気管挿管

執筆者:Abdulghani Sankari, MD, PhD, MS, Wayne State University
Reviewed ByDavid A. Spain, MD, Department of Surgery, Stanford University
レビュー/改訂 修正済み 2024年 7月
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人工エアウェイを必要とする患者の多くは,経口気管挿管やときに経鼻気管挿管による管理が可能である。

経口気管挿管は,直達喉頭鏡またはビデオ喉頭鏡により施行される(ビデオ喉頭鏡を用いた経口気管挿管を参照)。経口気管挿管は,経鼻気管挿管よりも通常手早く施行できるため,無呼吸および重篤な状態の患者で選択される。

経鼻気管挿管は意識があり自発呼吸を行っている患者または経口挿管を避けるべき状況でのみ施行される。上咽頭経由の挿管の重篤な合併症は鼻出血である。気道内の血液によって喉頭鏡による観察が不明瞭となり,挿管が複雑になる。

呼吸停止の概要および気道確保および管理も参照のこと。)

挿管の前に

気道の評価

状況が許せば,医師は気道のリスク評価を行い,気道確保困難を示唆する因子を同定することに焦点を合わせた病歴を聞き出すべきである。具体的には,挿管困難の既往,気道の構造的な歪みの存在,いびき,閉塞性睡眠時無呼吸症候群,糖尿病(1),窒息または誤嚥(2)の既往などが挙げられる。

気道確保のための身体診察では,開口を妨げる可能性のある顔面および顎の特徴(例,外傷,関節炎)があるかどうかを確認する。また,口の開きが狭い,舌骨とオトガイ間の距離が短い,甲状軟骨とオトガイ間の距離が短いなどによっても,ときに挿管困難が予測される(3)。

しかしながら,喉頭鏡検査の困難さを予測するための解剖学的評価およびスコア(例,Mallampati分類)は,時間が限られた状況または危機的状況では得られないため,臨床医は,予期せぬ気道確保困難に遭遇した場合に代替法(例,ビデオ喉頭鏡検査,声門上エアウェイバッグバルブマスク換気外科的気道確保)を用いる準備を常に整えておくべきである。臨床医は自身の臨床状況(例,手術室,救急外来,集中治療室)に応じて,緊急輪状甲状靱帯切開/FONA(front of neck access[前頸部アクセス])に加えて,代替のエアウェイ(一次およびレスキューとして使用するもの)の使用を含んだ適切な気道確保困難対応アルゴリズムを選択するべきである(2, 4)。

挿管の準備

心停止時には,挿管を試みるための胸骨圧迫の中断は最小限とすべきである(5)。代わりに,声門上エアウェイを留置してもよい。

気管挿管を試みる前には常に,気道開通性を確保し,患者を換気および酸素化する操作が必要である。挿管を決定した場合,以下の準備処置を行う:

  • 患者の体位の修正(の図を参照)

  • 100%酸素による前酸素化

  • 必要な器具の準備(吸引器を含む)

  • ときに薬剤

健康な患者では,100%酸素による前酸素化で脱窒素化され,無呼吸耐容時間(safe apneic time)が有意に長くなる(心肺の重症疾患をもつ患者では,効果は小さくなる)。

気道からの分泌物などの物質を除去するため,先端が硬質の咽頭用吸引器具をすぐに使用できるようにしておくべきである。

受動的逆流を予防するため,以前は挿管前と挿管中に輪状軟骨圧迫(Sellick操作)が推奨されていた。しかしながら,この操作はかつて考えられていたより効果がなく,喉頭鏡による観察中に喉頭部の視野を悪化させる可能性がある。

鎮静薬,筋弛緩薬,およびときに迷走神経抑制薬などの挿管を助ける薬剤は,一般的には意識があるまたは半意識の患者で喉頭鏡による観察を行う前に投与する。

気道確保困難が予想される患者で呼吸停止が切迫していない場合は,自発呼吸の維持が可能であるため,覚醒下の挿管を考慮すべきである(2)。最近公表されたガイドラインに基づき,非侵襲的陽圧換気(NIPPV)を用いた高流量酸素または呼気終末陽圧(PEEP)による前酸素化が推奨される。すでにショック状態にある患者は,挿管中に血行動態が破綻するリスクがあり,臨床医は輸液または昇圧薬の必要性を予測しておくべきである。

