神経管閉鎖不全と二分脊椎

執筆者:Ai Sakonju, MD, SUNY Upstate Medical University
Reviewed ByAlicia R. Pekarsky, MD, State University of New York Upstate Medical University, Upstate Golisano Children's Hospital
レビュー/改訂 修正済み 2025年 10月
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やさしくわかる病気事典

神経管閉鎖不全は脳、脊椎、脊髄に生じる先天異常の一種です。

  • 神経管閉鎖不全により、神経損傷、学習症、麻痺、死亡が起こることがあります。

  • 血液検査、羊水検査、または超音波検査の結果に基づいて出生前から診断できます。

  • 出生後、医師は身体診察を行い、追加の画像検査を行う場合もあります。

  • 通常は神経管の欠損部を閉鎖するための手術が必要です。

  • 母親が妊娠前と第1トリメスター【注:日本でいう妊娠初期にほぼ相当】に葉酸を摂取することが、これらの異常の予防に役立つ可能性があります。

胎児が成長する過程で、脊髄はまず1つの溝として発生し、その両側の隆起した部分が合わさって、神経管という管を形成します。正常な場合、この管に由来する組織の層が脳と脊髄、ならびにこれらを覆う組織(脊椎の一部と髄膜を含みます)に変化します。ときに、この神経管が正常に発達せず、脳、脊髄、髄膜が影響を受けることがあります。

二分脊椎

二分脊椎は神経管閉鎖不全の一種です。二分脊椎は重篤になる可能性がありますが、患者は長期間生存する可能性があります。

二分脊椎は、神経管が完全に閉じることができず、開かれたままになることで発生します。二分脊椎では、脊椎の骨(椎骨)が脊髄の周囲を一周し、保護するように成長しません。最も起きやすいのは腰椎(腰の部分の脊椎)です。1つまたは複数の椎骨に異常がみられます。

潜在性二分脊椎は、二分脊椎のうち最も軽度のものです。典型的には、脊椎の骨の一部のみが侵され、脊髄と髄膜は影響を受けません。

このよくみられる異常は、皮膚の層に(覆われて)隠れていることから、隠れているという意味の「occulta」とも呼ばれています。この皮膚の層は典型的には正常に見えますが、ときに周囲の皮膚と色が異なったり、その部分の上に小さな房状の毛髪があったりします。

潜在性二分脊椎は通常、症状を引き起こしませんが、最初にそれがあると考えられる小児は、脊髄に他の先天異常や異常(潜在性脊椎癒合不全)もある場合があります。

潜在性脊椎癒合不全は、脊髄が影響を受ける二分脊椎の一種です。潜在性脊椎癒合不全では、新生児の腰部の皮膚に目に見える異常が認められることがあります。具体的には、あざ、表面の色素沈着部(血管腫と火炎状母斑[コウノトリの噛み跡])、毛束、皮膚の開口部(皮膚洞)、臀部のしわの上の腰にある深いくぼみまたはへこみ、小さなこぶ(腫瘤)などがあります。下にある脊髄に脂肪腫などの異常があったり、脊髄を固定している束状の組織(脊髄終糸)が厚く短くなっていたりすることがあり、脊髄が引き伸ばされ、脊柱管の中を正常に移動できなくなっています(テザリングと呼ばれます)。小児が成長する過程では、脊髄が脊柱管の中を自由に動ける必要があります。テザリングを治療しないでおくと、神経の損傷につながる可能性があり、結果として尿失禁や排失禁、脚の筋力低下、脚の筋肉のれん縮が生じ、最終的に歩行不能になる可能性があります。

嚢胞性二分脊椎は、二分脊椎の中で最も重篤なものです。嚢胞性二分脊椎では、椎骨の開口部から髄膜、脊髄、またはその両方の組織が突き抜け、嚢胞になって赤ちゃんの背中から突出します。嚢胞は皮膚の薄い膜で覆われている場合と、皮膚で覆われていない場合があります。

