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高血圧に対する薬剤

執筆者:

George L. Bakris

, MD, University of Chicago School of Medicine

レビュー/改訂 2021年 3月
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いくつかのクラスの薬剤が高血圧の初期治療およびその後の管理に効果的である:

アドレナリン修飾薬

アドレナリン修飾薬には,中枢性α2作動薬,シナプス後α1遮断薬,および末梢作用性非選択的アドレナリン遮断薬がある(高血圧に対するアドレナリン修飾薬 高血圧に対するアドレナリン修飾薬 高血圧に対するアドレナリン修飾薬 の表を参照)。

α2作動薬(例,メチルドパ,クロニジン,グアナベンズ,グアンファシン)は,脳幹のα2アドレナリン受容体を刺激し,交感神経活性を抑制することによって,血圧を低下させる。中枢作用を有するため,その他の降圧薬と比べて眠気,嗜眠,抑うつを引き起こす可能性が高く,もはや広くは使用されていない。クロニジンはパッチ剤として週1回の適用で使用できるため,アドヒアランスが不良の患者(例,認知症患者)に有用となりうる。

シナプス後α1遮断薬(例,プラゾシン,テラゾシン,ドキサゾシン)は,死亡率を低下させないことがエビデンスから示唆されているため,もはや高血圧の初期治療には使用されていない。また,ドキサゾシンの単剤使用または利尿薬以外の降圧薬との併用は,心不全のリスクを高める。しかしながら,4剤目の降圧薬が必要とされる前立腺肥大症の患者と,交感神経緊張が亢進し(すなわち心拍数が高く,急激な血圧上昇がみられる),すでに最大用量のβ遮断薬を投与されている患者では使用される場合がある。

アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬

ACE阻害薬(高血圧に対する経口ACE阻害薬およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬 高血圧に対する経口ACE阻害薬およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬 高血圧に対する経口ACE阻害薬およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬 の表を参照)は,アンジオテンシンIからアンジオテンシンIIを妨害するとともにブラジキニンの分解を阻害することで,反射性頻脈を惹起することなく末梢血管抵抗の低下をもたらし,これにより血圧を低下させる。ACE阻害薬は,血漿レニン活性とは無関係に,多くの高血圧患者で血圧を低下させる。ACE阻害薬には腎保護作用があるため, 糖尿病 糖尿病(DM) 糖尿病はインスリン分泌障害および様々な程度の末梢インスリン抵抗性であり,高血糖をもたらす。初期症状は高血糖に関連し,多飲,過食,多尿,および霧視などがある。晩期合併症には,血管疾患,末梢神経障害,腎症,および易感染性などがある。診断は血漿血糖測定による。治療は食事療法,運動,および血糖値を低下させる薬剤により,薬剤にはインスリン,経口血糖... さらに読む 患者に対する第1選択薬となっている。ACE阻害薬は黒人患者の初期治療には推奨されておらず,黒人患者の初期治療で使用すると,脳卒中の発生リスクが上昇すると考えられている。

