ターナー症候群

(Xモノソミー;性腺形成不全)

執筆者:Nina N. Powell-Hamilton, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
Reviewed ByAlicia R. Pekarsky, MD, State University of New York Upstate Medical University, Upstate Golisano Children's Hospital
レビュー/改訂 2023年 10月 | 修正済み 2023年 11月
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ターナー症候群の女児は,2つのX染色体のうち1つが部分的または完全に欠失した状態で出生する。診断は臨床所見に基づき,細胞遺伝学的分析で確定する。治療法は臨床像に応じて異なり,心形成異常に対して手術を行うこともあれば,しばしば低身長に対する成長ホルモン療法と思春期発来異常に対するエストロゲン療法を行うこともある。

染色体異常症の概要および性染色体異常の概要も参照のこと。)

ターナー症候群は世界中で出生女児の約1/2500に発生する(1, 2)。しかしながら,45,Xの受胎は99%が自然流産となる。

約45%の患児が45,Xの核型を有し,そのうちの約80%が父親由来のX染色体が欠損したものである。残りの55%の大半はモザイク型である(例,45,X/46,XXまたは45,X/47,XXX)(3)。モザイク型の女児では,典型的なターナー症候群から正常のものまで,表現型は多彩である。ときに,正常なX染色体1つと環状のX染色体1つを有する女児もいる。また,正常なX染色体と長腕同腕染色体(X染色体2つの短腕欠失とその結果生じたX染色体長腕2つの結合によって形成される)を1つずつ有する女児も存在する。このような女児は,ターナー症候群の表現型特性の多くを有している傾向があり,このことから,X染色体短腕の欠失がこの典型的な表現型の発生に重要な役割を果たしていると考えられる。X染色体を1つもつ個人にY染色体が関与するモザイクがある(すなわち,一部の細胞が46, XYである)場合,表現型は男性と女性どちらの場合もありうることに注意する必要がある(4)。

総論の参考文献

  1. 1.Martin-Giacalone BA, Lin AE, Rasmussen SA, et al: Prevalence and descriptive epidemiology of Turner syndrome in the United States, 2000-2017: A report from the National Birth Defects Prevention Network.Am J Med Genet A 191(5):1339-1349, 2023.doi: 10.1002/ajmg.a.63181

  2. 2.Nielsen J, Wohlert M: Chromosome abnormalities found among 34,910 newborn children: Results from a 13-year incidence study in Arhus, Denmark.Hum Genet 87(1):81-83, 1991.doi: 10.1007/BF01213097

  3. 3.Zhong Q, Layman LC: Genetic considerations in the patient with Turner syndrome--45,X with or without mosaicism. Fertil Steril 98(4):775-779, 2012.doi: 10.1016/j.fertnstert.2012.08.021

  4. 4.Guzewicz L, Howell S, Crerand CE, et al: Clinical phenotype and management of individuals with mosaic monosomy X with Y chromosome material stratified by genital phenotype. Am J Med Genet A 185(5):1437-1447, 2021.doi: 10.1002/ajmg.a.62127

ターナー症候群の病態生理

よくみられる心形成異常として,大動脈縮窄症や大動脈二尖弁などがある。しばしば加齢とともに高血圧を生じるようになるが,これは大動脈縮窄がない場合も同様である。腎形成異常および血管腫も高率にみられる。ときに消化管で毛細血管拡張が発生し,それにより消化管出血やタンパク質喪失を来す。難聴がみられることがあり,また斜視および遠視がよくみられ,弱視のリスクが高い。一般集団と比べて,甲状腺炎,糖尿病,およびセリアック病の頻度が高い。

乳児期には発育性股関節形成不全のリスクが高い。青年期には約10%で脊柱側弯症がみられる。ターナー症候群の女性では,骨粗鬆症と骨折がかなり多くみられる。性腺形成不全(両側の卵巣が筋状の線維性間質で置換され,卵子の発育はみられない)が90%の頻度で発生する。ターナー症候群の青年の15~40%では思春期が発来するが,初経が発来するのは2~10%のみである。

知的障害はまれであるが,多くの女児で非言語性学習障害,注意欠如多動症,またはその両方が認められ,その結果,たとえ知能検査の言語性課題では平均以上の成績を残したとしても,動作性検査と数学では成績は不良となる。

