洞不全症候群

(洞結節機能障害)

執筆者:L. Brent Mitchell, MD, Libin Cardiovascular Institute, University of Calgary
Reviewed ByJonathan G. Howlett, MD, Cumming School of Medicine, University of Calgary
レビュー/改訂 2024年 9月 | 修正済み 2024年 12月
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洞不全症候群とは,心拍数が生理学的に不適切な水準まで低下する洞結節の機能障害を指す。症状はほとんどないか,脱力感,運動耐容能低下,動悸,失神が生じる場合がある。診断は心電図検査による。症状がある患者にはペースメーカーが必要である。

不整脈の概要も参照のこと。)

洞不全症候群には以下のものがある:

  • 不適切な洞徐脈

  • 交互に生じる徐脈と心房性頻拍性不整脈(徐脈頻脈症候群)

  • 洞停止または洞休止

  • 洞房ブロック

  • 変時性不全

洞不全症候群は主に高齢患者,特に別の心疾患や糖尿病を有する高齢者で発生する。

徐脈頻脈型の洞不全症候群では,洞結節の機能障害は心房性頻拍性不整脈と関連したものであり,中でも最も多いのは心房細動である。

洞停止は,洞結節が一時的に活動を停止する現象であり,心電図上では数秒から数分間にわたるP波の消失として認められる。通常は洞停止が起きると,下位のペースメーカー組織(例,心房または接合部)で補充活動が誘発されて心拍数および心機能は維持されるが,停止時間が長くなると,めまいや失神を来すことにある。

洞房ブロックでは,洞房結節は脱分極するものの,心房組織への興奮伝導(exit conduction)が障害される。

  • 第1度洞房ブロックでは,洞房結節からのexit conductionが単純に遅いだけで,別に疾患がなければ,心電図は正常となり,症状もみられない。

  • I型第2度(Wenckebach型)洞房ブロックでは,exit conductionの遅延に続いてブロックが生じるため,心電図上ではPP間隔が徐々に短縮していき,最終的にP波の完全な脱落がみられ,それに伴い休止期とまとまった拍動が出現する;休止期の持続時間はPP周期の2倍より短くなる。

  • II型第2度洞房ブロックでは,exit conductionの遅延が先行することなくブロックが生じるため,PP間隔の整数倍(通常は2倍)の休止期とまとまった拍動が出現する。

  • 第3度洞房ブロックでは,exit conductionが遮断され,心電図上では正常なP波が認められず,洞停止の様相を呈する。

変時性不全(chronotropic incompetence)とは,運動時に洞心拍数が上昇しなくなった状態を指し,最も一般的な定義では,運動耐容能検査での最高心拍数が年齢から予想される水準(220/分から年齢を引いた値)の80%を下回る場合とされる(1)。

総論の参考文献

  1. 1.Kusumoto FM, Schoenfeld MH, Barrett C, et al: 2018 ACC/AHA/HRS guideline on the evaluation and management of patients with bradycardia and cardiac conduction delay: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines and the Heart Rhythm Society.Heart Rhythm 16(9):e128–e226, 2019.doi: 10.1016/j.hrthm.2018.10.037

洞不全症候群の病因

内因性の洞結節機能障害の最も一般的な原因は以下のものである:

  • 特発性の洞房結節の線維化(刺激伝導系下位の変性を伴う場合もあり,房室ブロックおよび/または脚ブロックを併発する)

洞不全症候群のその他の原因としては,睡眠時無呼吸症候群,薬剤,迷走神経緊張亢進,多くの虚血性疾患,炎症性疾患,浸潤性疾患などがある(1)。

病因論に関する参考文献

  1. 1. Sathnur N, Ebin E, Benditt DG: Sinus Node Dysfunction.Cardiol Clin 41(3):349–367, 2023.doi:  10.1016/j.ccl.2023.03.013

洞不全症候群の症状と徴候

洞不全症候群の患者は多くが無症状である。心拍数に応じて,徐脈のあらゆる症状に加えて,徐脈頻脈型の洞不全症候群症例では頻脈のあらゆる症状が起こりうる。心房性頻拍性不整脈が自然停止した後に洞結節が直ちに機能を回復しない場合,失神が起こる可能性がある。