最も頻度の高い有害作用は煩わしい乾性咳嗽であるが,最も重篤な有害作用は 血管性浮腫 血管性浮腫 血管性浮腫は真皮深層および皮下組織の浮腫である。通常は,薬物,毒液,食物,花粉,または動物のフケなどのアレルゲンへの曝露によって引き起こされる急性の肥満細胞介在性反応である。さらに血管性浮腫は,アンジオテンシン変換酵素阻害薬に対する急性反応,慢性反応,または異常な補体反応を特徴とする遺伝性もしくは後天性疾患のこともある。主な症状は腫脹であり,重度のことがある。診断は診察による。治療は,必要に応じて気道管理,アレルゲンの除去または回避,お... さらに読む 血管性浮腫 であり,中咽頭に発生した場合は致死的となりうる。血管性浮腫は黒人と喫煙者で最もよくみられる。ACE阻害薬は,血清カリウム値と血清クレアチニン値を上昇させることがあり,特に 慢性腎臓病 慢性腎臓病 慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患... さらに読む 慢性腎臓病 患者とカリウム保持性利尿薬,カリウム製剤,または非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を服用している患者でよくみられる。ACE阻害薬は,降圧薬の中で 勃起障害 勃起障害 勃起障害とは,性交を行うのに十分な勃起を達成または持続できない状態である。大半の勃起障害は血管,神経,精神,または内分泌疾患に関連したものであり,さらに薬剤使用も原因となりうる。評価は典型的には基礎疾患のスクリーニングとテストステロン濃度の測定である。治療選択肢としては,ホスホジエステラーゼ阻害薬の服用,プロスタグランジンの尿道内または海綿体内投与,陰圧式勃起補助具,外科的インプラントなどがある。... さらに読む をもたらす可能性が最も低い。ACE阻害薬は妊娠中は禁忌である。腎疾患を有する患者では,少なくとも3カ月に1回の頻度で血清クレアチニン値と血清カリウム値をモニタリングする。ステージ3の腎症(推算糸球体濾過量[GFR]が60mL/min未満30mL/min超)があり,ACE阻害薬の投与を受けている患者は通常,血清クレアチニン値がベースライン値から30~35%上昇するまで耐えることができる。ACE阻害薬は,循環血液量減少,重度の 心不全 心不全 心不全は心室機能障害により生じる症候群である。左室不全では息切れと疲労が生じ,右室不全では末梢および腹腔への体液貯留が生じる;左右の心室が同時に侵されることもあれば,個別に侵されることもある。最初の診断は臨床所見に基づいて行い,胸部X線,心エコー検査,および血漿ナトリウム利尿ペプチド濃度を裏付けとする。治療法としては,患者教育,利尿薬,ア... さらに読む 心不全 ,重度の両側 腎動脈狭窄 腎動脈の狭窄および閉塞 腎動脈狭窄は,片側または両側腎動脈の本幹または分枝を通る血流が低下する状態である。腎動脈閉塞は,片側または両側腎動脈の本幹または分枝を通る血流が完全な遮断である。狭窄および閉塞の原因は通常,血栓塞栓症,動脈硬化,線維筋性異形成である。急性閉塞の症状は,間断なくうずく側腹部痛,腹痛,発熱,悪心,嘔吐および血尿などである。急性腎障害が発生する場合がある。慢性,進行性の狭窄は,難治性高血圧をもたらし,慢性腎臓病に至る場合がある。診断は画像検査... さらに読む 腎動脈の狭窄および閉塞 ,または単腎で高度の腎動脈狭窄を有する患者では急性腎障害を引き起こす可能性がある。

サイアザイド系利尿薬は,他のクラスの降圧薬と比較してACE阻害薬の降圧作用をより大幅に増強する。スピロノラクトンとエプレレノンもACE阻害薬の作用を増強するようである。

アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)

アンジオテンシンII受容体遮断薬(高血圧に対する経口ACE阻害薬およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬 高血圧に対する経口ACE阻害薬およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬 高血圧に対する経口ACE阻害薬およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬 の表を参照)は,アンジオテンシンII受容体を遮断し,それにより レニン-アンジオテンシン系 レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系 高血圧とは,安静時の収縮期血圧(130mmHg以上),拡張期血圧(80mmHg以上),またはその両方が高値で維持されている状態である。原因不明の高血圧(本態性高血圧)が最も多くを占める。原因が判明する高血圧(二次性高血圧)は通常,睡眠時無呼吸症候群,慢性腎臓病,原発性アルドステロン症,糖尿病,または肥満に起因する。高血圧は重症となるか長期... さらに読む レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系 を阻害する。アンジオテンシンII受容体拮抗薬とACE阻害薬は,降圧薬として同等の有効性を示す。アンジオテンシンII受容体拮抗薬は組織アンジオテンシン変換酵素の遮断を介して,さらなる効果をもたらす可能性がある。これら2つの薬物クラスは,左室不全がある患者および 1型糖尿病による腎症 糖尿病性腎症 糖尿病患者における長年にわたるコントロール不良の高血糖は,複数の合併症をもたらすが,主なものは血管性の合併症であり,小径血管(微小血管性),大径血管(大血管性),またはその両方が侵される。 血管障害の発生機序としては,以下のものがある: 血清タンパク質および組織タンパク質の糖付加(終末糖化産物の形成を伴う) 超酸化物産生 血管透過性を亢進させ,内皮機能障害を引き起こすシグナル分子であるプロテインキナーゼCの活性化 さらに読む 糖尿病性腎症 を有する患者において,それぞれ同じ有益な効果を示す。アンジオテンシンII受容体拮抗薬はACE阻害薬とは併用すべきでないが,β遮断薬と併用すれば,心不全患者の入院率が低減できる可能性がある。アンジオテンシンII受容体拮抗薬は,初診時の血清クレアチニン値が3mg/dL(265µmol/L)以下の60歳未満の患者に対して,安全に投与を開始できる。

