妊娠中の医療

執筆者:Jessian L. Muñoz, MD, PhD, MPH, Baylor College of Medicine
Reviewed ByOluwatosin Goje, MD, MSCR, Cleveland Clinic, Lerner College of Medicine of Case Western Reserve University
レビュー/改訂 修正済み 2024年 9月
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やさしくわかる病気事典

子どもをもつことを考えているカップルは、妊娠前に医師や医療従事者に相談することができていれば理想的です。来院では、女性とそのパートナーの両者の病歴、産科歴、家族歴を確認します。医師は、慢性疾患や薬剤の管理、または妊娠前のワクチン接種について助言します。必要に応じて、遺伝カウンセリングの紹介を受けます。

予防のために、妊婦や妊娠を計画している、または妊娠する可能性のある女性は毎日、400~800マイクログラムの葉酸含有のサプリメントを摂取すべきです。これぐらいの用量は、市販の総合ビタミン剤または妊婦用ビタミン剤で摂取できます。血中葉酸が不足すると、二分脊椎などの脳や脊髄の先天異常(神経管閉鎖不全)が胎児に生じる危険性が高くなります。葉酸を減らす薬(特定のてんかん薬など)を使用している女性や、神経管閉鎖不全の胎児を妊娠したことがある場合は、受胎の3ヵ月前から通常の推奨量よりかなり高用量(4000マイクログラム)の葉酸の摂取を始め、妊娠12週まで続けるようにします。

知っていますか?

  • 妊娠を考えている女性は、妊娠するまで待たずに葉酸が含まれた総合ビタミン剤(一部の先天異常の予防に役立つ)の摂取を始めるべきです。

カップルが妊娠を試みたいと決断した場合は医師に相談して、できるだけ健康的な妊娠経過を送ることができるようにします。こうした機会に、女性の健康や生まれてくる胎児の健康を損なうおそれのある要因について医師に聞いておくべきです。

妊娠に際して避けるべき要因や状況としては以下のものがあります。

  • タバコ、アルコール、大麻、または違法薬物の使用

  • 副流煙にさらされる状態(胎児に害を与える可能性がある)

  • 室内のみで飼育されていて他のネコと接触のない場合を除いて、ネコ用トイレもしくはネコの便に接触すること(こうした接触から、原虫の感染が胎児の脳に損傷を及ぼしかねないトキソプラズマ症に感染することがある)

  • 長時間高温にさらされること(温水浴槽やサウナなど)

  • 化学物質や塗料の蒸気にさらされること

  • 胎児に害を及ぼす可能性のあるウイルス感染症(風疹水痘帯状疱疹など)にかかっている人との接触(妊婦がこれらの感染症に対する予防接種を受け、免疫があることが血液検査で分かっている場合を除く)

これらの要因を妊娠前に把握し対処しておくと、妊娠中に問題が生じるリスクを抑えるのに役立ちます(妊娠合併症の危険因子を参照)。食生活や社会生活、感情的な問題、医学的な問題で女性に不安がある場合も医師に相談します。

妊娠前に医師や医療従事者などの診察を受けて、風疹ワクチンなどの必要な予防接種を受けておくこともできます。まだ葉酸を摂取していない場合には、1日当たりの推奨量(RDA)、または必要に応じてそれ以上の用量の葉酸が含まれた妊婦用の総合ビタミン剤を、医師に処方してもらうことができます。

初回の健診

妊婦と乳児の健康には、出生前ケアが重要です。

通常は妊娠8~12週の初回の出生前来院時に、医師は妊娠検査または超音波検査を行って妊娠を確認します。

医師は、女性が現在かかっている病気とかかったことのある病気、使用している薬剤、および過去の妊娠の詳細(妊娠糖尿病流産先天異常などの問題を含む)について質問します。医師は、現在または過去の精神疾患や、うつ病や不安の症状について質問します。定期的に親密なパートナーによる暴力(同居者から精神的、身体的、または性的虐待を受けていないかどうか)について女性に質問します。

