心室頻拍(VT)

執筆者:L. Brent Mitchell, MD, Libin Cardiovascular Institute, University of Calgary
Reviewed ByJonathan G. Howlett, MD, Cumming School of Medicine, University of Calgary
レビュー/改訂 修正済み 2024年 9月
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心室頻拍は,連続で3拍以上にわたり心拍数が120/分以上となる状態である。症状は持続時間に依存し,無症状から動悸,血行動態の破綻,さらには死に至ることもある。診断は心電図検査による。短時間の発作に収まらない場合の治療には,症状に応じてカルディオバージョンまたは抗不整脈薬を用いる。必要な場合は,植込み型除細動器による長期治療を行う。

不整脈の概要も参照のこと。)

心室頻拍(VT)のカットオフ値としては,心拍数100/分以上を採用している専門家もいる。拍動数の低い反復性の心室調律は促進性心室固有調律または遅いVT(slow VT)と呼ばれ,通常は良性であり,血行動態不良による症状がない限り治療は行わない。

大半のVT患者は有意な心疾患(特に心筋梗塞の既往または心筋症)を有する。電解質異常(特に低カリウム血症または低マグネシウム血症),アシデミア,低酸素血症,および薬剤の有害作用が一因となる(1)。QT延長症候群(先天性または後天性)には,特殊な形態のVTであるトルサードドポアントが関連する。

心室頻拍は単形性と多形性に,また非持続性と持続性に分類される。

  • 単形性VT:単一の異常興奮起源またはリエントリー伝導路に起因し,そのため同じ形態のQRS波が規則的に生じる。

  • 多形性VT:いくつかの興奮起源または伝導路に起因し,そのためQRS波は不規則で,形態が変化する。

  • 非持続性VT:持続時間30秒未満

  • 持続性VT:30秒以上継続するか,血行動態の破綻により30秒未満で停止する。

右室および左室流出路起源心室頻拍(RVOT-VTおよびLVOT-VT)は,明らかな構造的心疾患が基礎にない状況で発生する特発性心室頻拍である(2)。これらはcAMPを介した遅延後脱分極により発生し,通常は運動または精神的ストレスに伴って生じる(2)。典型的には左脚ブロック(LBBB)に類似した波形を呈し,下向きの垂直軸(V1誘導で陽性QRS,AVL誘導で陰性QRS,I誘導でほぼ等電位のQRS)を示す(心室性期外収縮を参照)。

ベラパミルに感受性を示す左脚分枝起源のVT(Belhassen VT,左室中隔起源VT)は,基礎に明らかな構造的心疾患がない状況で発生する特発性心室頻拍である(3)。これは異常なプルキンエ組織の緩徐伝導部位によるもので,この部位により心室筋と左脚の左側の分枝(通常は後枝)の一部を介したマクロリエントリーが成立することがある。これは典型的には閾値を超える心拍数で自発的にまたは急速な心房ペーシングによって誘導され,通常は右脚ブロックのそれに類似した波形を示し,左軸偏位がみられる(3)。

束枝リエントリー性VT(bundle branch reentry VT)は,進行した心筋症または孤立性の刺激伝導系疾患の患者に発生する心室頻拍である(3)。これは両側の脚枝を介したマクロリエントリーによるものであり,通常は右脚で順行性,左脚で逆行性の伝導が生じる。そのため,この心室頻拍は通常,LBBB様のQRS波形を示す(3)。

カテコラミン誘発性多形性心室頻拍は,心臓組織における細胞内カルシウム調節に影響を及ぼす遺伝性疾患である。患者は心房性および/または心室性頻拍性不整脈から心臓突然死を起こしやすく,特にアドレナリン作用が強い状態ではその可能性が高くなる。(不整脈疾患も参照のこと。)

VTはしばしば増悪して心室細動に移行し,それにより心停止を引き起こす。

総論の参考文献

  1. 1. Al-Khatib SM, Stevenson WG, Ackerman MJ, et al:  2017 AHA/ACC/HRS guideline for management of patients with ventricular arrhythmias and the prevention of sudden cardiac death: a report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines and the Heart Rhythm Society.J Am Coll Cardiol 72:e91–e220, 2018.doi: 10.1016/j.jacc.2017.10.054

  2. 2.Lerman BB: Mechanism, diagnosis, and treatment of outflow tract tachycardia.Nat Rev Cardiol 12(10):597–608, 2015.doi: 10.1038/nrcardio.2015.121