有害事象の発生率は低く, 血管性浮腫 血管性浮腫 血管性浮腫は真皮深層および皮下組織の浮腫である。通常は,薬物,毒液,食物,花粉,または動物のフケなどのアレルゲンへの曝露によって引き起こされる急性の肥満細胞介在性反応である。さらに血管性浮腫は,アンジオテンシン変換酵素阻害薬に対する急性反応,慢性反応,または異常な補体反応を特徴とする遺伝性もしくは後天性疾患のこともある。主な症状は腫脹であり,重度のことがある。診断は診察による。治療は,必要に応じて気道管理,アレルゲンの除去または回避,お... さらに読む 血管性浮腫 が生じるものの,その発生率はACE阻害薬と比較してはるかに低い。 腎血管性高血圧 腎血管性高血圧 腎血管性高血圧は,片側もしくは両側の腎動脈またはその分枝の部分または完全閉塞により血圧が上昇する病態である。長期化しない限り,通常は無症状である。50%未満の患者では,片側または両側の腎動脈に血管雑音が聴取される。診断は身体診察とduplex法による超音波検査,核医学検査,またはMRアンギオグラフィーによる腎画像検査により行う。手術または血管形成術による根治的治療の前に血管造影を施行する。... さらに読む 腎血管性高血圧 ,循環血液量減少,および重度の 心不全 心不全 心不全は心室機能障害により生じる症候群である。左室不全では息切れと疲労が生じ,右室不全では末梢および腹腔への体液貯留が生じる;左右の心室が同時に侵されることもあれば,個別に侵されることもある。最初の診断は臨床所見に基づいて行い,胸部X線,心エコー検査,および血漿ナトリウム利尿ペプチド濃度を裏付けとする。治療法としては,患者教育,利尿薬,ア... さらに読む 心不全 を有する患者に対するアンジオテンシンII受容体拮抗薬の使用上の注意は,ACE阻害薬のそれと同じである(高血圧に対する経口ACE阻害薬およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬 高血圧に対する経口ACE阻害薬およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬 高血圧に対する経口ACE阻害薬およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬 の表を参照)。アンジオテンシンII受容体拮抗薬は妊娠中は禁忌である。

β遮断薬

β遮断薬(高血圧患者に対する経口β遮断薬 高血圧患者に対する経口β遮断薬 高血圧患者に対する経口β遮断薬 の表を参照)は心拍数および心筋収縮性の低下をもたらすことで,血圧を低下させる。全てのβ遮断薬は同程度の降圧効果を示す。 糖尿病 糖尿病(DM) 糖尿病はインスリン分泌障害および様々な程度の末梢インスリン抵抗性であり,高血糖をもたらす。初期症状は高血糖に関連し,多飲,過食,多尿,および霧視などがある。晩期合併症には,血管疾患,末梢神経障害,腎症,および易感染性などがある。診断は血漿血糖測定による。治療は食事療法,運動,および血糖値を低下させる薬剤により,薬剤にはインスリン,経口血糖... さらに読む ,慢性 末梢動脈疾患 末梢動脈疾患 末梢動脈疾患(PAD)とは,虚血を引き起こす四肢(ほぼ常に下肢)の動脈硬化症である。軽度のPADは無症状のこともあれば,間欠性跛行を引き起こすこともあり,重度のPADは安静時痛とそれに随伴する皮膚萎縮,脱毛,チアノーゼ,虚血性潰瘍,壊疽を引き起こすことがある。診断は病歴聴取,身体診察,および足関節上腕血圧比の測定による。軽度のPADに対する治療法としては,危険因子の是正,運動,抗血小板薬,症状に応じたシロスタゾールや,ときにペントキシフ... さらに読む 末梢動脈疾患 ,または 慢性閉塞性肺疾患 慢性閉塞性肺疾患(COPD) 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,毒素の吸入(しばしばタバコ煙)に対する炎症反応によって引き起こされる気流制限である。比較的まれな原因として,非喫煙者におけるα1-アンチトリプシン欠乏症および様々な職業曝露がある。症状は数年かけて発現する湿性咳嗽および呼吸困難であり,一般的な徴候には呼吸音の減少,呼気相の延長,および喘鳴などがある。重症例で... さらに読む 慢性閉塞性肺疾患(COPD) (COPD)の患者では,心選択性β遮断薬(アセブトロール,アテノロール,ベタキソロール,ビソプロロール,メトプロロール)が好ましいと考えられるが,心選択性は相対的なものにすぎず,用量の増加に従い低下する。心選択性β遮断薬であっても, 喘息 喘息 喘息は,様々な誘発刺激により引き起こされ,部分的または完全に可逆的な気管支収縮を生じさせる気道のびまん性炎症疾患である。症状および徴候には,呼吸困難,胸部圧迫感,咳嗽,および喘鳴などがある。診断は病歴,身体診察,および肺機能検査に基づく。治療には誘発因子の制御および薬物療法があり,吸入β2作動薬および吸入コルチコステロイドが最も多く用いら... さらに読む 患者と気管支攣縮が著明なCOPD患者では禁忌である。