妊娠して初めての身体診察は、かなり詳しく行われます。具体的には以下のものがあります。

  • 体重と血圧を測定します。

  • 心臓、肺、腹部、脚の全体的診察

  • 内診:子宮の大きさと位置を調べます。

  • 子宮頸部細胞診(パパニコロウ検査)および/またはヒトパピローマウイルス検査:子宮頸部から組織サンプルを採取して子宮頸がんがないか確認します。

  • 性感染症検査:子宮頸部または腟のスワブまたは尿検体で淋菌感染症やクラミジア感染症の有無を調べ、血液検査で梅毒、肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を調べます。

  • 追加の血液検査:血算、風疹および水痘に対する免疫の証拠、およびRh因子の状態(陽性または陰性)を含む血液型

  • 追加の尿検査:感染およびタンパク質について尿検査

結核について調べる皮膚テストはすべての女性が受けておくとよいでしょう。

その他の検査は妊婦の状態に応じて行います。例えば、甲状腺疾患のスクリーニングやモニタリングのための血液検査は、以下のうち1つ以上がある場合に行われます。

  • 甲状腺疾患を疑う症状またはその他の理由

  • 甲状腺疾患または甲状腺疾患の家族歴

  • 1型糖尿病がある

妊婦の血液型がRh陰性であれば、Rh因子に対する抗体の有無を調べます(Rh式血液型不適合を参照)。このような妊婦では、妊婦のRh陰性の血液がRh陽性の血液と接触すると、免疫系がRh因子に対する抗体を生産します(過去のRh陽性の胎児の妊娠時など)。この抗体(Rh抗体)がRh陽性の胎児の血球を破壊する可能性があり、胎児に重大な問題を引き起こします(死亡することさえあります)。妊婦の血液中の抗体が早期に検出されれば、胎児を守る処置を取ることができます。

血液型がRh陰性のすべての女性には、妊娠28週(または28週と34週の両方)にRh(D)免疫グロブリンを筋肉内注射により投与します。また、妊婦の血液と胎児の血液が接触した可能性がある場合(例えば性器出血、羊水穿刺、分娩の後など)には注射を行います。Rh(D)免疫グロブリンは、胎児の血球が破壊されるリスクを低下させます。

アフリカ系の女性の場合、以前に調べたことがなければ、鎌状赤血球形質を有しているかどうか、もしくは鎌状赤血球症がないかどうかを調べる検査を行います。

カップルのどちらかに既知の遺伝子異常または遺伝子異常の疑いがある場合は、遺伝カウンセリングおよび検査を行うべきです。

知っていますか?

  • 妊娠中は、タバコ、受動喫煙、飲酒、大麻、違法薬物の使用を控え、ネコのトイレと便、水痘や帯状疱疹にかかっている可能性のある人との接触を避けます。

  • 妊婦は、COVID-19とインフルエンザのワクチン接種を受けるべきです。

フォローアップ健診

初回の健診の後は、以下のように診察を受けます。

  • 妊娠28週までは4週間ごと

  • 36週までは2週間毎

  • 36週以降は出産まで毎週

健診のたびに女性の体重と血圧を記録し、尿検体でタンパク質を調べます。タンパク尿が出ると妊娠高血圧腎症(妊娠中に生じる高血圧の一種)が疑われます。

子宮の大きさを測定して、胎児が順調に成長しているか確認します。胎児の心拍も確認します。心拍は手持ち式のドプラ超音波装置で通常は妊娠10~11週に確認できます。心拍が確認されれば、その後の健診毎に、心拍が正常であるかチェックします。

医師は、妊娠中に発生するタイプの糖尿病(妊娠糖尿病)についてすべての妊婦を検査します。この血液検査は24~28週に行われます。女性が一定量のブドウ糖を含む液体を飲んで1時間後に血糖値(血液中のブドウ糖濃度)を測定します(ブドウ糖負荷試験)。妊娠糖尿病の危険因子がある場合は、この検査をもっと早い時期に行います(できれば妊娠12週前)。