  3. 3.Sung RK, Boyden PA, Scheinman M: Cellular Physiology and Clinical Manifestations of Fascicular Arrhythmias in Normal Hearts.JACC Clin Electrophysiol 3(12):1343–1355, 2017.doi: 10.1016/j.jacep.2017.07.011

心室頻拍の症状と徴候

持続時間の短い心室頻拍や心拍数の低い心室頻拍は無症状のことがある。持続性VTはほぼ常に症状を伴い,動悸や血行動態不良の症状を引き起こし,心臓突然死につながることもある。

心室頻拍の診断

  • 心電図検査

心室頻拍の診断は心電図検査による(QRS幅の広い心室頻拍の図を参照)。QRS幅の広い頻拍(QRS 0.12秒)は,VTでないことが証明されるまでは,全てVTとみなすべきである。

パール&ピットフォール

  • QRS幅の広い頻拍(QRS 0.12秒)は,VTでないことが証明されるまでは,全てVTとみなすべきである。

診断は以下の心電図所見により裏付けられる:

  • 解離したP波活動

  • 融合収縮(伝導した洞性拍動が心室拍動と融合して,形態,持続時間,および軸が正常に伝導した拍動とQRS幅の広い心室拍動との中間的なものになったQRS波を形成する)

  • 心室捕捉収縮(正常に伝導した洞性拍動によりQRS幅の広い頻拍が遮断される)

  • V誘導における均一なQRSベクトル(一致)とそれに伴うT波ベクトルの不一致(QRSベクトルと反対)

  • 前額面QRS軸の極端な右軸偏位

鑑別診断として,脚ブロックを伴ってまたは副伝導路を介して伝導される速い上室調律がある(心室頻拍の改変Brugada基準の図を参照)(1)。VTに驚くほどよく耐える患者もいるため,耐容性が良好なQRS幅の広い頻拍であることから上室起源と決めつけるのは誤りである。上室頻拍の治療薬(例,ベラパミル,ジルチアゼム)をVT患者に投与すると,血行動態の破綻や死亡につながる可能性がある(2)。それでも,アデノシンの半減期は非常に短いため,状態が安定していて,規則的でQRS幅の広い単形性の頻拍がみられる患者に対しては,アデノシンの静注が診断的手技として(また不整脈が上室性である場合は治療としても)用いられることがあるが,安定したVTが不安定な心室細動に移行するリスクがわずかにある(3)。

心室頻拍の改変Brugada基準

* 右脚ブロック型のQRS:

  • V1誘導で単相性R,QR,またはRS

  • V6誘導でR/S < 1または単相性RもしくはQR

* 左脚ブロック型のQRS

  • V1誘導でR幅 > 30msecまたはRS幅 > 60msec

  • V6誘導でQRまたはQS

AV = 房室;LBBB = 左脚ブロック;msec = ミリ秒;RBBB = 右脚ブロック;VT = 心室頻拍。

Data from Brugada P, Brugada J, Mont L, Smeets J, Andries EW.A new approach to the differential diagnosis of a regular tachycardia with a wide QRS complex. Circulation.1991;83(5):1649-1659.doi:10.1161/01.cir.83.5.1649

パール&ピットフォール

  • 心室頻拍に驚くほどよく耐える患者もいるため,耐容性が良好なQRS幅の広い頻拍であることから上室起源と決めつけるのは誤りである。

QRS幅の広い心室頻拍

QRS時間は160msecである。II誘導に独立したP波が観察される(矢印)。前額面の平均電気軸には左軸偏位が認められる。

診断に関する参考文献

  1. 1.Vereckei A, Simon A, Szénási G, et al: The Application of a New, Modified Algorithm for the Differentiation of Regular Ventricular and Pre-Excited Tachycardias.Heart Lung Circ 32(6):719–725, 2023.doi: 10.1016/j.hlc.2023.03.016

    2. Al-Khatib SM, Stevenson WG, Ackerman MJ, et al:  2017 AHA/ACC/HRS guideline for management of patients with ventricular arrhythmias and the prevention of sudden cardiac death: a report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines and the Heart Rhythm Society.J Am Coll Cardiol 72:e91–e220, 2018.doi: 10.1016/j.jacc.2017.10.054