挿管に関連する参考文献

  1. 1.L'Hermite J, Nouvellon E, Cuvillon P, Fabbro-Peray P, Langeron O, Ripart J: The Simplified Predictive Intubation Difficulty Score: a new weighted score for difficult airway assessment. Eur J Anaesthesiol 26(12):1003–1009, 2009.doi:10.1097/EJA.0b013e32832efc71

  2. 2.Apfelbaum JL, Hagberg CA, Connis RT, et al: 2022 American Society of Anesthesiologists Practice Guidelines for Management of the Difficult Airway. Anesthesiology 136(1):31-81, 2022.doi:10.1097/ALN.0000000000004002

  3. 3.Brown III CA: Identification of the failed airway.In Brown III CA, Sakles JC, Mick NW, Mosier JM, Braude DB (Eds).Walls Manual of Emergency Airway Management, 6th ed, Wolters Kluwer, 2022.

  4. 4.Difficult Airway Society: DAS guidelines for management of unanticipated difficult intubation in adults 2015.

  5. 5.Panchal AR, Berg KM, Hirsch KG, et al: 2019 American Heart Association Focused Update on Advanced Cardiovascular Life Support: Use of Advanced Airways, Vasopressors, and Extracorporeal Cardiopulmonary Resuscitation During Cardiac Arrest: An Update to the American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care. Circulation 140(24):e881–e894, 2019.doi:10.1161/CIR.0000000000000732

チューブの選択および挿管の準備

大抵の成人には,内径が 8mmのチューブを使用できる;この径のチューブは,以下の点で細いチューブよりも望ましい:

  • 気流抵抗が小さい(呼吸仕事量を減らす)

  • 分泌物の吸引が容易である

  • 気管支鏡を通すことができる

  • 機械的人工呼吸からの離脱の助けとなる可能性がある

乳児および1歳以上の小児では,カフなしチューブのサイズは(患者の年齢 + 16)÷ 4の式で計算される;すなわち,4歳の小児の場合は(4 + 16)÷ 4 = 5mmの気管内チューブで挿管すべきである。カフ付きチューブを使用する場合には,この式で求めたチューブサイズから0.5(チューブサイズ1段階)引くべきである(1)。一覧表(の表を参照)または小児蘇生用テープ(Broselowテープ)やPedi-Wheelといった器具を用いることで,乳児や小児に対する適切なサイズの喉頭鏡ブレードと気管内チューブを迅速に特定することができる。

成人では(ときに小児でも),硬いスタイレットをチューブの中に入れるが,気管内チューブの遠位端より1~2cm手前でスタイレットを止め,チューブの先端が柔らかい状態を維持するように気をつけるべきである。その後,スタイレットを使ってチューブが遠位のカフ開始部まで一直線になるようにすべきである;そこからはホッケースティックの形を作るようにチューブを上に35°曲げる。カフまで一直線になるように形づくることで,チューブが導入しやすくなり,チューブ通過時に声帯が見えなくなるのを回避できる。バルーンの確認のために気管内チューブ遠位のカフをルーチンに空気で満たす必要はないが,この手技を用いる場合は,チューブ挿入前に注意深く空気を全て抜いておかなければならない。

医学計算ツール(学習用)

チューブの選択に関する参考文献

  1. 1.Weiss M, Dullenkopf A, Fischer JE, Keller C, Gerber AC, European Paediatric Endotracheal Intubation Study Group: Prospective randomized controlled multi-centre trial of cuffed or uncuffed endotracheal tubes in small children. Br J Anaesth 103(6):867–873, 2009.doi:10.1093/bja/aep290

挿管の手技

最初の試行で挿管を成功させることが重要である。繰り返し喉頭鏡を使用(3回以上の試行)することは,有意な低酸素血症,誤嚥,および心停止の発生率の上昇と関連している。挿管を成功させるには,正しい姿勢をとらせることに加え(の図を参照),いくつかの原則が非常に重要である:

