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シェーグレン症候群

(Sjögren症候群)

執筆者:

Alana M. Nevares

, MD, The University of Vermont Medical Center

レビュー/改訂 2020年 2月
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シェーグレン症候群は,比較的よくみられる原因不明の慢性,自己免疫性,全身性,炎症性の疾患である。外分泌腺のリンパ球浸潤およびそれに続く二次的な分泌機能障害による,口腔,眼,およびその他の粘膜の乾燥を特徴とする。シェーグレン症候群は様々な外分泌腺または他の器官に影響を及ぼすことがある。診断は,眼,口腔,および唾液腺の障害に関連する特異的な基準,自己抗体,ならびに(ときに)病理組織学的検査による。治療は通常,対症療法である。

シェーグレン症候群は中年女性に最もよく起こる。本疾患は,他に合併症がなければ原発性に分類される。 関節リウマチ 関節リウマチ(RA) 関節リウマチ(RA)は,主に関節を侵す慢性の全身性自己免疫疾患である。RAは,サイトカイン,ケモカイン,およびメタロプロテアーゼを介した損傷を引き起こす。特徴として,末梢関節(例,手関節,中手指節関節)に対称性に炎症が生じ,結果として関節構造が進行性に破壊される(通常は全身症状を伴う)。診断は特異的な臨床所見,臨床検査結果,および画像所見に基づく。治療としては,薬物療法,理学療法,およびときに手術を行う。疾患修飾性抗リウマチ薬は症状のコ... さらに読む 関節リウマチ(RA) 全身性エリテマトーデス 全身性エリテマトーデス(SLE) 全身性エリテマトーデスは,自己免疫を原因とする慢性,多臓器性,炎症性の疾患であり,主に若年女性に起こる。一般的な症状としては,関節痛および関節炎,レイノー症候群,頬部などの発疹,胸膜炎または心膜炎,腎障害,中枢神経系障害,血球減少などがある。診断には,臨床的および血清学的な基準が必要である。重症で進行中の活動性疾患の治療には,コルチコステロイドおよび免疫抑制薬を必要とする。 全症例のうち,70~90%が女性(通常妊娠可能年齢)に起こる。... さらに読む 全身性エリテマトーデス(SLE) 全身性強皮症 全身性強皮症 全身性強皮症は,皮膚,関節,および内臓(特に食道,下部消化管,肺,心臓,腎臓)におけるびまん性の線維化および血管異常を特徴とする,原因不明のまれな慢性疾患である。一般的な症状としては,レイノー現象,多発性関節痛,嚥下困難,胸やけ,腫脹などがあり,最終的には皮膚の硬化と手指の拘縮が起こる。肺,心臓,および腎臓の病変がほとんどの死亡の原因である。診断は臨床的に行うが,臨床検査は診断の裏付けになり,予後予測に役立つ。特異的治療は困難であり,合... さらに読む 全身性強皮症 混合性結合組織病 混合性結合組織病(MCTD) 混合性結合組織病は,全身性エリテマトーデス,全身性強皮症,および多発性筋炎の臨床所見を特徴とし,リボ核タンパク質抗原に対する血中の抗核抗体価が著しく上昇する,特異的に定義されるまれな症候群であり。手の腫脹,レイノー症候群,多発性関節痛,炎症性ミオパチー,食道運動の減弱,および間質性肺疾患がよくみられる。診断は,臨床的特徴,リボ核タンパク質に対する抗体,および他の自己免疫疾患に特異的な抗体がみられないことの組合せによる。治療は,疾患の重症... さらに読む 混合性結合組織病(MCTD) 橋本甲状腺炎 橋本甲状腺炎 橋本甲状腺炎は甲状腺の慢性自己免疫性炎症で,リンパ球の浸潤を伴う。所見には,無痛性の甲状腺腫大および甲状腺機能低下症状がある。診断には抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体の抗体価高値を証明することが含まれる。生涯にわたるL-チロキシン補充が一般的には必要となる。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 橋本甲状腺炎は北米の原発性甲状腺機能低下症の最も一般的な原因であると考えられている。女性に数倍多く発生する。発生率は年齢とともに上昇し,... さらに読む 原発性胆汁性肝硬変 原発性胆汁性胆管炎( PBC ) 原発性胆汁性胆管炎(PBC;以前は原発性胆汁性肝硬変として知られていた)は,肝内胆管の進行性の破壊を特徴とし,胆汁うっ滞, 肝硬変,肝不全に至る自己免疫性肝疾患である。初診時には通常は無症状であるが,疲労感がある場合や胆汁うっ滞(例,そう痒,脂肪便)または肝硬変(例, 門脈圧亢進症,腹水)の症状がみられる場合もある。臨床検査では,胆汁うっ滞,IgMの上昇,および特徴的所見として血清中に抗ミトコンドリア抗体が認められる。診断および進行度判... さらに読む ,または 慢性の自己免疫性肝炎 慢性肝炎の概要 慢性肝炎は肝炎が6カ月以上続く場合をいう。一般的な原因としては,B型およびC型肝炎ウイルス,非アルコール性脂肪肝炎(NASH),アルコール性肝疾患,自己免疫性肝疾患(自己免疫性肝炎)などがある。多くの患者では急性肝炎の病歴がなく,最初の徴候は無症候性のアミノトランスフェラーゼ高値である。受診時から肝硬変やその合併症(例,門脈圧亢進症)がみられる場合もある。確定診断とグレードおよび病期の判定のために,ときに生検が必要となる。治療は合併症と... さらに読む などの自己免疫疾患患者の約30%がシェーグレン症候群を発症し,そのような例では,シェーグレン症候群は二次性に分類される。遺伝的関連性が判明している(例,白人の原発性シェーグレン症候群患者のHLA-DR3抗原)。

