体は,95%を超える原発性胆汁性胆管炎患者で陽性となり,通常は高い抗体価が得られる。ときに以下の疾患でも認められる:

  • 自己免疫性肝炎

  • 薬剤性肝炎

  • その他の自己免疫疾患:結合組織疾患,重症筋無力症,自己免疫性甲状腺炎,アジソン病,自己免疫性溶血性貧血など

その他の抗体

上記以外の抗体が以下の疾患の診断に役立つことがある:

  • 自己免疫性肝炎:アクチンに対する平滑筋抗体,均質な(びまん性の)蛍光を呈する抗核抗体(ANA),および抗肝腎ミクロソーム1抗体(抗LKM1抗体)がしばしば認められる。

  • 原発性胆汁性胆管炎:抗ミトコンドリア抗体が診断の決め手となる。

  • 原発性硬化性胆管炎:核周囲型抗好中球細胞質抗体(P-ANCA)が疑いを高めるのに役立つ可能性がある。

これらの抗体が単独で異常を示した場合は,診断的価値は全くなく,発生機序を明らかにすることもできない。

α-フェトプロテイン(AFP)

AFPは,正常では胚の卵黄嚢と胎児の肝臓で合成される糖タンパク質で,新生児および妊娠中の母親で上昇がみられる。AFP値は,出生後1年間で迅速に低下していき,1歳になるまでに成人のレベル(正常では検査施設に応じて10~20ng/mLまたは10~20mg/L未満)に達する。AFP値の上昇は,どれだけ小幅であっても,原発性 肝細胞癌 肝細胞癌 肝細胞癌は通常,肝硬変患者に発生し,B型およびC型肝炎ウイルス感染症の有病率が高い地域ではよくみられる。症状と徴候は通常,非特異的である。診断はα-フェトプロテイン(AFP)値と画像検査のほか,ときに肝生検に基づく。高リスク患者には,定期的なAFPの測定および超音波検査によるスクリーニングがときに推奨される。癌が進行した場合の予後は不良で... さらに読む (HCC)を考慮すべきである。血清AFP値は,一般に腫瘍の大きさ,分化度および転移の有無と相関する。小さい腫瘍でもわずかなAFPを産生するため,検査値の上昇はHCCの存在(特に腫瘍径が3cmを超える場合)を示唆する。AFP値は予後予測にも有用である。

急性および慢性肝炎でも軽度のAFP上昇がみられ,おそらくは肝再生を反映し, 劇症肝炎 劇症肝炎 劇症肝炎は,肝実質の広範な壊死と肝臓の縮小(急性黄色肝萎縮症)を特徴とし,通常は特定の肝炎ウイルスへの感染後,毒性物質への曝露後,または薬剤性肝障害の発生後にみられる,まれな症候群である。 ( 肝疾患を有する患者の評価と 急性ウイルス性肝炎の概要も参照のこと。) B型肝炎ウイルスはときに劇症肝炎の原因とされるが,B型劇症肝炎症例の最大50... さらに読む ではAFP値がときに500ng/mLまで上昇することがある。その他の少数の疾患(例,胎児性奇形腫,小児の肝芽腫,消化器癌の肝転移の一部,一部の胆管癌)でもAFP値の上昇がみられるが,そのような状況は一般的ではなく,通常は臨床的および病理組織学的な根拠に基づいて鑑別することができる。

HCC患者におけるAFPの感度,特異度およびピーク値には,集団間で変動がみられ,肝炎の有病率や民族などの因子の相違を反映している。肝炎の有病率が比較的低い地域(例,北米,西欧)では,20ng/mLをカットオフ値とすると,感度39~64%,特異度76~91%となる。ただし,全てのHCCでAFPが産生されるわけではない。したがって,AFPは理想的なスクリーニング検査ではないが,HCCの検出において一定の役割がある。測定値が正常上限値を超えた場合(20ng/mLを超える),特に上昇が続いている場合は,HCCが強く示唆される。腫瘤がありAFPが高値(例,200ng/mLを超える)の肝硬変患者では,適中率が高い。現時点では,AFPと超音波検査の併用が最善のサーベイランスとなる。

肝線維化の検査

特定の血液検査パネルは 肝線維化 肝線維化 肝線維化は,損傷部が過度の組織増生を伴って治癒することで,肝臓内に過剰な結合組織が蓄積した状態である。細胞外基質の過剰産生,分解不良,またはその両者が同時にみられる。誘因は慢性傷害であり,特に炎症がみられる場合である。線維化自体は症状を引き起こさないが, 門脈圧亢進症(瘢痕によって肝臓内の血流に異常が生じる)や... さらに読む の程度を評価することを目的としている。例えば,FibroTestTM(米国では FibroSure® として知られる)には複数のパラメータが組み入れられている。他にそのような検査として,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの血小板に対する比(APRI)があり,これら2つのルーチンの臨床検査を用いている。これらの血液検査パネルは肝線維化を評価するために 超音波エラストグラフィー 超音波検査 超音波検査 としばしば併用され,特に C型慢性肝炎 C型肝炎,慢性 C型肝炎は,慢性肝炎の一般的な原因の1つである。慢性肝疾患の症状が現れるまで無症状に経過する場合が多い。治療は直接作用型抗ウイルス薬とゲノタイプに応じた他の薬剤の投与による;検出限界未満までのウイルスRNAの永続的な排除が可能である。 ( 肝炎の原因, 慢性肝炎の概要,および C型急性肝炎も参照のこと。)... さらに読む 患者でよく用いられる。

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