  • 喉頭蓋が見えるようにする

  • 喉頭後部の構造(理想的には声帯)が見えるようにする

  • 確実に気管へ挿入できる状態でなければ,チューブを通過させない

通常の喉頭鏡は左手に保持するよう設計されており,ブレードを口に挿入して開口器として使用し,下顎および舌を術者とは反対方向へ押し上げ,咽頭後壁を露出する。切歯との接触を避け,喉頭の構造物に過度の圧力をかけないことが重要である。

喉頭蓋を同定することの重要性はいかに強調してもし過ぎることはない。喉頭蓋を同定することにより気道内の重要なランドマークを認識でき,喉頭鏡のブレードを正しい位置に定めることができる。喉頭蓋は咽頭後壁にかかっていることがあり,そこでピンク色の粘膜に迷入したり,心停止の患者の気道には例外なく存在する分泌液のたまりの中に見失ったりする。

喉頭蓋が見つかれば,術者は以下の2つのうちいずれかの方法で喉頭蓋を挙上する:

  • 典型的な直型ブレードによるアプローチ:術者は喉頭鏡のブレードの先端で喉頭蓋を持ち上げる

  • 典型的な曲型ブレードによるアプローチ:術者は,ブレードを喉頭蓋谷に進めて舌骨喉頭蓋靱帯に押し付けることにより,喉頭蓋を間接的に挙上し視野から移動させる。

曲型ブレードによるアプローチの成功の可否は,ブレードの先端を喉頭蓋谷に適切に置くこと,および正しい方向に力をかけて挙上することにかかっている(の図を参照)。いずれの手技でも,喉頭蓋を挙上すると,喉頭後部の構造(披裂軟骨,披裂間切痕),声門,および声帯が見える。もしブレードの先端が深すぎれば,喉頭のランドマークを完全に見過ごしてしまい,食道の暗く丸い穴を声門の入り口と誤ることがある。

構造の同定が難しければ,前頸部に右手を置いて喉頭を操作することで(左手に喉頭鏡を保持しつつ),喉頭の視野が非常に良くなることがある(の図を参照)。助手が喉頭の操作を手伝うこともできる。他の方法として,頭を高くし(環椎後頭関節を伸展させるのでなく,後頭部を持ち上げる),顎をそらすことで,視界が良くなる。頭部挙上は,頸髄損傷の可能性がある患者では推奨されず,極度の肥満の患者(あらかじめ傾斜位もしくは頭部を挙上した状態にしておかなければならない)では難しい。

視野が最適な状態では,声帯がはっきり見える。声帯が見えていない場合でも,少なくとも喉頭後部のランドマークは見えていなければならず,チューブの先端が披裂間切痕と後部の軟骨を越えるのを確認しなければならない。致死的となりうる食道挿管を避けるためにも,喉頭のランドマークははっきりと同定しなければならない。チューブが気管の中に入っている自信がなければ,チューブを挿入すべきではない。

理想的な視野が得られれば,右手でチューブを喉頭に通して気管に挿入する(右手で前喉頭部を圧迫している場合は,介助者が圧迫を続けるべきである)。チューブが簡単に通過しなければ,チューブを反時計回りに90°回すことで,前方の気管軟骨輪をスムーズに通過できることがある。気管内チューブのカフが声帯を1~2cm通過したら,バルーンを膨らませてスタイレットを抜去すべきである。喉頭鏡を抜く前に,チューブが声帯の間を通過していることを確認するべきである。適切なチューブの深さは成人では通常21~23cmで,小児では気管内チューブの径の3倍(4mm径の気管内チューブであれば12cm,5.5mm径の気管内チューブであれば16.5cm)である。成人では,チューブを不注意に進めると,一般的には右主気管支に入ってしまう。

挿管は重篤患者の10~30%で不成功に終わるため,不測の事態に備えた計画を策定すべきである。挿管が不成功に終わった場合は,酸素化を優先し,代替の介入を行うが,その際には気道に対する介入の回数を最小限に抑えて外傷およびその他の合併症を最小限に抑えるようにする(1, 2)。

