ブルガダ症候群

執筆者:L. Brent Mitchell, MD, Libin Cardiovascular Institute, University of Calgary
Reviewed ByJonathan G. Howlett, MD, Cumming School of Medicine, University of Calgary
レビュー/改訂 2024年 6月 | 修正済み 2024年 8月
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ブルガダ症候群は,V1~V3誘導に大きなJ波とT波逆転を伴うCoved型のST上昇を認めることを特徴とし,心室頻拍(VT)および心室細動(VF)のリスクを増大させ,それにより失神や突然死を来す遺伝性のチャネル病である。診断は心電図検査のほか,しばしば誘発試験による電気診断検査や遺伝子検査による。治療は植込み型除細動器による。家系員もスクリーニングすべきである。

不整脈の概要およびチャネル病の概要も参照のこと。)

ブルガダ症候群の発生率は全体では10,000人当たり約5例であるが(1),民族間ひいては地域間で大きな差がみられ,東南アジア(10,000人当たり37例),中東(10,000人当たり18例),アジアのその他の地域(10,000人当たり17例)で最も高く,欧州(10,000人当たり1例)と北米(10,000人当たり0.5例)では,はるかに低い水準となっている(1)。臨床的に明らかなブルガダ症候群を呈する患者の大半(85%)が男性である(1)。

総論の参考文献

  1. 1. Vutthikraivit W, Rattanawong P, Putthapiban P, et al: Worldwide Prevalence of Brugada Syndrome: A Systematic Review and Meta-Analysis.Acta Cardiol Sin 34(3):267–277, 2018.doi: 0.6515/ACS.201805_34(3).20180302B

ブルガダ症候群の病態生理

ブルガダ症候群の原因となる変異は以下のいずれかをもたらす:

  • 内向きナトリウムまたはカルシウム電流の減少

  • 一過性外向きカリウム電流の増加

これらの異常は,活動電位プラトーの早期喪失をもたらすが,これは特に右室流出路の心外膜細胞によくみられ,特徴的な右前胸部心電図変化および心室性頻拍性不整脈の傾向を生じる。様々な変異が報告されているが,その大半がSCN5A遺伝子にある,内向きナトリウム電流の機能喪失を引き起こすものである(1)。

典型的には,患者に構造的心疾患はみられない。それでも,QT延長症候群3型早期再分極症候群不整脈源性右室心筋症(ARVC)とのオーバーラップ症候群のように,遺伝性および後天性の構造的心疾患との関係がますます認識されてきている。

病態生理に関する参考文献

  1. 1.  Antzelevitch C, Yan GX, Ackerman MJ, et al: J-Wave syndromes expert consensus conference report: Emerging concepts and gaps in knowledge.Heart Rhythm 13(10):e295–324, 2016.doi: 10.1016/j.hrthm.2016.05.024

ブルガダ症候群の症状と徴候

ブルガダ症候群では,臨床的な異常がみられないことがある。しかしながら,多くの患者では多形性心室頻拍または心室細動に起因して失神や心臓突然死がみられる。心室性不整脈から睡眠中の突然死に至ることもある。約10%の患者に心房性頻拍性不整脈,主に心房細動が生じるが(1),初診時から心房細動がみられる患者もいる(2)。

発作の発生は夜間に多く,通常は労作と関連しない。発熱や特定の薬剤または薬物(ナトリウムチャネル遮断薬,β遮断薬,特定の抗うつ薬および抗精神病薬,リチウム,アルコール,コカインなど)によって発作が誘発されることもある(3)。

症状と徴候に関する参考文献

  1. 1.Giustetto C, Cerrato N, Gribaudo E, et al: Atrial fibrillation in a large population with Brugada electrocardiographic pattern: prevalence, management, and correlation with prognosis.Heart Rhythm 11(2):259–265, 2014.doi: 10.1016/j.hrthm.2013.10.043

  2. 2.Rodríguez-Mañero M, Namdar M, Sarkozy A, et al: Prevalence, clinical characteristics and management of atrial fibrillation in patients with Brugada syndrome. Am J Cardiol 111(3):362–367, 2013.doi:10.1016/j.amjcard.2012.10.012

  3. 3.Antzelevitch C, Yan GX, Ackerman MJ, et al: J-Wave syndromes expert consensus conference report: Emerging concepts and gaps in knowledge.Heart Rhythm 13(10):e295–324, 2016.doi: 10.1016/j.hrthm.2016.05.024

ブルガダ症候群の診断

  • 心電図検査

  • 家族歴

  • 誘発試験による特徴的な心電図変化の誘発

  • 遺伝子検査

原因不明の心停止または失神がみられるか,家系内に構造的心疾患がないにもかかわらず原因不明の心停止または失神の既往を有する者がいる患者では,本症を考慮すべきである。

ブルガダ症候群の初期診断は,特徴的な心電図波形(1型のブルガダ型心電図)に基づいて下される(1型のブルガダ型心電図の図を参照)。1型のブルガダ型心電図では,V1およびV2で(ときにV3でも)著明なST上昇が認められ,結果として,これらの誘導のQRS波は右脚ブロックに類似する。ST部分はcoved型で,逆転したT波に向かって下降する。上海スコアに従う場合,自発的な1型パターンのみがブルガダ症候群の診断につながる(1)。

このようなパターンの心電図ではあるがその程度が低いもの(2型および3型のブルガダ型心電図)は診断的所見とはみなさない。2型および3型パターンは1型パターンに変化することがあり,そのような変化は自然発生的に起こることもあれば,発熱に伴って起きたり,薬剤に対する反応として起きたりすることもある。後者の条件でみられる変化は負荷試験の原理とされているもので,試験では通常,静注のアジマリン,プロカインアミド,フレカイニド,またはピルシカイニドが使用される。境界例でのブルガダ症候群の診断を補助するためのスコアが開発されている(1)。そのような症例では,ブルガダ症候群の診断が可能であると考えられる。診断を確定するには,臨床的基準,家族歴の基準,および遺伝学的基準を適用する必要がある(1)。