β遮断薬は 狭心症 狭心症 狭心症とは,梗塞を伴わない一過性の心筋虚血によって前胸部に不快感または圧迫感が生じる臨床症候群である。狭心症は典型的には労作または精神的ストレスにより増悪し,安静またはニトログリセリンの舌下投与により軽快する。診断は症状,心電図,および心筋イメージングによる。治療法としては,抗血小板薬,硝酸薬,β遮断薬,カルシウム拮抗薬,アンジオテンシン変換酵素阻害薬,スタチン系薬剤,冠動脈形成術または冠動脈バイパス術などがある。... さらに読む 患者, 心筋梗塞 急性心筋梗塞 急性心筋梗塞は,冠動脈の急性閉塞により心筋壊死が引き起こされる疾患である。症状としては胸部不快感がみられ,それに呼吸困難,悪心,発汗を伴う場合がある。診断は心電図検査と血清マーカーの有無による。治療法は抗血小板薬,抗凝固薬,硝酸薬,β遮断薬,スタチン系薬剤,および再灌流療法である。ST上昇型心筋梗塞に対しては,血栓溶解薬,経皮的冠動脈インターベンション,または(ときに)冠動脈バイパス術による緊急再灌流療法を施行する。非ST上昇型心筋梗塞... さらに読む 急性心筋梗塞 の既往を有する患者,および 心不全 心不全 心不全は心室機能障害により生じる症候群である。左室不全では息切れと疲労が生じ,右室不全では末梢および腹腔への体液貯留が生じる;左右の心室が同時に侵されることもあれば,個別に侵されることもある。最初の診断は臨床所見に基づいて行い,胸部X線,心エコー検査,および血漿ナトリウム利尿ペプチド濃度を裏付けとする。治療法としては,患者教育,利尿薬,ア... さらに読む 心不全 患者において特に有用であるが,アテノロールは 冠動脈疾患 冠動脈疾患の概要 冠動脈疾患では,冠動脈の血流が障害され,そのほとんどがアテロームに起因する。臨床像としては,無症候性心筋虚血, 狭心症, 急性冠症候群( 不安定狭心症, 心筋梗塞), 心臓突然死などがある。診断は症状,心電図検査,負荷試験,ときに冠動脈造影による。予防法は可逆的な危険因子(例,高コレステロール血症,高血圧,運動不足,肥満,糖尿病,喫煙)の... さらに読む 冠動脈疾患の概要 (CAD)患者の予後が増悪する可能性がある。これらの薬剤の高齢者への使用が問題になるとはもはや考えられていない。