ターナー症候群の症状と徴候

新生児では多くの場合,症状はごく軽度であるが,手背および足背の著明なリンパ浮腫や,頸部背面にリンパ浮腫や弛緩した皮膚の襞がみられる場合もある。このほかに頻度の高い形成異常としては,翼状頸,乳頭間離開と陥没乳頭を伴う幅の広い胸郭などがある。患児は家族と比して低身長となることが多く,肥満がよくみられる。

比較的頻度の低い所見としては,頸部背面の毛髪線低位,眼瞼下垂,多発性の色素性母斑,第4中手骨および中足骨の短縮,指腹に渦状紋を伴う指尖部の隆起,爪の低形成などがある。肘の外反角(キャリーアングル)の増大も認められる。

ターナー症候群の身体的特徴
ターナー症候群(翼状頸)
ターナー症候群(翼状頸)

ターナー症候群患者の翼状頸(正面像)の画像。

ターナー症候群患者の翼状頸(正面像)の画像。

MID ESSEX HOSPITAL SERVICES NHS TRUST/SCIENCE PHOTO LIBRARY

ターナー症候群
ターナー症候群

低身長,がっしりした体型,乳頭間離開を伴い乳腺発達が欠如した幅の広い胸郭,外反肘など,ターナー症候群の典型的な身体的特徴が認められる13歳の女児。

低身長,がっしりした体型,乳頭間離開を伴い乳腺発達が欠如した幅の広い胸郭,外反肘など,ターナー症候群の典型的な身体的特徴が認められる13歳の女児。

By permission of the publisher. From Shulman D, Bercu B: Atlas of Clinical Endocrinology: Neuroendocrinology and Pituitary Disease.Edited by S Korenman (series editor) and ME Molitch. Philadelphia, Current Medicine, 2000.

ターナー症候群(上部骨格の特徴)
ターナー症候群(上部骨格の特徴)

特徴的な翼状頸および毛髪線低位が認められるターナー症候群患者。

特徴的な翼状頸および毛髪線低位が認められるターナー症候群患者。

© Springer Science+Business Media

心形成異常の症状は重症度に依存する。大動脈縮窄症では,上肢の高血圧,大腿動脈拍動の減弱,および下肢の血圧低下または測定不能が起こりうる。

大半の患者は性腺形成不全から早発卵巣不全を来し,思春期発達の欠如または不完全な思春期発達,乳房発育の欠如,無月経(大半の患者が原発性無月経であるが,初経を経てから早発卵巣不全を伴う性腺形成不全のため続発性無月経になる患者もある),および不妊によって病態が顕在化する。少数の患者では思春期および生殖機能が正常である(1)。特徴的な所見は,卵巣の一部が結合組織で置き換わり,卵胞が全くないかごく少数だけの状態である(索状性腺[streak gonad]と呼ばれる)(2)。

ターナー症候群に関連するその他の医学的問題は,成長とともに発生し,スクリーニングを行わなければ明らかにならない場合もある。

症状と徴候に関する参考文献

  1. 1.Pasquino AM, Passeri F, Pucarelli I, et al: Spontaneous pubertal development in Turner's syndrome.Italian Study Group for Turner's Syndrome.J Clin Endocrinol Metab 82(6):1810-1813, 1997.doi: 10.1210/jcem.82.6.3970

  2. 2.Steiner M, Saenger P: Turner Syndrome: An Update. Adv Pediatr 69(1):177-202, 2022.doi: 10.1016/j.yapd.2022.03.004

ターナー症候群の診断

  • 身体診察

  • 核型分析,蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)解析,および/または染色体マイクロアレイ解析による細胞遺伝学的検査

  • 合併症の検査

新生児では,リンパ浮腫または翼状頸の存在からターナー症候群が疑われることがある。これらの所見がみられない場合は,低身長,思春期発達の欠如,および無月経に基づいて後から診断されることがある。

細胞遺伝学的検査(核型分析,FISH解析,および/または染色体マイクロアレイ解析)により診断を確定する。(染色体異常症の診断も参照のこと。)