両手による喉頭鏡操作

喉頭鏡を持ち上げるのとは反対の方向に,頸部に圧迫を加える。矢印は,喉頭鏡の挙上方向と前頸部の圧迫方向を示している。

挿管の手技に関する参考文献

  1. 1.Frerk C, Mitchell VS, McNarry AF, et al: Difficult Airway Society 2015 guidelines for management of unanticipated difficult intubation in adults.Br J Anaesth 115: 827–848, 2015.https://doi.org/10.1093/bja/aev371

  2. 2.Higgs A, McGrath BA, Goddard C, et al: Guidelines for the management of tracheal intubation in critically ill adults.Br J Anaesth 120:323–352, 2018. doi: 10.1016/j.bja.2017.10.021

その他の挿管器具

喉頭鏡による挿管が不成功に終わった場合の手段や,あるいは最初から行う挿管の手段として,いくつかの器具や手技を用いることができる。器具には以下のものがある:

  • ビデオ喉頭鏡

  • 気管挿管のための管付きのラリンジアルマスク(LMA)

  • その他の声門上エアウェイ

  • ファイバースコープおよび光ガイド付きスタイレット(optical stylet)

  • チューブイントロデューサー

それぞれの器具には微妙な違いがあり,たとえ標準的な喉頭鏡による挿管技術のスキルがある術者でも,それぞれの器具の使い方に十分に慣れていなければ,それらの器具を使用できると(特に患者への筋弛緩薬の投与後は)思い込まない方がよい。

ビデオ喉頭鏡では,術者は舌の弯曲を越えて見ることができ,非常に良好な喉頭の視野を得られる。ビデオ喉頭鏡は,気道確保困難の成人において,挿管成功率を高め,挿管が成功するまでの時間を短縮することができる(1)。しかしながら,一部のビデオ喉頭鏡では舌を越えるために気管内チューブを曲げる角度を過剰にする必要があり,そのためチューブの操作や挿入がより難しくなることがある。COVID-19のパンデミック時には,多くの学会ガイドラインが気道管理の主要な方法としてビデオ喉頭鏡の使用を推奨したが(使用可能な場合),これはウイルス感染を最小限に抑える試みとして,挿管を行う医師と患者の顔面との距離をより長くとるためであった(2)。小児では,ビデオ喉頭鏡は直達喉頭鏡と比較して,初回挿管の失敗リスクを低減する。しかしながら,ビデオ喉頭鏡の全ての機器でこれと同じ便益が得られるかを判断するには,さらなるエビデンスが必要である(3)。

気管挿管のための管がついているラリンジアルマスクもある。ラリンジアルマスクを通して気管内チューブを挿入するためには,医師は喉頭の入り口へのカフの最適な置き方を理解しなければならない;気管内チューブを通す際にはときに物理的困難を伴う。

声門上エアウェイは,喉頭の最適な視野が得られない場合,または声帯に気管内チューブを通すことができない場合(例,解剖学的異常,声門下狭窄)に,エアウェイの留置を可能にする。

軟性ファイバースコープおよび光ガイド付きスタイレット(optical stylet)は非常に操作しやすく,解剖学的異常のある患者でも使える。しかしながら,ファイバーの画像上で喉頭のランドマークを認識するのに慣れが必要である。ビデオ喉頭鏡と比較して,ファイバースコープは使いこなすのが難しく,血液や分泌物が問題となりやすく,また,組織を分離したり分割したりしないかわりに,もともとオープンな経路を通してファイバースコープを動かさなければならない。

チューブイントロデューサー(一般的にはガムエラスティックブジーと呼ばれる)は半硬性のスタイレットで,喉頭の見え方が準最適なとき(例,喉頭蓋は見えているが喉頭の入り口が見えていないとき)に使用できる。そのような場合,イントロデューサーを喉頭蓋下面に沿って通過させる;この位置からは,気管に入る可能性が高い。気管に入ったことは手に伝わってくる感覚でわかり,先端が気管軟骨輪を弾んで越えるのがわかる。そしてイントロデューサーに沿って,気管内チューブを進める。チューブイントロデューサーを通過させるときに,チューブの先端がときに右披裂喉頭蓋ひだにひっかかる。チューブを90°反時計回りに回転させることで気管内チューブの先端が外れ,スムーズに通過させることができる。