内因性交感神経刺激作用をもつβ遮断薬(例,アセブトロール,ピンドロール)は血清脂質に悪影響を及ぼさず,重度の徐脈を引き起こす可能性は低い。

β遮断薬は中枢神経系に対して有害作用(睡眠障害,疲労,嗜眠)を示し,うつ病を増悪させる。ナドロールは中枢神経系に対する影響が最も小さく,中枢神経系作用を回避しなければならない状況では最善となりうる。β遮断薬は2度もしくは3度 房室ブロック 房室ブロック 房室ブロックとは,心房から心室への興奮伝導が部分的または完全に途絶する状態である。最も一般的な原因は,伝導系に生じる特発性の線維化および硬化である。診断は心電図検査による;症状および治療はブロックの程度に依存するが,治療が必要な場合は通常,ペーシングが行われる。 ( 不整脈の概要も参照のこと。) 房室ブロックの最も一般的な原因は以下のものである: 伝導系に生じる特発性の線維化および硬化(約50%の患者)... さらに読む 房室ブロック 喘息 喘息 喘息は,様々な誘発刺激により引き起こされ,部分的または完全に可逆的な気管支収縮を生じさせる気道のびまん性炎症疾患である。症状および徴候には,呼吸困難,胸部圧迫感,咳嗽,および喘鳴などがある。診断は病歴,身体診察,および肺機能検査に基づく。治療には誘発因子の制御および薬物療法があり,吸入β2作動薬および吸入コルチコステロイドが最も多く用いら... さらに読む ,または 洞不全症候群 洞不全症候群 洞不全症候群とは,生理学的に適切でないレートで心房興奮が引き起こされる,いくつかの病態を指す。症状はほとんどないか,脱力感,運動耐容能低下,動悸,失神が生じる場合がある。診断は心電図検査による。症状がある患者にはペースメーカーが必要である。 ( 不整脈の概要も参照のこと。) 洞不全症候群としては以下のものがある: 不適切な洞徐脈 交互に生じる徐脈と心房性頻拍性不整脈(徐脈頻脈症候群) さらに読む の患者では禁忌である。

カルシウム拮抗薬

ジヒドロピリジン系薬剤高血圧に対する経口カルシウム拮抗薬 高血圧に対する経口カルシウム拮抗薬 高血圧に対する経口カルシウム拮抗薬 の表を参照)は強力な末梢血管拡張薬であり,全末梢血管抵抗(TPR)を低下させることにより血圧を低下させ,ときに反射性頻脈を引き起こす。

長時間作用型のニフェジピン,ベラパミル,ジルチアゼムは高血圧治療に使用されるが,短時間作用型のニフェジピンとジルチアゼムについては,心筋梗塞の発生率上昇との関連が認められているため,推奨されない。

狭心症 狭心症 狭心症とは,梗塞を伴わない一過性の心筋虚血によって前胸部に不快感または圧迫感が生じる臨床症候群である。狭心症は典型的には労作または精神的ストレスにより増悪し,安静またはニトログリセリンの舌下投与により軽快する。診断は症状,心電図,および心筋イメージングによる。治療法としては,抗血小板薬,硝酸薬,β遮断薬,カルシウム拮抗薬,アンジオテンシン変換酵素阻害薬,スタチン系薬剤,冠動脈形成術または冠動脈バイパス術などがある。... さらに読む と気管支攣縮がみられる患者,冠攣縮のある患者,および レイノー症候群 レイノー症候群 レイノー症候群は,寒冷刺激や精神的ストレスに対する反応として手の一部に生じる血管攣縮で,単一または複数の手指に可逆的な不快感および変色(蒼白,チアノーゼ,紅斑,またはこれらの組合せ)がみられる。ときに,他の先端部位(例,鼻,舌)で発生することもある。この病態には,原発性のものと続発性のものがある。診断は臨床的に行い,検査では原発性と続発性の鑑別に焦点を置く。合併症のない症例の治療法としては,寒冷刺激の回避,バイオフィードバック,禁煙,必... さらに読む レイノー症候群 の患者には,β遮断薬よりカルシウム拮抗薬が好ましい。

直接的レニン阻害薬

直接的レニン阻害薬のアリスキレンは高血圧の管理で使用される。用量は150~300mg,経口1日1回であり,開始量は150mgである。

直接的血管拡張薬

ミノキシジルやヒドララジンなどの直接的血管拡張薬(高血圧に対する直接的血管拡張薬 高血圧に対する直接的血管拡張薬 高血圧に対する直接的血管拡張薬 の表を参照)は,自律神経系とは独立して血管に直接作用する。ミノキシジルはヒドララジンより強力であるが,ナトリウム・水貯留,また女性では耐えられない多毛症などの有害作用が多い。ミノキシジルは難治性の重症高血圧にのみ使用すべきである。

利尿薬

高血圧に使用される利尿薬の主なクラス(高血圧に対する経口利尿薬 高血圧に対する経口利尿薬 高血圧に対する経口利尿薬 の表を参照)は以下の通りである:

