注射薬物の使用

執筆者:Gerald F. O’Malley, DO, Grand Strand Regional Medical Center;
Rika O’Malley, MD, Grand Strand Medical Center
レビュー/改訂 2020年 5月
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より迅速なもしくは強力な効果またはこれらの両方を得るため,いくつかの乱用薬物が注射によって投与される。薬物は一般に静脈内注射されるが,皮下,筋肉内,または舌下にさえ注射されることもある。使用者は一般に末梢静脈内に注射するが,慢性使用によりこれらが硬化してしまった場合には,太い中心静脈(例,内頸静脈,大腿静脈,腋窩静脈)内に注射することを覚える者もいる。

合併症

違法薬物を注射する者は,薬物の有害な薬力学的効果のリスクだけでなく,薬物とともに注射される夾雑物,混ぜ物,および感染因子に関連する合併症のリスクにも曝されている。

混ぜ物

一部の薬物使用者は処方薬の錠剤を砕き,これらを溶解してできた溶液を静脈内注射するため,錠剤中によく含まれる一連の賦形剤(セルロース,タルク,コーンスターチなど)も一緒に自己注射することになる。賦形剤は肺毛細血管床によって捕捉され,慢性炎症や異物肉芽腫症を引き起こすことがある。賦形剤は心臓弁の内皮を損傷することもあるため,心内膜炎のリスクが高まる。

ヘロインコカインなどの違法薬物は,様々な混ぜ物(例,アンフェタミン,クレンブテロール,デキストロメトルファン,フェンタニル,ケタミン,レバミゾール,リドカイン,リゼルグ酸ジエチルアミド[LSD],プソイドエフェドリン,キニーネ,スコポラミン,キシラジン)で「割られている」ことが多い。精神作用を高めるために,または純粋な薬物の代用として混ぜ物が添加される場合があるが,それらが存在すると診断上および治療上の判断が難しくなることがある。

感染因子

注射針の共用や不衛生な投薬により,多くの感染性合併症に至ることがある。注射部位合併症には,皮膚膿瘍蜂窩織炎リンパ管炎リンパ節炎,血栓性静脈炎などがある。敗血症性塞栓や菌血症により遠隔部位に病巣が生じる感染性合併症には,細菌性心内膜炎,様々な臓器や部位における膿瘍などがある。特に多いのは敗血症による肺塞栓および骨髄炎(特に腰椎)である。感染性脊椎炎および仙腸関節炎が起こる可能性もある。

全身性感染症で最も多いのはB型およびC型肝炎HIV感染症である。静注薬物使用者では肺炎のリスクが高く,これは誤嚥または細菌の血行性伝播に起因する。薬物注射により直接引き起こされたものではないが,静注薬物使用者で頻度が高い他の感染症として,結核梅毒,その他の性感染症などがある。ボツリヌス症破傷風も静注薬物乱用によって起こりうる。

診断

  • 病歴,身体診察,または両方

一部の患者は注射薬物の使用をあっさりと認めるが,注射の証拠を見つけ出すために詳細な身体診察が必要な患者もいる。

静注薬物の慢性使用は,皮下静脈への反復注射による注射痕を認めることで確認できる。注射痕は小さな黒い点状病変(針穿刺痕)の線状領域で,周囲の皮膚には慢性炎症による黒ずみや変色がみられる。注射痕は容易に到達可能な部位(例,前肘窩,前腕)で認められることが多いが,一部の薬物使用者は目に付きにくい部位(例,腋窩)を選択することで,自己注射の証拠を隠そうとする。

皮下注射(皮膚打ち)により特徴的な環状の瘢痕や潰瘍を生じることがあり,以前の膿瘍の徴候がみられる可能性もある。嗜癖者は注射痕を頻回の献血,虫刺され,または過去の外傷によるものと主張して,薬物使用の徴候を否定することがある。

治療

  • 感染性合併症の予防と治療

薬物使用者,特に注射薬物使用の既往がある者については,ウイルス性肝炎HIV感染症,およびこれらの患者でよくみられる他の様々な感染症(例,結核,梅毒,その他の性感染症)がないか徹底的に評価すべきである。また,肝炎インフルエンザ肺炎球菌感染症破傷風,その他の感染症を予防するためのワクチン接種を,該当する全ての患者に勧めるべきである。

AIDSの流行を契機として害悪削減運動(harm-reduction movement)が起きており,薬物使用の中止を必ずしも求めずに害悪を削減することを目的としている。例えば,薬物注射がやめられない使用者に清潔な針や注射器を提供することによって,HIVや肝炎の拡散が抑えられる。

感染性合併症の治療は他の条件に起因する類似の感染症の治療と同様であり,これには抗菌薬の使用と膿瘍の切開排膿が含まれる。静脈アクセスの確保(ならびに,それを患者のさらなる薬物注射に使用させないようにすること)が難しい場合,および治療レジメンのアドヒアランスが不良な場合には,治療が困難になる可能性がある。

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