腎静脈血栓症は,主要な腎静脈の一側または両側が閉塞し,急性腎障害または慢性腎臓病が生じる病態である。一般的な原因は,ネフローゼ症候群,原発性の凝固亢進疾患,悪性腎腫瘍,外因性圧迫,外傷,まれに炎症性腸疾患である。腎不全の症状,およびときに悪心,嘔吐,側腹部痛,肉眼的血尿,尿量低下または静脈血栓塞栓症の全身症状が起こる場合がある。診断はCT,MRアンギオグラフィー,または腎静脈造影による。治療をした場合の予後は,一般に良好である。治療は抗凝固療法,腎機能の維持,基礎疾患の治療である。一部の患者では血栓除去術または腎摘出術が有益である。
腎静脈血栓症の病因
腎静脈血栓症は約3分の2の症例で悪性腫瘍を合併する(1, 2)。ネフローゼ症候群も,局所および全身性の凝固亢進ゆえに,腎静脈血栓症の重要な原因の1つである。この状況でのネフローゼ症候群は,膜性腎症や微小変化群または膜性増殖性糸球体腎炎を合併しているのが大半である。ネフローゼ症候群に起因する血栓症のリスクは,低アルブミン血症の重症度と比例するようにみえる。過剰に積極的な利尿または長期の高用量コルチコステロイド投与は,これらの状態を有する患者で腎静脈の血栓症に寄与している可能性がある。
その他の原因としては以下のものがある:
エストロゲン療法
妊娠
原発性の凝固亢進疾患(例,アンチトロンビンIII欠乏症,プロテインC欠乏症,プロテインS欠乏症,第V因子Leiden変異,プロトロンビンG20210A変異)
腎血管炎
鎌状赤血球腎症
比較的まれな原因は腎静脈血流低下に関連するもので,具体的には,腎静脈まで進展して閉塞を生じた悪性腎腫瘍(典型的には腎細胞癌),腎静脈または下大静脈の外因性の圧迫(例,血管異常,腫瘍,後腹膜疾患,下大静脈の結紮,大動脈瘤),経口避妊薬の使用,外傷,脱水などのほか,まれに遊走性血栓性静脈炎やコカイン使用症もある。
病因論に関する参考文献
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腎静脈血栓症の症状と徴候
腎静脈血栓症の診断
血管画像検査
腎梗塞または原因不明の腎機能増悪を呈する患者,特にネフローゼ症候群またはその他の危険因子を有する患者では,腎静脈血栓症を考慮すべきである。
従来からの第1選択かつ標準の診断検査は,下大静脈の静脈造影であり,この検査は診断が可能であるが,血栓を移動させる可能性がある。造影剤を直接注入する静脈造影はリスクを伴うことから,磁気共鳴静脈造影とCT血管造影が望ましい。
CT血管造影は感度と特異度ともに高い詳細な画像が得られ,迅速に施行できるが,腎毒性を示す可能性のある放射線造影剤の投与が必要で,糸球体濾過量(GFR)が30mL/min未満の場合は避けるべきである。GFRが低下している患者では,ガドリニウム造影剤を用いた磁気共鳴静脈造影は腎性全身性線維症のリスクを伴うが,医学的にこの検査が必要な場合には,group IIのガドリニウム造影剤を用いることで,この潜在的リスクを最小限に抑えることができる。ドプラ超音波検査は,ときには腎静脈血栓症を検出するが,偽陰性率および偽陽性率が高い。側副静脈の拡張に起因する尿管の陥凹は,一部の慢性症例では特徴的な所見である。
血清電解質の測定と尿検査を行い,腎機能の悪化を確認する。顕微鏡的または肉眼的血尿がしばしばみられ,急性腎静脈血栓症では血清乳酸脱水素酵素(LDH)値が著明に上昇する可能性がある。タンパク尿はネフローゼレベルに達することがある。
原因が明白でない場合は,凝固亢進疾患に対する検査を開始すべきである(血栓性疾患を参照)。腎生検は非特異的であるが,併存する腎疾患を検出できることがある。
腎静脈血栓症の治療
抗凝固療法
急性腎静脈血栓症に対しては,血栓溶解療法に加えて,ときに血栓除去,通常はカテーテルによる経皮的血栓除去術
基礎疾患の治療
腎静脈血栓症の治療選択肢としては,抗凝固療法やカテーテルまたは外科的手技による血栓除去術などがある。
侵襲的介入の計画がない場合は,直ちに長期抗凝固療法を開始すべきである。抗凝固療法は,新規の血栓のリスクを最小限に抑え,血栓が既存する血管の再開通を促進し,腎機能を改善する。抗凝固薬の選択および投与期間は,一般に深部静脈血栓症の場合と同様である。凝固亢進疾患(例,持続性ネフローゼ症候群)がある場合は,無期限の抗凝固療法を考慮する。
急性腎障害を来した急性腎静脈血栓症患者には,血栓溶解療法と場合により血栓除去を行うべきである。血栓除去または血栓溶解には経皮的カテーテルの使用が現在では推奨されている。外科的血栓除去術の施行はまれであるが,経皮的カテーテルによる血栓除去および/または血栓溶解療法による治療ができない場合には,これを考慮すべきである。
基礎疾患を治療すべきである。
腎静脈血栓症の予後
要点
腎静脈血栓症で最も一般的な原因は,膜性腎症に関連するネフローゼ症候群である。
腎梗塞または原因不明の腎機能悪化がみられる患者,特にネフローゼ症候群またはその他の危険因子を有する患者では,腎静脈血栓症を考慮する。
血管画像検査,通常は磁気共鳴静脈造影(GFRが30mL/minを超える場合)またはCT血管造影により診断を確定する。
抗凝固療法,血栓溶解療法,または血栓除去を開始するとともに,基礎疾患の治療を行う。