嚢胞の名前は、その中に含まれる組織によって付けられます。

  • 髄膜瘤:髄膜のみを含む

  • 髄膜脳瘤:髄膜と脳組織を含む

  • 脊髄髄膜瘤:髄膜と脊髄組織を含む

  • 脳瘤:脳組織のみを含む

  • 骨髄瘤:脊髄組織のみを含む

背部の正常な構造から嚢胞が突出している場合は、脳または脊髄の組織に損傷が起きる可能性が大幅に高くなり、特にそれが正常な皮膚で覆われていない場合は極めて高くなります。嚢胞は簡単に破れるため、脊髄組織や髄膜が全体的に突出している場合には、それらに細菌が感染することで、髄膜炎が引き起こされる可能性があります。

二分脊椎にぶんせきつい脊椎せきつい欠損けっそん

二分脊椎にぶんせきついでは、脊椎せきついほね椎骨ついこつ)が正常せいじょう形成けいせいされません。二分脊椎にぶんせきつい程度ていどにははばがあります。

潜在性せんざいせい脊椎癒合せきついゆごう不全ふぜんでは、1つまたは複数ふくすう椎骨ついこつ正常せいじょう形成けいせいされず、脊髄せきずいとそれをつつんでいる組織そしきそう髄膜ずいまく)も影響えいきょうけます。この病気びょうきには、神経学的しんけいがくてき重症度じゅうしょうどことなる、いくつかの種類しゅるいがあります。この病気びょうきはときに、欠損けっそんおお皮膚ひふにみられる体毛たいもうぼう、くぼみまたはへこみ、色素しきそ沈着ちんちゃくなど、腰部ようぶ症状しょうじょうからうたがわれることがあります。

髄膜瘤ずいまくりゅうでは、形成けいせい不完全ふかんぜん椎骨ついこつから髄膜ずいまくして、皮膚ひふした液体えきたいたされた隆起りゅうき形成けいせいします。脊髄せきずい正常せいじょう位置いちにあります。

もっと重症じゅうしょうかた脊髄髄膜瘤せきずいずいまくりゅうで、髄膜ずいまく脊髄せきずいあかちゃんの背中せなかからふくろなか突出とっしゅつします。脊髄髄膜瘤せきずいずいまくりゅうでは、髄膜ずいまく露出ろしゅつしていたり、まれにうす皮膚ひふそうおおわれていたりします(しめとおり)。患部かんぶ生々なまなましくあかえ、あかちゃんはおも障害しょうがいともな傾向けいこうがあります。

その他の神経管閉鎖不全および関連する異常

無脳症は、最も重症度の高い神経管閉鎖不全です。無脳症では、脳組織が発達しません。この異常は常に死に至ります。

キアリ形成異常が二分脊椎の多くの子どもで併発します。この異常により、小脳(バランスをコントロールする脳の部分)が頭蓋骨の底部にある、脳と脊髄がつながっている開口部から下方に押し出されます。突出した小脳によって、脳幹や脊髄が圧迫されることがあります。小脳の圧力が脳内や脳周囲の液体の流れを遮断する可能性があるため、水頭症(脳内に液体がたまった状態)が発生することがあります。

脊髄空洞症では、正常であれば狭く、液体で満たされた精髄中心部の空洞が広がって、より多くの液体で充満するようになります。脊髄空洞症は、二分脊椎やキアリ奇形と併発することがあり、肩、首、腕の痛みや温度の変化に対する感受性が低下することがあります。

神経管閉鎖不全の原因

神経管閉鎖不全には多くの原因があります。

ビタミンBの一種である葉酸が妊娠中に欠乏することは、大きな要因です。

遺伝因子が何らかの役割を果たすことがあります。妊娠中の母親による特定の薬(バルプロ酸など)の使用や母親の糖尿病が、神経管欠損の危険因子です。女性が妊娠に気づく前にこれらの異常が発生することもよくあります。