心臓電気生理検査の役割についてはまだ議論されている。追加刺激を2回までに限定したプログラム心室刺激試験での心室頻拍または心室細動の誘発は,リスク層別化で自発的な1型ブルガダ型心電図が認められた無症状の患者におけるクラスIIaの適応条件となっているが(2),上海スコアの診断基準には採用されていない(1)。通常は遺伝子検査が推奨されるが,検出率は約20%である(3)。

ブルガダ症候群の診断では,低体温症や低カルシウム血症,右脚ブロック,不整脈源性右室心筋症,急性肺塞栓症,左前下行枝および右冠動脈円錐枝の閉塞など,同様の心臓所見がみられる他疾患を考慮して除外する必要がある(1)。

1型のブルガダ型心電図

Coved型のST部分に向かってJ点が著明に上昇し,V1およびV2誘導ではT波逆転が生じている。

診断に関する参考文献

  1. 1.Antzelevitch C, Yan GX, Ackerman MJ, et al: J-Wave syndromes expert consensus conference report: Emerging concepts and gaps in knowledge.Heart Rhythm 13(10):e295–324, 2016.doi: 10.1016/j.hrthm.2016.05.024

  2. 2.  Al-Khatib SM, Stevenson WG, Ackerman MJ, et al: 2017 AHA/ACC/HRS Guideline for Management of Patients With Ventricular Arrhythmias and the Prevention of Sudden Cardiac Death: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines and the Heart Rhythm Society.Circulation 138(13):e272–e391, 2018.doi: 10.1161/CIR.0000000000000549

  3. 3.  Wilde AAM, Semsarian C, Márquez MF, et al: European Heart Rhythm Association (EHRA)/Heart Rhythm Society (HRS)/Asia Pacific Heart Rhythm Society (APHRS)/Latin American Heart Rhythm Society (LAHRS) Expert Consensus Statement on the state of genetic testing for cardiac diseases.J Arrhythm 38(4):491–553, 2022.doi: 10.1002/joa3.12717

ブルガダ症候群の治療

  • 植込み型除細動器

  • 家系員のスクリーニング

1型のブルガダ型心電図が自発的にまたは誘発によって認められ,最近の原因不明の失神,持続性VT,または心停止の既往がある患者には,典型的には植込み型除細動器(ICD)を使用すべきである(1)。

頻回のICD放電を抑制する必要がある場合は,キニジンが有効となることがあるが,これはキニジンがブルガダ症候群で増加しうる一過性外向きカリウム電流を遮断するためである。頻発する不整脈の原因が一過性かつ可逆性のものとみられる場合には,イソプレナリンの静注剤も用いられている(2)。このような治療に反応しない患者では,不整脈源性基質に対するカテーテルアブレーションを考慮してもよい(3)。

心電図変化と家族歴に基づきブルガダ症候群と診断されているが失神も不整脈もみられない患者に対する最善の治療方針は明確ではないが,そのような患者でも突然死のリスクが高まっている。このような患者に対してICDが適切な治療かどうかを判断するためのスコアリングシステムが開発されている(4)。

治療に関する参考文献

  1. 1.  Al-Khatib SM, Stevenson WG, Ackerman MJ, et al: 2017 AHA/ACC/HRS Guideline for Management of Patients With Ventricular Arrhythmias and the Prevention of Sudden Cardiac Death: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines and the Heart Rhythm Society.Circulation 138(13):e272–e391, 2018.doi: 10.1161/CIR.0000000000000549

  2. 2. Brodie OT, Michowitz Y, Belhassen B: Pharmacological Therapy in Brugada Syndrome.Arrhythm Electrophysiol Rev 7(2):135–142, 2018.doi: 10.15420/aer.2018.21.2

  3. 3. Antzelevitch C, Yan GX, Ackerman MJ, et al: J-Wave syndromes expert consensus conference report: Emerging concepts and gaps in knowledge.Heart Rhythm 13(10):e295–324, 2016.doi: 10.1016/j.hrthm.2016.05.024

  4. 4.Rattanawong P, Mattanapojanat N, Mead-Harvey C, et al: Predicting arrhythmic event score in Brugada syndrome: Worldwide pooled analysis with internal and external validation.Heart Rhythm 20:1358–1367, 2023.doi: 10.1002/joa3.12822

ブルガダ症候群による不整脈の予防

不整脈を誘発しうる因子を避けることが重要である。患者は感染症にかかっている間は体温をモニタリングし,発熱があれば解熱薬を服用すべきである。医師は,可能であれば素因となる薬剤を中止し,代替薬を処方すべきである。患者は,ブルガダ症候群において不整脈を引き起こす物質,特にコカインや過度のアルコールの摂取を避けるべきである(最新のリストはwww.brugadadrugs.orgを参照)。

要点

  • ブルガダ症候群は,特徴的な心電図変化を引き起こし,心室性不整脈の発生リスクを増大させる遺伝性疾患であり,不整脈から失神のほか,ときに比較的若年での心臓突然死を来すこともある。

  • 症候性不整脈の危険因子としては,発熱や多くの薬剤やその他の物質(例,アルコール,コカイン)などがある。

  • 診断は心電図検査のほか,ときに誘発試験による。

  • 植込み型除細動器が必要になることもある。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. www.brugadadrugs.org:ブルガダ症候群における安全な薬剤使用に関する最新情報の提供を目指している

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