猜疑性パーソナリティ症(PPD)

執筆者:Mark Zimmerman, MD, South County Psychiatry
Reviewed ByMashal Khan, MD, NewYork-Presbyterian Hospital
レビュー/改訂 修正済み 2023年 9月
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猜疑性パーソナリティ症(paranoid personality disorder)は,他者の動機を悪意のあるものと解釈する,他者に対する根拠のない不信および疑念の広汎なパターンを特徴とする。診断は臨床基準による。治療は認知行動療法のほか,ときに薬剤による。

パーソナリティ症の概要も参照のこと。)

猜疑性パーソナリティ症の患者は他者を信用せず,何の根拠もない,または不十分な根拠しかない場合でも,他者が自分に害をなそうとしている,または自分を欺こうとしていると考える。

推定有病率の中央値は3.2%であるが,実際は4.4%にのぼる可能性もある(1, 2)。男性の方が多いと考えられている。

家族内で有病率が高いことを示す若干のエビデンスがある。一部のエビデンスから,この疾患と小児期の心理的および/または身体的虐待や犯罪被害との関連性が示唆されている。

併存症がよくみられる。猜疑性パーソナリティ症が単独の診断であることはまれである。よくみられる併存症として,思考障害(例,統合失調症),不安症(例,社交恐怖症[社交不安症]),心的外傷後ストレス症アルコール使用症,他のパーソナリティ症(例,ボーダーラインパーソナリティ症)などがある。

総論の参考文献

  1. 1.Grant BF, Hasin DS, Stinson FS, et al: Prevalence, correlates, and disability of personality disorders in the United States: Results from the national epidemiologic survey on alcohol and related conditions.J Clin Psychiatry 65(7):948-958, 2004.doi: 10.4088/jcp.v65n0711

  2. 2.Morgan TA, Zimmerman M: Epidemiology of personality disorders.In Handbook of Personality Disorders: Theory, Research, and Treatment.2nd ed, edited by WJ Livesley, R Larstone, New York, NY: The Guilford Press, 2018, pp.173-196.

猜疑性パーソナリティ症の症状と徴候

猜疑性パーソナリティ症の患者は,他者が自分を利用する,裏切る,または害する計画を立てていると疑う。患者は,いかなるときでも,理由もなく自分が攻撃されるかもしれないと感じている。証拠がほとんどないか全くない場合でも,自分の疑念および考えを主張し続ける。

しばしば,このような患者は他者が自分を大きく,取り返しのつかないほど傷つけたと考えている。患者は潜在的な侮辱,軽蔑,脅し,および不忠がないか非常に警戒しており,発言および行動に隠れた意味がないか探る。自分の疑念を裏付ける証拠を探して他者を詳細に吟味する。例えば,手伝いの申し出を,自分が1人で仕事をすることができないことを暗示していると誤解することがある。何らかの形で侮辱された,または傷つけられたと考える場合,患者は自分を傷つけた相手を許さない。傷つけられたと感じて反応し,反撃したり,怒ったりする傾向がある。他者を信用しないため,自律性をもち,主導権を握っていなければならないと感じる。

このような患者は,他者に秘密を打ち明けたり,他者と親密な関係を築いたりすることをためらうが,それは情報が自分に不利な形で使われるのではないかと懸念するためである。患者は友人の誠実さおよび配偶者またはパートナーの貞節を疑う。極端に嫉妬深い場合があり,自分の嫉妬を正当化するために,配偶者またはパートナーの活動および動機について絶えず問いただすことがある。

猜疑性パーソナリティ症の患者は対人関係に困難を抱えていることが多い。他者が患者に対し否定的に反応すると,その反応を自分の本来の疑念を裏付けるものととらえる。

猜疑性パーソナリティ症の診断

  • Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed, Text Revision(DSM-5-TR)の診断基準

猜疑性パーソナリティ症の診断(1)を下すには,患者に以下が認められる必要がある:

  • 他者に対する持続的な不信および疑い深さ

この不信および疑念は以下のうちの4つ以上が認められることにより示される(1):

  • 他者が自分を利用している,危害を加えている,または裏切っているという疑念を根拠なく抱いている

  • 友人や同僚の信頼性について根拠のない疑いにとらわれている

  • その情報が自分に不利に利用されるかもしれないと考えて,他者に秘密を打ち明けたがらない

  • 悪意のない言葉または出来事に誹謗,敵意,または脅しの意味合いが隠されていると誤解する

  • 侮辱,中傷,または軽蔑に対して恨みを抱き続ける

  • 自分の性格または評判が非難されたと考えやすく,すぐに怒りで反応したり反撃に出たりする

  • 自分の配偶者またはパートナーが不貞を働いているという根拠のない疑念を繰り返し抱く

また,症状が成人期早期までに始まっている必要もある。

鑑別診断

猜疑性パーソナリティ症は,他者に関するパラノイアが全般的であること(例,対照的に,ボーダーラインパーソナリティ症ではパラノイアはより一過性である)および以下に示す各疾患の中核的特徴により,他のパーソナリティ症と鑑別できる:

猜疑性パーソナリティ症は,妄想症(被害型),統合失調症,および精神症的特徴をもつ抑うつ症または双極症との鑑別が可能であるが,それはこれらの疾患では精神症症状のエピソード(例,妄想,幻覚)が顕著だからである。

診断に関する参考文献

  1. 1. American Psychiatric Association: Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed, Text Revision (DSM-5-TR).Washington, DC, American Psychiatric Association, 2022, pp 737-741.

猜疑性パーソナリティ症の治療

  • 認知行動療法

  • ときに薬剤

猜疑性パーソナリティ症の治療における一般原則は,全てのパーソナリティ症に対するそれと同じである。

猜疑性パーソナリティ症に有効であることが証明された治療法はない。

患者の疑念および不信の程度が全体的に高いことから信頼関係(ラポール)の確立が困難となる。患者の疑念について何らかの妥当性を認めることで,患者と医師の協力関係が促進されることがある。この協力関係により,患者は認知行動療法に参加したり,特定の症状の治療のために処方される薬剤(例,抗うつ薬,非定型抗精神病薬)を進んで服用したりできるようになることがある。非定型(第2世代)抗精神病薬は不安を緩和するのに役立つ可能性があるが(1),その効力が確認されたプラセボ対照試験はない。

治療に関する参考文献

  1. 1.Birkeland SF: Psychopharmacological treatment and course in paranoid personality disorder: A case series.Int Clin Psychopharmacol 28(5):283-285, 2013. doi: 10.1097/YIC.0b013e328363f676

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