シェーグレン症候群の病態生理

唾液腺,涙腺,その他の外分泌腺にCD4陽性T細胞と一部のB細胞が浸潤する。T細胞から炎症性サイトカイン(例,IL-2,インターフェロンγ)が産生される。唾液腺管の細胞もサイトカインを産生し,最終的には分泌管の損傷を引き起こす。涙腺の腺上皮の萎縮により,角膜および結膜の乾燥が生じる(乾燥性角結膜炎 乾燥性角結膜炎 乾燥性角結膜炎は,涙液層が不十分であることに起因する両眼の結膜および角膜の慢性的な乾燥である。症状としては,そう痒,熱感,刺激症状,羞明などがある。診断は臨床的に行う;シルマー試験が役立つことがある。治療は,人工涙液の点眼およびときに鼻涙管の開口部の閉塞による。 ( 角膜疾患に関する序論も参照のこと。) 主要な病型が2つ存在する: 涙液減少型の乾燥性角結膜炎は,涙液量の不足により生じる。... さらに読む 乾燥性角結膜炎 )。耳下腺におけるリンパ球浸潤および分泌管内の細胞増殖は,内腔の狭小化の原因となり,場合によっては筋上皮島と称される緻密な細胞構造を形成し,結果として腺の萎縮を生じることがある。乾燥に加えて,消化管の粘膜または粘膜下の萎縮ならびに形質細胞およびリンパ球によるびまん性浸潤により,症状(例,嚥下困難)が引き起こされることがある。

シェーグレン症候群の症状と徴候

腺の症状

シェーグレン症候群は最初に眼または口を侵すことが多く,ときにそれらのみを侵す。ドライアイは砂っぽいザラザラした感覚を引き起こすことがある。進行例では,角膜が激しく損傷し,上皮の糸状物が角膜の表面からつり下がり(糸状角膜炎),視覚が障害されることがある。唾液の減少(口腔乾燥症 口腔乾燥症 口腔乾燥症は唾液の流量の減少または分泌されないことにより生じる。 この状態は不快感につながり,発語および嚥下が妨げられる,義歯使用が困難になる, 口臭が生じる,口腔内pHの低下および細菌増殖により口腔衛生が損なわれるなどの問題が生じる。長期間持続する口腔乾燥症では,重度の 齲蝕および 口腔カンジダ症が発生することがある。口腔乾燥症は高齢者によくみられる愁訴であり,20%の高齢者が罹患している。... さらに読む )の結果,咀嚼および嚥下の困難が生じ,二次的にカンジダ(Candida)感染症,齲蝕,および唾液腺管の結石が発生する。味覚および嗅覚が低下することがある。乾燥は,皮膚,ならびに鼻,咽喉,喉頭,気管支,外陰,および腟の粘膜にも生じることがある。気道の乾燥は,咳嗽を引き起こすことがある。

