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顕微鏡的多発血管炎(MPA)

執筆者:

Alexandra Villa-Forte

, MD, MPH, Cleveland Clinic

レビュー/改訂 2020年 7月
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顕微鏡的多発血管炎は,主に小型血管を侵し,免疫グロブリン沈着を伴わない(pauci-immune)全身性壊死性血管炎である。急速に進行する糸球体腎炎および肺胞出血を伴う肺腎症候群として発症することがあるが,疾患のパターンは侵される臓器により異なる。診断は臨床所見に基づいて行い,ときに生検で確定する。疾患の重症度によるが,治療にはコルチコステロイドおよび免疫抑制薬の投与などがある。

顕微鏡的多発血管炎(MPA)はまれである(100万人当たり約13~19例)。発生機序は不明である。MPAは小型血管を侵し, 多発血管炎性肉芽腫症 多発血管炎性肉芽腫症(GPA) 多発血管炎性肉芽腫症は,壊死性肉芽腫性炎症,小型および中型血管の血管炎,およびしばしば半月体形成を伴う巣状壊死性糸球体腎炎を特徴とする。典型的には,上気道と下気道および腎臓が侵されるが,どの臓器も侵される可能性がある。症状は,侵された臓器や器官系によって異なる。患者は上下気道症状(例,繰り返す鼻漏または鼻出血,咳嗽)とそれに続いて高血圧および浮腫,または多臓器障害を反映した症状を呈することがある。診断には通常,生検を必要とする。治療はコ... さらに読む 多発血管炎性肉芽腫症(GPA) (GPA)および 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA) 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は,全身性の小型および中型の血管の壊死性血管炎であり,血管外肉芽腫の存在,好酸球増多,および好酸球の組織浸潤を特徴とする。EGPAは,成人発症喘息,アレルギー性鼻炎,鼻茸,またはこれらの組合せがみられる個人に生じる。診断は生検によるものが最も確実である。治療は主にコルチコステロイドにより行い,重度の疾患に対しては,他の免疫抑制薬を追加する。 ( 血管炎の概要も参照のこと。)... さらに読む 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA) (EGPA)と同様にpauci-immune(すなわち,免疫グロブリンの沈着が組織生検でみられない)である;これにより,MPAは免疫複合体介在性の小型血管炎(例, IgA血管炎 IgA血管炎(IgAV) IgA血管炎(以前はヘノッホ-シェーンライン紫斑病と呼ばれた)は主に小型の血管を侵す血管炎である。小児に最も多く生じる。一般的な症状としては,触知可能な紫斑,関節痛,消化管の症候,糸球体腎炎などがある。小児では診断を臨床的に行うが,成人では通常は生検が必要である。通常,小児では自然治癒し,成人では慢性化する。コルチコステロイドで関節痛および消化管症状を低減できるが,疾患の経過が変わることはない。進行性糸球体腎炎は,高用量コルチコステロイ... さらに読む IgA血管炎(IgAV) ―以前はヘノッホ-シェーンライン紫斑病として知られていた)および小型血管の 皮膚血管炎 皮膚血管炎 皮膚血管炎は,内臓ではなく皮膚および皮下組織の小型または中型の血管を侵す血管炎のことを指す。皮膚血管炎は,皮膚に限局する場合もあれば,原発性または二次性の全身性血管炎疾患の一要素である場合もある。紫斑,点状出血,または潰瘍が生じることがある。診断には生検が必要である。治療法は病因および疾患の範囲によって異なる。 ( 血管炎の概要も参照のこと。) 血管炎は皮膚の小型または中型の血管を侵すことがある。皮膚の小型の血管(例,細動脈,毛細血管,... さらに読む 皮膚血管炎 と鑑別される。MPAは,中型の筋性動脈を侵す 結節性多発動脈炎 結節性多発動脈炎(PAN) 結節性多発動脈炎は,典型的には中型の筋性動脈およびときに小型の筋性動脈を侵す全身性壊死性血管炎で,組織の二次的虚血を来す。腎臓,皮膚,関節,筋肉,末梢神経,および消化管が侵される頻度が最も高いが,どの臓器も侵される可能性がある。しかし,肺は通常障害を免れる。患者は典型的には全身症状(例,発熱,疲労)を呈する。診断には生検または動脈造影を必要とする。コルチコステロイドおよび免疫抑制薬による治療がしばしば効果的である。... さらに読む と異なり,主に小型血管(毛細血管および後毛細血管細静脈を含む)を侵す。比較的古い文献(すなわち,1994年以前)では,結節性多発動脈炎とMPAは十分に区別されていない(肺胞出血と糸球体腎炎はMPAで生じる可能性があり,結節性多発動脈炎では生じない)。まれに,MPAはB型肝炎とともに発症することがある。