  • ループ利尿薬

  • カリウム保持性利尿薬

  • サイアザイド系利尿薬

利尿薬は,おそらくは細胞内から細胞外へのナトリウムの移動を介して,血漿量を穏やかに減少させ,血管抵抗を減少させる。

ループ利尿薬は,腎機能が50%以上低下した患者に限り,高血圧の治療に使用され,少なくとも1日2回投与される(ただしトラセミドは1日1回でよい)。

カリウム保持性利尿薬は, 低カリウム血症 低カリウム血症 低カリウム血症とは,体内の総カリウム貯蔵量の不足またはカリウムの細胞内への異常な移動によって血清カリウム濃度が3.5mEq/L(3.5mmol/L)未満となった状態である。最も頻度の高い原因は腎臓または消化管からの過剰喪失である。臨床的特徴としては筋力低下や多尿などがあり,重度の低カリウム血症では心臓の興奮性亢進が生じることがある。診断は血清学的検査による。治療はカリウム投与および原因の管理である。... さらに読む ,高尿酸血症,高血糖を引き起こすことはないが,高血圧のコントロールにおいてサイアザイド系利尿薬より効果が劣るため,初期治療には用いられない。アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬を使用する場合,これらの薬剤は血清カリウム値を上昇させるため,カリウム保持性利尿薬やカリウム製剤の投与は必要とならない。

サイアザイド系利尿薬が最もよく使用される。他の降圧作用に加えて,血管内容量が正常である限り,わずかながら血管拡張も引き起こす。サイアザイド系薬剤はいずれも同等量で同等の有効性を示すが,サイアザイド系利尿薬は半減期が長いため,同程度の用量で相対的に高い効果が得られる。サイアザイド系利尿薬は,血清コレステロール値のわずかな上昇(大半が低比重リポタンパク質)とトリグリセリド値の上昇を引き起こすことがあるが,これらの作用は1年以上は持続しないと考えられる。さらに,これらの測定値が上昇する患者は少数のみのようである。この上昇は治療開始後4週以内に明らかとなり,低脂肪食により軽減できる。脂質値がわずかに上昇する可能性は, 脂質異常症 脂質異常症 脂質異常症とは,血漿コレステロール,トリグリセリド(TG)値,もしくはその両方が高値であること,またはHDLコレステロールが低値であることであり, 動脈硬化発生に寄与する。原因には原発性(遺伝性)と二次性とがある。診断は,総コレステロール,TG,および各リポタンパク質の血漿中濃度測定による。治療は食習慣の変更,運動,および脂質低下薬である。 ( 脂質代謝の概要も参照のこと。)... さらに読む 脂質異常症 の患者における利尿薬の禁忌とならない。

遠位尿細管で作用するカリウム保持性利尿薬を除く全ての利尿薬は,有意なカリウム喪失を引き起こすため,血清カリウム値を安定するまで1カ月毎に測定する。血清カリウム濃度が正常化しない限り,動脈壁のカリウムチャネルが閉じ,結果として生じる血管収縮により目標血圧の達成は困難となる。カリウム値が3.5mEq/L(3.5mmol/L)未満の患者には,カリウム製剤を投与する。カリウム製剤は低用量で長期間継続するか,カリウム保持性利尿薬(例,連日でスピロノラクトン25~100mg,トリアムテレン50~150mg,アミロライド[amiloride]5~10mg)を追加してもよい。カリウム製剤またはカリウム保持性利尿薬の追加は,ジギタリスを併用している患者,心疾患がある患者,心電図異常がみられる患者,期外収縮または 不整脈 不整脈の概要 正常な心臓は規則正しく協調的に拍動するが,これは固有の電気的特性を有する筋細胞によって電気パルスが生成・伝達され,それにより一連の組織化された心筋収縮が誘発されることによって生じる。不整脈と伝導障害は,そうした電気パルスの生成,伝導,またはその両方の異常により引き起こされる。 先天的な構造異常(例,房室副伝導路)や機能異常(例,遺伝性のイ... さらに読む 不整脈の概要 のある患者,および利尿薬の服用中に期外収縮または不整脈が発生する患者にも推奨される。

心不全 心不全 心不全は心室機能障害により生じる症候群である。左室不全では息切れと疲労が生じ,右室不全では末梢および腹腔への体液貯留が生じる;左右の心室が同時に侵されることもあれば,個別に侵されることもある。最初の診断は臨床所見に基づいて行い,胸部X線,心エコー検査,および血漿ナトリウム利尿ペプチド濃度を裏付けとする。治療法としては,患者教育,利尿薬,ア... さらに読む 心不全 の既往があるが肺うっ血はない患者,特にACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬も併用している患者と1日の水分摂取量が1400mL未満の患者では,利尿薬により死亡率がわずかに上昇する可能性がある。この死亡率の上昇には,おそらく利尿薬による低ナトリウム血症および低血圧が関連している。

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

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