33%の患者で耳下腺が腫大し,通常は硬くて平滑であり,軽度の圧痛がある。腫大は非対称性のこともあるが,1つの腺の非常に不均衡な持続性の腫大は腫瘍を示唆する場合があるため,鑑別すべきである。慢性的な唾液腺の腫大は,閉塞または感染がない限り,痛みを伴うことはまれである。

脱毛が起こることがある。

腺外の症状

シェーグレン症候群における関節疾患は,通常は非びらん性および非変形性である。関節痛が約50%の患者に生じる。関節炎が約33%の患者に生じ,分布は関節リウマチと似るがびらん性ではない。

他によくみられる腺外の症状としては,全身性リンパ節腫脹,レイノー症候群,間質性肺病変(よくみられるが,重篤になることはまれ), 血管炎 血管炎の概要 血管炎は血管の炎症であり,しばしば虚血,壊死,および臓器の炎症を伴う。血管炎は,あらゆる血管,すなわち動脈,細動脈,静脈,細静脈,または毛細血管を侵すことがある。具体的な血管炎疾患の臨床像は多彩であり,侵された血管の太さおよび部位,臓器病変の範囲,ならびに血管外の炎症の程度およびパターンによって異なる。... さらに読む 血管炎の概要 などがある。血管炎はときに末梢神経(末梢性多発神経障害または多発性単神経炎)もしくは中枢神経系に影響を及ぼす場合や,または発疹(紫斑を含む)および糸球体腎炎を引き起こす場合がある。腎臓が侵されると, 尿細管性アシドーシス 尿細管性アシドーシス 尿細管性アシドーシス(RTA)は,腎臓における水素イオンの排泄障害(1型),重炭酸塩の再吸収障害(2型),またはアルドステロンの産生もしくは反応の異常(4型)によってアシドーシスと電解質異常が生じる病態である。(3型は極めてまれであるため,ここでは考察しない。)無症状の場合もあれば,電解質異常の症候を呈する場合や,慢性腎臓病に進行する場合もある。診断は,誘発試験に反応した尿pHおよび電解質の特徴的な変化に基づく。治療はpHおよび電解質平... さらに読む ,濃縮力の低下,腎結石,または間質性腎炎が引き起こされることがある。偽リンパ腫,B細胞リンパ腫,またはワルデンシュトレームマクログロブリン血症が発生することがある;患者は非ホジキンリンパ腫を通常の40倍の率で発症する。慢性の肝胆道疾患,および膵炎(膵臓の外分泌組織は唾液腺のそれと類似する)が起こる可能性がある。

シェーグレン症候群の診断

  • 臨床基準

  • 眼および唾液腺の検査

  • 自己抗体

  • ときに唾液腺の生検

眼のザラザラ感,ドライアイ,もしくは口腔乾燥,唾液腺の腫大,末梢神経障害,紫斑,または説明のつかない尿細管性アシドーシスがある患者では,シェーグレン症候群を疑うべきである。そのような患者には,眼および唾液腺の評価と血清学的検査などの診断検査を行うべきである。

  • 眼症状:3カ月以上毎日みられる持続性の煩わしいドライアイ,繰り返しみられる眼内に砂や砂利が入っているような感覚,または1日3回以上の人工涙液の使用

  • 口腔症状:3カ月を超える日常の口腔乾燥感,または乾燥した食品の嚥下を補助する液体の日常的な使用

基準を満たすには,少なくとも1つの眼症状または口腔乾燥がある患者で,さらにスコアが4以上である必要もある(American College of Rheumatology/European League Against Rheumatismの原発性シェーグレン症候群の分類基準 American College of Rheumatology/European League Against Rheumatismの原発性シェーグレン症候群の分類基準 American College of Rheumatology/European League Against Rheumatismの原発性シェーグレン症候群の分類基準 の表を参照)。

さらに,改訂された基準には除外基準が含まれている。以下の除外基準に該当する患者は原発性シェーグレン症候群患者ではない:

  • 頭頸部の放射線治療歴

  • 活動性C型肝炎(ポリメラーゼ連鎖反応法により確認)

  • AIDS

  • サルコイドーシス

  • アミロイドーシス

  • 移植片対宿主病

  • IgG4関連疾患

ドライアイおよび口腔乾燥(乾燥症状)の最も一般的な原因は加齢および薬剤であるが,乾燥症状に加えて耳下腺腫脹が発生した場合は,C型肝炎,HIV,過食症,およびサルコイドーシスをシェーグレン症候群と鑑別すべきである。顎下腺の腫大がある場合,特に膵炎の既往があれば,IgG4関連疾患(様々な器官のリンパ形質細胞の浸潤および線維化を特徴とする)を考慮すべきである。