その他の挿管器具に関する参考文献

  1. 1.Su YC, Chen CC, Lee YK, Lee JY, Lin KJ: Comparison of video laryngoscopes with direct laryngoscopy for tracheal intubation: a meta-analysis of randomised trials. Eur J Anaesthesiol 28(11):788–795, 2011.doi:10.1097/EJA.0b013e32834a34f3

  2. 2.Perkins EJ, Begley JL, Brewster FM, Hanegbi ND, Ilancheran AA, Brewster DJ: The use of video laryngoscopy outside the operating room: A systematic review. PLoS One 17(10):e0276420, 2022.doi:10.1371/journal.pone.0276420

  3. 3.de Carvalho CC, Regueira SLPA, Souza ABS, et al: Videolaryngoscopes versus direct laryngoscopes in children: Ranking systematic review with network meta-analyses of randomized clinical trials. Paediatr Anaesth 32(9):1000–1014, 2022.doi:10.1111/pan.14521

チューブの留置確認

スタイレットを抜去し,10mLシリンジを用いてカフを空気で膨らませる;圧力計が利用可能であれば,それを用いてバルーン圧が30cmH2O未満であることを確認する。気管内チューブのサイズおよびカフのサイズは,適切な圧に必要となる空気の量に影響を及ぼす。

バルーンを膨らませた後に,以下の方法のうち,1つ以上を用いてチューブが適切に留置されたことを確認すべきである:

  • 視診および聴診

  • 二酸化炭素の検出

  • 食道挿管検知器

  • ときに胸部X線検査

チューブが正しい位置にある場合,用手的換気によって胸部が左右対称に挙上し,両肺で正常な呼吸音が聴取され,上腹部でゴボゴボ音が聞かれない。

呼気には二酸化炭素が多く含まれており,胃内の空気は含まれていないはずであるため,定量的なカプノグラフィーの波形で二酸化炭素を検出することにより,気管に入っていることを確認できる。波形表示のカプノグラフィーが利用できない場合は,呼気終末二酸化炭素(ETCO2)濃度を色で表示する装置を使用してもよいが,信頼性は劣る。挿管前に心停止が長引いている場合は,定量的な波形表示のカプノグラフィーでは最初にETCO2を検出できないことがある。しかしながら,蘇生の試みが成功すれば,ETCO2が検出されるようになることがある。ETCO2の検出またはETCO2値の上昇は,胸骨圧迫および換気が効果的に行われていることを意味する。

心停止(つまり,代謝活動がほとんどまたは全くない状態)が長時間続いている状況では,チューブが正しく気管内にあったとしても二酸化炭素を検出できないことがある。そのような場合は,食道挿管検知器を使用してもよい。この器具では,可膨張バルブまたは大きなシリンジを用いて気管内チューブに陰圧をかける。食道はたわみやすいため虚脱し,器具の中に空気がほとんどまたは全く流入しない一方,気管は硬いため虚脱せず,その結果生じる気流により気管に入っていることを確かめる。

心停止ではない場合,チューブの位置は通常,胸部X線写真でも確認する。

正しい位置にあることを確かめたら,チューブを市販の器具または粘着テープで固定する。アダプターで気管内チューブを蘇生バッグ,加湿し酸素を供給するT-ピース,または人工呼吸器に接続する。

蘇生時の混乱している状況では特に,気管内チューブは位置が変わってしまうことがあるので,チューブの位置は頻回に再確認するべきである。もし呼吸音が左で聞こえなければ,おそらく左緊張性気胸よりも右主気管支への片肺挿管の方が可能性は高いが,両者を考慮すべきである。