神経管閉鎖不全の症状

軽微な神経管閉鎖不全では、多くの場合、症状はみられません。

神経管閉鎖不全による症状の多くは、脳や脊髄が損傷を受けたことが原因です。

神経管閉鎖不全は脳の損傷につながる可能性があり、水頭症学習症嚥下困難などが生じることがあります。

脊髄が損傷すると、典型的には腸、膀胱、脚に重度の問題が生じます。具体的には以下のものがあります。

このほかにも、内反足関節拘縮症(関節[通常は足関節]が固まって曲げられなくなる)、股関節脱臼、脊柱後弯症につながる脊椎の異常な弯曲などの異常が出生時からみられる場合もあります。一部の小児では後になって脊柱側弯症がみられます。

神経管閉鎖不全の診断

  • 出生前:アルファ-フェトプロテイン値を測定するための血液検査または羊水穿刺、もしくは出生前超音波検査

  • 出生後:身体診察と追加の画像検査

神経管閉鎖不全の多くは、出生前スクリーニング検査によって出生前に発見することが可能です。

妊婦の血液や羊水でアルファ-フェトプロテイン値が高いことは、胎児に神経管閉鎖不全があることを意味している可能性があります。そのため、第2トリメスター【訳注:日本でいう妊娠中期にほぼ相当】に血液検査または羊水穿刺(胎児の周囲から液体のサンプルを採取する検査)を行って、この値を測定することがあります。

出生前に、出生前超音波検査で欠損部や特徴的な異常が明らかになることもあります。

出生後になると、一部の欠損は身体診察で明らかになります。新生児に潜在性脊椎癒合不全を示唆する異常がみられる場合、脊椎に欠損がないか確認するために、超音波検査またはMRI検査を行います。X線検査を脊椎と股関節のほか、ときに脚についても行います。

二分脊椎と診断されたら、膀胱の機能を評価するための検査を行います。具体的には尿検査尿培養検査、血液検査、超音波検査などがあります。

神経管閉鎖不全の治療

  • 手術

医療専門職、通常は専門家のチーム(脳神経外科医、泌尿器科医、小児科医、小児のリハビリテーション医学専門医、整形外科医、理学療法士、ナースプラクティショナー、ソーシャルワーカーなど)が、欠損の種類と重症度を評価し、治療やケアをどのように行うことができるかについて家族に説明します。

神経管閉鎖不全は通常は外科的に閉鎖します。特定の欠損、例えば脊髄髄膜瘤などは、通常、出生後すぐに修復されます。生まれる前に妊娠中に修復できる異常もあります。

水頭症の治療として、シャント(髄液を排出する永続的な代替経路として使用するプラスチック製のチューブ)を留置することがあります。

必要に応じて、膀胱、骨、筋肉の問題やその他の問題に対する治療を行います。

神経管閉鎖不全の予後(経過の見通し)

適切なケアを行えば、大半の患児が良好に経過します。

しかし、腎機能の低下や水頭症の治療に必要なシャントの問題といった合併症が起こることがあり、ときに年長の小児で死に至ります。

神経管閉鎖不全の予防

  • 葉酸

葉酸は神経管閉鎖不全のリスクを低下させます。

胎児(および小児)の神経管欠損を予防するために、妊娠を計画している人や妊娠する可能性のある人は全員が葉酸を含むビタミンサプリメントを服用すべきで、これは妊娠の3カ月前から開始して、妊娠の第1トリメスター【訳注:日本でいう妊娠初期とほぼ同じ】まで継続するべきです。

神経管欠損のある胎児を妊娠したことがない女性では、葉酸の推奨1日量は400~800mcg(0.4~0.8mg)です。神経管欠損のある乳児を出産したことのある女性は、別の乳児も罹患しているリスクが高いため、高用量の葉酸1日4000 mcg(4 mg)を服用する必要があります。葉酸サプリメントは、神経管閉鎖不全を完全に予防できるわけでありませんが、今後の妊娠における神経管閉鎖不全のリスクを大幅に低下させることができます。

知っていますか?

  • 妊娠前と妊娠中に葉酸を摂取することで、神経管閉鎖不全のリスクを減らすことができます。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いかねることをご了承ください。

  1. Spina Bifida Association

  2. March of Dimes

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