眼の徴候は,各下眼瞼の下につけた濾紙片による刺激の後,5分間で分泌される涙液の量を測定するシルマー試験で評価すべきである。若年者では正常であれば各濾紙片が15mmほど濡れる。シェーグレン症候群患者の大半は5mm未満であるが,試験結果の約15%が偽陽性であり,15%が偽陰性である。ローズベンガルまたはリサミングリーンの点眼による眼の染色は,特異度が非常に高い。各眼で眼の染色スコア(OSS)の合計を記録する(2 診断に関する参考文献 シェーグレン症候群は,比較的よくみられる原因不明の慢性,自己免疫性,全身性,炎症性の疾患である。外分泌腺のリンパ球浸潤およびそれに続く二次的な分泌機能障害による,口腔,眼,およびその他の粘膜の乾燥を特徴とする。シェーグレン症候群は様々な外分泌腺または他の器官に影響を及ぼすことがある。診断は,眼,口腔,および唾液腺の障害に関連する特異的な基準,自己抗体,ならびに(ときに)病理組織学的検査による。治療は通常,対症療法である。... さらに読む 診断に関する参考文献 )。細隙灯顕微鏡検査においてフルオレセイン染色で涙液層破壊時間が10秒未満である場合もドライアイが示唆される。

唾液腺障害は,唾液流量,唾液腺造影,または唾液腺シンチグラフィーで測定する異常に低い唾液産生(0.1mL/min以下)によって確認できるが,これらの試験が行われるのはまれである。唾液産生は,舌下に唾液が正常に溜まる様子を調べるなどのいくつかの方法(3 診断に関する参考文献 シェーグレン症候群は,比較的よくみられる原因不明の慢性,自己免疫性,全身性,炎症性の疾患である。外分泌腺のリンパ球浸潤およびそれに続く二次的な分泌機能障害による,口腔,眼,およびその他の粘膜の乾燥を特徴とする。シェーグレン症候群は様々な外分泌腺または他の器官に影響を及ぼすことがある。診断は,眼,口腔,および唾液腺の障害に関連する特異的な基準,自己抗体,ならびに(ときに)病理組織学的検査による。治療は通常,対症療法である。... さらに読む 診断に関する参考文献 )により定性的に評価できる。代わりに,舌圧子を頬粘膜に10秒間押し付けてもよい。舌圧子を放した後すぐに脱落すれば,唾液流量は正常であると判断する。舌圧子が脱落しにくいほど,口腔乾燥の重症度が高い。女性では,口紅が前歯に付着するlipstick signが口腔乾燥の有用な指標になりうる。

自己抗体は,感度が限られ,特異度が特に低い。自己抗体として,Ro(SS-A自己抗体― Professional.see page 全身性エリテマトーデス(SLE) 全身性エリテマトーデス(SLE) 全身性エリテマトーデスは,自己免疫を原因とする慢性,多臓器性,炎症性の疾患であり,主に若年女性に起こる。一般的な症状としては,関節痛および関節炎,レイノー症候群,頬部などの発疹,胸膜炎または心膜炎,腎障害,中枢神経系障害,血球減少などがある。診断には,臨床的および血清学的な基準が必要である。重症で進行中の活動性疾患の治療には,コルチコステロイドおよび免疫抑制薬を必要とする。 全症例のうち,70~90%が女性(通常妊娠可能年齢)に起こる。... さらに読む 全身性エリテマトーデス(SLE) )もしくは核抗原(LaまたはSS-B自己抗体と呼ぶ)に対する抗体,抗核抗体,またはγグロブリンに対する抗体の高値などがある。リウマトイド因子が70%を超える患者にみられる。赤血球沈降速度(赤沈)が患者の70%で亢進し,33%に貧血がみられ,最大25%で白血球減少がみられる。ただし,新しい分類基準の一部に含まれているのは抗SSA自己抗体のみである。

病理組織学的検査は,頬粘膜の小唾液腺の生検により評価する。唾液腺の生検は通常,自己抗体検査で診断を確定できない患者,または主要臓器が侵されている患者のみに行う。口唇小唾液腺に腺房組織の萎縮を伴うリンパ球の大きな増殖巣が複数あれば,病理組織学的障害が確定する。異常感覚が長引くことで生検が困難になることがある。

診断に関する参考文献

  • 1.Shiboski CH, Shiboski SC, Seror R, et al: 2016 American College of Rheumatology/European League Against Rheumatism classification criteria for primary Sjögren's syndrome: A consensus and data-driven methodology involving three international patient cohorts.Arthritis Rheumatol 69(1):35–45, 2017.doi: 10.1002/art.39859.