洞不全症候群の診断

  • 心電図

  • 甲状腺機能低下症を除外するための甲状腺刺激ホルモン(TSH)の測定

  • ときに携帯型心電図モニタリング

  • 変時性不全に対する運動耐容能検査

  • まれに,植込み型機器による心臓モニタリングまたはカテーテルによる心臓電気生理検査

不規則な遅い脈から洞不全症候群が示唆され,心電図検査,モニター心電図,または24時間心電図記録により診断確定となる。一部の患者は心房細動で受診し,基礎にある洞機能不全は洞調律への復帰後に洞停止が起きた場合にのみ顕在化する。心電図モニタリングの目標は,症状と徐脈性不整脈の相関を確認することである。

病歴と身体診察から示唆される場合は,甲状腺機能低下症の疑いに対する甲状腺刺激ホルモン(TSH)の測定,睡眠時無呼吸の疑いに対する睡眠ポリグラフ検査,変時性不全の疑いに対する運動耐容能検査,構造的心疾患の疑いに対する心エコー検査など,的を絞った評価を行う(1)。洞不全症候群と一致する症状の頻度が非常に低い場合は,症状とリズムの相関を確認するために植込み型機器による心臓モニタリングが必要になることがある。まれに,病因不明の失神を評価するために実施されたカテーテルによる心臓電気生理検査で洞不全症候群の診断が下されることがある。

診断に関する参考文献

  1. 1.Kusumoto FM, Schoenfeld MH, Barrett C, et al: 2018 ACC/AHA/HRS guideline on the evaluation and management of patients with bradycardia and cardiac conduction delay: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines and the Heart Rhythm Society.Heart Rhythm 16(9):e128–e226, 2019.doi: 10.1016/j.hrthm.2018.10.037

洞不全症候群の治療

  • ペースメーカー

外因性の可逆的原因が認められない症候性洞不全症候群の治療はペースメーカーの植込みである(1)。生理的(心房または心房心室)ペースメーカーを使用すると,心室ペースメーカーの場合より心房細動のリスクが低下する(2)。心室ペーシングを最小限に抑えるデュアルチャンバーペースメーカーにより,心房細動のリスクをさらに低減できる可能性がある(2)。デュアルチャンバーペースメーカーはまた,房室ブロックの年間発生率が1~2%と予想される患者にも,さらなる保護効果をもたらす(3)。抗不整脈薬により,ペースメーカー植込み後の発作性頻拍性不整脈を予防することができる。

失神はみられない症候性の徐脈がある健康な若年患者では,テオフィリンおよびヒドララジンが心拍数を上昇させるための選択肢となるが,これらの薬剤がこの目的で使用されることはまれである。

治療に関する参考文献

  1. 1.Kusumoto FM, Schoenfeld MH, Barrett C, et al: 2018 ACC/AHA/HRS guideline on the evaluation and management of patients with bradycardia and cardiac conduction delay: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines and the Heart Rhythm Society.Heart Rhythm 16(9):e128–e226, 2019.doi: 10.1016/j.hrthm.2018.10.037

  2. 2.Liu Y, Zheng Y, Tse G, et al: Association between sick sinus syndrome and atrial fibrillation: A systematic review and meta-analysis.Int J Cardiol 381:20–36, 2023.doi: 10.1016/j.ijcard.2023.03.066

  3. 3.Nielsen JC, Thomsen PE, Højberg S, et al: A comparison of single-lead atrial pacing with dual-chamber pacing in sick sinus syndrome.Eur Heart J 32(6):686–696, 2011.doi: 10.1093/eurheartj/ehr022.

洞不全症候群の予後

洞不全症候群における洞結節機能障害は,時間とともに悪化する傾向がある。それ以外の場合の予後は様々であり,死亡率はおよそ年4%で,最大の死因は基礎にある構造的心疾患である(1)。1年につき約5%の患者が心不全および脳卒中のリスクを伴った心房細動を発症する(2)。

予後に関する参考文献

  1. 1.Shaw DB, Holman RR, Gowers JI: Survival in sinoatrial disorder (sick-sinus syndrome).Br Med J 280(6208):139–141, 1980.doi: 10.1136/bmj.280.6208.139

  2. 2.Sutton R, Kenny RA: The natural history of sick sinus syndrome.Pacing Clin Electrophysiol 9(6):1110-1114, 1986.doi: 10.1111/j.1540-8159.1986.tb06678.x

要点

  • 洞不全症候群では,不適切な心拍数低下が生じる。

  • 症状はみられない場合もあれば,徐脈による症状がみられる場合もある。

  • 徐脈頻脈型の洞不全症候群では,頻脈自体や頻脈が停止するときの心静止によっても症状が引き起こされる。

  • 診断は主に心電図モニタリングによって行う。

  • 症候性の洞不全症候群はペースメーカーで治療する。

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