がんの危険因子

完全なレビュー: 2024年 9月 執筆者:Robert Peter Gale, MD, PhD, DSC(hc), Imperial College London | 査読者Jerry L. Spivak, MD, MACP, Johns Hopkins University School of Medicine
最終更新日: 2024年 9月
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やさしくわかる病気事典

多くの遺伝的要因と環境的要因が、発がんのリスクを上昇させます。ただし、発がん物質にさらされている人や他の危険因子をもっている人が必ずがんになるわけではありません。(がんの概要も参照のこと。)

家族歴

一部の家系では、特定のがんの発生リスクが非常に高いことがあります。リスクが増大する原因は、単一の遺伝子による場合もあれば、いくつかの遺伝子の相互作用による場合もあります。家系に共通する環境的要因が、こうした遺伝子の相互作用を変化させて、がんを引き起こすこともあります。

遺伝子と染色体

染色体の過剰や異常もがんのリスクを増大させることがあります。例えば、最もよくみられるタイプのダウン症候群の人は、21番染色体が通常の2本ではなく3本あり、急性白血病の発生リスクが普通の人の12~20倍高くなりますが、一見矛盾しているようですが、がん腫の発生リスクは低くなります。

重要な遺伝子に影響を与える異常(変異)は、がんの発生に関与すると考えられています。こうした遺伝子は、細胞の増殖を調節するタンパク質を作る素になり、結果として細胞分裂や他の基本的な細胞の特性に変化をもたらします。

がんを引き起こす遺伝子変異は、化学物質、日光、薬物、ウイルス、その他の環境中の物質からの悪影響によって起こることがあります。一部の家系では、そのようながんを誘発する異常な遺伝子が受け継がれます。

がんに関係する遺伝子は、以下の2つに大きく分類されます。

  • がん遺伝子(オンコジーン)

  • がん抑制遺伝子

がん遺伝子は、正常な段階では細胞の増殖を調整する遺伝子に、変異または増殖が生じたものです。これらのがん遺伝子としては、乳がんを引き起こすHER2や、一部の肺がんを引き起こすEGFRなどがあります。一部のがん遺伝子は、細胞に無秩序に増殖するよう不適切な指示を出すことによって、がんを発生させます。正常な遺伝子からがん遺伝子への変異は完全に解明されているわけではありませんが、以下のような多くの要因が関与している可能性があります。

  • 放射線

  • 日光

  • 職場、空気中、または化学物質中の毒性物質(例えば、タバコの煙に含まれるもの)

  • 感染性病原体(例えば、特定のウイルス)

がん抑制遺伝子は、損傷したDNAを修復したり細胞の増殖を抑えるタンパク質を作るための情報をコードして、正常であれば、がん細胞の増殖を抑制します。DNAの損傷によってがん抑制遺伝子の機能が損なわれ、影響を受けた細胞が連続的に増殖するようになると、がんが発生する可能性が高くなります。片親から遺伝したがん抑制遺伝子の遺伝子変異が、乳がん患者の一定の割合で発症原因となることがあり、通常は若い年齢で発症し、家系内に複数の患者がみられることがあります。

年齢

ウィルムス腫瘍網膜芽細胞腫神経芽腫などの一部のがんは、ほとんど小児にしか発生しません。これらのがんは、がん抑制遺伝子の変異が遺伝したか胎児の発育中に発生したことを原因として生じます。一方、それ以外のほとんどのがんは、成人(特に高齢者)に多く発生します。米国では、がんの60%以上が65歳以上の人に発生しています。年齢に伴いがん発生率が高くなるのは、おそらくより多くの発がん物質に長期間さらされる一方で、体の免疫系の機能が弱まるためと考えられます。

環境的要因

多くの環境的要因が、発がんのリスクを上昇させます。

タバコの煙には発がん物質が含まれ、肺がんや口腔がん、のどのがん、食道がん、腎臓がん、膀胱がんの発生リスクを大幅に上昇させます。

アスベスト、産業廃棄物、タバコの煙など、空気中や水に含まれる汚染物質が、がんのリスクを増大させるおそれがあります。多くの化学物質に発がん性があることが証明されており、他の化学物質にも発がん性が疑われているものが多数あります。例えば、アスベストにさらされると、肺がんや中皮腫(胸膜のがん)の原因になることがあります。殺虫剤にさらされることと一部のがん(白血病非ホジキンリンパ腫など)のリスク増大には関連があります。化学物質にさらされてからがんになるまでに何年もかかることもあります。

放射線への曝露も発がんの危険因子です。主に日光により、紫外線を浴びすぎると、皮膚がんの原因となります。電離放射線には強い発がん性があります。X線検査(CT検査を含む)では、電離放射線を使用しており、検査を多く受けた人では、がんのリスクがわずかに高くなります(医用画像検査における放射線のリスクも参照)。