  • 2.Whitcher JP, Shiboski CH, Shiboski SC, et al: A simplified quantitative method for assessing keratoconjunctivitis sicca from the Sjögren's syndrome international registry.Am J Ophthalmol 149(3):405–415, 2010.doi: 10.1016/j.ajo.2009.09.013.

  • 3.Navazesh M: Methods for collecting saliva.Ann N Y Acad Sci 694:72–77, 1993.doi: 10.1111/j.1749-6632.1993.tb18343.x.

シェーグレン症候群の予後

シェーグレン症候群は慢性疾患であり,ときに肺感染症により,またはまれに腎不全もしくはリンパ腫により死亡することがある。随伴する全身性自己免疫疾患により予後が決まることがある。

シェーグレン症候群の治療

  • 乾燥症状に対する対症療法

  • 増悪因子の回避

  • 重症例にはコルチコステロイドまたはリツキシマブ

  • 筋骨格症状にはヒドロキシクロロキンおよび/またはメトトレキサート

シェーグレン症候群はまず,ドライアイおよび口腔乾燥の外用療法により管理すべきである。本症の他の全身症状は,重症度および侵された臓器に応じて治療すべきである。乾燥の訴えを増悪しうる他の病態に対する治療法を認識することが重要である。本症の進行を止めるため,および関節痛の治療のために,ヒドロキシクロロキン5mg/kgの1日1回経口投与を通常行うが,筋骨格症状に対してはメトトレキサートも投与できる。

ドライアイは潤滑作用のある点眼薬で治療すべきである(最初はヒプロメロースまたはメチルセルロースなどの点眼薬および就寝時にOTC医薬品の軟膏)。他の治療法としては,涙点閉鎖および外用シクロスポリンなどがある。皮膚および腟の乾燥は,潤滑剤で治療できる。

口腔乾燥は,一日中飲み物を少しずつ飲む,シュガーレスのガムを噛む,カルボキシメチルセルロースを含有する人工唾液を洗口液として使用するなどして,回避することができる。唾液分泌を減少させる薬物(例,抗ヒスタミン薬,抗うつ薬,その他の抗コリン薬)を避けるべきである。徹底した口腔衛生および定期的な歯科受診が不可欠である。結石を迅速に除去して,健全な唾液腺組織を保つ必要がある。突然腫大した唾液腺の痛みは,一般的に温罨法および鎮痛薬で治療するのが最善である。ピロカルピン5mg,経口,1日3回またはセビメリン塩酸塩30mg,経口,1日3回の投与は,唾液の産生を刺激する可能性があるが,気管支攣縮および閉塞隅角緑内障の患者では避けるべきである。

積極的な全身療法がときに適応となる;通常は関連疾患(例,重度の血管炎,視神経炎,または内臓障害)がある患者に限る。クリオグロブリン血管炎,末梢神経障害/多発性単神経炎,重度の耳下腺腫脹,重度の肺病変,または生物学的療法以外の治療に反応しない炎症性関節炎を伴う重症例には,コルチコステロイド(例,プレドニゾン1mg/kg,経口,1日1回)またはリツキシマブが必要になる場合がある。(シェーグレン症候群のリウマチ病態に対する治療ガイドラインも参照のこと。)

シェーグレン症候群の要点

  • 眼のザラザラ感,ドライアイ,もしくは口腔乾燥,唾液腺の腫大,末梢神経障害,紫斑,または説明のつかない尿細管性アシドーシスがあれば,シェーグレン症候群を疑う。

  • 通常は特異的な臨床基準によって診断を確定する。

  • 乾燥症状は対症的に(例,外用潤滑剤で)治療し,乾燥の因子,特に唾液腺機能を低下させる薬剤を回避する。

  • 患者が重症疾患(例,重度の血管炎または内臓障害)を有する場合,コルチコステロイドおよびときにその他の免疫抑制薬(例,リツキシマブ)により治療する。

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