肉芽腫性の破壊的病変(例,肺の空洞性病変)がなく上気道が通常は最小限ないし全く侵されないことを除けば,臨床像は多発血管炎性肉芽腫症と同様である。両疾患で,抗好中球細胞質抗体(ANCA)を認めることがある。

MPAの症状と徴候

通常は,発熱,体重減少,筋肉痛,および関節痛などの全身症状を伴う前駆症状が生じる。他の症状は,どの臓器や器官系が侵されるかによる:

MPAの診断

  • 臨床所見

  • 抗好中球細胞質抗体の検査とルーチンの臨床検査

  • 生検

発熱,体重減少,関節痛,腹痛,肺胞出血,新たに発生した腎炎症候群,新たに発生した多発性単神経障害,または多発神経障害などの説明のつかない組合せがみられる患者では,顕微鏡的多発血管炎を疑うべきである。臨床検査およびときにX線検査を行うが,通常,診断は生検で確定する。

検査には,血算,赤血球沈降速度(赤沈),C反応性タンパク(CRP),尿検査,血清クレアチニン,抗好中球細胞質抗体(ANCA)検査などがある。全身性炎症を反映して,赤沈値,C反応性タンパク(CRP)値,白血球数,および血小板数が上昇する。慢性疾患に伴う貧血がよくみられる。ヘマトクリット値の急な低下は,肺胞出血または消化管の出血を示唆する。尿検査(血尿,タンパク尿,細胞円柱を調べるため)を行うべきであり,腎障害を調べるために血清クレアチニンを定期的に測定すべきである。

蛍光抗体染色でANCAを検出できる;この検査に続いて酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で特異抗体を調べる。少なくとも60%の患者はANCA陽性であり,通常はミエロペルオキシダーゼに対する抗体と関連する核周囲ANCA(p-ANCA)である。

血管炎を確定するために,最も到達しやすい病変組織の生検を行うべきである。腎生検で,pauci-immune(微量免疫)型で巣状分節性の壊死性糸球体腎炎(糸球体毛細管壁のフィブリノイド壊死を伴い,細胞性半月体の形成に至る)を認めることがある。

呼吸器症状を伴う患者では,胸部画像検査で浸潤を調べる。両側性の斑状浸潤は,たとえ喀血がない患者でも,肺胞出血を示唆する。CTの方がX線よりもはるかに感度が高い。

患者に呼吸困難および両側性の浸潤を認める場合,気管支鏡検査を直ちに行い肺胞出血の有無を調べるとともに感染症を除外すべきである。気管支鏡を気道深く挿入するにつれて量が増えてくるような両肺および全気管支からの血液は,活動性の肺胞出血を示唆する。ヘモジデリン貪食マクロファージが,出血が始まってから24~72時間以内に現れ,最長2カ月間残存することがある。

MPAの治療

  • 重要臓器が侵された場合,高用量コルチコステロイドに加えてシクロホスファミドまたはリツキシマブ

  • 比較的重症度が低い症例に対しては,コルチコステロイドに加えてメトトレキサート

寛解導入療法 治療 多発血管炎性肉芽腫症は,壊死性肉芽腫性炎症,小型および中型血管の血管炎,およびしばしば半月体形成を伴う巣状壊死性糸球体腎炎を特徴とする。典型的には,上気道と下気道および腎臓が侵されるが,どの臓器も侵される可能性がある。症状は,侵された臓器や器官系によって異なる。患者は上下気道症状(例,繰り返す鼻漏または鼻出血,咳嗽)とそれに続いて高血圧および浮腫,または多臓器障害を反映した症状を呈することがある。診断には通常,生検を必要とする。治療はコ... さらに読む 治療 は多発血管炎性肉芽腫症におけるものと同様であるが,顕微鏡的多発血管炎では維持療法の必要性はそれほど明確に確立されていない。シクロホスファミド連日投与にコルチコステロイドを加えると,重要臓器が侵されている場合は生存率が改善する。リツキシマブは,重度の疾患の寛解誘導に関してシクロホスファミドに劣らないことが示されている。しかし,クレアチニン値が非常に高い患者に関するデータは限られている。導入および維持レジメンは一様ではなく,血漿交換およびメチルプレドニゾロンのパルス静注などの補助療法が不要な場合と必要な場合がある。

それほど重症ではない症例は,コルチコステロイドに加えてメトトレキサートで管理することがある。

MPAの要点

  • 顕微鏡的多発血管炎は,まれな小型血管炎である。

  • 症状は様々であり,肺胞出血,多発性単神経障害,および糸球体腎炎などがみられる。

  • 抗好中球細胞質抗体検査および生検によって診断を確定する。

  • コルチコステロイドに加えて1剤の免疫抑制薬(例,重度の疾患に対するシクロホスファミドまたはリツキシマブ)で治療する。

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