ほとんどの食道閉塞は緩徐に発生し,典型的には固形物の嚥下困難のために患者が最初に医療機関を受診する時点では不完全閉塞である。しかしながら,ときに 食道異物 食道異物 食物や嚥下された様々な物体が食道内で嵌頓することがある。食道内の異物は嚥下困難の原因となり,ときに穿孔を引き起こすこともある。診断は臨床的に行うが,画像診断や内視鏡検査が必要になることもある。自然に通過する異物もあるが,内視鏡により異物を通過させるか摘出する処置がしばしば必要になる。 ( 消化管異物の概要も参照のこと。) 食道は異物の嵌頓が最も多く生じる部位である。食道異物の最も一般的な原因は食物のつかえである。特に,大きく滑らかな食物... さらに読む や食物塊が詰まることで食道の完全閉塞が突然発生する。
(食道疾患および嚥下障害の概要 食道疾患および嚥下障害の概要 嚥下器官は,咽頭,上部食道括約筋(輪状咽頭筋),食道体部,および下部食道括約筋(LES)から構成される。食道の上部3分の1とそれより上方の構造は骨格筋で,下部食道とLESは平滑筋で構成されている。これらの構成要素は,食物を口腔から胃に送り込み,食道への逆流を阻止する統合されたシステムとして機能する。このシステムは物理的閉塞または運動機能を... さらに読む も参照のこと。)
閉塞の原因は内因性と外因性に分けられる。
内因性閉塞の原因としては以下ものがある:
食道腫瘍(良性食道腫瘍 良性食道腫瘍 良性食道腫瘍には多くの種類があるが,その多くは偶然発見され,無症状のまま経過し,経過を観察するのみでよい。嚥下症状を引き起こしたり,まれに潰瘍形成や出血を引き起こしたりするものもある。 評価法は典型的には嚥下困難と同じであり( 嚥下困難を参照),食道造影または上部消化管内視鏡検査(場合により超音波内視鏡検査を併用)から始める。病変を視認できれば,上部消化管内視鏡検査で組織検体を採取できる。一部の症例ではCTが役立つことがある。... さらに読む または 食道癌 食道癌 食道の近位3分の2で最もよくみられる悪性腫瘍は扁平上皮癌であり,遠位3分の1では腺癌が最も多くみられる。症状は進行性の 嚥下困難および体重減少である。診断は内視鏡検査により,続いて病期診断のためにCTおよび超音波内視鏡検査を施行する。治療は病期によって異なり,一般に外科手術で,場合によって化学療法および放射線療法を併用する。長期生存率は限局例を除いて不良である。 米国では食道癌の年間症例数は推定18... さらに読む )
胃食道逆流 胃食道逆流症(GERD) 下部食道括約筋の機能不全によって胃内容が食道に逆流し,灼熱痛が起こる。逆流が持続することで,食道炎,狭窄,まれに化生またはがんがもたらされる可能性がある。診断は臨床的に行い,ときに内視鏡検査を併用し,場合によっては胃酸検査を併用する。治療は,生活習慣の改善とプロトンポンプ阻害薬による胃酸分泌抑制のほか,ときに外科的修復による。 ( 食道疾患および嚥下障害の概要も参照のこと。)... さらに読む または 腐食性物質の摂取 腐食性物質の摂取 腐食性物質(強酸および強アルカリ)は,摂取すると,上部消化管組織の熱傷を起こし,ときに食道穿孔または胃穿孔を来す。症状としては,流涎,嚥下困難,口痛,胸痛,胃痛などがあり,後に狭窄が起きる場合もある。診断的内視鏡検査が必要になることがある。治療は支持療法による。胃内容物の除去および活性炭は禁忌である。穿孔は外科的に治療する。 ( 中毒の一般原則も参照のこと。) 世界全体で,腐食性物質の摂取は80%が幼児に起きており,これらは通常は偶発的... さらに読む (まれ)に起因する狭窄
外因性閉塞は,以下に起因する圧迫によって引き起こされることがある:
左房肥大
胸骨下甲状腺
頸椎骨軟骨腫
食道閉塞の可能性の評価については, 嚥下困難 評価 嚥下困難とは,嚥下が困難になった状態である。この病態は,咽頭から胃への液体,固形物,またはその両方の輸送阻害に起因する。嚥下困難を球感覚と混同してはならず, 球感覚は咽喉に塊があるような異常感覚であり,嚥下障害ではなく,輸送障害も生じない。 ( 食道疾患および嚥下障害の概要も参照のこと。) 嚥下器官は,咽頭,上部食道括約筋(輪状咽頭筋),食道体部,および下部食道括約筋(LES)で構成される。食道の上部3分の1とそれより上方の構造は骨格筋... さらに読む を参照のこと。
閉塞の治療はそれぞれの原因に対して行う。完全閉塞がある患者には,緊急の上部消化管内視鏡検査が不可欠である。