自己愛性パーソナリティ症(NPD)

執筆者:Mark Zimmerman, MD, South County Psychiatry
Reviewed ByMashal Khan, MD, NewYork-Presbyterian Hospital
レビュー/改訂 修正済み 2023年 9月
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自己愛性パーソナリティ症(narcissistic personality disorder)は誇大性,賞賛への欲求,および共感の欠如の広汎なパターンを特徴とする。診断は臨床基準による。治療は精神力動的精神療法による。

パーソナリティ症の概要も参照のこと。)

自己愛性パーソナリティ症の患者は,自尊心の調節に困難を抱えるため,賞賛や特別な人物または機関との関係を必要とするほか,優越感を維持するために他者を低く評価する傾向もある。

5つの疫学研究をまとめたレビューでは,有病率の中央値は1.6%であった(1)。女性より男性でより多くみられる。

併存症がよくみられる。患者は抑うつ症(例,うつ病,持続性抑うつ症),神経性やせ症物質使用症(特にコカイン),または他のパーソナリティ症(演技性ボーダーライン猜疑性)を有していることも多い(2)。

総論の参考文献

  1. 1.Morgan TA, Zimmerman M: Epidemiology of personality disorders.In Handbook of Personality Disorders: Theory, Research, and Treatment.2nd ed, edited by WJ Livesley, R Larstone, New York, NY: The Guilford Press, 2018, pp.173-196.

  2. 2.Stinson FS, Dawson DA, Goldstein RB, et al: Prevalence, correlates, disability, and comorbidity of DSM-IV narcissistic personality disorder: Results from the wave 2 national epidemiologic survey on alcohol and related conditions.J Clin Psychiatry 69(7):1033-1045, 2008. doi: 10.4088/jcp.v69n0701

自己愛性パーソナリティ症の病因

自己愛性パーソナリティ症に寄与する生物学的因子に関する限られたデータからは,有意な遺伝要素の存在が示唆されている。養育者が子供を適切に扱わなかった(例えば,過度に批判的であったり,過度に子供を賞賛,称揚,または甘やかしたりすることによる)可能性を仮定する理論もある。

特別な才能や能力をもっており,自己像および自己感覚を他者の賞賛や尊敬と結びつけるのに慣れている患者もいる。

自己愛性パーソナリティ症の症状と徴候

自己愛性パーソナリティ症の患者は,自分の能力を過大評価し,自分の業績を誇張する。自分が優れている,独特である,または特別であると考えている。患者の自分に関する価値および業績についての過大評価はしばしば他者に関する価値および業績の過小評価を含意する。

患者は大きな業績という空想―圧倒的な知能または美しさについて賞賛されること,名声および影響力をもつこと,または素晴らしい恋愛を経験すること―にとらわれている。普通の人とではなく,自分と同様に特別で才能のある人とのみ関わるべきであると考えている。このような並はずれた人々との付き合いは患者の自尊心を裏付け,高めるために利用される。

自己愛性パーソナリティ症の患者は賞賛を受ける必要があるため,患者の自尊心は他者からの肯定的評価に依存し,このため通常は非常に脆弱である。この疾患を有する患者はしばしば他者が自分のことをどのように考えているかを注視しており,自分がどれだけうまくやっているかを評定している。他者による批判ならびに恥辱感および敗北感を味わわせる失敗に敏感であり,これらを気にしている。怒りまたは軽蔑をもって反応したり,悪意をもって反撃したりすることがある。または,自分のうぬぼれの感覚(誇大性)を守るために,引きこもったり,その状況を表向きは受け入れたりすることがある。失敗する可能性のある状況を避けることがある。

自己愛性パーソナリティ症の診断

  • Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed, Text Revision(DSM-5-TR)の診断基準

自己愛性パーソナリティ症の診断(1)を下すには,患者に以下が認められる必要がある:

  • 誇大性,賞賛への欲求,および共感の欠如を示す持続的なパターン

このパターンは,以下のうちの5つ以上が認められることによって示される:

  • 自分の重要性および才能について誇大で根拠のない感覚がある(誇大性)

  • 際限ない成功,影響力,権力,知性,美しさ,または無欠の愛の空想にとらわれている

  • 自分が特別かつ独特であり,最も優れた人々とのみ付き合うべきであると信じている

  • 無条件に賞賛されることを求める

  • 特権意識がある

  • 目標を達成するために他者を不当に利用する

  • 共感を欠いている

  • 他者に嫉妬し,他者が自分に嫉妬していると信じている

  • 傲慢かつ横柄に振る舞う

また,症状が成人期早期までに始まっている必要もある。

鑑別診断

自己愛性パーソナリティ症は以下の疾患と鑑別することができる:

  • 双極症自己愛性パーソナリティ症の患者は,しばしば抑うつを訴えて受診し,その誇大性のために,双極症と誤診されることがある。自己愛性パーソナリティ症では抑うつがみられることがあるが,他者より上の立場にいたいという欲求が常にあることで,双極症と鑑別される。また,自己愛性パーソナリティ症では,気分の変化は自尊心に対する侮辱によって引き起こされる。

  • 反社会性パーソナリティ症自分のために他者を利用することは両方のパーソナリティ症の特徴である。しかしながら,その動機は異なる。反社会性パーソナリティ症の患者は物質的な利益のために他者を利用するが,自己愛性パーソナリティ症の患者は自尊心を維持するために利用する。

  • 演技性パーソナリティ症他者の注意を引こうとすることは両方のパーソナリティ症に特徴的である。しかし,自己愛性パーソナリティ症の患者は,演技性パーソナリティ症の患者とは異なり,注意を引くために気取ったことやばかげたことをするのを非常に嫌い,賞賛されることを望む。

診断に関する参考文献

  1. 1. American Psychiatric Association: Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed, Text Revision (DSM-5-TR).Washington, DC, American Psychiatric Association, 2022, pp 760-764.

自己愛性パーソナリティ症の治療

  • 精神力動的精神療法

自己愛性パーソナリティ症の治療における一般原則は,全てのパーソナリティ症に対するそれと同じである。

基礎にある葛藤に焦点を当てた精神力動的精神療法が有効なことがある(1)。ボーダーラインパーソナリティ症のために開発されたアプローチの一部は,自己愛性パーソナリティ症の患者用に効果的に改変できる場合がある(2, 3)。具体的には以下のものがある:

これらのアプローチでは,自分および他者を感情的に経験するあり方の問題に焦点を合わせる。

自己愛性パーソナリティ症の患者は,習熟度を高める機会を魅力的と捉えることがあるため,認知行動療法が患者にとって魅力的となる場合がある;患者の賞賛への欲求により治療者が患者の行動を方向づけられる場合がある。自己愛性パーソナリティ症患者の中には,マニュアル化された認知行動療法のアプローチを簡単すぎる,または自分の特殊な欲求を満たすには一般的すぎると考える。

治療に関する参考文献

  1. 1.Crisp H, Gabbard GO: Principles of psychodynamic treatment for patients with narcissistic personality disorder.J Pers Disord 34(Suppl):143-158, 2020. doi: 10.1521/pedi.2020.34.supp.143

  2. 2.Choi-Kain LW, Simonsen S, Euler S: A mentalizing approach for narcissistic personality disorder: Moving from "me-mode" to "we-mode." Am J Psychother 75(1):38-43, 2022. doi: 10.1176/appi.psychotherapy.20210017

  3. 3.Diamond D, Yeomans F, Keefe JR: Transference-focused psychotherapy for pathological narcissism and narcissistic personality disorder (TFP-N).Psychodyn Psychiatry 49(2):244-272, 2021. doi: 10.1521/pdps.2021.49.2.244

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