心形成異常の検出と継続的サーベイランスのため,心エコー検査またはMRIが適応となる。

Y染色体を有する細胞系列とのモザイク(例,45,X/46,XY)を除外するため,性腺形成不全の患者には全例で細胞遺伝学的検査とY染色体特異的プローブによる検査を施行する。このような個人の表現型は通常女性であり,様々な程度でターナー症候群の特徴が認められる可能性がある。性腺腫瘍,特に性腺芽腫の発生リスクが高く,その一部は悪性化しうる。このがん化の可能性を理由として,議論の分かれるところであるが,しばしば予防的な性腺摘除術が推奨される。

併発症

ターナー症候群に合併する異常を同定する上では,特定のルーチン評価が役立つ(1):

  • 診断時の心エコーおよび心電図検査による心臓の評価,ならびに伝導異常および大動脈拡張をモニタリングするためのその後の継続的評価

  • 診断時の腎超音波検査,泌尿器系形成異常がある患者では年1回の尿検査,血中尿素窒素,クレアチニン

  • 3~5年毎に言語聴覚士による聴覚評価および聴力検査

  • 小児期および青年期の年1回の脊柱側弯症/後弯症の評価

  • 股関節脱臼の評価

  • 生後12~18カ月時または診断時の眼科的評価;その後は年1回の評価

  • 診断時とその後年1回の甲状腺機能検査

  • セリアック病のスクリーニング(例,抗筋内膜抗体価)

  • 10歳から年1回の耐糖能障害のスクリーニング

診断に関する参考文献

  1. 1.Shankar RK, Backeljauw PF: Current best practice in the management of Turner syndrome.Ther Adv Endocrinol Metab 9(1):33–40, 2018.doi: 10.1177/2042018817746291

ターナー症候群の治療

  • 併発症の管理

  • ときに心臓の異常の外科的修復

  • ときに成長ホルモンおよびエストロゲン

基礎にある遺伝学的病態に対する特異的な治療法は存在せず,各症例の所見に基づいて管理する。

大動脈縮窄症は通常,外科的に修復される。その他の心形成異常はモニタリングの対象とし,必要に応じて修復する。

リンパ浮腫は通常,サポート靴下とその他の方法(マッサージなど)でコントロールできる。

成長ホルモン療法で成長を刺激することができる。通常は思春期を発来させるためにエストロゲン療法が必要であり,典型的には12~13歳時に行われる。その後,第二次性徴を維持するためにエストロゲン/プロゲスチンを含有する経口避妊薬を投与する。骨端線が閉鎖するまでは,エストロゲン療法とともに成長ホルモンを投与することができるが,骨端線閉鎖時に成長ホルモンは中止する。エストロゲン療法を継続することが,至適な骨密度および骨格発達を達成する助けとなる。エストロゲン療法はまた,患児の課題設定能力,注意能力,ならびに視覚的および空間的関係評価の能力も改善させる可能性がある(1)。

モザイク型ターナー症候群の患者は妊娠する可能性があり,性的に活動的で本人が避妊を望む場合は避妊法を用いるべきである。妊孕性は限定的である可能性があり,そのため妊娠を希望する場合は通常,別の不妊治療が必要となる。

治療に関する参考文献

  1. 1.Klein KO, Rosenfield RL, Santen RJ, et al: Estrogen Replacement in Turner Syndrome: Literature Review and Practical Considerations.J Clin Endocrinol Metab 103(5):1790-1803, 2018.doi: 10.1210/jc.2017-02183

要点

  • 女児において,検査した一部または全ての細胞で2つのX染色体のうちの1つまたはその一部が欠失している。

  • 臨床像は多彩であるが,低身長,翼状頸,幅の広い胸郭,性腺形成不全,および心形成異常(大動脈縮窄症と大動脈二尖弁が多い)がよくみられ,知的障害はまれである。

  • 性腺悪性腫瘍のリスクが増大しており,しばしば予防的な性腺摘除術が推奨されるが,これに関しては議論が分かれる。

  • 合併症(例,心形成異常および腎形成異常)を検出するために年齢に応じたスクリーニングを行う。

  • 思春期を発来させ,第二次性徴を維持するためホルモン治療を行う。

  • 個々の臨床像に応じた治療を行うとともに,社会的支援,教育支援,および遺伝カウンセリングを提供する。

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