土壌から放出される放射性のラドンガスも、肺がんのリスクを増大させます。ラドンは通常は速やかに大気中へと拡散し、有害になることはありません。しかし、多量のラドンを含む土壌の上に建物があると、屋内にラドンが蓄積することがあり、ときに空気中の濃度が体に有害になるほど高くなる可能性があります。ラドンは呼吸によって肺に入り、やがて肺がんを引き起こす可能性があります。喫煙者では、ラドンによる肺がんのリスクがさらに高くなります。

ほかにも多くの物質ががんの原因となる可能性のあるものとして調査されていますが、がんのリスクを高める化学物質を特定するには、さらなる研究が必要です。

地理的要因

がんのリスクは居住地域によっても異なりますが、その理由は往々にして複雑で、まだあまり解明されていません。地域差が生じる原因は、おそらく遺伝や食事、環境といった多数の要因が関与していると考えられます。

例えば、日本では結腸がん乳がんのリスクは低くなっていますが、日本から米国に移住した人ではそれらのがんの発症率が増大し、最終的には米国人と同程度になります。他方、日本に住む人では胃がんが極めて多くみられます。日本から米国に移住した人では、胃がんのリスクは米国人と同程度に低くなり、これはおそらく食生活の変化によるものですが、こうしたリスクの低下は移住者の次の世代になって初めて明らかになる場合があります。

食事

食事から摂取する物質が、がんのリスクを高めることがあります。例えば、不飽和脂肪酸を多く含む食事や肥満自体が、結腸がんや乳がん、ときに前立腺がんのリスク増大と関連があるとされています。大量に飲酒する人では、肝臓がん頭頸部がん食道がんの発生リスクが大幅に高くなります。燻製食品、漬物、焼き肉が多い食事は、胃がんの発生率を高めます。過体重または肥満の人は、乳がん、子宮内膜がん、結腸がん、腎臓がん、食道がんのリスクが高くなります。

薬と薬物療法

特定の薬と薬物療法によって、がんの発生リスクが増大することがあります。例えば、経口避妊薬に含まれるエストロゲンは、現在服用している人や過去数年以内に服用した人で、乳がんのリスクをわずかに高めることがあります。また、閉経期の女性に投与されることがあるホルモンのエストロゲンとプロゲスチン(ホルモン療法)は、乳がんのリスクをわずかに増大させます。

ジエチルスチルベストロール(DES)は、この薬を使用された女性と、そうした母親の胎内でこの物質にさらされた女性の乳がんのリスクを高めます。DESはまた、この薬を投与された女性の娘の子宮頸がんと腟がんのリスクも高めます。乳がんの治療に使用される薬のタモキシフェンは、子宮内膜がん(子宮の内側を覆っている膜に発生するがん)のリスクを高めます。

テストステロンやダナゾール、他の男性ホルモン(アンドロゲン)を長期使用すると、肝臓がんのリスクがわずかに高くなることがあります。

特定の化学療法薬(アルキル化薬)や放射線療法によるがんの治療によって、何年も経った後に二次がんが発生するリスクが増大する可能性があります。

感染症

人にがんを引き起こす原因として数種のウイルスが知られており、それ以外にも発がん性が疑われているウイルスがいくつかあります。ヒトパピローマウイルス(HPV)は、尖圭コンジローマを引き起こしますが、女性の子宮頸がん外陰がん、男性の陰茎がん肛門がんの主な原因でもあります。HPVは、一部の口のがんとのどのがんの原因でもあります。B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスは、肝臓がんの原因となります。HIVなどのヒトレトロウイルスにはリンパ腫や血液系のがんの原因となるものがあります。一部のウイルスは、特定の国である種のがんを起こしますが、他の地域では起こしません。例えば、エプスタイン・バー(EB)ウイルスは、アフリカではバーキットリンパ腫(がんの一種)を生じさせ、アジアでは鼻や咽頭のがんを発生させています。

細菌ががんの原因になることもあります。胃潰瘍を引き起こすヘリコバクター・ピロリは、胃がんリンパ腫のリスクを増大させます。

寄生虫ががんの原因になることもあります。ビルハルツ住血吸虫による感染症が、膀胱の慢性炎症と瘢痕化を引き起こし、がんに進行する場合があります。別の寄生虫である肝吸虫は、膵臓がん胆管がんに関連があるとされています。

炎症性疾患

炎症性疾患は、しばしばがんのリスクを高めます。そうした病気には潰瘍性大腸炎クローン病があります(これらはやがて結腸がんや胆管がんになる場合があります)。

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