  2. 3.Marill KA, Wolfram S, Desouza IS, et al: Adenosine for wide-complex tachycardia: efficacy and safety.Crit Care Med 37:2512–2518, 2009.doi: 10.1097/CCM.0b013e3181a93661

心室頻拍の治療

  • 急性:ときにカルディオバージョン,ときにI群またはIII群の抗不整脈薬

  • 長期:通常は植込み型除細動器

急性

急性心室頻拍の治療はVTの症状および持続時間によって異なる。

無脈性VTには除細動が必要であり,二相性で120~200J(または単相性で360J)から開始する。

安定した持続性VTは,意識下鎮静または一時的な全身麻酔を用いて,100J以上でのカルディオバージョンで治療できる。

安定した持続性VTは,I群またはIII群抗不整脈薬の静注で治療可能である(1)(抗不整脈薬の表を参照)。リドカインは速やかに作用するが,しばしば無効である。リドカインが無効の場合はプロカインアミドを静注してもよいが,作用の発現までに最長で1時間を要する。しばしばアミオダロンの静注が選択されるが,通常は即効性がない。プロカインアミドまたはアミオダロンの静注が無効の場合は,カルディオバージョンの適応となる。右室流出路および左室流出路起源心室頻拍(RVOT-VTおよびLVOT-VT)は,アデノシンの静注に反応する。ベラパミルに感受性を示す左脚分枝起源の心室頻拍は,ベラパミルの静注に反応する(1)。

非持続性VTは,頻度または持続時間が症状を引き起こすほどでない限り,即時の治療は必要ない。症状がみられる症例では,持続性VTの場合と同様に抗不整脈薬を使用する。

長期

第一の目標は,不整脈の単なる抑制ではなく,突然死の予防である。その達成には,植込み型除細動器(ICD)の使用が最善の方法である。しかしながら,どのような患者を治療すべきかという決定は複雑であり,生命を脅かすVTの推定発生確率と基礎心疾患の重症度に基づく(1)(植込み型除細動器の適応の表を参照)。

心室頻拍の初発エピソードが一過性の原因(例,心筋梗塞の発症から48時間以内)または可逆的な原因(酸塩基障害,電解質異常,薬剤の催不整脈作用)に起因する場合は,長期治療は必要ない。

一過性または可逆的な原因がいずれも認められない場合,持続性VTを発症した患者には通常ICDが必要である(1)。持続性VTと有意な構造的心疾患がみられる患者の大半には,β遮断薬も投与すべきである。ICDを使用できない場合は,突然死を予防するための抗不整脈薬としてアミオダロンが望ましい可能性がある。

構造的心疾患を有する患者では非持続性VTは突然死のリスク上昇の指標であるため,このような患者(特に駆出率0.35未満の患者)には,さらなる評価が必要である。このような患者にはICDを使用すべきである。

VTの予防が重要である場合(通常はICDを使用しておりVTを頻回に起こしている患者)は,抗不整脈薬,または不整脈源性基質に対する経カテーテルまたは外科的アブレーションが必要である(1)。抗不整脈薬はIa群,Ib群,Ic群,II群,III群のいずれも使用できる。β遮断薬(II群)は安全であるため,禁忌がない限り第1選択となる。薬剤の追加が必要な場合は,一般的にソタロールが使用され,次いでアミオダロンが使用される(1)。

明確に定義された症候群を伴うVT(例,右室流出路または左室流出路起源VT,ベラパミルに感受性を示す左脚分枝起源VT,または束枝リエントリー性VT)を呈する患者では,カテーテルアブレーションが特に奏効する(1)。

治療に関する参考文献

  1. 1.  Al-Khatib SM, Stevenson WG, Ackerman MJ, et al:  2017 AHA/ACC/HRS guideline for management of patients with ventricular arrhythmias and the prevention of sudden cardiac death: a report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines and the Heart Rhythm Society.J Am Coll Cardiol 72:e91–e220, 2018.doi: 10.1016/j.jacc.2017.10.054

要点

  • QRS幅の広い頻拍(QRS ≥ 0.12秒)は,反証されるまでは,全て心室頻拍とみなすべきである。

  • 脈がない患者にはカルディオバージョンを行うべきである。

  • 患者の状態が安定している場合は,カルディオバージョンまたは抗不整脈薬を試してもよい。

  • 持続性VTを発症した患者で一過性の原因も可逆的な原因も認められない場合には,通常は植込み型除細動器(ICD)が必要である。

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