妊娠糖尿病の危険因子としては、肥満と以下の1つ以上の要因との組合せがあります。

  • 運動不足

  • 第1度近親者(母親や姉妹)の糖尿病

  • 高リスク人種または民族(例、アフリカ系アメリカ人、ラテン系、アメリカ先住民、アジア系アメリカ人、太平洋諸島系)

  • 過去の妊娠時の妊娠糖尿病または巨大児(4000g以上)

  • 高血圧

  • コレステロール高値

  • インスリン抵抗性のその他の疾患にかかっている

  • 心血管疾患の既往歴

  • 長期間にわたって尿中に糖が出たことがある

  • インスリン抵抗性の多嚢胞性卵巣症候群にかかっている

リスクがある女性の初回の検査結果が正常の場合には、妊娠24~28週に再検査します。

超音波検査

大半の医師は、理想的には妊娠16~20週で、少なくとも1回の超音波検査を勧めます。出産予定日が定かでない場合や、女性に症状(性器出血骨盤痛など)がある場合は、より早期に超音波検査を行うことがあります。

超音波検査では、超音波を発生させる装置(プローブ)を妊婦の腹部に当てます。音波は画像に変換されてモニターに映し出されます。とりわけ妊娠初期では、腟内にプローブを入れて超音波検査を行うことがあります。超音波検査では高画質の画像が得られ、実際に胎児が動いている様子をみることもできます。超音波検査によって多くの有用な情報が得られ、これを見て妊婦も安心できます。

超音波検査は以下のためにも利用できます。

  • 胎児の心臓の拍動の様子をとらえ、胎児の生存を確認する(早ければ妊娠5週から)

  • 胎児の性別を判別する(早ければ妊娠14週から)

  • 多胎妊娠であるかどうかを確認する

  • 胎盤の位置の異常(前置胎盤)や胎児を包んでいる袋(胎嚢)に液体が過剰にたまっていたり(羊水過多)、胎児の向きの異常がないかを確認する

  • 先天異常を発見する(場合による)

  • 胎児の首の後ろ付近の液体がたまった部分(項部透明帯[NT]と呼ばれる)を測定することにより、ダウン症候群(およびその他いくつかの疾患)の徴候がないか調べる

  • 出生前診断検査などの処置を行う際、器具を目的の位置に誘導する

出産を控えた時期には、胎児の位置(頭が下向きまたは逆子)を確認したり、胎児の成長やその他の妊娠合併症が懸念される場合に胎児の状態を調べるために超音波検査を用いることがあります。

予防接種

妊娠中のワクチンは、妊娠していない場合に受ける際と同様の効果があります。

風疹水痘などの生ウイルスワクチンは、妊娠中に接種すべきではありません。

まだ接種していない場合、妊娠している女性は以下のワクチン接種を受けるべきです(Centers for Disease Control and Prevention [CDC]: Pregnancy and Vaccinationを参照):

妊娠中にワクチンを接種すると、母親の感染防御抗体が胎盤を介して胎児に移行するため、出生後の約6ヵ月間新生児をRSウイルスから予防します。ワクチンは、RSウイルス感染歴の有無にかかわらず投与すべきです。

その他のワクチンは、女性または胎児が危険な感染症に曝露するリスクが著しく高く、ワクチンによる有害作用のリスクが低い状況においてのみ接種すべきです。例えば、重度の肺炎球菌感染症のリスクが高い妊婦には、肺炎球菌ワクチンの接種が推奨されます。コレラA型肝炎B型肝炎麻疹、おたふくかぜポリオ狂犬病腸チフス黄熱などに対する予防接種は、感染のリスクがかなり高い場合は、妊娠中に受けることがあります。

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