経鼻気管挿管

もし患者に自発呼吸があり,特定の緊急事態(例えば,口腔や頸部に重度の病態[例,外傷,浮腫,可動域制限]があり,喉頭鏡の使用が難しい場合)に経鼻気管挿管を行うことがある経鼻挿管は,中顔面骨折のある患者か,頭蓋底骨折があることがわかっている,または疑われる患者では絶対的禁忌である。筋弛緩薬が使用できないか制限されている場合や(例,病院到着前でスタッフが利用できない,あるいは一部の救急外来において),非代償性心不全および呼吸不全で座位で管理している患者にも,経鼻挿管が使用されていた。しかし,非侵襲的な換気方法(例,二相性陽圧換気)が使えるようになり,挿管に際し併用する薬剤が使いやすくなり,スタッフもその使用法について訓練されるようになった上,今の気道確保器具のおかげで経鼻挿管を行う機会は大幅に減少した。さらに懸念すべきことに,副鼻腔炎(3日目以降で一般的)など経鼻挿管に随伴する問題があり,また気管支鏡検査ができるほど大きなチューブ(例,8mm以上)では経鼻気管挿管はめったにできない。

経鼻気管挿管を行う場合,出血および防御反射を防ぐために,血管収縮薬(例,フェニレフリン)および表面麻酔(例,ベンゾカイン,リドカイン)を鼻粘膜および喉頭に用いなければならない。一部の患者には鎮静薬,オピオイド,または解離性麻酔薬の静注を要することがある。

鼻粘膜の処置ができたら,選択した鼻腔を十分に開存させるため,また表面麻酔薬を咽頭・喉頭に通す導管として用いるために,柔らかい経鼻エアウェイを挿入すべきである。経鼻エアウェイの留置時には,通常の潤滑剤または麻酔薬(例,リドカイン)入りの潤滑剤を使用することがある。咽頭粘膜へスプレーした後,経鼻エアウェイを取り除く。

それから経鼻気管チューブを14cmの深さ(大半の成人では喉頭の入り口の直上)まで挿入する;この時点では,空気の出入りが聴取できるはずである。患者が息を吸い込み,声帯が開く際に,チューブを迅速に気管へ通す。初回の挿入で失敗すると,患者を刺激し,しばしば咳をさせてしまう。医師はこの事象を予想しておくべきであり,咳により広く開いた声門にチューブを通すという2度目の機会が得られる。先端を操作できるより柔らかい気管内チューブを使うことで,成功率があがる。出血リスクを下げ挿入しやすくするため,チューブを温水に浸して柔らかくする医師もいる。小さな市販の笛をチューブの近位のコネクターにつけることもでき,チューブが喉頭の上かつ気管内の正しい位置にあれば,空気の出入りする音がこれにより強調されて聴こえる。

気管挿管の合併症

気管挿管の合併症には以下が含まれる:

  • 直接的な外傷

  • 食道挿管

  • 気管のびらん,狭窄

喉頭鏡は,唇,歯,舌,および声門上領域,声門下領域を損傷することがある。

食道挿管は,気づかれなければ換気ができなくなり,死亡または低酸素性障害につながる。食道に入ったチューブに空気を入れると,逆流による誤嚥を招き,再度挿管を試みる際に視野が悪くなり,その後もバッグバルブマスクによる換気がうまくできない。

いかなるチューブも喉頭を通過するものは多少とも声帯を傷害する;ときに潰瘍形成,虚血,および遷延性の声帯麻痺が起こる。声門下狭窄は後になって(通常,3~4週間後に)起こることがある。

気管のびらんは,まれである。しかし,カフ圧が過剰に高い(> 30cmH2O)と起こりやすくなる。

まれに,主要血管(例,腕頭動脈)からの出血,瘻(特に気管食道瘻),および気管狭窄が起こる。高容量,低圧カフ付きの適切なサイズのチューブを用い,カフ圧を頻繁(8時間毎)に計測して30cmH2O未満に維持することで,圧迫による虚血性壊死のリスクは低下する;ただし,ショック状態,心拍出量低下,あるいは敗血症の患者では,そのリスクが残る。

小児患者では,ときに喉頭痙攣が生じることがあるが,リドカインの局所または静脈内投与により予防でき,プロポフォールおよび/またはスキサメトニウムの投与により治療できる(1)。

挿管の合併症に関する参考文献

  1. 1.von Ungern-Sternberg B, Sims C: Airway Management in Children.In: Sims C, Weber D, Johnson C (eds).A Guide to Pediatric Anesthesia.Springer, Cham.2020.pp.77–114.https://doi.org/10.1007/978-3-030-19246-4_4

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